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その3『美咲大活躍』編
第八話 暗躍する美咲
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27.
第八話 暗躍する美咲
最近美咲がバイトから帰ってくるのが遅い気がする。
たしかに急な残業というのはあるだろう。しかし、それにしては多い。こんなに帰宅が遅くなるようでは少し心配だ。このあたりは街灯も少ない。いつ変質者が出るかもわからないし、不良に絡まれることもあるかもしれない。昨日などは俺が寝た後で帰ってきたみたいだ。それはいくらなんでも遅過ぎる。
今日はそれとなく最近遅いんじゃないか? という話をしてみた。すると……
「ああ、そのこと? 心配ならもうしないよ。やろうと思ってたことは達成したし」
「やろうと思ってたこと?」
なんだ? 美咲は何を企んでいるんだ?
「ハイこれ、あやのさんの連絡先。一通り番号もメアドも全部聞いて交換してきた。お兄ちゃんに教えていいかって聞いたらいいって言ってたから登録して大丈夫だよ」
「おま、どーゆーことだよ」
「最近赤いお姉さんとばかり連絡取ってるでしょ? まあ、いいんだけどぉ~。美咲的にはあやのさんの方がより好みと言うかぁ~。あやのさんは料理も上手だし? ほら、ケータイ貸して。登録しとくから!」
そう言うと美咲は強引に俺のケータイを奪ってあやのさんの連絡先を登録した。なんてやつだ。でも、それを嫌がらなかった俺も俺だけどな。拒もうと思えば拒むことは出来たはずだった。心のどこかで美咲に感謝してる俺も間違いなく……いた。
トゥルルルルル……トゥルルルルル……
「いや、何してんの!」
「あやのさんに電話かけてみた」
「迷惑だよ! 営業時間だぞ?」
「あれ? お兄ちゃん知らないの? あやの食堂は木曜定休だよ。今日はお休み」
(コイツ、俺より詳しくなってやがる)
トゥルルル…『ハイ、モシモシ』
「あ、美咲です。お兄ちゃんの電話からかけました。これがお兄ちゃんの電話番号なので登録しといて下さい」
『うん。登録しとく、ありがとね美咲ちゃん』
「なんのなんの。お兄ちゃんに代わりますね」
そう言うと美咲はケータイを渡してきた。
「ほら、お兄ちゃん」
なんということだ。いきなり電話とか言われても何を話せばいいかわからないぞ。まして妹の前だ。恥ずかしくて何も思い浮かばない。
「あ……お久しぶりです」
『イヌイさぁん。最近来てくれないじゃない。どうしたの~? 妹さんはよく来てくれてるけどさ』
「あ、いや、仕事が忙しいだけで……行きたい気持ちは常にあるんですが」
『そうなの? ならいいけどー。マキとは連絡とって遊んでるらしいじゃない。お姉さん妬いちゃうなぁー』
「い、いや、遊んでるというか、犬飼さんとはメッセージのやり取りしてるだけで、仕事であった事とか聞いてもらって俺が一方的に溜飲を下げてたり。そんな感じなんで……(さては美咲がテキトーなこと言ってるな?)」
ジロッと美咲の方を見ると『てへ』という感じの顔をして小さく舌を出していた。コイツめ~。
『とにかく、私待ってるから。イヌイさんの方から誘って下さいね。これでも女なんだから。私から誘ったりはしたくないの。わかってね』
「え、あっと。誘うってどーゆう……」
『何でも女に聞いちゃダメよぅ。とりあえず食事にでも誘ってよね。いつでもいいからさ……。もちろん、歳も離れてるし、子持ちだし、嫌ならいいんだけど、でも……私のコト、嫌いってことはないんでしょ。そのくらいはわかるつもりよ』
今日はまだ午前9時半だった。俺は久しぶりの休みだ。家の事さえ終わらせれば予定は無い。
「あっ、じゃあ。今日の……そうですね…正午に、お店まで迎えに行きます。とりあえず、どこか行きませんか。2人で」
『え!? 今日?? ……嬉しいな。あ、2時には子供が帰ってくるからそれまででいい?』
「もちろん。食事だけでもいいんで」
『ありがとう。そうだ! じゃあお弁当作っておくからどこか外で食べましょう。幸い近場にちょうどいい公園もあるし』
「あ、いいですね。そしたら2人でピクニック的な感じで」
『決まりね。オシャレして待ってるから♡ じゃあまずは食堂に来てくださいね。そのあと一緒に行きましょう』
(やるじゃんお兄ちゃん、ひゅーひゅー!)
(まあ、ここまでしてもらったらな)
こんなにもお膳立てしてもらって行動しないわけにもいかなかったし、正直に言えば、ありがたかった。
永遠に来ないと思われた春人の春が、少し遅れてこの夏についにやって来た。かもしれない。
第八話 暗躍する美咲
最近美咲がバイトから帰ってくるのが遅い気がする。
たしかに急な残業というのはあるだろう。しかし、それにしては多い。こんなに帰宅が遅くなるようでは少し心配だ。このあたりは街灯も少ない。いつ変質者が出るかもわからないし、不良に絡まれることもあるかもしれない。昨日などは俺が寝た後で帰ってきたみたいだ。それはいくらなんでも遅過ぎる。
今日はそれとなく最近遅いんじゃないか? という話をしてみた。すると……
「ああ、そのこと? 心配ならもうしないよ。やろうと思ってたことは達成したし」
「やろうと思ってたこと?」
なんだ? 美咲は何を企んでいるんだ?
「ハイこれ、あやのさんの連絡先。一通り番号もメアドも全部聞いて交換してきた。お兄ちゃんに教えていいかって聞いたらいいって言ってたから登録して大丈夫だよ」
「おま、どーゆーことだよ」
「最近赤いお姉さんとばかり連絡取ってるでしょ? まあ、いいんだけどぉ~。美咲的にはあやのさんの方がより好みと言うかぁ~。あやのさんは料理も上手だし? ほら、ケータイ貸して。登録しとくから!」
そう言うと美咲は強引に俺のケータイを奪ってあやのさんの連絡先を登録した。なんてやつだ。でも、それを嫌がらなかった俺も俺だけどな。拒もうと思えば拒むことは出来たはずだった。心のどこかで美咲に感謝してる俺も間違いなく……いた。
トゥルルルルル……トゥルルルルル……
「いや、何してんの!」
「あやのさんに電話かけてみた」
「迷惑だよ! 営業時間だぞ?」
「あれ? お兄ちゃん知らないの? あやの食堂は木曜定休だよ。今日はお休み」
(コイツ、俺より詳しくなってやがる)
トゥルルル…『ハイ、モシモシ』
「あ、美咲です。お兄ちゃんの電話からかけました。これがお兄ちゃんの電話番号なので登録しといて下さい」
『うん。登録しとく、ありがとね美咲ちゃん』
「なんのなんの。お兄ちゃんに代わりますね」
そう言うと美咲はケータイを渡してきた。
「ほら、お兄ちゃん」
なんということだ。いきなり電話とか言われても何を話せばいいかわからないぞ。まして妹の前だ。恥ずかしくて何も思い浮かばない。
「あ……お久しぶりです」
『イヌイさぁん。最近来てくれないじゃない。どうしたの~? 妹さんはよく来てくれてるけどさ』
「あ、いや、仕事が忙しいだけで……行きたい気持ちは常にあるんですが」
『そうなの? ならいいけどー。マキとは連絡とって遊んでるらしいじゃない。お姉さん妬いちゃうなぁー』
「い、いや、遊んでるというか、犬飼さんとはメッセージのやり取りしてるだけで、仕事であった事とか聞いてもらって俺が一方的に溜飲を下げてたり。そんな感じなんで……(さては美咲がテキトーなこと言ってるな?)」
ジロッと美咲の方を見ると『てへ』という感じの顔をして小さく舌を出していた。コイツめ~。
『とにかく、私待ってるから。イヌイさんの方から誘って下さいね。これでも女なんだから。私から誘ったりはしたくないの。わかってね』
「え、あっと。誘うってどーゆう……」
『何でも女に聞いちゃダメよぅ。とりあえず食事にでも誘ってよね。いつでもいいからさ……。もちろん、歳も離れてるし、子持ちだし、嫌ならいいんだけど、でも……私のコト、嫌いってことはないんでしょ。そのくらいはわかるつもりよ』
今日はまだ午前9時半だった。俺は久しぶりの休みだ。家の事さえ終わらせれば予定は無い。
「あっ、じゃあ。今日の……そうですね…正午に、お店まで迎えに行きます。とりあえず、どこか行きませんか。2人で」
『え!? 今日?? ……嬉しいな。あ、2時には子供が帰ってくるからそれまででいい?』
「もちろん。食事だけでもいいんで」
『ありがとう。そうだ! じゃあお弁当作っておくからどこか外で食べましょう。幸い近場にちょうどいい公園もあるし』
「あ、いいですね。そしたら2人でピクニック的な感じで」
『決まりね。オシャレして待ってるから♡ じゃあまずは食堂に来てくださいね。そのあと一緒に行きましょう』
(やるじゃんお兄ちゃん、ひゅーひゅー!)
(まあ、ここまでしてもらったらな)
こんなにもお膳立てしてもらって行動しないわけにもいかなかったし、正直に言えば、ありがたかった。
永遠に来ないと思われた春人の春が、少し遅れてこの夏についにやって来た。かもしれない。
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