麻雀食堂−mahjong cafeteria−

彼方

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サイドストーリー3

美咲の小説② 幸せの形

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57.




サイドストーリー3




美咲の小説②




(なーんか、麻雀の小説書いてみたいなあ)と美咲は考えていた。




(って言っても、私自身がまだ素人なのだから本格的なものは無理よ。となると……麻雀を絡めた人間ドラマならどうだろう)




 美咲は全力で妄想した。自分に麻雀好きの彼氏がいる設定で。いやむしろ雀荘の店員さんとお付き合いしてるつもりで。自分も大人設定で、しかも40代~50代くらいの、完全に大人。お酒なんか飲んじゃったり、そんな感じで。




(よし、こんなのどうだ!)







◆◇◆◇







◎幸せの形







 私は君をいきなり呼び出す。










"迎えに来て、五分以内"










 あの頃、お互い若かったし君は正直バカだから、真夜中の道を原付すっ飛ばしてちゃんと五分以内に迎えに来てくれてたね。あれはなんて店だったろう。私にはとりあえず、酒飲む所という認識でしかなかったあの店。いつもそこに私は寄り道している。










 君が到着すると、別にすぐ帰るわけじゃなくて、いつでも君のことをそこの店長やらお客さんに自慢するのが私の日課。




「かわいいだろ。アタシの彼。まだ若いんだ。いい子でさ」










 酔っ払いながらそんなことをいつもみんなに言ったっけ。










 時々君が仕事を聞かれて




『雀荘店員です』と言うと、たまに心無い人からバカにされたっけ。

 温厚な君は別にそんなに気にしてなかったようだったけど。私はこうなると毎度怒って君の魅力を長々と語り出してた。










「あんたはさ! 自分の好きなことだけしてそれで稼ぐことが出来るわけ!? 彼はそういうこと出来る人なんだよ?」って激しく知らない人にでも噛みついてたわ。










 また、始まった。と自分でも思うんだけど。怒らずにはいられなかった。










 君のプライド守るのは私の役目って思ってたから。










 帰り道は大きな道を2人並んで歩いて。

 人目が無い細い道までバイクを押したらそこからは一度キスして、1つしかないヘルメットを君は私に被せて、二人乗りで帰ったね。










 私らが暮らしたあの部屋にはお酒と麻雀牌しか無かったけど。







 ……でも




 あれはあれで幸せの形だった。










 君は今幸せにしてますか。

 私は今も幸せだよ。




 ありがとう。じゃじゃ馬な私と付き合ってくれたこと、感謝してると伝えたい。君との時間があったから今もある。










 若い頃付き合ったあの彼は今も元気に牌を握っているのかな。さすがにもうあの頃のように徹夜なんてしないのだろうけど。










 今も幸せでいてください。
























◆◇◆◇




「イイ! ちょっと短すぎるかもだけど、文字数うんぬんより内容よね! これ、自分史上最高傑作かも! やはり私は天才だー!」




「また何か書いたのか?」

「うん、最高傑作。ほれ、見て」




 私は今完成したばかりのとても短い小説をお兄ちゃんに見せた。すると……




「………………いいな。よくこんなの書けるな、高校生のくせに」

「小説家は経験したことしか書けないとしたらSFとかどうなってるの? ってコト! 妄想する力が私にはあるみたい」

「物書きが向いてるようだな。そのまま続けてけよ、きっといつか美咲の作品が認められる日が来ると思うから。学校でも物書きの友達とか作ってみたらどうだ?」

 

 この日のことがきっかけで美咲は高校2年の途中からではあるが『文芸部』に入り、その後数々の作品を生み出して公募なりWEBコンテストなり出してみる。すると、そこかしこから高く評価され、奨励賞も受賞し、3年生になった頃には文芸部副部長になるのだった。





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