幼馴染みが、知り合いになった夜 短編集

久遠 れんり

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春は別れと出会いの季節

第3話 似た者同士のすれ違い

「今回、お前が大学に落ちたのは、良い機会だと思うんだ」
 近所で本当に偶然、玖瑠美に出会った。

 ひどくやつれた顔だったのだが、俺を見た瞬間明るくなる。
「ねえ、いつ帰ってきたの? いつまで居る? 遊びに行こう」
 冬のゴタゴタなど、なかったかのようにたたみかけてくる。

「勉強しなくていいのか?」
「しているもん。毎日血反吐を吐き、のた打ちながら……」
 いきなり顔が暗くなる。

「だから、一日くらい良いじゃない」
 そう言って腕を引っ張られる。

「だめだ。おばさんにも言われているし」
「なんて?」
「遊びの誘いが来ても切れと」
「うわ。ひどっ。娘に対する信用がないわ」
「落ちたからな」
「はうっ」
 そう言って胸を押さえて蹲る。

 このノリも久しぶりだ。
 そうだよ。こいつと居ると気楽なんだよ。
 女の子という感じも全然ないし。


 玖瑠美はこの所ずっと、毎日血反吐を吐き、のたうちながらしていたのは勉強ではなく、怜二のこと。

 年明けの噂。
 思い出したのは、従兄弟のお兄ちゃんと買い物に行ったときのこと。
 正月にあったときに、荷物持ちをしてもらうことをお願いをして一緒に出かけた。
 写真を実際に見ればすぐに反論が出来たし、大したことがないから記憶にも残っていなかった。

 誰かに見られて、それが悪用されて噂となり、怜二を傷つけた。
 傷つくということは、私のことが好きだろうと言う事でもある。
 心の中はどうしよう、どうにかしなきゃ。それ一択だが、考えれば考えるほど連絡が取りにくい。
 どうしたって、言い訳にしかならないからだ。

 言えば、怜二はそれだけで安心したかもしれない。
 似たような性格と、相手が大事なあまり、空回りをして行く。

 ここで会ったのは神の導き。
 彼女はそう思い、必死で遊びに行こうとする。
 だが、母親まで敵に回るとは思わなかった。


 その時、怜二が思い出していたのは恭子のこと。
「感動をして、ついしちゃった。でも、気にしないで」
 彼女はそう言ったのだが、現在進行形で気にしている。
 本当に軽いキスとハグ。

 あれからずっとなつかれている。
 まだ付き合うとかそんな感じではないのだが、三度会えば気になり始めるのが年頃の男女。

 この関係をどうするのか思案中で、ぐだぐだしていた。

 それに…… 玖瑠美に対する引け目。
 正式に付き合っている訳でもないし、浮気ではないのだが、かといって彼女にあの出来事をしゃべれるかと言えば、そんな事も出来ない。
 後ろめたさがガンガンにある。

 そのため、ぐいぐい来る玖瑠美となるべく避けたい怜二。
 禁断の言葉を使ってしまう。

「俺が居ると勉強が出来ないようだな。少し…… 距離を置こう。今回、お前が大学に落ちたのは、良い機会だと思うんだ」
 それを聞いてショックを受ける玖瑠美。
 だが実際、現在進行形で、遊びに行こうと誘っている立場。
「だっ、ダイジョウブだから、ねえ。ちょっとだけ、いいでしょ。行こう」
「まだ言うか? 杏子きょうこさんにチクるぞ」
 その言葉に、彼女の顔が引きつる。

「ひっ、ひきょうものぉ。なんでお母さんが出てくるのよ」
「頼まれたから」
「ぐっ…… 判ったわよ。勉強すれば良いんでしょ」
「うん」

 こうして、玖瑠美は敗退をした。

 だが我慢が出来ない玖瑠美は、後日、愚かにも大学へ様子を見に行って驚愕の光景を目にする。

「なによあれ。どう見ても恋人同士じゃない」
 ショックを受けてふらふらと家へと帰る。
 予備校の授業は当然すっぽかした。

 それから三日泣き暮らし、母親に蹴り起こされて、腫れた目で予備校へと行く。
「行かないならバイトをして、予備校代を返しなさい。あのお金があればどれだけ生活費の助けになるのか判る? 一人につきエビフライが三本になって、ソーセージも追加されるのよ」
 ビシッと言われて、のろのろと起き上がる。

 スマホのメッセージも結局送れずに、書いては消してを何度繰り返したのか判らない。

「うー。怜二のバカ。よりによってあんな子と……」
 同級生だったのだから、相手がどういう人間か知っている。
 女の子同士だと、常にマウントを取ってくるいやな奴。

 自分は賢い、自分は何でも知っている。
 それをひけらかす。

 男の子相手だと、そんなの知らなかったぁ。○○君て物知りぃ。
 そんな奴なのだよ。

「はぁ…… 何で落ちたかなぁ……」
 そうして予備校に通う日々が復活をする。

 だがテストの度にクラスが落ちていく。
 国立AからFまで……
 残りは私立の中ランクと低ランクしかない。
 
「ああ、やばいわ……」
 このクラスになると、授業という授業はなく、復習という名の小テストが繰り返される授業。
 そう、高校時代どころか中学生の問題を取り混ぜて、前期はひたすらテスト。自分の分からないところを見つけて夜な夜な各自で勉強。後期もひたすらテストを行うらしい。 
 教える気がないようだ……

「ああ…… 駄目だ……」
「うん? どうした」
 知り合いの先輩が声をかけてくる。
 こんな所にも先輩がいた。

 美術部という名の漫研。
 古野ふるの好海このみ先輩は須玖すぐ 乃理のり先輩と共に親に言われて経済へと通い出したが、美術科のある大学を受けてみることにした様だ。

 古野先輩は、簡単に説明をすると、雨で困っていたときに、「これをつかえ」と言って、スペースコ○ラのサイコ○ンを渡してくる人だ。
 形は似てるんだけどね、隠し設定で傘になるかと思ったのだが、ならなかった。
 後日返しに行くと、彼女も素で傘と間違えたようだ。
 だがなぜそれを持っていたのか、未だに聞けていない。
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