バックパックガールズ ~孤独なオタク少女は学園一の美少女たちの心を癒し、登山部で甘々な百合ハーレムの姫となる~

宮城こはく

文字の大きさ
5 / 133
第一章「ぶかつ狂騒曲」

第五話「小さくて大きな女の子」

しおりを挟む
「……あぅぅ。またぶつかっちゃった……」

 こんなに連続で人とぶつかるなんて、今日は厄日なのかもしれない。
 廊下を曲がろうとした瞬間、目の前に誰かが現れたのだ。
 先生から逃げることばかりを考えてたせいで、曲がり角の先に人がいる可能性を見失っていた。
 
 フラフラした頭で周囲を見渡すと、床には何冊もの本が散らばっている。
 きっとぶつかった時に、相手の人が落としてしまったんだろう。
 申し訳なく思って拾おうしたとき、開いたページに視線が釘付けになってしまった。

『おっぱい山特集』
『北海道 西クマネシリ岳とピリベツ岳の神秘』
『世界のおっぱい山』

 ……大きく書かれた見出しと共に、お椀型の双子のような山の写真。
 お山の頂上には「それ」としか思えないような突起があり、まさに見出しの通りだった。

 どんな人がこんな本の持ち主なのだろうと思った瞬間、「ん……はぁ……」となまめめかしい声が私の腕の中から漏れ出してきた。
 そして、なんだか夢心地のようなふわふわの手触りが私の右手を包み込んでいる。
 ふと視線を落としたとき、その正体が分かった。

うわわぁぁ……。こんなところにも、おっぱい山が!
 右手からあふれるほどの大きなふくらみ。
 そしてその持ち主の女の子は、目元を隠すような長い前髪の隙間から左目だけをのぞかせて、私をじっと見つめ上げていた。

「……離して」
「ごごご、ごめんなさい!」

 私はとっさに右手を離し、彼女と一緒に立ち上がる。
 一緒に並んで立っていると、彼女はとても背が低いことが分かった。
 身長は一四〇センチぐらいだろうか。私よりも頭一つ分小さい。
 私と同じ一年生なのかもしれない。

「ケ、ケガはない?」
「……。問題、ない」

 彼女はぼそぼそっと小さな声でつぶやくと、床に散らばった本を集め始めた。
 私も慌てて手伝うことにする。
 落ちている本は何冊もの大きなリュックサックのカタログだった。

「あ、あの。……リュックが好きなの?」

 本当は『おっぱい山』について聞きたかったけど、胸に触ってしまったので聞けなかった。
 ここで聞いたら『女子なのにおっぱい星人』だって勘違いされてしまう。


 しかし、彼女の回答は得られなかった。
 彼女が話すよりも先に、先生が立ちふさがったからだ。

「あ……あまちゃん先生……」
「空木さんっ。これ、ど~うぞっ」

 先生に無理やり手渡されたのは、部活動紹介のプリント一式と入部届の紙だった。

「絶対に登山部に入れとは言わないわぁ。好きな部活を選んで、今日の下校までに入部届を提出するんですよぉ~」

 先生はニコニコと笑っているが、言い知れぬ迫力がみなぎっている。

「自分で決めなければ、先生が勝手に登山部に決めちゃいますよぉ~」
「あぅぅ。横暴ですよ~! 反対、はんた~い!」

 私が腕を振り上げながら叫ぶと、先生は脇に抱えていた書類を私に見せつけるように突き出してきた。

「あらあら。入学の時の書類に書いてありましたよぉ。部活動は必須で、進級の条件でもあると。……そして四月二十日、つまり今日この日までに決めなければ、学校側が生徒の素養に従って決めてよいと。……ほら、ここにご両親のサインもいただいておりますしぃ~」

 先生が指さす書類の片隅。
 そこには確かに、お母さんのサインとハンコがあった。
 よくよく思い出すと、私自身が入学の書類をまともに読まずに親に渡して、それっきりだった気がしてくる。

「あぅぅ……。私、体力もないし、登山の素養なんてないですよぉ……」
「体力は誰でもがんばればつくわぁ~。じゃあ、先生、待ってますよぉ~」

 そう言って去っていく先生の背中を見つめ、私は力なくうずくまった。
 そんな私を不憫ふびんに思ってくれたのか、小さな女の子はやさしく私の肩に触れてくれる。

天城あまぎ先生は……きっと、本気。後悔しないように、せめて……自分で決めたほうがいい」

 彼女の声は小さくとぎれとぎれだけど、やさしさに満ちていた。
 彼女は無表情ながらも穏やかな瞳で私を見つめている。
 前髪の隙間から少しだけ見えている左目はとても大きく、そして吊り目がち。
 透き通ったまなざしは私の心を射抜くようだった。
 私はその瞳にすっかり魅了されてしまい、言われるがままにうなづいた。

「はい……。そうします」

 美少女にさとされるなら、本望だ。
 ゆっくりと立ち去っていく美少女を、私はいつまでも見つめていた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~

楠富 つかさ
恋愛
 中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。  佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。  「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」  放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。  ――けれど、佑奈は思う。 「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」  特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。  放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。 4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編7が完結しました!(2026.1.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる

九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。 ※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。

処理中です...