地球に奇跡を。-地球で魔法のある生活が、始まりました-

久遠 れんり

文字の大きさ
77 / 109
第四章 日本の竜司から、世界の竜司へ

第78話 初めての対魔王戦

しおりを挟む
 アメリカ。
 カナダとの国境に近い山間部。

 湖の畔にあった、いくつかの町が次々に音信不通になり、調査をすればモンスターのコロニーが造られていた。

 軍とハンター協会が、今、合同作戦を行う。
 まず軍が、一斉射で小者のゴブリン達を掃討し、そこにハンター達が突入。
 威厳を見せるためか、その様子は中継がされた。

「ゴー。ゴーゴーゴー」
 そんなかけ声と共に、突入が始まる。
 陸軍兵達は、戦闘用ヘッドカムから指示を受け展開をしていく。

 それとは違い、ハンター達は悠々と突っ込んでいく。
 こちらは、チームごとに勝手に動き、目指せ初魔王退治一直線。
 まるで、半練りおやつを見た猫の様である。

 モンスター達、その数数千だが、大体は弱いゴブリンとかのモンスター。大物は全部合わせても千体居るか居ないかである。

 ただ大物は、弱いハンターでは対応できないし、小銃は効かない。
 軍や弱い者達は露払いを行い、肉壁に穴を開けていく。

「いけー、オーガだ」
「ひゃっはー。俺が一番だ。誰も手を。うぎゃぁぁー」
 目標のオーガの脇に、オークが武器を持ち佇んでいた。

 乱戦状態で、対象だけに意識を集中したものは、串刺しにされ、ぽいっと投げられる。ほら餌が来たぞという感じで、ゴブリン達に振る舞われる結果となる。

「おう、馬鹿が逝ったぞ」
「俺様だったからなあ。惜しくもない奴を、亡くしてしまった」
 仲間だろうが、悲しむそぶりもなく、彼らは周りのモンスターを掃討していく。
 彼は、嫌われていたようだ。

 軍が彼らの周りを切り開き、小者を駆逐していく。
 言わばどこかの団体が発狂しそうだが、団体構成員達は激減していた。
 身近で襲われるからだ。
 人は我が身に災難が降りかかると、理想よりも現実を優先する。
 つまり色々と言えるのは、平和だからである。

 その様子を一段高いところから眺めていた彼だが、部下だろう。
 もう一人の、女性型角ありに何かを囁く。
 飛行型モンスターが一匹空に上がり、何かを発しながらくるりと輪を描く。

 軍のバリケード。その外には見物の者達が押し寄せて、屋台と共に店が出店し大騒ぎだったが、妙な振動が周囲の山から近付いてきていた。

 彼らは気がつかず、お祭り騒ぎを続けていたが、端からその攻撃を受け始める。

 最初は何か判らなかった。
 だが悲鳴は徐々に広がり、中央部へと近付いてくる。

 この時点で、すでに千近い市民が犠牲になっているが、後背のことで気がつかない。

 魔王は、周囲の山中にモンスターを放ち、次の餌場を探していた。
 それを、呼び戻した。

 軍を始め、ハンター達もモンスターを舐めていた。
 組織的な働き、それがどれだけやっかいかを知ることになる。

 まさに、人間側が包囲殲滅状態。

 気がつけば、物見遊山だった市民達は阿鼻叫喚の地獄絵図。

 車に乗り込み、大柄な車体を生かして、ゴブリン達を轢きながら脱出を目論むが、大柄なボアが側面から突っ込んできて引っくり返す。

 そんな様子を、気がついたカメラが撮影して流してしまう。

 人々は生きたまま食われ、犯される。
 そんな影像が、WEBを通して流された。

 いくつかのチャンネルは即時に遮断をしたが、アメリカに反感を持った国などでは面白おかしく流された。
 自国にもコロニーがあると言うのに。

 そうして混沌の中、指令本部から増援がよこされ、外からまた人間が攻撃を始める。
 空挺による増援。
 規模を減らしていた戦闘ヘリが、急遽武装を取り付け派遣される。

 その戦いは、三日三晩続き泥沼となる。

 他州からも、ハンター達が集まり、その中で光を纏うものが幾人か現れる。
 だが食料もなく戦い続けては、せっかく現れた希望のたねも駆逐されてしまう。

 そんな中、同盟国に派遣要請がやって来る。

 各国のトップチーム。
 その中には、VIPで有りながら派遣される。
 ドラゴンズアイ。

 初めてヘリに乗り喜ぶ面々と、袋を抱えて青い顔で蹲る面々。
 身体能力と、乗り物酔いはイコールではないようだ。

「ああ、ひどい目にあった」
 そう言っている竜司の脇で、まどかは軍用車両でわざわざ寄って、買って貰ったハンバーガーをもぎゅもぎゅと食べている。
 途中でドライブスルー専門店を見つけたためだ。

 好きなドリンクを、ミックスしてオーダーできることが有名らしい。

 少し山側で、すでに解放された陣地へ降り立ち、ヘリの爆風を受ける。
 まどかは、全身全霊で袋を死守。

 そんな中で、ヨーロッパから派遣されたチームに居る男、ディアヌ=マリユスを見て竜司は違和感を覚える。

「あれ、本当に人間か?」
 彼の中に渦巻く魔力に、黒いものを感じる。

「まあ、チームとしてきているんだ。いいか」

 各チームの力は圧倒的だった。
 主に攻撃魔法だが、独特の進化をしている。

 炎が蛇の様に走る。
 それも、複数対象に向かい同時に。

 ある者は、手の一振りで対象のみを切断。
 中に紛れる人間は無事。

 火の粉が空に巻かれると、モンスターのみを攻撃する。

 まどかのモンスターも、巻き添えを食う。
「また殺された。彩みたいなのが何人も居るとやりにくい」
 そうぼやいている。

 そんな中。竜司とマイリ、悠月の周囲には光が広がり、それに触れたモンスターが消滅をしていく。

 その光景は、複数居るハンター内でも異質。
 その噂は、広がっていく。

「あれは、例の対象者です」
「捕獲。いや駄目だろうなあ」
 目の当たりにした軍関係者は、その圧倒的な力を見て、今更ながらなぜ作戦が失敗をしたかを理解した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

究極妹属性のぼっち少女が神さまから授かった胸キュンアニマルズが最強だった

盛平
ファンタジー
 パティは教会に捨てられた少女。パティは村では珍しい黒い髪と黒い瞳だったため、村人からは忌子といわれ、孤独な生活をおくっていた。この世界では十歳になると、神さまから一つだけ魔法を授かる事ができる。パティは神さまに願った。ずっと側にいてくれる友達をくださいと。  神さまが与えてくれた友達は、犬、猫、インコ、カメだった。友達は魔法でパティのお願いを何でも叶えてくれた。  パティは友達と一緒に冒険の旅に出た。パティの生活環境は激変した。パティは究極の妹属性だったのだ。冒険者協会の美人受付嬢と美女の女剣士が、どっちがパティの姉にふさわしいかケンカするし、永遠の美少女にも気に入られてしまう。  ぼっち少女の愛されまくりな旅が始まる。    

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...