あの視線の主人【高校〜のストーリー】

kouji

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追求

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鍵を開けると、部屋の中にはすでに明かりが灯っていた。

 徹はキッチンにいて、フライパンからソースの香りが漂っている。
 ジャケットを脱ぎ、何も言わずにダイニングの椅子に腰を下ろすと、徹が静かに振り返った。

「おかえり」

 ただそれだけ。
 笑顔も、怒りもなく、声音は穏やかだった。

「ただいま……ごめんなさい。ちょっと遅くなりました」

「そうみたいだね」

 目の前に置かれたのは、ビーフシチューとバゲット、それから、赤ワイン。
 いつも通り、どこかで買ったのではなく、ちゃんと“用意していた”夕飯。

「いただきます」

 そう言ってスプーンを取る。
 口に運ぶと、味はとても優しくて――でも、なぜか喉がつまった。

「……ワイン、飲む?」

 視線を上げると、徹はグラスを二つ、すでに並べていた。
 結人が頷くと、徹は静かにワインを注ぐ。

「今日は、誰と会ってたの?」

 一瞬、空気が張った。
 けれど徹は、スプーンを置くこともなく、まるで天気でも尋ねるように口にした。

「……大学の友達」

「そっか。男?」

「……うん」

「そう」

 それ以上は、何も言わない。
 笑わない。でも怒りもしない。

 ただ――その目だけが、笑っていなかった。

 

 食事が終わり、食器を洗う結人の背中に、徹の声が落ちる。

「……ねえ、結人」

「なに?」

「君、最近香水を変えた?」

「え……いえ、、」

「そう。……でも、誰かの匂いがした気がしたから」

 結人は、洗っていた皿を少しだけ強く握った。
 その音に、徹は一歩だけ近づいてくる。

「……僕は、君がどこにいても、何をしていても、ちゃんと帰ってきてくれればいいと思ってる」

「……」

「でも、君の顔が、別の誰かを思い出しているように見えると……我慢ならないんだ」

 

 そのまま、後ろから腕が回された。

 徹のぬくもりは、相変わらず優しくて――
 でもどこか、檻のようにも感じられた。

「結人。君の居場所はここだよ」

 

 その声に頷きながら、結人の中では、あの夜のはるとの微笑みが、どうしても消えなかった。
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