バックパックガールズ ~孤独なオタク少女は学園一の美少女たちの心を癒し、登山部で甘々な百合ハーレムの姫となる~

宮城こはく

文字の大きさ
20 / 133
第二章「陰になり日向になり」

第四話「エスコートはお姉さんにおまかせ?」

しおりを挟む
 今日はほたか先輩と約束しているお買い物の日。
 私の登山靴を買う予定なのだ。
 待ち合わせの学校の校門前に約束よりも三十分ほど早く着いてしまったので、私は自転車を降りてぼんやりと空を見上げていた。
 二日間ほど降り続いた雨もやみ、土曜日の午後は気持ちいいぐらいに晴れ渡っている。
 早く着きすぎてしまったのは、ほたか先輩との二人きりのショッピングが楽しみだったからだ。

(ほたか先輩って、やっぱり山のお店が好きなのかな?)

 あれほどの山好きなら、登山用品店ではしゃぐ姿は目に見えるようだ。
 専門家によるマニアックなトークにエスコートされながらのショッピングは、もしかするとバラエティ番組並みに楽しいかもしれない。

 そういえば自転車で来るように言われてたけど、お店は遠いのだろうか。
 出雲市内の移動と言えば、学生なら自転車が一般的だ。電車は一時間に一、二本しか走らない二両電車しかないし、バスに乗るぐらいなら自転車のほうが自由がきくというわけだ。

「ましろちゃ~ん。お待たせ~」

 のんびりした声と共にほたか先輩が現れる。先輩は前後に大きなカゴがついた自転車に乗っていた。

「荷物がいっぱい運べそうですね……。まさか、自転車でもトレーニングですか?」
「も~、ましろちゃん! お姉さんを何だと思ってるの? お買い物に便利だからに決まってるよぉ」
「そ、そうですよね! ちょっと安心しました!」
「今日は休息日だから、さすがに無理しないよぉ」

 休息日とは、きっと負荷をかけた筋肉を休ませる日のことなんだろう。

「今日は……っていうことは、自転車トレーニング自体はやってるんですね……」

 ほたか先輩は、やっぱり期待を裏切らない人だった。
 ここまでこだわりのある生き方を貫いていると、清々しくなってくる。
 何はともあれ先輩と無事に合流できたので、私も自転車にまたがってペダルに足を置く。

 すると突然、ほたか先輩が遠くの人影に向かって手を振り始めた。
 先輩の視線を追うと、その先にはなんと剱さんが歩いているのだった。

「な……なんで剱さんも来るんですかぁ!」
「お姉さんが声をかけたんだよ~。部活に顔を出してくれないから、寂しくなっちゃったの」
「あうぅ……」

 私がほたか先輩の後ろに隠れて警戒していると、剱さんはムッとしたように眉間にしわを寄せた。

「ア、アタシが来ちゃ、悪いかよ。買い物だろ? ちょうど必要なものがあったんだよ」

 そう言って、剱さんは足を前に突き出す。
 その足には革製のゴツイ靴が身につけられていた。
 靴は渋みのある茶色で、一見しただけで、しっかりと使い込まれたものだとわかる。

美嶺みれいちゃん、もう登山靴を持ってたんだね!」
「親の趣味に付き合いがてらって感じっすけど」
「革とは渋いねえ……。お手入れが大変でしょう?」
「まあ。ちょうどワックスと目止め剤シームグリップが切れてたんで、買いたかったんすよ」

 ほたか先輩は感心するように剱さんの靴を見つめている。
 私の素人目にもかなり本格的な靴に見えるし、親の趣味という話も出ていたし、剱さんは意外にも登山のサラブレッドなのかもしれない。

「美嶺ちゃんも合流できたし、出発だよ! 浜山公園通りまで行くけど、大丈夫?」

 その言葉を受けて、私は頭の中で地図を広げる。浜山公園通りというと、今いる学校から五、六キロぐらいは離れていると思う。そのあたりには大きなショッピングモールがあるので、目的のお店もその中にあるのだろう。
 すると、剱さんがいぶかしげな表情をした。

「遠いじゃないですか。駅前の通りの山道具屋のほうが近いっすよ」
「えっと……。……。そんなところにお店があったっけ?」

 ほたか先輩は聞き返したけど、私は妙な間があったことを見逃さなかった。
 剱さん自身はその違和感に気が付いていないようで、かまわず行き先変更を主張する。

「ほら、結構前からあるじゃないですか。その店のほうが近いし、店員の対応もいいし、オススメっすよ」
「お姉さん、今日は遠くまで走りたいなー」
「アタシ、自転車を持ってないんすよ。近いほうに行きましょう」

 剱さんは押しが強い。ほたか先輩を問答無用で説き伏せてしまった。
 結局は近いほうのお店に行くことになったけど、ほたか先輩はそこに行くのを避けてるような気がする。
 変なお店なんだろうか。
 剱さんがオススメするというから、怖いお店なのかもしれない。

 空はこんなにいい天気なのに、私の心はたちまち暗雲が立ち込めてくるのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~

楠富 つかさ
恋愛
 中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。  佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。  「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」  放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。  ――けれど、佑奈は思う。 「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」  特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。  放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。 4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編7が完結しました!(2026.1.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる

九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。 ※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。

処理中です...