ツキも実力も無い僕は、その日何かを引いたらしい。- 人類を救うのは、学園最強の清掃員 -

久遠 れんり

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第三章 初等部

第43話 ささいな秘密

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 二人に礼を取った後、職員二人へ向き直る学園長。

「さて、この二人をモンスターの掃討。いや清掃に貸し出そう。だが、特殊だから、他の部隊から見えないように配慮をしてくれたまえ」
 驚き、疲れた顔をしたギルド職員。

「清掃ですか?」
「そうだな。この二人は、当学園の清掃班員だ」
 真面目な顔でそう言われ、二人は困惑をする。

「見た感じも、その様な感じですし」
 二人は、どう対応していいのか判らない。

 だが、その会話を、シンが途切れさせる。
「学園長。我々に説明が先ではないかね。こちらに全く説明がないのはどういうわけだ?」
 言われて、ああっ、と思い出す。
 待ち続けた間、自問自答の中で済ませたことを、現実では行っていない。

「おお。そうじゃ。すまない。この二人は、探索者ギルドの職員で、学園へと助力を願いに来たのだが、二人もご存じの通り学生も帰省をしてしもうた。そこで、お二人に力を貸していただけないかと考えた次第威じゃ……」
 説明をしながら、声が小さくなる。

「それなら先に、こちらへ話を通すのがすじというものでは?」
「いや、それは、重々承知をしておる。じゃが……」
 いい年をした学園長が、胸の前で指を組み、もじもじと親指を遊ばせる。

 シンは、ため息を付くと答える。
「まあ良いでしょう」
 顔を、ギルド職員に向けると、情報を問い出す。
「距離と、モンスターの総数は把握をしているのか?」
「あっはい。ギルドに戻れば大丈夫です。出現方向は、ディビィデ山脈の麓となっています」

 その報告を聞いて、シンは首をひねる。
 遠足…… いや、クラス対抗、サバイバル訓練で数ヶ月前に行ったばかり。
 あまりにも早すぎる。

「おかしいな。マッテイス」
「どうした。シン」
「あそこに、ダンジョンでもあったか?」
「いや、無いはずだが……」

 シンはいやな予感がする。
 この前ふと思い出したばかりだが、あそこには、やばい奴を封じた廃坑がある。
 封じて、千年以上……
 生きていないと思ったが。
「よし行こう」

 シンがそう言っても、職員二人の反応は鈍い。
 年を取った方ではなく、どう見ても子供の方が仕切っている違和感。
 この世界では、体は子供、頭脳は大人などと言う情報は広がっていない。
 この反応が、普通だろう。

 とりあえず無視をして、シン達は学園長室を後にする。

 足早に、学園の外へと出ると、一気に山脈に向けて駆け出す。

「君達は、行かなくて良いのかね」
 シン達がいなくなっても、よく分からず彼らはぼーっとしていた。
 何歩も出遅れた彼ら。それからのち。すべてが終わり、報告のためにギルドにシンが現れるまで、彼らはシンと会うことはなかった。
 そう、切っ掛けは彼らが作ったのに、斬な事だが、その評価はされることがなかった。


「何か思い当たるのか?」
「前に言った気がするが、あそこの廃坑にはスライムを封じてある。当然、封じた場所は全く違う場所だが、時間の経過がある。廃坑がダンジョン化をして、こちら側に口を開けたのだとすれば、面倒なことになる」


 そうして二人が駆けていく先には、探索者だろうか?
 装備も年も、バラバラな連中が吠えている。
「おらあぁ。スキルのある奴は魔法を出せ。弾幕じゃぁ」
「スキル無しは黙っていなさいよ。こっちだって都合があるのよぉ」
 かなり、限界が近いらしい。

「仕方ない。前線から奥は、人がいないようじゃな」
 シンはそう言うと、望み通り火球の弾幕を張る。
 奥を埋め尽くすモンスターと、前線の間に、おおよそ二十メートルほどの隙間が出来る。
「あれでいいじゃろ」
 そう言うと、二人は端の方。
 モンスターが作る壁へと突っ込んでいく。

 文字通り前には壁だったが、彼らの後ろには、ぽっかりと道が生まれていく。

 それに気が付いた者が居た。
「なんだありゃ?」
 モンスターの一角に、どす黒い血しぶきが舞い、粉々となった肉塊が周りの飛び散っていく。
 見えずとも、急に戦場を埋め尽くす濃密な血の匂い。

 それに気がついたのは人だけではなく、モンスター達も……

 だが、予想に反して、モンスター達はそちらから逃げ始める。
 壁へと突っ込むとき、シンは抑えていた力を解放をした。
 無論、濃密な殺気付き。
 それに反応をしたのだ……

 混乱をするモンスター達、それに乗じて、探索者達は少し立て直したようだ。
 そんな中で、戦場に威圧の衝撃波が走る。

 モンスター達の奥に、やっかいな存在がいた。
 なぜか通常のモンスターの中に佇む首無騎士デュラハンと呼ばれる死霊系モンスター。
 腹が立つことに、炎系の魔法をレジスト? いや、パリィ。
 持った剣で受け流したようだ。
 顔はないが、不敵な笑みが幻視される。

 だが、シンは容赦をしなかった。
 彼の全身を包む、お掃除魔法。
 いや一般には、浄化魔法だった。
 あまりにも掃除に使うため、シンの中ではお掃除用の魔法として最近定着をされている。
 
 全身から黒い煙を吹き出し、もろもろと、生地から汚れが剥げていくように崩れ、それは周囲の光の中で溶けるように消滅をしていく。
 まるで漂白でもされるように……

「よし。綺麗になった」
 満足そうにシンはそう言うと、再び歩みを開始する。

 戦闘に入ってから、マッテイスは遅れてしまった。
 リミッターを解除したシンは、ヒトでは無い。

 モンスターに比べ、小さな彼が走り抜けると、大量の血肉が撒き散らかされる。
 それは持っている剣によるもの。

 一振りで、数十のモンスターが両断され、その後やって来る剣圧が、さらに周囲を蹂躙をする。
 そんな作業をしているシンに、ついて行けない悔しさが沸き起こる。
「俺も訓練しよう。このままじゃ普通のちびっ子にも負けそうだ……」
 頭に浮かぶ、日々特訓をしていたちびっ子達。
 マッテイスはとりあえず、そう決めた。

 その後、彼は思い直す。
 人間だもの…… ちょっとした訓練なんか意味ないよなぁ。と少し自暴自棄になることになる。
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