バックパックガールズ ~孤独なオタク少女は学園一の美少女たちの心を癒し、登山部で甘々な百合ハーレムの姫となる~

宮城こはく

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第六章「そして山百合は咲きこぼれる」

第八話「ほたかの告白」

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 なんとか女三瓶めさんべの頂上にたどり着いた時、私たちを迎えてくれたのは大きなコンクリートの施設だった。

「おっきな建物ですね! なんか、いっぱいアンテナが付いてる……」
「テレビとラジオの……中継基地」
「へぇ~! 山頂が見え始めてたときから、何だろうって思ってたんですよ~」

 白いコンクリートの建物からは鉄塔がにょきにょきと突き出しており、たくさんのキノコのようなパラボラアンテナが四方八方を向いている。
 建物には入れないようになっていたので、私たち登山隊は建物の脇を通って、頂上の広場に進んでいった。


 今日の目的地はこの頂上なので、お昼ごはんを食べた後はスタート地点まで戻るだけだ。
 一時間前の休憩と同じように、それぞれのチームは自由な場所に集まっている。


 後ろを振り返ると、ほたか先輩はおぼつかない足取りで私たちの後をついてきていた。
 バテているとはいえ、思い起こせば、朝からずっと言葉少なだったような気がする。

「ほたか先輩、もしかして体調が悪いですか?」
「……え? だ、大丈夫だよ。……大丈夫」
「嘘つかないでください。いつも見てるので、おかしいことぐらい、すぐわかります」

 そう。
 憧れの先輩の姿を、私はいつも追いかけている。
 いつも元気で明るくて……太陽のようなほたか先輩。
 重い荷物を軽々と背負い、少しも疲れた顔を見せない。
 いくら重い荷物が集中しているからといって、ここまでバテているのは何か原因があるに違いない。

「ひとまず、ザックを下ろせる場所に行きましょう。ほら、あのあたりは他に人もいませんし、ちょうどいいですよ!」

 私は広場の端っこを指さすと、ほたか先輩の手を握り、引っ張る。
 向かった人もいないので、ほたか先輩の話を聞くには絶好の場所だった。


 △ ▲ △ ▲ △


「実は……寝不足なの……」

 ザックを下ろして座り込んだほたか先輩は、ぽつりぽつりと話し始めた。

「みんなをマッチョにするわけにいかないって考えると、緊張して……眠れなかったの」

 マッチョ……。
 そう言えば、この大会で『素晴らしい成果』とやらを出せなければ、校長先生直々の特訓によって、私たちはムキムキマッチョの体に鍛え上げられてしまう運命だった。

 校長先生……。
 たぶん頑張らせようとしての発言だったかもしれないけど、逆効果じゃないですか……。
 ほたか先輩はプレッシャーで追い詰められていたようだ……。

「寝不足はきついっすよね。アタシもオールナイトでテレビを観てたら、翌日はフラフラで倒れたことがあるんすよ~」

 美嶺みれいは腕を組んで、しみじみと語る。
 テレビと言ってるけど、それはアニメに違いない。
 確かに面白い作品は見ると止まらなくなるから、その気持ちは分かる……。
 私だって徹夜でアニメを観たことは何度もあるし、翌日なんてフラフラで、まったく何もできなかった。

「寝不足だったのなら、朝から体調が悪かったわけですよね? なのに、どうしてあんなに重い荷物を持ってたんですか? 出発前でも分担できたのに……」
「それは……みんなに負担をかけたくなくて……」

 ほたか先輩は小さく縮こまりながらつぶやく。
 それを見て、美嶺は困ったように頭をかき始めた。

「アタシがパワーあるの、知ってるじゃないすか」
「もちろん分かってるけど……。でも、美嶺ちゃんは初めての大会だし、楽しめるように部長のお姉さんが頑張らなくっちゃって思って……」
「だからっすか……。なんか軽いなって思ってたんすよ」

 すると、千景さんは座っているほたか先輩の前に立った。
 ……なんか、普段は見せないような迫力がある。

「ほたかは……抱え込みすぎ。記録と読図どくず、それに装備。ボクがやるっていうことも、ほたかが抱え込んでしまう」
「だって、お姉さんは部長だから……!」
「ボクは副部長。……ちゃんと頼って」

 珍しく千景さんが怒っている。
 でも、その気持ちはよく分かった。
 千景さんは副部長なのに、ほたか先輩は千景さんを守る対象と考えているフシがある。
 同じ二年生なのに対等と思われていないなんて、千景さんとしても残念なのだろう。
 それなのにプレッシャーで寝不足になってるのだから、千景さんが怒るのも無理はない。

 大会を前にして眠れなくなるのだから、ほたか先輩にとって部長であることは重荷に違いなかった。
 よく考えれば、まだ二年生なのだ。
 たとえば私が来年になって部長をやれと言われたら、どんなに不安になるだろう。
 陽彩ひいろさんも、ほたか先輩に部長を押し付けることになって後悔していた。
 あの厳しそうな校長先生とやり取りするなんて、私だったら暴走してとんでもないことをしてしまいそうだ……。

 ほたか先輩は、きっと自分を奮い立たせるために『ちゃんとした部長』を演じようとしているのかもしれない。
 でも、そのせいで山を楽しめないなんて本末転倒だ。


 私はほたか先輩の前にしゃがみ込み、その眼を見つめた。

「ほたか先輩。自分のことを『お姉さん』っていうの……やめにしませんか?」
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