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その6『三人の契約』編
第九話 ジュンコとチャーハンの出会い
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第九話 ジュンコとチャーハンの出会い
その日はジュンコさんが『あやの食堂』に来ていた。店内はそれなりに混んでいて、自然な流れで俺はジュンコさんの隣に座ることになったがジュンコさんとは実はまだろくに話しをしたことがないことに気付き、一体何を話そうかと考えた。
「ジュンコさんて、あやのさんとはどういった関係なんですか?」
それ程興味があって聞いたわけじゃないが切り出す話題としてはベストな気がした。
「私はね、友人が働いてる雀荘に行った時あやのと出会ったの。正確にはあやのの作ったチャーハンと出会った。が正解かな。それがあまりに美味しいから誰がこれを作ってるのか知りたいと聞いたのが始まりだったわ」
「へぇ~」
「あんまり美味しいチャーハンだったから作った人の顔を見たかったんだけど、その日はチャーハン作りを最後の仕事にして帰っちゃってて、そのシェフには会えなかったの。
それで後日、また来た時に『彼女ですよ』と紹介された時はびっくりしたわよ。だってそれはすっごい遊んでそうな黒ギャルだったんだもの」
するとそれを聞いていたあやのさんがカウンター越しに会話に参加してきた。
「アハハ。やだなー、私そんな目で見られてたわけ? 黒ギャルっていうか、あの頃は日焼け止めとかやってなかったから。ほっとくと夏場はかなり黒くなるのよね私」
「今白いのは?」
「これはがんばって日焼け止めしたり日傘さしたりしてるから。白い肌は努力して作ってるのよ~。シミやシワの原因を作りたくないからね」
「そうだったんだ」
てっきり色白なのかと思っていたが、努力していたのか。
「で、あんまり美味しかったから試しに次は違うメニューをと思って焼きそばを頼んでみたんだけど、それも完璧な美味しさだったの。これ、本物の料理上手だって確信したわ。そんで私は話しかけてみたの。もう、この時から彼女に食堂をやらせようと決めてたんだけど」
「えっ? 初耳」
今の話はあやのさんも初耳だったようだ。というか、この食堂はジュンコさんが計画したものだったのか?
「でも大掛かりな計画だから慎重にね。よく知りもしないオバさんの計画にホイホイ乗るような人はいないから私はまず自分で作ったお弁当を持ち込む事にしたの。卓につく前に『ここで食べていいかしら』って聞いて、自作の料理をあやのに見てもらって(自分も料理が好きです)というアピールをしたわけ」
「ええ?! あれ、計画だったの?」
「もちろんよ」
なるほど、直接的に誘うことはせず、いざなうように。少しずつ自分の思う方向に誘導したわけだ。麻雀打ちらしさが出てる。
「思った通り釣れたわよね。『それ、ご自分で作ったんですか! お料理上手なんですね!』って。シナリオ通りのセリフだったわ」
「まって、混乱してきた。何? 私の行動って全部ジュンコさんの手のひらの上だったの?」
「そうよ。今は違うけど」
ジュンコさんが言うに、そういうきっかけ作りをして、あやのさんに『食堂』を将来的には作りたく思ってるという自分の夢を話して、もしそうなったら資金は援助するので店長をやってもらえないか? という誘いをするという所まで最初から計画していたそうだ。
「びっくりした。偶然の出会いだと思ってたのに。半分以上は必然の動きをしてたなんて」
「まあ、出会いは偶然よ。編集長としての仕事も落ち着いてきたから次のことやりたいなと思ってたトコに偶然あなたのチャーハンがやってきたの」
「編集長?」
「あ、ハルト君は知らないわよね。ジュンコさんは元編集長なの。最近引退したんだけどね。『月刊マージャン部』っていう雑誌を作った人なのよ」
「それ、先月買った!」
「あら、ありがとう」
ジュンコさんは凄い人だった。
そしてその後、俺はこの『左田ジュンコ』という人を通してさらに面白い人たちと知り合うことになるのであった――
第九話 ジュンコとチャーハンの出会い
その日はジュンコさんが『あやの食堂』に来ていた。店内はそれなりに混んでいて、自然な流れで俺はジュンコさんの隣に座ることになったがジュンコさんとは実はまだろくに話しをしたことがないことに気付き、一体何を話そうかと考えた。
「ジュンコさんて、あやのさんとはどういった関係なんですか?」
それ程興味があって聞いたわけじゃないが切り出す話題としてはベストな気がした。
「私はね、友人が働いてる雀荘に行った時あやのと出会ったの。正確にはあやのの作ったチャーハンと出会った。が正解かな。それがあまりに美味しいから誰がこれを作ってるのか知りたいと聞いたのが始まりだったわ」
「へぇ~」
「あんまり美味しいチャーハンだったから作った人の顔を見たかったんだけど、その日はチャーハン作りを最後の仕事にして帰っちゃってて、そのシェフには会えなかったの。
それで後日、また来た時に『彼女ですよ』と紹介された時はびっくりしたわよ。だってそれはすっごい遊んでそうな黒ギャルだったんだもの」
するとそれを聞いていたあやのさんがカウンター越しに会話に参加してきた。
「アハハ。やだなー、私そんな目で見られてたわけ? 黒ギャルっていうか、あの頃は日焼け止めとかやってなかったから。ほっとくと夏場はかなり黒くなるのよね私」
「今白いのは?」
「これはがんばって日焼け止めしたり日傘さしたりしてるから。白い肌は努力して作ってるのよ~。シミやシワの原因を作りたくないからね」
「そうだったんだ」
てっきり色白なのかと思っていたが、努力していたのか。
「で、あんまり美味しかったから試しに次は違うメニューをと思って焼きそばを頼んでみたんだけど、それも完璧な美味しさだったの。これ、本物の料理上手だって確信したわ。そんで私は話しかけてみたの。もう、この時から彼女に食堂をやらせようと決めてたんだけど」
「えっ? 初耳」
今の話はあやのさんも初耳だったようだ。というか、この食堂はジュンコさんが計画したものだったのか?
「でも大掛かりな計画だから慎重にね。よく知りもしないオバさんの計画にホイホイ乗るような人はいないから私はまず自分で作ったお弁当を持ち込む事にしたの。卓につく前に『ここで食べていいかしら』って聞いて、自作の料理をあやのに見てもらって(自分も料理が好きです)というアピールをしたわけ」
「ええ?! あれ、計画だったの?」
「もちろんよ」
なるほど、直接的に誘うことはせず、いざなうように。少しずつ自分の思う方向に誘導したわけだ。麻雀打ちらしさが出てる。
「思った通り釣れたわよね。『それ、ご自分で作ったんですか! お料理上手なんですね!』って。シナリオ通りのセリフだったわ」
「まって、混乱してきた。何? 私の行動って全部ジュンコさんの手のひらの上だったの?」
「そうよ。今は違うけど」
ジュンコさんが言うに、そういうきっかけ作りをして、あやのさんに『食堂』を将来的には作りたく思ってるという自分の夢を話して、もしそうなったら資金は援助するので店長をやってもらえないか? という誘いをするという所まで最初から計画していたそうだ。
「びっくりした。偶然の出会いだと思ってたのに。半分以上は必然の動きをしてたなんて」
「まあ、出会いは偶然よ。編集長としての仕事も落ち着いてきたから次のことやりたいなと思ってたトコに偶然あなたのチャーハンがやってきたの」
「編集長?」
「あ、ハルト君は知らないわよね。ジュンコさんは元編集長なの。最近引退したんだけどね。『月刊マージャン部』っていう雑誌を作った人なのよ」
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