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第一章【史上最強雀士コテツ編】
二十六打目◉三回戦A卓
しおりを挟む三回戦は以下のように分かれた。
A卓
東家シオリ
南家アキラ
西家ジンギ
北家コテツ
B卓
東家メタ
南家マサル(リカ)
西家社長
北家スグル
卓組みはくじ引きで決めているのだが、奇しくもトータル上位4名と下位4名にくっきり卓が分かれた。
予選最終戦。三回戦開始
麻雀とは不思議なもので豪快そうな外見をした打ち手ほど意外なくらい繊細で縮こまった麻雀をしがちである。
そして、三回戦A卓はアイドルのような容姿をしたシオリと長身で細身なアキラ、エグ○イルのメンバーにいても違和感ないジンギ、女性もののジーンズが丁度いいコテツの4人だ。見た目は豪快さと無縁なメンツ。つまり逆にこの4人の戦いは格闘技のような激しい叩き合いになった。
開局から親のシオリと北家コテツの2軒リーチ
しかし、そこにアキラが仕掛けてきてアガリ切る。シオリの親満リーチとコテツの満貫リーチはアキラの2000点によって不発に終わった。
東2局はコテツの満貫仕掛けが決まりアキラは親被り。アキラの持ち点はふりだしに戻る。
東3局はコテツとアキラのリーチ合戦にシオリとジンギも降りずに挑む。
(先生とコテツのリーチか。だが一歩も退かないぞ!)ここで気持ちで負けたらこの先にチャンスが訪れるとしてもそれをモノにすることは出来ないだろう。そうジンギは感じて目を逸らさずに立ち向かった。
しかし親のジンギはテンパイ出来ずに一向聴のまま流局。
「くそっ!」
オーラス流れ一本場供託2000点。ここを制した者は決勝戦が決まる局。
(張った! 形は悪いがアガれば決勝なはず。どうする…)とジンギが珍しく長考。
「…リーチ!」
ジンギからの早いリーチが入る。ジンギもアガれば決勝だ。
だが、ジンギのリーチは普段なら一旦崩して作り直すような手だった。決勝への焦りから自分らしくない判断をしてしまうあたりまだジンギは経験が浅かったと言える。その点、他の3人は冷静だった。キチンと迂回し、準備を整えて充分な形にしてからの反撃を仕掛けた。
とは言えコテツは内心気が気ではなかった。もし、負けたらここで終わりという恐怖と戦いながら手に汗握り人生を賭けて打っていた。
この麻雀に人生を賭けている。誰がそうしろと言ったわけでなくても自分で決めたことは死んでも守るコテツであったので、この勝負にはシオリとの未来が賭けられていたと言っても間違いではなかった。
しかしそれは雀士なら当たり前のことでもあった。雀士は常に人生を牌に乗せている。蓄積させた長年の鍛錬の集大成をその指に宿して全てを自分自身に賭けている。何となくで選ぶ牌などただの1枚すらないのだ。
「リーチ」
テンパイ2番手はコテツ。ドラ爆弾を抱えてリャンメンテンパイで追いかけた。するとアキラも
「リーチ!」
3軒リーチではさすがのシオリも撤退せざるを得なかった。
(落ち着いて、ここはオリてもきっと決勝に残れる)とシオリは自分に言い聞かせた。
「ロン!」
結果はコテツがジンギからリーチドラ3の満貫ロンで決着。焦ったジンギが負けるのはごくごく当たり前の結果だと言えた。
トップコテツ、2着アキラ、3着シオリ、ラスジンギ
コテツの決勝進出は確定した。
「ヨシッ!」
珍しくコテツは声を出して喜んだ。優勝まであと一勝。
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