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第1章 始まりと魔法世界への準備

第3話 変化のない日常

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 あれから1週間ほどが経ち、世の中で変わったことと言えば、モンスターを見つけて行政に連絡しても間に合わず、子供やお年寄りが怪我をすることが頻発した。

 警察はむきになって、モンスターを発見しても手を出さずまず連絡を。
 と頑張っていたが、大量に被害者からの苦情と一部から訴訟を起こされ、銃刀法と凶器準備集合罪が緩和されることになった。

 ただし、これは特定講習を受けライセンスを持つ必要があり、特別指定外来種駆除講習取得者証を常時所持し、駆除執行時以外は専用ケースから出してはだめと規定された。

 ちなみに、特別指定外来種駆除講習取得者証は1~2日で一般的には駆除ライセンスと呼ばれるようになった。
 特別指定外来種駆除講習取得者証は、あくまでも武器の所持に対する許可証で、モンスター自体は鳥獣保護法の対象外であり、武器を使用しなければだれでも駆除できる。

 魔石は、行政機関で駆除費用として一つ500円で買い取ってくれるが、これは少しして大きさによる買取金額の決定へと変更になった。最初はゴブリンしかいなかったが、ダンジョンに少し深く潜ると、上位種や別種が出始めたせいである。

 その頃俺は、必要のなくなったペットボトルを、次の回収で出せるように中の水を捨ててまとめていた。
 その横で、猫が吾輩は猫である。名前はまだないと訴えている。

「いい加減名前を決めなきゃなぁ…… でもせっかくトイレをセットしたのに、ウンチもしっこもしないんだよな…… ひょっとしてモンスターかなぁ?」
 目が合うと、そっと目をそらされた。

 川にいたからやっぱりたまか? ……すんごい嫌そうな顔された。
 猫に関係あるものを検索して、読み上げてみる。
「猫娘」「猫又」「金華猫」「バステト」……「フレイヤ「にゃ」」
 うん?「フレイヤ「にゃ」」

 ああ分かった、でもほとんど猫関係ないぞ…… おまけに怪しい説明が書かれているし。


 そうしていると、VPNで接続して、社内メールにアクセスしているPCにメールが入る。

『〈技術系職員各位〉〈社内規定変更によりプログラマ並びにそれに類する職種は特段の事情がない限り出社の必要はない事とする。給与は基本給+開発者手当を設け、フレックスタイム勤務とする。移行は現在行われているテレワーク業務からそのまま移行し、勤務規定正式移行は翌月1日に施行する事とする〉』ふーん、思うところはあるが楽と言えば楽だな。ノートPCとネットワークがあればどこにいてもいいという事か。

 会社は、通勤手当に電気代、PCの費用も削減できて…… それ全部もしかしなくても今後は個人の持ち出しか? PCも自分で持っていないと仕事できないんじゃ?

 まあいいか、時間はできたし駆除ライセンスを取って、魔石でも売ろうかな。一匹500円目指せ一日20匹かな。

 そして俺はプラプラと、この前ゴブリンに会った川の横に来た。この前には立っていなかった注意喚起の標識が立っていた。『この付近ゴブリン目撃多発 注意』だが付近を30分くらいぶらぶらしたが現れないので、川をのぞき込んだ。バシャバシャしていたのはこの辺りだよな…… うん? 真下に土管のふちが見える。

 川に降りる傾斜は、あまりきつくないから降りてみる。
 見えていた土管の開口部は、大人が中腰でやっとな感じの高さだから1mくらいか?

 中を覗き込むが、奥は見えない。
 結構深いな…… スマホを取り出し奥を照らす。 う~ん見えないな、仕方がない。

 おれは、奥を照らしながらしゃがみ込んで、よちよちと進んでいく。
 25mくらいで、少し広くなった四角い部屋にたどり着いた。
 ここには4方向から、コンクリートの管がつながってきている。
 右からきている少し細い管には、一部に排水用のグレーチングがはまっていて、そのおかげか少しは明るい。

 しかし気が付いてしまった。
 さっきからわずかに聞こえる声は正面の管からで、それも複数だ。
 ごくっと、つばを飲み込み、奥へと進んでいく。この体勢で、今襲われるとまずいんじゃないかと思い、背中に背負ったバットを取り出す。
 ほぼ余裕はない長さだな、突くしかないか。

 そのまま10mほど進むと、一段低くなったところに、周りの壁と違う穴が開いていた。高さはそちらの洞窟の方が2m以上あり余裕はある。

 これは、ダンジョンだよな? 周りの排水路からの水が流れ込んでいるのが気になるが奥へ進んでいく。

 時たまゴブリンが出てくるが。バットの方がリーチ的には長く地道に倒していく。
 1層が1km位で下に行ける階段が見つかる。
 順に下っていく途中で、体が何回か暖かくなった。

 10階層を超えたあたりから魔法を使って来ていたり、ぼろい剣を持ったモノが現れるが、俺の金属バットは無敵だった。


 そういえば、いつの間にか周りが暗いのに、目が見えるようになっていた。スキルみたいなものを取ったのかな?

 その後も、ゴンゴンしながら進み、魔石もザックに結構たまった頃…… えーと次が20階くらいかな?

 下へ降りる階段? を覗くと、結構立派なサイズのゴブリンがおぼれそうになっていた。階層を超えることができないのか、水面からようやく口を出している…… モンスターって呼吸するんだね。

 上から流れ込んだ水で、20階が水没をしたのか。

 見えている手や、顔の大きさからすると身長3mくらいかな? まともに戦うと結構やばそうな感じだけれど……。 バットで突っついてみる……。

「グ…… ゴボ」
 何か咆哮を上げようとして、大量に水を飲んだようだ……。

 また、つんつんしてみる。
 ごぼごぼしている……。

 ザックから飲み物や食い物をとり出して休憩しながら、でっかいゴブリンを突っつくお仕事に従事して30分くらいかな?

 彼は死闘の果てに傷つき、両の眼を見開いたまま…… 力尽きたようにゆっくりと沈んでいった……。

 ああ逝ってしまったのか……。
 
 さらば好敵手ともよ……。
 
 俺は君が何を思い、何に信念を貫き逝ってしまったのか知らない。だが安らかなる心の安寧を持って、君が眠ることを私は切に祈ろう。


 体が熱くなり、レベルアップ? と目の前に何かクリスタルが大小2つ現れた。手を伸ばし小さいのをつかむと消えた。大きい方は手を無視して胸に吸い込まれていく…… あん?
 何か、頭の中へ情報がガンガン流れ込んでくる。

 これはあれだな…… ダンジョンマスターになったのと、創造者(クリエイター)は俗に言うスキルかな。

 意識を集中すると、このダンジョンの構造が分かる。とりあえずあいつの魔石がもったいないし、入口の壁を少し高くして、さらにこの下にたまっている水を、もう一階層下を作って流そう。

 見る見るうちに、水が減ってきて階段下のところに落ちている10cmくらいの魔石を拾う。すごいな、普通のゴブリンが1cmくらいの魔石でその10倍か。ひょっとして特殊個体だったのかもしれないな。

 奥にはボスの広間とさらに奥がありクリスタルが浮いていた。手を伸ばすと今度は勝手に胸に入り込むこともなく触れた。

 マスター空位のイメージが頭に浮かぶ。ダンジョンマスターとこのクリスタルは別なのか。ダンジョンマスターがダンジョンを作り、後の管理をこいつが自動化してくれると…… ほうほう。

 ということは、これを持ち出せば、ダンジョンは死ぬんだな。
 つかんで、ザックに放り込む。
 意識を集中して、隠し部屋とかがないことを確認する、よし帰ろう。

 頭に浮かぶマップの出口に意識を集中するとダンジョンの入り口に転移できた。おお便利だ、ついでにこのダンジョンを操作して消去する。

 さあ、今度こそ帰ろう。

 いろいろ貰ったしラッキー。
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