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第2章【闇メン初仕事編】
1話目◉初仕事
しおりを挟む最初の仕事場は勝田台の『龍』という店だった。そこのマスターにだけおれの顔を教えていて後のスタッフは全員闇メンの存在を知らないという。
出勤は10時から。抜けて欲しい時はマスターがコーラを出すからその時はラスハンコールしてくれと言う事だった。
初出勤する前に渡邉さんからメールでその日の行き先になっている店のルールが送られてくる。闇メンはそれをよく読んでしっかり理解してから向かう。ルール説明を受けてたら時間が勿体ないから。
闇メンを雇うのは高額とまでは言わないが決して安くもない。なのでルール説明くらい飛ばしてあげるべきなのだ。え? おれの給料は時給で1000円だったじゃないかって? そりゃそうだよ。間に会社が挟まってるんだから、依頼人は例えば時間1500円で闇メンを雇うとする。それが全額闇メンに行ったら会社の利益ないだろ。
つまり、おれに1時間1000円支払っても会社はしっかり利益が上がるような仕組みだと言うことだ。そうなると何となくだが、闇メン依頼は高額ということが分かると思う。
よって闇メンには高度なクオリティを求められるのは当然だった。
————
『龍』に到着した。
今到着した事を渡邉さんにメールで報告して入店。
カランコロン
「いらっしゃいませ! 四名様ですか?」
これは椎名がいつも言われることだった。若い椎名がフリーで打ちに来た猛者客には見えず、仲間たちとワイワイやる麻雀、いわゆるセットのお客さんだと思ってしまうのだ。
「いえ、フリーで」
「あっ、フリーで。失礼ですが当店のご利用はお久しぶりでしょうか?」
「初めてです」
「初めてのご来店ありがとうございます。それではルール説明から入らせていただきます。そちらの卓へご移動下さい」
「いえ、ルールは調べてから来ましたので大丈夫です。ホームページの情報にないルールがあるなら知りたいですが」
「あ、そうですか! ありがとうございます。それならすぐ出来ますね」
待ち席で雑誌を読んでた人を誘って『店長』と呼ばれる人と店員の『左座』という名札を下げた人とおれとで卓を立てる。左座… なんて読むんだろう。名札にはふりがながふってあるが小さいし文字も薄くなってて読めない。
少し顔を近づけて読もうとするおれに『左座』さんは気付いた。
「あ、『ぞうざ』と読みます。よろしくお願いします」
「椎名です。よろしくお願いします」
こうして闇メンとしての初仕事が始まったが気になっていたのはおれの正体を唯一知っているという話の『マスター』がいない事。そして、待ち席で雑誌を読んで待っていた人の爪が異様にきれいだったということ。それだけが、少し気になっていた。
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