幼馴染みが、知り合いになった夜 短編集

久遠 れんり

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幼馴染みの正体を知ったとき

第3話 さようなら

「じゃあ、まあ。そういう事で良いな」
「良いだろ。もう未練もない…… というか、皆の話を聞いて完全に冷めたぜ」
「俺もそうだな」
 それは会合が終わったときの確認。


 ―― ある希望を胸に、俺は人を集めた。
 元カレが一人。
 元カレが二人……
 元カレが沢山……
 うーん。あいつは何をしているんだ?

 伝手から伝手をたぐり、あいつの元カレが集まってくる。
 短い奴は数時間。
 長い奴でも二週間。

 初めてのキスの相手、初めてのエッチの相手。
 時系列で暴露大会が行われて、その年表を作りながら軽く落ち込む。
 エッチまでしていたなんて……

 それなのに、俺には文句を言う。
 許せないよりも、やるせなさが俺の心を塗りつぶしていく。

「そんでさあ、別れた後に次の彼女が出来たんだよ」
「あー、よかったねぇ。そんで」
 感情の無い平らな声で聞き返す。

「冷てえな。まあいい。そうしたら、たらしだとか、物がショボいとか色々噂が流れてさ」
「ショボいのか?」
「そこに食いつくな。まあ粗品だけどな」
「同士よ」
 なんかグループ内で、不思議な友情が生まれる。
 いままで、見知っていた者も関わりの無かった者もここに集まる。
 おもしろいのは、顔とか性格が意外と似かよっている。

 だから話していると、以外と話しが合う。

「まあ、まとめると別れた後、あいつはうざいと」
「そうだな。証拠はないんだが、必ず噂が出てくるならあいつが犯人だろ」
「許せないな」
「目には目かな」
「なんだ? 犯罪は嫌だぞ」
「犯罪じゃ無いさ、あいつに関する噂を流す。俺達が同時にな」
「そんな物効くのか? 無視されたら同じだろ」
「同時多発的に、別の所から出る同様の噂は、人間、意外と信じるんだよ。みんなが言っているなら本当かなってな」
「そうなのか?」

 俺達は歩実の反応をモニターしながら囁き始める。

 懲りずに付き合いはじめた男。
 皆で突撃をする。
「よう兄弟」
「なんだおまえら?」
「中平 歩実の○兄弟兼、被害者の会だ」
「○兄弟?」
「あいつとしたんじゃ無いのか?」
「まだ…… そんな所までは……」
 そいつはもじもじとしながら、そんな答えを返す。
 当然しっているのだが言わない。

「これが年表だ。君の名前を記そう」
 年表に記載される新たな名前。
「なんだこれ?」
「あいつの恋愛年表。最短で数時間、最長で二週間だな」
 呆然としている男に、皆が別れるパターンを説明をする。

「そうそう、いきなり始まるんだよな」
「ああ、ファミレスは嫌だとか、趣味が悪いとか色々な」
「そして、我慢をしていたんだけどさって言うのも定番だよな」
「そうそう。最初は嬉しいとか言っているんだけどな。あれって地味に効くよな」
「ああ」
「それで友達とかに愚痴り始めてな」
「そうだよ。俺には折角遊ぼうと思ったのにぃ。私より友達の方が大事なんだとか言い出してなぁ」
「そうそう」
 新たな仲間の前で、また愚痴の言い合いが始める。
 奇妙な連帯感の中で、皆が楽しそうだ。

 こうして、お友達の輪は広がりを見せて、学校内には三学年とも歩実の相手をする人間は居なくなった。

 そこへ行き着くまでは、俺は頭を撫でて良々を行っていたのだが、俺は決別をする。

「どうしたの? 何で機嫌が悪いの?」
 この時まで、歩実は自分が悪いと思っていなかったし、俺は絶対ずっとそばにいると思っていたようだ。

 クラスが違うため俺と歩実は廊下で喋っていた。
「まあ良いや。もう家に来ないでくれ」
「何でそんな事を言うの? もしかして誰かに何かを言われたの? 最近なんか悪口が流れていて困っているのよ。皆嘘ばっかり」
 そう、そもそも、白い目のおかげで教室に居ずらくなり、今現在俺を呼び出しているのだから。

「嘘?」
「そう。嘘ばっかり」
「嘘ばっかりはお前だろう?」
「違うわよ、龍ちゃんまでそんな事を言うの?」
「だけど皆がそう言っているしなぁ」
「みんな?」
「皆ってだれよ」
 俺は合図を送る。

 ざわざわしながら往来をしていた生徒達。
 その動きがピタッと止まる。

 無言で皆が集まってくる。

「ひっなに?」
 周りを囲う連中は見たことのある連中ばかり。
 被害者の会だ。

 歩実の顔が引きつる。
「悪いのはおまえだあぁ」
「いやあぁぁ」
 頭を抱えてしゃがみ込む。

「ほら、みんなが言っているだろう」
「そんな何で?」
「お前の性格が悪いからだ」
 なんかそれをきっかけで、苦情の言い上げが始まってしまう。
 それは、ベルの鳴るまでの五分間きっちり続き、いきなり解散をする。

 休み時間ごとに、それは繰り返される。
 流石に放課後になると逃げるように帰って行ったらしい。

 スマホの着信は当然拒否。

 翌日から、歩実は来なくなった。

「昨日の放課後、あの子漏らしていたわよ」
「そうなのか?」
「まあ、休み時間ずっと、皆に囲まれていたからな」

 俺の横で嬉しそうな顔をするのは、大西おおにし那美なみ
 志帆のことで落ち込んでいた俺を慰めてくれた。

 今回の追い込み漁の大枠は彼女の発案だ。
 個人で何かをするのではなく、周りを巻き込んで何とかする。
 その方が個人的な恨みとかを買いにくい。

 歩実の様なタイプは、ストーカーとかになりやすいらしい。
 嘘か本当かは知らないが、あれからは歩実からの連絡が無いし、その内引っ越して行った。

「終わったのね」
「そうだな」
 夕日を眺めながら彼女は言った。
 俺は告白をしようと腹を決める。

 彼女に向き直ると、横に彼女の姿は無く、笑顔で「さようなら」そう言って俺に手を振ると、廊下へと飛び出していく。
 さっきの言葉はきっと挨拶。
 だがその後の光景。
 それはクリティカルに俺にとどめを刺す。

 彼女が抱きついた男。
「あいつ、被害者の会に居たメンバー」
 彼女は彼のために俺に目を付けて、手の平の上でコロコロと転がしてコントロールを行い、歩実を追いだした。

 俺は道化師だったようだ。
「ふっ。夕日が目に染みるぜ。いやにキツい赤は黄砂のせいかな…… そう…… 本気なんかじゃ無いさ」
 本気だった思いを、言い訳で覆い隠して、彼女への気持ちを、すべてなかったことにする。
 その日は泣きながら家へと帰った……

 木村きむら 龍一りゅういち十七歳の春。
 失恋ばかりが積み上がる。



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お読みくださりありがとうございます。
幼馴染みが、双方向で撃沈する話しでした。
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