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第三章 本当の終末

第26話 第一波

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「畜生、このタイミングで。十時方向敵多数。補給の終わった物から前に出ろ」
 俺の機体は、残量アラートは出ていない、燃料まだある。
 だが、補給から帰ってきた部下から連絡が入る。
〈隊長、補給に行ってください〉
 補給所が、開いたのだろう。
〈分かった任せる〉
 そう伝え、大慌てで走っていく。

 テントへ戻り、無線で伝える。
〈補給急げ。敵多数十時方向〉
 それを聞いたのだろう、防護服を着た人間達が、慌ただしく走り回り始める。

 対地誘導弾を乗せた車両が、幾台も走っていく。

 補給を受け現場へ戻るが、味方の攻撃車両がうろうろして、スピードが上げられない。
 多少苛つきながら、光を発する方へと進んでいく。

 現場ではすでに戦闘は開始され、ガンガンと面攻撃が行われていた。
 各車両はデータリンクされ、効率的に攻撃をして敵を破壊していく。

 やはり多脚タイプは、走破性は良いがスピードは劣る。
 撃ち放題だ。
 こちらは、停止状態で攻撃をできるが、攻めてくる方は止まっているわけにはいかない。向こうが数十メートル移動したって、こちらは数度角度を変えるだけで対応できる。

 程なくして、殲滅に成功する。

 敵が来た方向に対し、無人機を数機飛ばす。
〈何とか終わったな。敵の基地が見つけられれば良いが〉
〈そうですね。ただ衛星では見つけられなかったので、地下に基地があるようです。カムフラージュしているようですから、出てくるところを捉えないと発見は難しいでしょう。それでは、補給へ戻ります〉
〈ああ。お疲れ〉
 そう言って、対地攻撃部隊の隊長は帰っていった。

 それから、そんなにせずに基地の設営ができたと連絡が入り、順に休憩に入るようにする。
 基本は、汎用型に俺達四人のうち一機が必ず入るスリーローテーション。

 おれは、基本待機で攻撃があれば、走って行くことになった。
 待機と言っても、攻撃隊や補給の隊長で作戦会議があり休めない。
 かといって、連携できないと補給が切れればじり貧となる。

 確保した、陣地から周囲十キロ地点に地下探査用の音響装置を設置。
 地下を来る敵に対処する。
 地下を進むタイプは、速度が遅いから十キロで大丈夫だろう。

 その頃、高度約五百キロメートルいわゆる地球低軌道を、未確認の人工衛星が該当エリアに入って来たようで、日本側の防衛システムが破壊した。

 一応探査という名目で、俺達を出したのに国自体は、此処にもう人の生活はないとすでに決定している事を理解する。

 単に、開発された新型装置のもろもろを、今回運用して実地テストを行っているのじゃないかと邪推したくなる。

「じゃあとりあえず、全方位にどんどん地下探査用の装置を設置していくか」
「そうだな。浮揚タイプジャミングが鬱陶しいなあ」
 工作班の隊長がぼやく。

「だがあれがないと、一気に敵が来るぞ」
「前回の時は、偵察を壊してすぐ後。千以上のマシンがやって来たと言ったなあ」
「そうなんだよ。それを考えれば、敵の基地は近いはずなんだ」
「それと強力な例のマシンか」
「そうあれが今回、まだ来ていない」
 前回も参加していたのだろう、戦術担当が苦々しい表情を見せる。

「四聖獣タイプか。まあ、センサー類設置よろしく。さすがに俺は眠い。待機状態に入らせて貰う」
「了解」

 そう言って俺は、割り当てられた宿舎。コンテナサイズだが必要十分。
 ざっとシャワーを浴びて、ベッドに寝転がるとあっという間に意識を手放した。
 慣れない人間は、興奮状態で寝られないが、レースをしていた経験が少しは役に立ったようだ。

 どのくらい経ったのだろう、基地内に警戒のサイレンが鳴り響く。
 すぐに、スーツを着込み飛び出す。

 本部へ向かい情報を聞く。

「突然三十キロ向こうに奴らが出た」
 地図のマークを、指さす作戦参謀。
「無人機は?」
「もう飛ばした、君の仲間はすでに向かっている」
「分かった、追いかける」
「頼む」

 速やかに格納庫へ向かい、補給済みのエリアで俺のマシンを見つけ乗り込む。マイクをオンにして叫ぶ。
「新世だ。零一号機出る」
 開発ナンバーは、頭に零をつけることにした。なんとなく。
 人間を踏まないように、注意しながら外に出ると、一気に加速する。

「うわっ。新世准尉、零一号機出ましたが、とんでもない早さです」
「何キロ出ている?」
「二百キロ近く出ています」
「はあっ? なんだそりゃ、中の人間大丈夫なのか?」
「想像したくありません」
 そう、作戦士官達は一度、旧型だが、サポートアーマーを使ったことがある。
 補給などの効率化という名目で乗らされた。

 だが、その揺れと加減速の身体的負担で皆断念をした。
 作業員は、改良型を使用し重量物運搬等には使っているが、走ることはない。

 そして、俺の機体は対朱雀用にホバーをつけた。
 一度メカニックの器会と、冗談でしゃべっていたもの。
「これで、高速機動ができます。三台いれば某アタックができます」
「やめろ。あれは、白い奴にやられただろ」
「そうでしたね」
 いまだに、百年以上前のアニメで盛り上がるとは。

 すぐに、空を飛んでいる通称朱雀が見えてきた。
〈新世、攻撃に入る〉
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