バックパックガールズ ~孤独なオタク少女は学園一の美少女たちの心を癒し、登山部で甘々な百合ハーレムの姫となる~

宮城こはく

文字の大きさ
49 / 133
第三章「ペンは剱より強し」

第十二話「ペグ打ちは大事です」

しおりを挟む
 遊んでいるうちに、いつの間にか日が傾きつつあった。
 腕時計を見ると、もう午後四時になっている!
 キャンプ場に来たのに、遊具で遊んでばかりだった。

「ほたか先輩……。ぼんやりしてたら、もうこんな時間に……」
「大丈夫だよぉ~。ここに着いたのだって一時間ぐらい前だし、今からテントを張っておけば夕ご飯にも間に合うよっ」
「あう? 今日は登山をしないんですか?」
「今回のキャンプはテントの張り方と料理の予行練習が目的だからねっ! 登山は明日、テントを片付けてから北山に登ろうと思うんだ~」

 ほたか先輩は笑いながら、ザックから大きな袋をいくつも取り出す。
 その袋は確か、部室で準備していた時に見たことのあるテントの袋だった。

「じゃあ、さっそくテントを張ってみよっか!」



 ほたか先輩は黒いシートを手に持って、テントサイトの中央に広げる。

「場所を決めるよ~。このシートはグランドシートって言ってね。テントの下に敷いておくと地面からの湿気も防いでくれるし、テントの床も守ってくれるの」

 すると、つるぎさんは端っこにある流し台の近くに立って、ほたか先輩を呼んだ。

「料理することも考えると、流し台の近くに入り口を向けるのがよさそうっすよ」
美嶺みれいちゃん、なんか慣れてるね!」
「まあ。親がキャンプ好きなんで……」

 地面に広げられたグランドシートの上に、折りたたまれた大きなシートのような物や金属の棒が並べられていく。
 大きなシートはテント本体に違いない。化学繊維の丈夫な布で、雨ガッパのような手触りだ。

「テントは黄色いんですね~。これはやっぱり、ほたか先輩の好きな色だからですか?」
「さすがにお姉さんの好みで選んだテントじゃないよぉ。このテントは何代も前の先輩が買ったものらしいの。……さすがにお姉さんも当時のことは知らないけど、きれいに使われてるから、お姉さんも大切に使いたいなって思ってるんだよ」
「そっか……、卒業した先輩たちの思い出も詰まってるってことなんですね。じゃあ、大切にしないとですね!」

 私はしみじみと思いふけりながら、金属の棒を手に取った。
 棒は筒状になっており、中を通っているゴム紐でいくつかの棒がつながっている。
 なんとなくヌンチャクのようだなって思いながら短い棒同士をつなげて組み立てていくと、合計で五本の長い棒が出来上がった。

「ほたか先輩。この棒をテントの穴に通していけばいいんでしょうか?」
「そうそう。通したら、端っこをテントの隅にある穴に固定するの。ポールがしなることでテントが膨らむんだよ」
「すべてのポールを……一気に固定するのが、大事」

 そう言いながら、千景ちかげさんは六か所ある角の一つに棒の端っこを固定している。

「なるほど、『棒』っていうよりも『ポール』って言ったほうがかっこいいですね! えっと、……この穴に差し込めばいいのかな?」

 私も千景さんのやり方を見ながら、ポールの先端の突起をテントの角にあるベルトの穴に差し込んでみる。

「みんなで一斉にポールを押し込むよ~。お姉さんの掛け声で押し込んでねっ」
「私のほうはいつでもオッケーです~」

 私は手元のポールがうまく固定されていることを確認し、返事をする。
 すると、いつの間にか剱さんが私の手元を覗き見るように、背後に寄り添っていた。

「って、剱さん? 私のほうは間に合ってるから、対角線のほうを固定してよぉ」
「す、すまん。うまくできてるか、心配でな」

 剱さんは慌てたように立ち上がり、言われるままに私の真向かいに移動していく。

「じゃあ、アタシが反対側を押し込むからさ。そっちのポールが外れないように押さえておいてくれ」
「うん……」
「な、なんか共同作業って感じだな」

 剱さんがよく分からないことを言って照れている。
 仲間とか絆が面倒くさいって言ってたのに、みんなでポールを差し込むだけでうれしいのだろうか。

「じゃあ行くよ~。いっせーの!」

 ほたか先輩の掛け声で一斉にポールを押し込むと、ポールが湾曲しながらテントを膨らませていった。
 さっきまでペタンコだったシートが、一気に立体物に変わっていく。
 そして、ちょうどお椀をさかさまにしたような丸い形のテントが出来上がった。

「なんか、丸くて可愛いですね! 黄色と銀色っていうところもきれいだし」

 テントの入り口に描かれているロゴには『スタードーム』と英語で書いてある。
 ポールを組み合わせた形が星に見えるからなのかもしれない。



「じゃあ、ペグを打って固定する人と、フライシートを固定する人に分かれよっか」

 そう言いながら、ほたか先輩はもう一枚のシートを地面に広げている。

「あ、もう一枚重ねるんですね」
「これはフライシートっていうの。……テントにとってのカッパのようなものなんだよ。防水はもちろんのこと、テントの中が結露けつろするのを防いでくれるの」
「どういうことですか?」

 私は興味津々しんしんでたずねる。
 すると、千景さんがテント本体の天井部分を指さした。

「ここ。天井は穴をあけて、メッシュだけにできる。……中から湿気が逃げてくれるし、フライシートをかぶせておけば、雨が入らずに、済む」
「へぇ~。かなり機能的にできてるんですね!」

 そう言うと、千景さんは嬉しそうにうなずいてくれる。
 さすがは道具屋さんの娘さん。道具を褒められるだけでも嬉しいのかもしれない。


 私たちが笑いあっていると、剱さんが間に割り込むようにやってきた。

「あの。次はペグを打つんすよね?」

 剱さんは何本もの金属の棒とプラスチックのハンマーを握っている。
 剱さんはその棒を何本も、強引に私の手に握らせた。
 その棒は、端っこがフックみたいに丸くなっている。

「これがペグ……? 地面にさすんでしょうか?」
「そうだよぉ~。ペグ打ちは大事な仕事だから、ましろちゃんに覚えてもらおっかな」
「……ペグを打たなかったせいで、テントを壊したお客さんが……いた」

 千景さんが深刻な顔でつぶやくと、剱さんも同意する。

「ペグを打たないまま強風にあおられると、テントに変な力が加わってポールが折れちゃうんすよね。地面にちゃんと固定してれば、こういうドーム型のテントはかなり風に強いはずなんすけど……」

 なんか、三人がかりで圧迫してくるので、ペグ打ちがすごく責任重大なことに思えてくる。

「あぅ。なんかプレッシャーですよぉ……」
「失敗したら、明日にはテントが壊れてるかもしれないぞぉ~」
「あはは、美嶺ちゃん……。このキャンプ場は林に囲まれてるし、そんなに強い風は吹かないから大丈夫だよぉ~」
「あぅぅ……。がんばります……」

 すると、剱さんが私の背中をバンと叩く。

「ははっ。アタシが手取り足取り教えるから、心配すんな!」

 そう言って、剱さんは歯を見せてニカッと笑った。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~

楠富 つかさ
恋愛
 中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。  佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。  「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」  放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。  ――けれど、佑奈は思う。 「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」  特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。  放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。 4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編7が完結しました!(2026.1.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる

九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。 ※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。

処理中です...