75 / 97
第五章 人は生き残れるのか?
第75話 暗躍
しおりを挟む
長年人を見てきた。
人にとって四年は長いが、システムは意外と短気だった。
『凶悪な者達はわずか。神の考えを推考するに、優れたものだけが残れば良い。増えすぎた人を減らす。そう間引こう』
そうして、彼は考える。
目立つ強者は、強敵の元に集まってなんとかしてしまう。
そうだ、強力なモンスターを創ったのが間違いだ。
そして、彼は計画しそれを実行した。
『弱者滅亡作戦。ファントム』
そうその名の通り、不可視の存在。
だがそれは、力なきものを淘汰する。
それは、同時多発的に始まった。
無論ダンジョン脇のスラムでも、力の弱いものから命を落とす。
被害者は子どもと老人。
考えた結果、システムは巨大なものでは無く、見えない小さきものを変化させ、特定生物に対してのみ発動する毒性を持たせた。
それは、人から人へと感染し、弱きもの。つまり老人や子どもが命を落とす。
それを知り各国で、王が命令を出す。
子どもが居なければ、人は死滅をする。
そんな未来が予測される。
シンは、王国通信を見ながら唸る。
王国通信は、関係者向けの通信書。
主立った事件や事故が書かれて配布されている。
千年前でも、ペストなどが猛威を振るい、町単位で人が滅んだことがある。
今回のものは、一週間程度微熱が続く。
その後急激に劇症化をするが、悪い事に空気感染をするようだ。
微熱くらいなら、人々は食うために仕事をして動き回る。
各地で、教会の者達が浄化を行っているようだが、歯止めがきかない。
「なぜだ、どこもかしこも浄化をしている。それなのに……」
教会の総本山でも、力を持っていた年寄り達がパタパタと倒れていく。
発熱の内は良いが、劇症化をすると何をしても助からない。
藁にもすがるつもりで涙を呑み、薬師達を教会の者達は招き入れた。
だが改善されず、両者の関係はさらに悪化をする。
そんな頃、学園でも学長が倒れ込む。
「学長が発病?」
「まだ微熱状態ですが、薬師や教会による治療も効果がありません」
丁度感染症への対応について聞きに行くと、事務員さんが困った顔で教えてくれた。
学内は、シンの強力な浄化により清潔が保たれているが、人が動く度に病原菌は振りまかれている。
「うむ。会おうではないか」
「えっでも」
「若い者なら、少し熱が出るだけで済むようだ、気にせずとも良い」
シンは、考えていた。
これで色々と試せる。
学長は、隔離されている間者達の寝る区画。
その奥側の部屋に寝ていた。
「なんじゃそなたか。今わしは何もできんぞ」
なぜか、うんざりした顔で迎えられる。
「ああ判っている。これでも食え」
体温を下げると言われる、猪肉をドンと置く。
それを見て一瞬だが、学長は顔しかめる。
「ああ。そうだな、体調がよくなれば食させて貰おう」
食欲のない病人に、こんな物を…… だが心遣い。
礼を言う学長の額に、ふわりと手が置かれる。
そうシンだ。
「少し見させて貰う」
有無を言わさず、探査魔法を駆使して体内をスキャンする。
だが対象が細かすぎるのか、反応が無い。
魔力を駆使して、さらに力を込めていく。
「おおっ…… あがっ、やめ…… あっがががっ」
学長は白目をむき、痙攣を始める。
だがシンはやめない。
「失敗すればどうせ死ぬ。学長なのだ。みんなの為に役立て」
結構鬼畜な言葉を吐きながら、魔法を続ける。
そんな中、体を構成する細胞よりも、小さなモンスターを見つける。
そいつらが大事な器官を囓っていた。
微細なワーム。
空気感染や接触感染。
それで体内に入った殻が、羽化してモンスターとなる。
普通の病気ではない。
言わば寄生虫だ。
体が持つ免疫システム。白血球などに食われてしまうレベルだが、ある程度の閾値が有り、モンスターの数がそれを上回れば、爆発的にふえる。
増えれば、もう免疫では追いつかない。
そう、これは体力がないものだけを淘汰するモンスター。
かなりの数だが、知ってしまえばシンのもの。
異物は浄化あるのみ。
この頃シンの浄化は、何でもありのところまで高められていた。
学長の体を白い光が包む。
ついでに、治癒魔法で壊された臓器を修復させる。
「ふむ。怪我を治す治癒魔法だけでも、効果があったのかもな」
まだ学長は白目状態だが、近くに隔離されている者達のところへと移動。
まず治癒魔法を浴びせ、代謝機能を促進。
その後、スキャンをする。
そう、その後薬師達が見に来た時には、部屋に並んだ患者が苦悶の表情を浮かべて全員白目状態。
これは結構怖い。
死亡してゾンビ化をしたのかと大騒ぎになった。
だが一時間もすれば、症状は改善して、なぜか学長が持っていた猪肉が振る舞われた。
学長は自らが実験に使われたことを理解したが、文句は言われなかったようである。
その後、王へ報告が届く。
「病にかかりし者達。先ずは治癒魔法を試すべし。その後浄化」
そう、単純だが盲点。
病気だから、怪我を治す治癒魔法は試されていなかった。
死にかかり、痛みを抑える感じで使われても、その時には、多臓器不全状態。
少しくらいの治癒では間に合わない。
教会へ向けて、王からの情報が届く。
症状の初期状態で、治癒魔法を試すべし。
「治癒魔法? 素人が何を言う。魔力の無駄じゃ」
この時、教会内部では世代交代がされていた。
そう、権力を握っていた者達は発病し、死に絶えた。
一部、頭の堅い者がいたようだが、若き指導者達は素直に試す。
「おおっ。症状が改善をした」
「なんやてぇ。そんな非常識なぁ」
頭の固い者達は、それを知り、思わず関西弁で叫ぶ。
無論他国にも、王は情報を流す。
これにより、王国は武だけではなく、智の面でも尊敬されるようになる。
「コンラート王国恐るべし。見所のあるものを彼の地に留学させよ」
各国で、そんな王命が出たとか。
そんな中、新型の護符と呼ばれる札が馬鹿売れをしていた。
まじないや護符。
売っていたのは盗賊崩れだが、そのバックには大店が暗躍をしていた。
「生産は順調そうだな」
そいつは、エチューギャ。
かなり汚い商売で店を大きくした男。
人にとって四年は長いが、システムは意外と短気だった。
『凶悪な者達はわずか。神の考えを推考するに、優れたものだけが残れば良い。増えすぎた人を減らす。そう間引こう』
そうして、彼は考える。
目立つ強者は、強敵の元に集まってなんとかしてしまう。
そうだ、強力なモンスターを創ったのが間違いだ。
そして、彼は計画しそれを実行した。
『弱者滅亡作戦。ファントム』
そうその名の通り、不可視の存在。
だがそれは、力なきものを淘汰する。
それは、同時多発的に始まった。
無論ダンジョン脇のスラムでも、力の弱いものから命を落とす。
被害者は子どもと老人。
考えた結果、システムは巨大なものでは無く、見えない小さきものを変化させ、特定生物に対してのみ発動する毒性を持たせた。
それは、人から人へと感染し、弱きもの。つまり老人や子どもが命を落とす。
それを知り各国で、王が命令を出す。
子どもが居なければ、人は死滅をする。
そんな未来が予測される。
シンは、王国通信を見ながら唸る。
王国通信は、関係者向けの通信書。
主立った事件や事故が書かれて配布されている。
千年前でも、ペストなどが猛威を振るい、町単位で人が滅んだことがある。
今回のものは、一週間程度微熱が続く。
その後急激に劇症化をするが、悪い事に空気感染をするようだ。
微熱くらいなら、人々は食うために仕事をして動き回る。
各地で、教会の者達が浄化を行っているようだが、歯止めがきかない。
「なぜだ、どこもかしこも浄化をしている。それなのに……」
教会の総本山でも、力を持っていた年寄り達がパタパタと倒れていく。
発熱の内は良いが、劇症化をすると何をしても助からない。
藁にもすがるつもりで涙を呑み、薬師達を教会の者達は招き入れた。
だが改善されず、両者の関係はさらに悪化をする。
そんな頃、学園でも学長が倒れ込む。
「学長が発病?」
「まだ微熱状態ですが、薬師や教会による治療も効果がありません」
丁度感染症への対応について聞きに行くと、事務員さんが困った顔で教えてくれた。
学内は、シンの強力な浄化により清潔が保たれているが、人が動く度に病原菌は振りまかれている。
「うむ。会おうではないか」
「えっでも」
「若い者なら、少し熱が出るだけで済むようだ、気にせずとも良い」
シンは、考えていた。
これで色々と試せる。
学長は、隔離されている間者達の寝る区画。
その奥側の部屋に寝ていた。
「なんじゃそなたか。今わしは何もできんぞ」
なぜか、うんざりした顔で迎えられる。
「ああ判っている。これでも食え」
体温を下げると言われる、猪肉をドンと置く。
それを見て一瞬だが、学長は顔しかめる。
「ああ。そうだな、体調がよくなれば食させて貰おう」
食欲のない病人に、こんな物を…… だが心遣い。
礼を言う学長の額に、ふわりと手が置かれる。
そうシンだ。
「少し見させて貰う」
有無を言わさず、探査魔法を駆使して体内をスキャンする。
だが対象が細かすぎるのか、反応が無い。
魔力を駆使して、さらに力を込めていく。
「おおっ…… あがっ、やめ…… あっがががっ」
学長は白目をむき、痙攣を始める。
だがシンはやめない。
「失敗すればどうせ死ぬ。学長なのだ。みんなの為に役立て」
結構鬼畜な言葉を吐きながら、魔法を続ける。
そんな中、体を構成する細胞よりも、小さなモンスターを見つける。
そいつらが大事な器官を囓っていた。
微細なワーム。
空気感染や接触感染。
それで体内に入った殻が、羽化してモンスターとなる。
普通の病気ではない。
言わば寄生虫だ。
体が持つ免疫システム。白血球などに食われてしまうレベルだが、ある程度の閾値が有り、モンスターの数がそれを上回れば、爆発的にふえる。
増えれば、もう免疫では追いつかない。
そう、これは体力がないものだけを淘汰するモンスター。
かなりの数だが、知ってしまえばシンのもの。
異物は浄化あるのみ。
この頃シンの浄化は、何でもありのところまで高められていた。
学長の体を白い光が包む。
ついでに、治癒魔法で壊された臓器を修復させる。
「ふむ。怪我を治す治癒魔法だけでも、効果があったのかもな」
まだ学長は白目状態だが、近くに隔離されている者達のところへと移動。
まず治癒魔法を浴びせ、代謝機能を促進。
その後、スキャンをする。
そう、その後薬師達が見に来た時には、部屋に並んだ患者が苦悶の表情を浮かべて全員白目状態。
これは結構怖い。
死亡してゾンビ化をしたのかと大騒ぎになった。
だが一時間もすれば、症状は改善して、なぜか学長が持っていた猪肉が振る舞われた。
学長は自らが実験に使われたことを理解したが、文句は言われなかったようである。
その後、王へ報告が届く。
「病にかかりし者達。先ずは治癒魔法を試すべし。その後浄化」
そう、単純だが盲点。
病気だから、怪我を治す治癒魔法は試されていなかった。
死にかかり、痛みを抑える感じで使われても、その時には、多臓器不全状態。
少しくらいの治癒では間に合わない。
教会へ向けて、王からの情報が届く。
症状の初期状態で、治癒魔法を試すべし。
「治癒魔法? 素人が何を言う。魔力の無駄じゃ」
この時、教会内部では世代交代がされていた。
そう、権力を握っていた者達は発病し、死に絶えた。
一部、頭の堅い者がいたようだが、若き指導者達は素直に試す。
「おおっ。症状が改善をした」
「なんやてぇ。そんな非常識なぁ」
頭の固い者達は、それを知り、思わず関西弁で叫ぶ。
無論他国にも、王は情報を流す。
これにより、王国は武だけではなく、智の面でも尊敬されるようになる。
「コンラート王国恐るべし。見所のあるものを彼の地に留学させよ」
各国で、そんな王命が出たとか。
そんな中、新型の護符と呼ばれる札が馬鹿売れをしていた。
まじないや護符。
売っていたのは盗賊崩れだが、そのバックには大店が暗躍をしていた。
「生産は順調そうだな」
そいつは、エチューギャ。
かなり汚い商売で店を大きくした男。
3
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる