麻雀食堂−mahjong cafeteria−

彼方

文字の大きさ
35 / 76
その4『初デート』編

第六話 本気の人の邪魔はしない

しおりを挟む
35.




第六話 本気の人の邪魔はしない




 食事のあと、カラオケに誘われて2時間ほど歌うとカロリーを消費したのか少しだけ楽になった。




 犬飼さんはカラオケスナックのオーナーというだけあり歌がすごく上手かった。俺はと言うと、80点前後。全国平均とかも見れるからわかるんだけど、すごく普通の点数。正直カラオケも久しぶりだし、点数とか出したこともないんだけど、俺の歌唱力は普通なんだな。あと5点くらい上手いつもりでいたけど。




「ねえ、犬飼さん――」

「待った! その、『犬飼さん』ってのいい加減やめにしない? ふたりきりで食事してカラオケした仲じゃない。もう『マキ』でいいわよ。そもそも『イヌカイ』と『イヌイ』でややこしかったし」

「ま、まあそれはそうだけども…… 失礼じゃないかな?」

「本人がやめていいって言ってんのに失礼もなにもないわ」

「え、でも俺は『イヌイ』なの?」

「なら『ハルト』でもいいわよ♡」




 そう言って犬飼さん……もとい、マキさんはいたずらっぽくウインクしてきた。本当に45歳? めちゃくちゃカワイイんだが。




「ゔっ…… なんかドキドキします。慣れてないというか」

「よし、決まり。今後はハルト呼びするね。面白いから」

「やめてよマキさん」

「『さん』はいらないかな~。友達だと思ってんだから呼び捨てにしてよ」

「へい……」




 もう、終始マキのペースだった。俺は意味不明に「へい」とか答えてるし。八百屋か?




 

 とにかく、この日はあやのさんと距離を縮めるつもりの初デートのはずが、気付いたらマキとも初デートをしていたのだった。そんなんあんの?







◆◇◆◇




「おかえり~。お兄ちゃん、けっこう遅かったね。どうだった? こんなに時間あったんだし、既成事実でも作った?」

「既成…… おま、どーゆー思考回路してんの! やっぱり小説書いてるだろ。18禁のやつとか」

「ぎくゥ! いや、そんなん書いてないってー(書いては消してをしてるだけ)……たまーに、読むけどネ」

「はー。まぁいいけど。俺より先にデキちゃいました、はい結婚。とか言い出すなよ。人生には順序ってもんがある」

「ハイハイ。大丈夫よ、今のとこ誰とも付き合ってみたいと思わないし。誰見てもトキメかないのよねー。お兄ちゃんのせいで」

「なんで俺のせいなんだよ」

「ったくゥ。……とにかく、全部お兄ちゃんのせいなの! だから安心してていいから。私の事はいいのよ。それより今日のデートはどうだったのかって聞いてンの!」

「それがさ……」




────

──




「そんなパターンある? 赤いお姉さん手強いなー! 強運キャラじゃん。まいったな、これは三角関係に発展するフラグがビンビン立ってるよ。ていうか、もう三角関係だよね実質」

「マキは友達って言ってたぞ」

「そんなん方便とか建前とかそういうアレに決まってんジャン! まずはそう言っといて距離縮めようって腹よ。実際グンと縮まったわけだから」




 言われてみればそうだ。今日1日でマキとの距離はほぼゼロ距離に近いほど近付いた。カラオケの時はいつの間にかピタッと隣に座ってたし。

 そもそも今まで女性を呼び捨てにするなんて妹にしかしたこと無い。




「赤い……マキさんだっけ。あのお姉さん、本気ね。ついにお兄ちゃんにモテ期が来ちゃったかー。ウフフフフ」

「何か嬉しいのか?」

「そりゃ嬉しいわよ。モテないお兄ちゃんよりモテるお兄ちゃんがいいに決まってる。モテる人はカッコイイもん。でもそっかー、マキさんも本気だとなると私はもうちょっかい出すのやめよー」

「いいのか?」

「本気の人の恋路は邪魔しちゃいけないからね。あとはお兄ちゃんが選んだらいいよ。私はもう静観する。フフ」




 美咲はなんだかとても楽しそうだった。これは多分、小説のネタにされるんじゃないかな。と、ピンときた俺だった。




 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

処理中です...