4 / 67
徹に誘われて
しおりを挟む
放課後の空気は、少し湿り気を帯びていた。
校門前で、自転車のハンドルを握ったまま立ち尽くす結人の指先に、
うっすら汗が滲んでいた。
制服の襟をきちんと整えた長身の徹が
まっすぐこちらへ歩いてきた。
女子が振り返るほど人気のある神谷徹。
歩幅、姿勢、全てが整っていて、ひと目で彼だとわかる。
「悪かった。……待たせたね」
言葉は穏やか。でも、その視線は少しだけ結人を急かすようだった。
何も言えず、頷いたまま自転車を押して、彼の後ろを歩き出す。
着いたのは、白い塀に囲まれた家だった。
門柱の表札に刻まれた「神谷医院」の文字に、思わず声が漏れた。
「ここ……病院?」
「診療所は手前。奥が住まい」
徹が何気なく門を開ける。
整えられた植え込み、石畳、磨かれた玄関の床。
どこもかしこも整っていて、どこか冷たかった。
「誰もいない。……だから、遠慮しなくていいよ」
「……緊張します」
徹がくすっと笑って玄関を先に進む。
その背中を追うだけで、結人の心臓がどくんと鳴った。
二階の書斎のような部屋に通される。
革張りの椅子、大きな机。整然と並んだ本棚。
空気までもが静かに整っていて、結人の喉がからからになっていく。
「アイスティー、飲む?」
「……あ、ありがとうございます」
無糖のアイスティーの冷たさが、少しだけ火照った手を冷ました。
やがて並んで机に向かうと、徹が自然な流れで隣に座った。
その距離、すぐ隣。腕がかすかに触れるほどの近さ。
「ここの解釈、少し惜しかったね」
ノートにすらすらと書き込みながら、徹の指先が結人のノートの上に重なる。
その体温に、一瞬、息が止まった。
「なるほど……」
でも、徹の横顔は真剣で、やさしくて、どこか美しかった。
しばらく勉強を続けていたが、ふと徹が筆を止める。
「君って……やっぱり、教えてて面白い」
「えっ?」
「反応が可愛いすぎるよ。」
徹は笑って答えた。
結人は慌てて視線を落とす。
けれど、顔が火照っているのは隠せなかった。
「……また、うちでやる?」
「え?」
「勉強、
静かで、集中できるし。俺も結人を教えるのが楽しいから」
その声は低くて優しかった。
胸の奥がきゅうっと疼く。
結人にとって初めての感覚だった。
「……はい」
小さく頷いたとき、徹の指先がそっと結人の手の甲に触れた。
何気ない仕草。でも、結人にとってはギュっと胸を掴まれたように痛む。
あぁ、、、どうしよう。心臓の音が聞こえてしまいそう。
結人は首元まで赤く染まった。
校門前で、自転車のハンドルを握ったまま立ち尽くす結人の指先に、
うっすら汗が滲んでいた。
制服の襟をきちんと整えた長身の徹が
まっすぐこちらへ歩いてきた。
女子が振り返るほど人気のある神谷徹。
歩幅、姿勢、全てが整っていて、ひと目で彼だとわかる。
「悪かった。……待たせたね」
言葉は穏やか。でも、その視線は少しだけ結人を急かすようだった。
何も言えず、頷いたまま自転車を押して、彼の後ろを歩き出す。
着いたのは、白い塀に囲まれた家だった。
門柱の表札に刻まれた「神谷医院」の文字に、思わず声が漏れた。
「ここ……病院?」
「診療所は手前。奥が住まい」
徹が何気なく門を開ける。
整えられた植え込み、石畳、磨かれた玄関の床。
どこもかしこも整っていて、どこか冷たかった。
「誰もいない。……だから、遠慮しなくていいよ」
「……緊張します」
徹がくすっと笑って玄関を先に進む。
その背中を追うだけで、結人の心臓がどくんと鳴った。
二階の書斎のような部屋に通される。
革張りの椅子、大きな机。整然と並んだ本棚。
空気までもが静かに整っていて、結人の喉がからからになっていく。
「アイスティー、飲む?」
「……あ、ありがとうございます」
無糖のアイスティーの冷たさが、少しだけ火照った手を冷ました。
やがて並んで机に向かうと、徹が自然な流れで隣に座った。
その距離、すぐ隣。腕がかすかに触れるほどの近さ。
「ここの解釈、少し惜しかったね」
ノートにすらすらと書き込みながら、徹の指先が結人のノートの上に重なる。
その体温に、一瞬、息が止まった。
「なるほど……」
でも、徹の横顔は真剣で、やさしくて、どこか美しかった。
しばらく勉強を続けていたが、ふと徹が筆を止める。
「君って……やっぱり、教えてて面白い」
「えっ?」
「反応が可愛いすぎるよ。」
徹は笑って答えた。
結人は慌てて視線を落とす。
けれど、顔が火照っているのは隠せなかった。
「……また、うちでやる?」
「え?」
「勉強、
静かで、集中できるし。俺も結人を教えるのが楽しいから」
その声は低くて優しかった。
胸の奥がきゅうっと疼く。
結人にとって初めての感覚だった。
「……はい」
小さく頷いたとき、徹の指先がそっと結人の手の甲に触れた。
何気ない仕草。でも、結人にとってはギュっと胸を掴まれたように痛む。
あぁ、、、どうしよう。心臓の音が聞こえてしまいそう。
結人は首元まで赤く染まった。
0
あなたにおすすめの小説
ヒーロー組織のサポートメンバーになりました!
はちのす
BL
朝起きたら、街はゾンビだらけ!生き残りたい俺は、敵に立ち向かうヒーロー組織<ビジランテ>に出逢った。
********
癖の強いヒーロー達の"心と胃の拠り所"になるストーリー!
※ちょっとイチャつきます。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
病弱の花
雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる