18 / 76
その2『モテ期突入?』編
第九話 味のわからない回鍋肉
しおりを挟む
18.
第九話 味のわからない回鍋肉
美咲は結局悩んだ末に油淋鶏定食を注文した。俺はというと
「俺は回鍋肉にしようかな。定食で、ご飯は大盛りね」
「はーい。油淋鶏定食と回鍋肉定食ね油淋鶏定食の方はご飯大盛りにはしなくていいのかしら?」
「あっ、私は大丈夫です」
「そう、おかわりも無料ですから、足りないなと思ったら遠慮なくご注文下さいね」
「はい、ありがとうございます」
回鍋肉は割と好きで、家でもたまに自分で作る。もちろん『素』を使ってだけど。それでも充分おいしく作れる。
素人が作っても美味しいんだ、腕の良い料理人が回鍋肉を作るとどんなのが出てくるのか、俺はそれが知りたかった。
「あやのー。ハイボールちょうだいよ。あと、単品でタコワサも」
「はいはい、あまり飲み過ぎないようにね。まだ昼間なんだからここで酔って寝られたら困るよ」
「うーい♡ 心配ご無用。まだまだ大丈夫よぉ」
「ならいいけど」
────
「はい、油淋鶏定食! お待たせしました」
油淋鶏定食はあやのさんの手によってテーブルに丁寧にそっと置かれた。けっこう重いだろうにあやのさんはその重さを感じさせることなく丁寧に安定させて運ぶ。その所作だけ見てもあやのさんのが一流の給仕であることが見てとれた。
「わあ~。美味しそ~! いただきます!」
「どうぞ、召し上がれ」
バリッ! ジュワ
「おいっひ! ハフハフ、何これ、おいっひーーーー! え、わたひの想像してたのの5倍は美味しいのでふが!」
「分かったから、ひとまず食ってから感想言え」
「……ふう。おいしーーー! お姉さん、凄くおいしーです!」
口に含んでいた油淋鶏を飲み込むとあらためて美咲はその感動を口にした。わかる、わかるぞ妹よ。
「ウフフ、お口に合ったようで嬉しいわ。っと、ヨシ! 回鍋肉も完成!」
あやのさんはそう言うと回鍋肉定食を俺の前にそっと置いた。まるで無重力かのように無音でスッと置くので(見た目より軽いのかな?)と思って、ためしに少し持ち上げてみた。
(! 重い。これをスッと置くのはかなりの力が必要そうだが、あの細腕のどこにそんな筋肉があるのだろう)
仕事ぶりは一流の給仕であり一流のシェフでもある。
言葉遣いも丁寧で、顔立ちも美しく、スタイルは抜群。
その上、性格もいい。この人こそ完璧な女性だな。と俺は思った。しかし、
「ねえお母さーん。今日おひるごはん何食べたらいいのー」
「いま用意するからね。いのりはあっちで待っててね」
「はーい」
「……今の子は?」
「ああ、いのりの事? 私の娘よ、かわいいでしょ?」
「あっ、ああ。とてもかわいいと思います」
いや、俺がショック受けるのはどういうことだろう。
そもそもあやのさん程の完璧な女性なら結婚くらいしてて当たり前だった。仮にあやのさんと結婚できるRPGがあるとして、全ての男性がノータイムで『する』を選んでしまうだろう。
あやのさんが結婚している。なんでその結論が自分の中で出てなかったのか不思議なくらいだ。
「いただきます…」
「はい。召し上がれ」
その日食べた回鍋肉は美味しかったはずなのだが、あやのさんの娘を見たショックでそれどころではなく、味が全然わからなかった。
第九話 味のわからない回鍋肉
美咲は結局悩んだ末に油淋鶏定食を注文した。俺はというと
「俺は回鍋肉にしようかな。定食で、ご飯は大盛りね」
「はーい。油淋鶏定食と回鍋肉定食ね油淋鶏定食の方はご飯大盛りにはしなくていいのかしら?」
「あっ、私は大丈夫です」
「そう、おかわりも無料ですから、足りないなと思ったら遠慮なくご注文下さいね」
「はい、ありがとうございます」
回鍋肉は割と好きで、家でもたまに自分で作る。もちろん『素』を使ってだけど。それでも充分おいしく作れる。
素人が作っても美味しいんだ、腕の良い料理人が回鍋肉を作るとどんなのが出てくるのか、俺はそれが知りたかった。
「あやのー。ハイボールちょうだいよ。あと、単品でタコワサも」
「はいはい、あまり飲み過ぎないようにね。まだ昼間なんだからここで酔って寝られたら困るよ」
「うーい♡ 心配ご無用。まだまだ大丈夫よぉ」
「ならいいけど」
────
「はい、油淋鶏定食! お待たせしました」
油淋鶏定食はあやのさんの手によってテーブルに丁寧にそっと置かれた。けっこう重いだろうにあやのさんはその重さを感じさせることなく丁寧に安定させて運ぶ。その所作だけ見てもあやのさんのが一流の給仕であることが見てとれた。
「わあ~。美味しそ~! いただきます!」
「どうぞ、召し上がれ」
バリッ! ジュワ
「おいっひ! ハフハフ、何これ、おいっひーーーー! え、わたひの想像してたのの5倍は美味しいのでふが!」
「分かったから、ひとまず食ってから感想言え」
「……ふう。おいしーーー! お姉さん、凄くおいしーです!」
口に含んでいた油淋鶏を飲み込むとあらためて美咲はその感動を口にした。わかる、わかるぞ妹よ。
「ウフフ、お口に合ったようで嬉しいわ。っと、ヨシ! 回鍋肉も完成!」
あやのさんはそう言うと回鍋肉定食を俺の前にそっと置いた。まるで無重力かのように無音でスッと置くので(見た目より軽いのかな?)と思って、ためしに少し持ち上げてみた。
(! 重い。これをスッと置くのはかなりの力が必要そうだが、あの細腕のどこにそんな筋肉があるのだろう)
仕事ぶりは一流の給仕であり一流のシェフでもある。
言葉遣いも丁寧で、顔立ちも美しく、スタイルは抜群。
その上、性格もいい。この人こそ完璧な女性だな。と俺は思った。しかし、
「ねえお母さーん。今日おひるごはん何食べたらいいのー」
「いま用意するからね。いのりはあっちで待っててね」
「はーい」
「……今の子は?」
「ああ、いのりの事? 私の娘よ、かわいいでしょ?」
「あっ、ああ。とてもかわいいと思います」
いや、俺がショック受けるのはどういうことだろう。
そもそもあやのさん程の完璧な女性なら結婚くらいしてて当たり前だった。仮にあやのさんと結婚できるRPGがあるとして、全ての男性がノータイムで『する』を選んでしまうだろう。
あやのさんが結婚している。なんでその結論が自分の中で出てなかったのか不思議なくらいだ。
「いただきます…」
「はい。召し上がれ」
その日食べた回鍋肉は美味しかったはずなのだが、あやのさんの娘を見たショックでそれどころではなく、味が全然わからなかった。
10
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる