バックパックガールズ ~孤独なオタク少女は学園一の美少女たちの心を癒し、登山部で甘々な百合ハーレムの姫となる~

宮城こはく

文字の大きさ
37 / 133
第二章「陰になり日向になり」

第二十一話「素顔のままで」

しおりを挟む
 道具の山の下敷きになっていた百合香さんを無事に救助した頃。
 銀髪のままの千景さんが私を見上げて微笑んだ。

「安心しましたのです」

 唐突に投げかけられた言葉の意味が解らず、私は戸惑ってしまう。

「えっと……。私がなにか……?」
「ましろさんが自分の絵をきちんと認めていたのだと分かって、安心したのです。……ましろさんは絵を見せてくれたとき、とても恥ずかしそうにしてました。……その時、ましろさんもボクのように、自分の絵を恥ずかしい嫌いな物と思っているのではないかと、心配してたのです」

 その言葉を聞いて、私の心が震えた。
 千景さんは自分自身が大変な状況にあったのに、私のことも気にかけてくれてたのだ。

「……そんな。わざわざ私のことを心配してくれてたなんて……」
「……あんな魅力的な絵を描けるということは、とてもたくさんの時間と想いを費やしていたに決まっているのです。だから、ましろさんが自分の絵を大切に思っていてくれて……とても、安心したのです」

 そう言って、千景さんはにっこりと笑ってくれた。

「千景……さん……」

 目の前の少女は、まるで後光がさしているように見える。
 千景さんの微笑みに、私の心は高鳴り、震え続けた。
 ……この感覚は、かつて小桃ちゃんに救われたときの気持ちと同じ。
 言葉は違えど、千景さんは小桃ちゃんと同じことを言ってくれたのだ。

 
 私は自分が嫌われてもいいと思えるほど、千景さんを救いたかった。
 でも、同時に違和感を覚えていた。
 「救う」だなんて、そんなおこがましいことを私がしていいのだろうか。
 だって、それはちっとも公平じゃない。
 私はどっちが上とか下とか考えたくなかったのだ……。


 だから、なおのこと千景さんの言葉はうれしかった。
 千景さんも私を救ってくれていたんだ。

 もう、こうなっては想いを心にとどめることなんて、できるはずがなかった。
 想いは言葉となり、私の中から飛び出していく。

「わ、私と……友達になってください!」

 ……友達。
 それは私にとって、とても大事な、特別な存在。
 本当に心から友達と呼べる人は、そう何人もいない。
 こんな気持ちは重過ぎるって自分でも分かってるし、相手に押し付ける気なんてサラサラない。

 ……でも、もう我慢できなかったのだ。


 私は答えを待つ。


 ……答えを待つ。


 でも、いつまでも千景さんの言葉はなかった。
 千景さんの表情を伺うように覗くと、千景さんは床を見つめてうつむいている。
 最悪の想像が心を駆け巡り、とても平穏ではいられなくなってしまう。

「……先輩と後輩で友達なんて、変……でしょうか?」

 そう尋ねるのがやっとだった。
 学年が違うから友達になるのは変。
 ……そう言う理由なら、なんとか自分を納得させられる気がした。

 その時、千景さんがぽつりぽつりと呟くように話し始めた。

「ましろさんはボクのことを、すごいと言ってくれたのです。……でも、すごいなんて、すぐにはどうしても思えません。ヒカリはまだまだ必要で、このウィッグはまだ手放せないのです。千景はヒカリの影に隠れていないと何もできない、ダメな奴なのです」

 千景さんの沈黙は拒絶の言葉ではなかった。
 私の言葉を静かに噛みしめてくれていたのだ。
 そして同時に、人が変わる難しさを伝えてくれてもいた。

「あぅぅ……。そんなにダメって、言わないでください……」

 そう懇願した時、千景さんの表情に光が灯った。
 頑なに着け続けていた銀髪のウィッグを、千景さんは自らの手でそっと取り去る。

「でも、ましろさんになら見せられます。……特別でもなんでもない、ただの千景を。……そこに歳の差なんて、ないのです」



 千景さんは、とてもうれしそうに微笑み、手を差し伸べてくれた。

「ボクの友達に……なってください」


 その恥ずかしそうに微笑む千景さんを、私はきっと忘れない。

 千景さんに初めて会ったのは、部活を嫌がって先生から逃げ続けていたあの昼休み。
 一方的にぶつかったりして迷惑をかけた私なのに、思いやりのある声をかけてくれた。
 思えば、あの時から千景さんの素顔に魅了されっぱなしだった。
 
 私よりもひとつ年上の女の子。
 私を登山部に誘ってくれたの仲間。

 そして……大切な友達。


 これから大会が始まって、たくさんの大変なことがあるかもしれない。
 でも千景さんが見せてくれた素顔の笑顔を思い出せば、どんなことだって乗り越えられる気がする。

「よろしく……お願いします」

 私は満面の笑みを浮かべ、差し伸べられた千景さんのきれいな手を包み込むように握りしめた。



 第二章「陰になり日向になり」 完
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~

楠富 つかさ
恋愛
 中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。  佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。  「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」  放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。  ――けれど、佑奈は思う。 「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」  特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。  放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。 4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編7が完結しました!(2026.1.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる

九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。 ※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。

処理中です...