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はるとの行方
しおりを挟む「……え? はると先輩、休学……?」
友人からの何気ない一言が、鼓膜の奥で何度も反響した。
昼休みの学食のざわめきの中、それだけが異様に浮いて聞こえた。
「知らなかったの? なんか、しばらく来てないって話だよ。
サークルも辞めたっぽいし……」
箸を持っていた手が、止まる。
(なんで……)
つい数日前まで、肌を合わせた夜を過ごしたのに」
温かい体温も、柔らかな言葉も、今でも胸に残っているのに。
「どうして……何も言ってくれなかったんだろう」
ぽつりと漏れた独り言を、誰も拾わなかった。
その夜、結人は徹の家にいた。
食事の時間も、勉強も、何も頭に入らない。
「食べないの?」
徹がやさしく尋ねる。
「……ごめんなさい、少し疲れてて」
箸を置いた結人を見て、徹は黙って立ち上がり、食器を片づけた。
いつものように優しい、
でもどこか、何も聞こうとしない静けさが不安を増幅させた。
(本当に、どこに行ったんだろう……)
スマホを握る手が震える。
未送信のままのメッセージが、何度も開かれては閉じられる。
――「また、会いたいです」
――「今、どこにいますか?」
送れない。
何が正しいのか、自分でも分からない。
ベッドに入っても、目は冴えていた。
徹が背後から抱きしめてくる、その腕のぬくもりに、心が震える。
(はると先輩は、僕のこと、嫌いになったのかな)
(それとも……何か、あった?)
誰にも聞けない。何も知らされない。
優しいはずの時間が、薄く冷たい膜のように結人を覆っていた。
その夜、結人は一度も眠れなかった。
徹の寝息を聞きながら、心だけが遠く遠く、はるとの面影をさまよっていた。
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