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第二章 幼少期
第14話 防衛
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様子を見ていた探索者達だが、あまりのひどさに声をかける。
「おい突っ込むな。周りからの攻撃が出来ない」
だが、完全に無視である。
彼らはスキル持ち。
そして、その混乱状態に他の隊が拍車をかける。
考えもなく持ち場を離れて、余所の軍が雪崩れ込んでくる。
そう、ダンジョンを中心に壁が造られているが、そんなに広いわけではない。
そもそも、そこに千人を超える数を配置するのも問題だが、仕方が無い。
だが、迎え撃つわけではなく、我先にと押し寄せる兵達。
当然だが、現場は混乱中。
「駄目だこれは」
探索者達は壁から出ようとするが、当然のように防壁がしまっている。
上から覗いている兵に声をかけて、出してくれるように願う探索者達だが……
「上からの命令だ。だすことは出来ん」
「だよな」
まあ当然かと、諦める。
仕方が無いので、彼らは壁沿いに回り込み、ダンジョンの裏側へと移動する。
するとそこは別世界。
表側の混乱とは違い、のんびりとバーベキューがされていた。
隊長である貴族も、楽しそうにぱくついている。
「おう。その格好は、探索者だね。まあこっちへ来なさい。一緒に食べよう」
そう言って、和やかに男爵が誘う。
「はあ。ありがとうございます。表はすごいことになっていますが、落ち着いていて、いいんですか?」
「いいだろう。さっき少し見たが、あんな混戦にして、下手に近寄れば同士撃ちになる」
「そりゃまあ。そうですが」
そう答えながら、座り込む。
「おっ来たぞ」
声がして、男爵が指をさす方向を見ると、逃げてきたウルフが一匹。
次の瞬間には、走ってきた勢いのまま倒れ込む。途中に自らの首を落として……
「はっ?」
「えっ?」
「なっ?」
探索者チーム『ドラゴンダンジョンの守人』の面々は、何が起こったのか判らない。彼らは一応金級なのだが……
「吊るしておけ。血が残ると、肉が匂うからな」
「はーい」
十歳くらいの子供達が走って行く。
よく見れば、この兵達。武装していない若い子が結構いる。
実は、兵達は領兵で、元々恐れられていたシュワード伯爵家の面々。
今回は、預かっている坊ちゃん嬢ちゃんが出ると聞いて、大丈夫なのかと少し警戒をしていた。
だが来る途中に、出てくるモンスターや、盗賊達。
顔色を変えることなく、あっという間に退治をしてしまう。
確かにスキル持ちもいる。だが、その動きは常人では無かった。
まだ、新たなる修行を始めて数ヶ月で、その動きは変わったようだ。
無論。お守りだという意識は、兵達からすぐに消えた。
そして、優秀な彼らは、小さな事には拘らず教えを請う。
本格的な訓練は、領へ戻ってからだが、魔力操作と身体強化は習う。
そして効果を実感して、いまの状態。
そうこの氾濫以降、武の名門貴族シュワード伯爵家は、さらに化け物軍団へと変わっていく。
彼らは言う。
「スキルのあり無しに拘るから弱いのさ。力は力、そこに差は無い」
その言葉を実践して、王国でその立場を強固にして行く。
今はまだまだだが……
そうしていると、表の方で叫び声と、「ブモー」という、いやな雄叫びが聞こえる。
銀級の探索者チーム『落伍者の足掻き』に散々いたぶられ、怒り狂ったミノタウルスがやって来たようだ。
それに、追われる形で、ウルフ系や鹿系モンスターが現れて、ガンガンに攻撃をされる。
いい加減混乱をしていた現場は、もう騒然といえる状況。
人混みを抜け、裏に回るモンスターは瞬殺されていたが。
ちびっ子に……
『ドラゴンダンジョンの守人』のメンバーは、目を丸くする。
兵達は、コンロ脇から離れず、肉を喰らっている。
ちびっ子は、これまた七歳くらいのちびっ子に指図されて、的確に対応し倒していく。
彼らは、ただ呆然と、それを眺めていた。
金級の彼らから見ても異常。
「なんだ、あの子達」
「絶対、俺達より強えぞ」
こそこそと、話し合う。
そんな所に、モンスターではなく、余所の兵達が走り込んでくる。
モンスターに追われて、逃げているようだ。
それを見て男爵は言う。
「貴殿らは何処の兵だ。逃げるな。持ち場へ戻れ」
かれは串に刺さった、肉を持ちながら……
さらに、もぎゅもぎゅと咀嚼中。
そんなおかしな状況だが、その兵達の後ろから「ぶもぉぉ」と聞こえ、身長三メートル近い体躯と、角が見える。
だがそれと兵との間に、角を光らせた鹿系モンスターアクリス。
ヘラジカに似たモンスターで、かなり凶悪だ。
炎や雷が、容赦なく兵達を襲う。
「助けてくれぇ」
それを見て、ちびっ子達が助けに向かう。
モンスターが、魔法を発動するむきを、頭の方向で判断をして、素早く近寄ると、首筋を切りつける。
血抜きをするには、生かしておいた方が良いと、さっき言っていたが、それを実践しているようだ。
だが、ミノタウルスには、ナイフが効かず、逆に跳ね飛ばされたようだ。
「ヴィル、レノーイ」
飛ばされた男の子に、一人の男の子が向かう。
一人の男の子は腕が折れていたはずなのに、魔法の光と共にすぐに治ってしまう。
「あの光は? 癒やしの光?」
「まさか……」
驚いていると、その男の子。いきなり雰囲気が変わる。
治療を受けた男の子達が、あわてて逃げる。
「モンスターども。よくも仲間を……」
そう言うと、モンスターアクリス達も、いきなり動きが止まる。
その怒りを向けられた、ミノタウルスも動きが止まり、気のせいか下がり始める。
それはリッチから引き継いだ何かなのか、地獄の底。そのよどみのような殺意がこの場に広がっていく。
弱きものなら、ここに居るだけで死んでしまいそうな、濃密な殺意。
実際、時間をおかず、ミノタウルスの首が落ちた……
「なんだ、あの子は?」
「死の使いよ。きっと。何かで読んだことがあるわ……」
「おい突っ込むな。周りからの攻撃が出来ない」
だが、完全に無視である。
彼らはスキル持ち。
そして、その混乱状態に他の隊が拍車をかける。
考えもなく持ち場を離れて、余所の軍が雪崩れ込んでくる。
そう、ダンジョンを中心に壁が造られているが、そんなに広いわけではない。
そもそも、そこに千人を超える数を配置するのも問題だが、仕方が無い。
だが、迎え撃つわけではなく、我先にと押し寄せる兵達。
当然だが、現場は混乱中。
「駄目だこれは」
探索者達は壁から出ようとするが、当然のように防壁がしまっている。
上から覗いている兵に声をかけて、出してくれるように願う探索者達だが……
「上からの命令だ。だすことは出来ん」
「だよな」
まあ当然かと、諦める。
仕方が無いので、彼らは壁沿いに回り込み、ダンジョンの裏側へと移動する。
するとそこは別世界。
表側の混乱とは違い、のんびりとバーベキューがされていた。
隊長である貴族も、楽しそうにぱくついている。
「おう。その格好は、探索者だね。まあこっちへ来なさい。一緒に食べよう」
そう言って、和やかに男爵が誘う。
「はあ。ありがとうございます。表はすごいことになっていますが、落ち着いていて、いいんですか?」
「いいだろう。さっき少し見たが、あんな混戦にして、下手に近寄れば同士撃ちになる」
「そりゃまあ。そうですが」
そう答えながら、座り込む。
「おっ来たぞ」
声がして、男爵が指をさす方向を見ると、逃げてきたウルフが一匹。
次の瞬間には、走ってきた勢いのまま倒れ込む。途中に自らの首を落として……
「はっ?」
「えっ?」
「なっ?」
探索者チーム『ドラゴンダンジョンの守人』の面々は、何が起こったのか判らない。彼らは一応金級なのだが……
「吊るしておけ。血が残ると、肉が匂うからな」
「はーい」
十歳くらいの子供達が走って行く。
よく見れば、この兵達。武装していない若い子が結構いる。
実は、兵達は領兵で、元々恐れられていたシュワード伯爵家の面々。
今回は、預かっている坊ちゃん嬢ちゃんが出ると聞いて、大丈夫なのかと少し警戒をしていた。
だが来る途中に、出てくるモンスターや、盗賊達。
顔色を変えることなく、あっという間に退治をしてしまう。
確かにスキル持ちもいる。だが、その動きは常人では無かった。
まだ、新たなる修行を始めて数ヶ月で、その動きは変わったようだ。
無論。お守りだという意識は、兵達からすぐに消えた。
そして、優秀な彼らは、小さな事には拘らず教えを請う。
本格的な訓練は、領へ戻ってからだが、魔力操作と身体強化は習う。
そして効果を実感して、いまの状態。
そうこの氾濫以降、武の名門貴族シュワード伯爵家は、さらに化け物軍団へと変わっていく。
彼らは言う。
「スキルのあり無しに拘るから弱いのさ。力は力、そこに差は無い」
その言葉を実践して、王国でその立場を強固にして行く。
今はまだまだだが……
そうしていると、表の方で叫び声と、「ブモー」という、いやな雄叫びが聞こえる。
銀級の探索者チーム『落伍者の足掻き』に散々いたぶられ、怒り狂ったミノタウルスがやって来たようだ。
それに、追われる形で、ウルフ系や鹿系モンスターが現れて、ガンガンに攻撃をされる。
いい加減混乱をしていた現場は、もう騒然といえる状況。
人混みを抜け、裏に回るモンスターは瞬殺されていたが。
ちびっ子に……
『ドラゴンダンジョンの守人』のメンバーは、目を丸くする。
兵達は、コンロ脇から離れず、肉を喰らっている。
ちびっ子は、これまた七歳くらいのちびっ子に指図されて、的確に対応し倒していく。
彼らは、ただ呆然と、それを眺めていた。
金級の彼らから見ても異常。
「なんだ、あの子達」
「絶対、俺達より強えぞ」
こそこそと、話し合う。
そんな所に、モンスターではなく、余所の兵達が走り込んでくる。
モンスターに追われて、逃げているようだ。
それを見て男爵は言う。
「貴殿らは何処の兵だ。逃げるな。持ち場へ戻れ」
かれは串に刺さった、肉を持ちながら……
さらに、もぎゅもぎゅと咀嚼中。
そんなおかしな状況だが、その兵達の後ろから「ぶもぉぉ」と聞こえ、身長三メートル近い体躯と、角が見える。
だがそれと兵との間に、角を光らせた鹿系モンスターアクリス。
ヘラジカに似たモンスターで、かなり凶悪だ。
炎や雷が、容赦なく兵達を襲う。
「助けてくれぇ」
それを見て、ちびっ子達が助けに向かう。
モンスターが、魔法を発動するむきを、頭の方向で判断をして、素早く近寄ると、首筋を切りつける。
血抜きをするには、生かしておいた方が良いと、さっき言っていたが、それを実践しているようだ。
だが、ミノタウルスには、ナイフが効かず、逆に跳ね飛ばされたようだ。
「ヴィル、レノーイ」
飛ばされた男の子に、一人の男の子が向かう。
一人の男の子は腕が折れていたはずなのに、魔法の光と共にすぐに治ってしまう。
「あの光は? 癒やしの光?」
「まさか……」
驚いていると、その男の子。いきなり雰囲気が変わる。
治療を受けた男の子達が、あわてて逃げる。
「モンスターども。よくも仲間を……」
そう言うと、モンスターアクリス達も、いきなり動きが止まる。
その怒りを向けられた、ミノタウルスも動きが止まり、気のせいか下がり始める。
それはリッチから引き継いだ何かなのか、地獄の底。そのよどみのような殺意がこの場に広がっていく。
弱きものなら、ここに居るだけで死んでしまいそうな、濃密な殺意。
実際、時間をおかず、ミノタウルスの首が落ちた……
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「死の使いよ。きっと。何かで読んだことがあるわ……」
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