バックパックガールズ ~孤独なオタク少女は学園一の美少女たちの心を癒し、登山部で甘々な百合ハーレムの姫となる~

宮城こはく

文字の大きさ
23 / 133
第二章「陰になり日向になり」

第七話「店員さんの、そふとたっち」

しおりを挟む
「ひゃぅんっ」

 自分の口から、思いもよらない変な声が出てしまった。
 これまでの人生で靴を色々と選んできたけど、今までの靴選びでは一度も感じたことのない感触が足全体を刺激していた。

 銀髪の店員さんの指が、私の素足を包み込んでいたのだ。
 白くて細い指が私の足をくまなく撫でまわしている。

「あうぅ? な、なにをしてるんですかぁ?」
「ご、ごめんなさいっ! くすぐったかったのですか?」
「くすぐったくは……ありますけど。……な、なぜ触るんでしょう?」
「足の形を計っているのですっ! 足は長さばかりが重視されるのですが、足の幅や甲の高さ、指の形まで人それぞれなのです。足に合っていない靴で山に登ると、靴擦くつずれやつま先を痛める原因にもなるですし、疲れも全然違うのですよ」
「な、なるほど……。でも、触るのって普通なんですかぁ?」

 私の心臓はさっきから激しく高鳴り続けている。
 靴選びなのに足を触られてビックリしたのは当然だけど、まさかこんな可愛い店員さんの指で触られるとは思ってもみなかったのだ。
 私なんかの足にこんなきれいな指が触れるなんて、なんて背徳感なんだろう。

「実は、触ると正確な形がわかるのが特技なのです。足に合うメーカーを絞り込むのにとても便利で……。あの、勝手に触れて、ごめんなさい」

 店員さんはとても申し訳なさそうに委縮いしゅくして、手を引っ込めてしまう。
 私は慌てて引き止めた。

「大丈夫です! 触ってください……じゃなかった。計ってください!」

 ついつい本音が出てしまって、私は自分の口をふさぐ。
 店員さんは私の言い間違いに気が付いてないようで、再びそのきれいな指で触れてくれた。
 足全体を両手で包み込んでくれたと思えば、土踏まずや足の甲に指先を滑らせる。果ては足の指一本一本を丁寧につまんでくれた。
 気持ちよさと背徳感で興奮しすぎて、私の頭はオーバーヒート寸前になる。
 しばらくすると、店員さんは確信を得たようにコクリとうなづいた。

「足の形が分かったのです。甲が高くて幅も広め。メーカーとしてはシリオ、マムート、モンベル、キャラバンあたりが足に合うと思うのです」
「あぅぅ……。そうですか……」

 たくさんの横文字が一度に並び、放心状態の私の頭では処理しきれない。
 覚えられなかったので、むしろ見た目で気に入った靴が店員さんオススメのメーカーと一致するのかを確認したほうが早いのかもしれない。

「あ、ちなみにお客様が登山初心者だと考えると、歩きなれていない分、硬すぎる靴は避けたほうがよいと思うのです。革靴はお山に慣れてからにするのですよ」
「革靴は上級者向け……。あう。わかりました……」

 私はふわふわとした幸福感に包まれたまま、立ち上がることすらできなくなってしまった。
 店員さんのきれいな指を見るだけで、頭の中では千景さんの姿がちらついてしまう。

「だ、大丈夫なのですか?」
「す、すみません。大丈夫ですよ、ちか……」

 千景さんのことを考えていたせいで、千景さんの名前を呼ぼうとしてしまった。
 その名前を最後まで言わなかったのは、目の前の店員さんが驚いたように止まってしまったからだ。
 そして、少し離れた場所ではほたか先輩もまた、硬直していた。
 私は、何かまずいことを言ってしまったのだと察した。

「ちか……ちか……くに、トイレはありますか?」

 とっさに適当な言葉を続けると、再び時間が動き始めたように店員さんとほたか先輩が息を吹き返した。
 店員さんはトイレのほうを指さして教えてくれると、そのまま隠れるようにどこかに立ち去ってしまう。
 その小さな背中を見つめながら、放心していた私の脳が急速に動き出した。

(「ちか」って言葉に反応するのって、怪しい……。あの店員さん、絶対に千景ちかげさんだよ!)

 私は裸足のまま、どこかに行ってしまった店員さんを探す。
 すると、ほたか先輩が両腕いっぱいに赤色の登山靴を抱えて駆け寄ってきた。

「ねぇねぇ、ましろちゃん! 早く選ぼうよ! 靴下履いて!」

 ほたか先輩は明らかに慌てている。
 早く靴を選んで、さっさとこの店を出てほしいみたいだ。

「……さっきの店員さんって、千景さんですか?」

 私が単刀直入に尋ねると、先輩は急に震えだした。

「なな、なに言ってるのかなぁ? ぜぜぜんぜん違うよ!」
「動揺しまくってるじゃないですか……」

 ほたか先輩の反応を見るだけで、答えは明確だった。
 銀髪の店員さんは千景さんなのだ。
 私の目は、どうしても店内のどこかにいる千景さんを探してしまう。
 すると突然、ほたか先輩は私の両肩を掴み、壁際に押し付けた。
 私の視線を塞ぐように迫ってきて、私を見つめる。

「ほ、ほたか先輩?」

 私が驚いて目を丸くしていると、ほたか先輩は私が背にしている壁にドンという音と共に手を突いた。

「こ、これは怒ってるとかじゃないんだよ。か、壁ドンごっこをしたくなっちゃっただけなの」
「壁ドンの用法を間違ってますよ! 本来の壁ドンはうるさい隣人を黙らせるために壁を叩く行為でして……」
「えええ~。そ、そうなの? お姉さん、ちょっと壁ドンに憧れてたのに……」
「憧れてたんですか? でもこの状態だと、ほたか先輩が男役ですよ?」
「え? 何かお姉さん、変だった?」
「間違ってないんですか!」

 突然の男役宣言。それは同時に、私と先輩のカップリングまでも宣言されているも同然だった。
 私は愛を告白されたような気分になってしまい、ほたか先輩の瞳をまともに見ることが出来なくなってきた。
 私が動揺していることに気が付いてくれたのか、ほたか先輩はちょっと恥ずかしそうに頬を赤らめる。

「ご、ごめんね……。話が脱線しちゃってたみたい!」

 ほたか先輩は私に迫ったままの姿勢で囁くようにつぶやいた。

「あのね、こっそりお話がしたいことがあるの。……聞いてくれるかな?」

 ほたか先輩は今までに見せたことのないような圧倒的な威圧感を放っている。
 私は無言で、ただ首を縦に振ることしかできなかった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~

楠富 つかさ
恋愛
 中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。  佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。  「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」  放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。  ――けれど、佑奈は思う。 「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」  特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。  放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。 4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編7が完結しました!(2026.1.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる

九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。 ※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。

処理中です...