麻雀食堂−mahjong cafeteria−

彼方

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その6『三人の契約』編

第三話 メタとあやのとハムチーズトースト

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第三話 メタとあやのとハムチーズトースト




「あのひとのアガった数え役満……あれのせいで私は人生めちゃくちゃにしちゃったよね。まさかあれと3回結婚して3回離婚するなんてさ。でも、カッコイイと思っちゃったんだよね~。あの時は」

「どんなアガリだったんですか?」と俺が質問すると、あやのさんは牌をカチャカチャと並べ始めた。




一二三④⑤⑥⑦⑧⑨12233




「南3局で18000点持ちラス目の親番。ドラは2索だったわ」

「これって……切り番ってことすよね。ドラ2索なら1索切ってリーチするかな」

「そう思うわよね。私もそうだと思ったもの」

「でも、違った。となると、⑨筒切ってのテンパイ取らずかな。強い形で復活しやすい」

「その考えもあるわよね。わかるわ、私もそれ考えたから」

「でも、これも違う……と」

「そう」

「なら打3かな。とりあえずツモれれば強引な満貫となる仮テンとして、良い変化をしたなら待ちを替えてリーチ。これじゃない? これ、メタさんぽいじゃん」

「そうよね、それ全く同じことを私も思ったんだけど……」




「打④だ。懐かしいな」




 気付いたらそこにメタさんが来ていた。換気中で扉を開けっぱなしだから入ってきたことに誰も気付かなかった。

「あ、おかえり」

「よーメタ、おかえりぃ」

「メタさん! こんにちは。って、えっ、ここから打④? 意図がわかりません。何で④筒なんですか?」




「うん、おれはこの手が倍満級になると思ったんだ。ここからイメージ通りに進んだらの話だけどな」




「メンピンイーペードラドラ……ツモっても跳満止まりですよ。倍満はちょっとムリじゃないすか?」




 俺がそう言うとメタさんは卓に近寄り次のツモを引いてきた。




ツモ1

打⑤

「これはまだダマだ」

ツモ一

打⑥

「ここでリーチ」

ツモ一

「一発ツモ。裏ドラは一萬で数え役満。これがおれの麻雀だ」




「かっ、かっけええええ!!」

「でしょう? そうなのよ。それでつい話しかけちゃったのよね私の方から。一生の不覚よ」

「一生の不覚は言い過ぎだろ」

「そーよ、その後3回も結婚したくせに」とマキが笑いながら言う。

「3回離婚したけどね!」

 

 あやのさんによると、この時のアガリに興奮してメタさんに話しかけたら『あやのさんの作るトーストを食べに来てるんだよ。キミの作るトーストは特別うまい』と褒められたんだと。後に料理屋をやるあやのさんだ、料理のことを褒められたら嬉しくなったんだろう。




「アナタ、今日は何か食べるの? あの頃みたいにハムチーズトースト作ろうか」

「ああ、それいいな。じゃあ頼むわ」




「あーあ、あの時あんなアガリ見てなければなー」

「でも、おかげで今いのりがいるんだからいいじゃないか」

「……そーね。あのコは私の誇り。それだけはアナタに感謝してるわ」




────




チン!




 厨房の奥でオーブンが音を鳴らす。と同時にこんがりと焼けたパンとチーズの匂いが漂ってきた。

 

「はい、おまたせ。懐かしのハムチーズトーストよ。メニューにはないから500円でいいかな」

 

 それはスライスチーズを乗せて焼いた食パンにバター、ハム、マヨネーズ、つぶマスタード、サニーレタスを乗せてはさみ、斜めにカットしたものだった。とても美味しそうだ。




「ちゃっかりしてんな。サービスじゃないのかよ。旦那だぞ?」

「元でしょ。もう絶対あんたとの結婚は今後二度としないから他人よ他人。ほら金出して」

「はいはい」




 仲が悪いような、すごく親しいような、そんなやり取りを見て俺はモヤモヤしていた。

 そして、そんなモヤモヤしてる俺を見てマキはさらにモヤモヤしていたようだった。




 俺たちの関係はどんどんややこしい方向に進んでいる、ような気がする。




 一体どうなるんだこれ。




























 
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