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第三章 初等部
第39話 クラス対抗、模擬戦争。その三
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モニカは自軍から眺めていて、ちょこちょこと動き回る。
それを、ちらちらと気にするジェフリー君。
周りの皆は、それを勘違いし始める。
「おいあれ。ジェフリー、アヴァロン様はビョルク伯爵家のモニカ嬢を気にされているぞ」
「ああまあ、伯爵家同士だし、お似合いなんじゃない」
さすが貴族家。幼いながらも皆ませている。
だが、当の本人は、それどころではない。
「ええい。何処へ行った?」
あいつがちょろちょろすると、何をするのかが気になって仕方が無い。
先だっての手柄、父上は僕の差配だと思っているが……
あまりに予想外に動かれると、追いかけられないし、また手柄を盗られれば……
「くそう」
前からわーとやって来る上級二組。
成績や総合能力では、上位クラス。
ココで勝てるかは、同じ勝利でも、意味としては非常に大きいものとなる。
「敵の数が中途半端だ。伏兵がいるぞ。気を付けろ」
ジェフリーは叫ぶ。
その頃、モニカは敵を掻い潜りながら、敵陣へと近付いていた。
ダンジョンでの訓練。
それと、夜間に行われる魔法演習場の訓練が目立つため、最近は訓練時に明かりをつけていない。
校長から指摘があった後、おもしろがってシンが明かりを消したのだ。
真っ暗な中での訓練。
それにより気配察知が出来る。
そんなことを言って、始めてしまった。
ちびっ子は良いが、中等部の面々はそれにより、多少ギクシャクすることになる。
クリスティアーノは、暗い中でオロオロしている。
シンが言い始めて、突然始まった特訓。
皆は、まだ慣れていないだろうと言って、安全な訓練用の剣を使用している。
これにしたって、最初は木剣でやろうとしたシン君。
中等部と、初等部が入り乱れ、周囲には障害物まで置かれていた。
緊張をすれば、それによる精神的消耗は、思ったよりも早く体を疲れさせる。
すり足をして歩くが、それはかなり音が出ることが分かった。
目が見られないと、以外とそれ以外の感覚が敏感となり、今まで気が付かなかったことに気が付く。
そう思って、待ち伏せをすると、容赦なくシン君の攻撃がくる。
エルミーヌは暗闇の中で、恐怖を感じていた。
さっき動かなかったら、「動かぬか馬鹿者」そんな声が聞こえてシン君に頭を叩かれた。シン君の使っている剣のインクは赤。
それ以外は、皆青である。
誰に攻撃されるか判らないが、青いインクで攻撃されていれば、減点となる。
つまり、辛いトレーニングのマシマシになる。
今彼女は、障害物に背を預け、周囲を伺っていた。
その時不意に気配が湧き上がり、自身の顔。左横にトンと、手が突かれた。
攻撃をしよう。そう思ったとき、ちいさな声が聞こえた。
「これは障害物だな」
育ち盛りだが、今は丁度男女に身長差がない。
つぶやいたその声は、自身の鼻先で聞こえる。
意識した瞬間、体温まで感じることが出来た。
ただ焦っていた感情から、目の前にいるのは誰? そんな思いが彼女のセンサーを働かせる。
そして、相手の左手は壁に向かおうとしたのだろう。
だが間には、エルミーヌがいる。
むにゅとした感覚。
それを感じた、クリスティアーノはあわてて左手を引く。
だがその驚きと、相手の動き。
彼女は、相手がクリスティアーノだと理解して、攻撃に出た。
触られたときに、嫌というよりワクワクと電気のようなモノが走った。
それは、ときめきを彼女に残す。逃げる手を追いかけ、かるく一歩前に。
ああ、体温を感じる。
彼はココね。
軽く顔を前に突き出す。
柔らかな感触。
そして、驚く息づかい。
そのまま、軽く彼女はクリスティアーノを抱きしめると、離れ際に頭へ向けて攻撃を行った。
相手を間違ってはいないという、自身の勘と確証を求めて。
エルミーヌは彼との軽いふれあいで、周囲に心音が聞こえるかもしれないと焦りながら場を離れる。
暗闇の中で、呆然とするクリスティアーノ。
えっえっえっ?? あの柔らかな感触と…… あれは…… キスをされた??
誰? 左手に残るあの柔らかな感触は、男ではない。
彼は、しゃがみ込んで悩んでいるところを、誰かに蹴られる。
とりあえず反撃はかえす。
反撃と言っても、まあ暗闇で、模造剣を振り回していただけだが。
明かりが付くと、目の前にいたのはマリレーナ。
意外と容赦なく、両者ともに当たったようだ。
「ガキのように振り回すのではなく、気配を感じて予測しろ。横薙ぎばかりではないか……」
シンから、ガキのようだと言われて、皆が落ち込んだ。
だが、クリスティアーノは、相手が判らずモヤモヤすることになる。
逆にエルミーヌは明るくなったときに、確証を得た。
他の二人は頭や肩に青いインクが乗っていない。
違う二人だった場合は、絶望と共に墓まで記憶を封じるつもりでいたが、大当たり。
一気に体温が舞い上がる。
そんな事を知らない、クリスティアーノを含めた皆。
エルミーヌ意外も、そんな感情を少し持て余してきている様だ。
男子は、まだまだのようだが……
そんな特訓を繰り返したおかげで、モニカはそれなりに気配を見られる。
「このまま、すすんで大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だから」
幾人かの女の子が、モニカの元に集まった。
それは、目端の利く連中。
入学時は、見た目とは違い、がさつでとんでもないポカばかりが目立ったが、最近は雰囲気が変わった。
クラスの主流派である、ジェフリー=アヴァロン伯爵家は男子中心。
女は、小間使いとしか思っていない。
彼に付いた女の子達の扱いを見ても理解できる。
彼女を信じよう。
彼女達は、真っ直ぐに敵陣へと向かう。
それを、ちらちらと気にするジェフリー君。
周りの皆は、それを勘違いし始める。
「おいあれ。ジェフリー、アヴァロン様はビョルク伯爵家のモニカ嬢を気にされているぞ」
「ああまあ、伯爵家同士だし、お似合いなんじゃない」
さすが貴族家。幼いながらも皆ませている。
だが、当の本人は、それどころではない。
「ええい。何処へ行った?」
あいつがちょろちょろすると、何をするのかが気になって仕方が無い。
先だっての手柄、父上は僕の差配だと思っているが……
あまりに予想外に動かれると、追いかけられないし、また手柄を盗られれば……
「くそう」
前からわーとやって来る上級二組。
成績や総合能力では、上位クラス。
ココで勝てるかは、同じ勝利でも、意味としては非常に大きいものとなる。
「敵の数が中途半端だ。伏兵がいるぞ。気を付けろ」
ジェフリーは叫ぶ。
その頃、モニカは敵を掻い潜りながら、敵陣へと近付いていた。
ダンジョンでの訓練。
それと、夜間に行われる魔法演習場の訓練が目立つため、最近は訓練時に明かりをつけていない。
校長から指摘があった後、おもしろがってシンが明かりを消したのだ。
真っ暗な中での訓練。
それにより気配察知が出来る。
そんなことを言って、始めてしまった。
ちびっ子は良いが、中等部の面々はそれにより、多少ギクシャクすることになる。
クリスティアーノは、暗い中でオロオロしている。
シンが言い始めて、突然始まった特訓。
皆は、まだ慣れていないだろうと言って、安全な訓練用の剣を使用している。
これにしたって、最初は木剣でやろうとしたシン君。
中等部と、初等部が入り乱れ、周囲には障害物まで置かれていた。
緊張をすれば、それによる精神的消耗は、思ったよりも早く体を疲れさせる。
すり足をして歩くが、それはかなり音が出ることが分かった。
目が見られないと、以外とそれ以外の感覚が敏感となり、今まで気が付かなかったことに気が付く。
そう思って、待ち伏せをすると、容赦なくシン君の攻撃がくる。
エルミーヌは暗闇の中で、恐怖を感じていた。
さっき動かなかったら、「動かぬか馬鹿者」そんな声が聞こえてシン君に頭を叩かれた。シン君の使っている剣のインクは赤。
それ以外は、皆青である。
誰に攻撃されるか判らないが、青いインクで攻撃されていれば、減点となる。
つまり、辛いトレーニングのマシマシになる。
今彼女は、障害物に背を預け、周囲を伺っていた。
その時不意に気配が湧き上がり、自身の顔。左横にトンと、手が突かれた。
攻撃をしよう。そう思ったとき、ちいさな声が聞こえた。
「これは障害物だな」
育ち盛りだが、今は丁度男女に身長差がない。
つぶやいたその声は、自身の鼻先で聞こえる。
意識した瞬間、体温まで感じることが出来た。
ただ焦っていた感情から、目の前にいるのは誰? そんな思いが彼女のセンサーを働かせる。
そして、相手の左手は壁に向かおうとしたのだろう。
だが間には、エルミーヌがいる。
むにゅとした感覚。
それを感じた、クリスティアーノはあわてて左手を引く。
だがその驚きと、相手の動き。
彼女は、相手がクリスティアーノだと理解して、攻撃に出た。
触られたときに、嫌というよりワクワクと電気のようなモノが走った。
それは、ときめきを彼女に残す。逃げる手を追いかけ、かるく一歩前に。
ああ、体温を感じる。
彼はココね。
軽く顔を前に突き出す。
柔らかな感触。
そして、驚く息づかい。
そのまま、軽く彼女はクリスティアーノを抱きしめると、離れ際に頭へ向けて攻撃を行った。
相手を間違ってはいないという、自身の勘と確証を求めて。
エルミーヌは彼との軽いふれあいで、周囲に心音が聞こえるかもしれないと焦りながら場を離れる。
暗闇の中で、呆然とするクリスティアーノ。
えっえっえっ?? あの柔らかな感触と…… あれは…… キスをされた??
誰? 左手に残るあの柔らかな感触は、男ではない。
彼は、しゃがみ込んで悩んでいるところを、誰かに蹴られる。
とりあえず反撃はかえす。
反撃と言っても、まあ暗闇で、模造剣を振り回していただけだが。
明かりが付くと、目の前にいたのはマリレーナ。
意外と容赦なく、両者ともに当たったようだ。
「ガキのように振り回すのではなく、気配を感じて予測しろ。横薙ぎばかりではないか……」
シンから、ガキのようだと言われて、皆が落ち込んだ。
だが、クリスティアーノは、相手が判らずモヤモヤすることになる。
逆にエルミーヌは明るくなったときに、確証を得た。
他の二人は頭や肩に青いインクが乗っていない。
違う二人だった場合は、絶望と共に墓まで記憶を封じるつもりでいたが、大当たり。
一気に体温が舞い上がる。
そんな事を知らない、クリスティアーノを含めた皆。
エルミーヌ意外も、そんな感情を少し持て余してきている様だ。
男子は、まだまだのようだが……
そんな特訓を繰り返したおかげで、モニカはそれなりに気配を見られる。
「このまま、すすんで大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だから」
幾人かの女の子が、モニカの元に集まった。
それは、目端の利く連中。
入学時は、見た目とは違い、がさつでとんでもないポカばかりが目立ったが、最近は雰囲気が変わった。
クラスの主流派である、ジェフリー=アヴァロン伯爵家は男子中心。
女は、小間使いとしか思っていない。
彼に付いた女の子達の扱いを見ても理解できる。
彼女を信じよう。
彼女達は、真っ直ぐに敵陣へと向かう。
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