50 / 76
その6『三人の契約』編
第三話 メタとあやのとハムチーズトースト
しおりを挟む
50.
第三話 メタとあやのとハムチーズトースト
「あのひとのアガった数え役満……あれのせいで私は人生めちゃくちゃにしちゃったよね。まさかあれと3回結婚して3回離婚するなんてさ。でも、カッコイイと思っちゃったんだよね~。あの時は」
「どんなアガリだったんですか?」と俺が質問すると、あやのさんは牌をカチャカチャと並べ始めた。
一二三④⑤⑥⑦⑧⑨12233
「南3局で18000点持ちラス目の親番。ドラは2索だったわ」
「これって……切り番ってことすよね。ドラ2索なら1索切ってリーチするかな」
「そう思うわよね。私もそうだと思ったもの」
「でも、違った。となると、⑨筒切ってのテンパイ取らずかな。強い形で復活しやすい」
「その考えもあるわよね。わかるわ、私もそれ考えたから」
「でも、これも違う……と」
「そう」
「なら打3かな。とりあえずツモれれば強引な満貫となる仮テンとして、良い変化をしたなら待ちを替えてリーチ。これじゃない? これ、メタさんぽいじゃん」
「そうよね、それ全く同じことを私も思ったんだけど……」
「打④だ。懐かしいな」
気付いたらそこにメタさんが来ていた。換気中で扉を開けっぱなしだから入ってきたことに誰も気付かなかった。
「あ、おかえり」
「よーメタ、おかえりぃ」
「メタさん! こんにちは。って、えっ、ここから打④? 意図がわかりません。何で④筒なんですか?」
「うん、おれはこの手が倍満級になると思ったんだ。ここからイメージ通りに進んだらの話だけどな」
「メンピンイーペードラドラ……ツモっても跳満止まりですよ。倍満はちょっとムリじゃないすか?」
俺がそう言うとメタさんは卓に近寄り次のツモを引いてきた。
ツモ1
打⑤
「これはまだダマだ」
ツモ一
打⑥
「ここでリーチ」
ツモ一
「一発ツモ。裏ドラは一萬で数え役満。これがおれの麻雀だ」
「かっ、かっけええええ!!」
「でしょう? そうなのよ。それでつい話しかけちゃったのよね私の方から。一生の不覚よ」
「一生の不覚は言い過ぎだろ」
「そーよ、その後3回も結婚したくせに」とマキが笑いながら言う。
「3回離婚したけどね!」
あやのさんによると、この時のアガリに興奮してメタさんに話しかけたら『あやのさんの作るトーストを食べに来てるんだよ。キミの作るトーストは特別うまい』と褒められたんだと。後に料理屋をやるあやのさんだ、料理のことを褒められたら嬉しくなったんだろう。
「アナタ、今日は何か食べるの? あの頃みたいにハムチーズトースト作ろうか」
「ああ、それいいな。じゃあ頼むわ」
「あーあ、あの時あんなアガリ見てなければなー」
「でも、おかげで今いのりがいるんだからいいじゃないか」
「……そーね。あのコは私の誇り。それだけはアナタに感謝してるわ」
────
チン!
厨房の奥でオーブンが音を鳴らす。と同時にこんがりと焼けたパンとチーズの匂いが漂ってきた。
「はい、おまたせ。懐かしのハムチーズトーストよ。メニューにはないから500円でいいかな」
それはスライスチーズを乗せて焼いた食パンにバター、ハム、マヨネーズ、つぶマスタード、サニーレタスを乗せてはさみ、斜めにカットしたものだった。とても美味しそうだ。
「ちゃっかりしてんな。サービスじゃないのかよ。旦那だぞ?」
「元でしょ。もう絶対あんたとの結婚は今後二度としないから他人よ他人。ほら金出して」
「はいはい」
仲が悪いような、すごく親しいような、そんなやり取りを見て俺はモヤモヤしていた。
そして、そんなモヤモヤしてる俺を見てマキはさらにモヤモヤしていたようだった。
俺たちの関係はどんどんややこしい方向に進んでいる、ような気がする。
一体どうなるんだこれ。
第三話 メタとあやのとハムチーズトースト
「あのひとのアガった数え役満……あれのせいで私は人生めちゃくちゃにしちゃったよね。まさかあれと3回結婚して3回離婚するなんてさ。でも、カッコイイと思っちゃったんだよね~。あの時は」
「どんなアガリだったんですか?」と俺が質問すると、あやのさんは牌をカチャカチャと並べ始めた。
一二三④⑤⑥⑦⑧⑨12233
「南3局で18000点持ちラス目の親番。ドラは2索だったわ」
「これって……切り番ってことすよね。ドラ2索なら1索切ってリーチするかな」
「そう思うわよね。私もそうだと思ったもの」
「でも、違った。となると、⑨筒切ってのテンパイ取らずかな。強い形で復活しやすい」
「その考えもあるわよね。わかるわ、私もそれ考えたから」
「でも、これも違う……と」
「そう」
「なら打3かな。とりあえずツモれれば強引な満貫となる仮テンとして、良い変化をしたなら待ちを替えてリーチ。これじゃない? これ、メタさんぽいじゃん」
「そうよね、それ全く同じことを私も思ったんだけど……」
「打④だ。懐かしいな」
気付いたらそこにメタさんが来ていた。換気中で扉を開けっぱなしだから入ってきたことに誰も気付かなかった。
「あ、おかえり」
「よーメタ、おかえりぃ」
「メタさん! こんにちは。って、えっ、ここから打④? 意図がわかりません。何で④筒なんですか?」
「うん、おれはこの手が倍満級になると思ったんだ。ここからイメージ通りに進んだらの話だけどな」
「メンピンイーペードラドラ……ツモっても跳満止まりですよ。倍満はちょっとムリじゃないすか?」
俺がそう言うとメタさんは卓に近寄り次のツモを引いてきた。
ツモ1
打⑤
「これはまだダマだ」
ツモ一
打⑥
「ここでリーチ」
ツモ一
「一発ツモ。裏ドラは一萬で数え役満。これがおれの麻雀だ」
「かっ、かっけええええ!!」
「でしょう? そうなのよ。それでつい話しかけちゃったのよね私の方から。一生の不覚よ」
「一生の不覚は言い過ぎだろ」
「そーよ、その後3回も結婚したくせに」とマキが笑いながら言う。
「3回離婚したけどね!」
あやのさんによると、この時のアガリに興奮してメタさんに話しかけたら『あやのさんの作るトーストを食べに来てるんだよ。キミの作るトーストは特別うまい』と褒められたんだと。後に料理屋をやるあやのさんだ、料理のことを褒められたら嬉しくなったんだろう。
「アナタ、今日は何か食べるの? あの頃みたいにハムチーズトースト作ろうか」
「ああ、それいいな。じゃあ頼むわ」
「あーあ、あの時あんなアガリ見てなければなー」
「でも、おかげで今いのりがいるんだからいいじゃないか」
「……そーね。あのコは私の誇り。それだけはアナタに感謝してるわ」
────
チン!
厨房の奥でオーブンが音を鳴らす。と同時にこんがりと焼けたパンとチーズの匂いが漂ってきた。
「はい、おまたせ。懐かしのハムチーズトーストよ。メニューにはないから500円でいいかな」
それはスライスチーズを乗せて焼いた食パンにバター、ハム、マヨネーズ、つぶマスタード、サニーレタスを乗せてはさみ、斜めにカットしたものだった。とても美味しそうだ。
「ちゃっかりしてんな。サービスじゃないのかよ。旦那だぞ?」
「元でしょ。もう絶対あんたとの結婚は今後二度としないから他人よ他人。ほら金出して」
「はいはい」
仲が悪いような、すごく親しいような、そんなやり取りを見て俺はモヤモヤしていた。
そして、そんなモヤモヤしてる俺を見てマキはさらにモヤモヤしていたようだった。
俺たちの関係はどんどんややこしい方向に進んでいる、ような気がする。
一体どうなるんだこれ。
11
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる