上 下
30 / 45
第一章 異変の始まり

第30話 二股は駄目だけど

しおりを挟む
 次々とやってくる。エレメンタル達。
 つくしに話を聞いて、ぽいぽいと力を投げてくる。
 火に光。闇。空気。水。
「命名。火は炎花(ほのか)」
「命名。光はひかりで良いや」
「命名。闇は、えーと千の影。ちかげ」
「命名。空気、というか大気か? いやいい。そのまま、そら」
「命名。水は、えーとそうだな。水繋がりで、いずみ」

 疲れた。
「どうだ」
 エレメンタル達が、変化をし始める。
 それに応じて、なんだか俺の体に繋がりが出来る。
 だが、一気に何かが持って行かれる。

 一方。
「あれ。おかしい。力が抜ける」
 そう、沙羅は自身の体から、力が抜けることになった。
 無論、すべてでは無い。
 まだ、エレメンタル達との繋がりは感じる。

 泉の側で、へたり込む。
「おかしいよー、皆。帰ってきて」
 願うが、なぜかそれは聞き届けられない。


「さて、変化が終わり、実に良い景色だが困る。非常に。諸君、私は健康な大学生だ。色々とおさえるために服を着てほしい」
「服というのは、そなた。あーなんとお呼びすれば」
「名前は、新世 改。あらたで良い」
「分かりました。改が身に纏っているような物ですね」
 土と水、火が、一瞬姿を消す。

 次に現れたときには、大量の糸を持っていた。
 それが空中で、ばらけ、紡がれていく。
 それを座り込み、俺は眺める。
 彼女たちの体を、見納めとばかりに目に焼き付ける。

「これでどうでしょう?」
 色は、白一色だが、きちんと形になっている。
「うん透ける感じは無いし、良いだろう」
 俺の着ているものを参考にしたのか、ワイシャツにチノパン。

 靴も、いつの間にか創られている。

 俺も自身の中で、力の使い方が分かる様になった。
 水を出し、飲んでみる。
 まあいける。
 
 考えるのは、城の中の彼女たち。
「助けるか」
 そうつぶやき、立ち上がる。
「おい。ひかり。浄化って体の毒物を消せるのか?」
「体の中は、解毒という考えで、力を使ってください」
「分かった。ありがとう」
 ニコッと笑い、礼を言うと、なぜかひかりが驚く。

「なんでしょうか。いま、笑顔でお礼を頂いたら、胸の内に温かいものが。これは、なんと言えば良いのか分かりませんが。こちらこそ、ありがとうございます」
 ひかりが、オロオロしている。なんとなくかわいい。
 頭をなでてみる。

 すると何故か、ひかりの頬に、涙が流れる。
「ありがとうございます」
 またお礼を言ってくる。あれかな、精霊いやエレメンタルか。まあその時は、感情が無かったから、びっくりしたのか?

「じゃあみんな。手伝ってくれ。捕まっている人を助ける」
 そう言って、また城に入る。

 階段を降りると、檻も無いのに相変わらずいちゃついている。
 正気になって騒がれても嫌なので、先に備えているものを見る。
 バスタブや、トイレ、シーツなどもあったので説明をする。
 無論ベッドや、弁当も見せて、中のものについて説明する。

「持っていけるものは、持って行きたいな」
 すると、そらが教えてくれる。
「空間と、次元境界について専門ではありませんが、簡単なものなら使えるはずです」
 それを聞いて、イメージする。
 別空間に、倉庫を置いて、そこへ物を入れる。
 いちゃついている、四人を床へ下ろし、ベッドも収納。

 彼女たちの、体型に合わせて服を作って貰い、解毒を使ってみる。

 すると、必死だった動きが、ゆっくりになり、やがて現状が理解できたようだ。
「げっ。なんでこんなにデロデロに。あっそうか、思い出した」
 四人がオロオロし始める。

「正気になったなら、服を着てくれ」
 声をかけたら、叫ばれた。

「あんた誰?」
「通りがかりの大学生。新世 改。異世界側に来たら、城があって、あんたらがいちゃついていた。ここに居るなら良いが、帰るならその服を着てでよう」
 そう言うと、服を着始めた。

「あの? 帰れるの。ですか?」
「多分ね」
 見た目は、ヤンキーぽいが、悪い感じは無いのか?

 服を着た後、外へ出る。

「さて、俺を攫った所はどこだ?」
「ご案内します」
 そう言って、全員を連れて転移した。

「ここですが、すでに閉じていますね」
「どこが、開いていた?」
「ここです。向こう側の精霊に、空間を渡る許可をもらいに行ったのですが、出来るなら別に良いよと言うだけで、力ももらえず。開くことが出来ません」

 開いていた場所を、感じる。
 あの時と同じように。

 手を差し込み開く。
「おお、素晴らしい」
 目の前に、波紋が広がる。

 顔を突っ込み確認。
 振り向き、女の子達を呼ぶ。

「ここから、帰れるはずだ。ひょっとすると、まだ警官も居るかもしれない」
 そう言って、四人とも連れ出す。

 エレメンタルのそらが、何かに気がついたようだが、俺は日本側にでる。

 その時、エレメンタル達は、大きな喪失感を感じる。
 この苦しさは一体。
 半身を失った様な。

 無論。日本側で、俺も感じていた。
 だが、こっち側での生活もある。許せ。
 
 だが、そんな事。許されるはずは無い。
 一瞬の間に、異世界側。

「改」
 全員が、俺に抱きつき、泣いている。
「あー。うん。エレメンタル6人いや柱か。それに万結と凪紗さん?2股は駄目と言われたが、8つなら良いか」
 全員を抱きしめる。
 帰りたいが、帰れない。

「どうしよう?」
しおりを挟む

処理中です...