ダンジョンのできた世界で、俺は世界を救えと望まれる。えっ、やだよ。ーその男、神の遊戯に巻き込まれて最強となるー

久遠 れんり

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ダンジョンができた世界。

第25話 ぐぬぬっ

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「部隊を編成して、あのデーモンの湧き出る穴へと突入せよ」
 その日、某国の大統領は、苦渋の決断を行った。

 陸軍の兵士を、あの悪魔達が蠢く所へ突入させる。
 そんな事は、避けたかった。
 
 それはなぜか。
 危険なのだよ。


 支持率が……

 兵達も、その家族も票を持っている。
 もし、これ以上死亡者が出れば、確実に支持率は下がり、獲得票は減ってしまう。

 それなのにだ……
 日本から来たデータと報告書。
 内容を読んで、見なかったことにはできなかった。

 もし対応をしなければ、今と同じように、奴らは地上へと出てきて暴れ回る。
 いやきっと、今以上にひどくなる。

 封じれば増える。
 壁で周囲を囲い、自動で処理しているのだが、その経費が馬鹿にならない。

 そして、時間がたつにつれて、モンスターは凶悪なものになっていく。
 すでに、ゴブリン達は出て来なくなり、出てくるのはオーク達や凶悪なスライム。
 ときに、かなり大きな狼やオーガなども混ざり始めた。

 その中でも、最悪なのはスライムだ。
 奴らは、扉の隙間からにじみ出して逃亡し、外で増殖をする。
 家畜の牛を窒息死させて、食ってしまう。

 市民からは、食事用の肉が食われたとか、ペットが食われたとか、芝生に僕悪いスライムじゃないよと落書きされたとか苦情が来ている。
 彼等は、対応に困り果てていた。


 そこに降ってきた、同盟国日本からの報告書。
『あれは神から与えられた、人類の進化を促す試練です。人は自らの手で、魔の物を退治することで自身をバージョンアップして新たなり人類へと生まれ変わる。その変化として、魔法が使えるようになります。これはあなた方の言う試練。それを己が力で越えることで初めて、一歩神の元へと近付くことが出来ます』

 それを読んで、大統領は鼻で笑う。
「ふん。神が何かを知らぬ者が偉そうに」
 大統領は、テーブルの上に無造作に手紙を投げる。

 だが、これに書かれていることが本当ならば、人は手順を踏むことで、今まで持っていない力を手に入れる事になる。
 超人達が闊歩する中で、力を持たぬ者達は滅び行くのみ。
 過去に人類達が、ネアンデルタール人などを駆逐したように……
 特にこの国は、強き者が正義という風潮がある。

 大昔から、超常の力はゴシップ雑誌を賑わせてきた。
 人は無意識に、強い力を求めている。

 特異点と呼ばれる人物がすでに居る。
 日本に言わせると、彼は神に選別され、使徒となった青年。
 いち早く進化をして、密かに生物学的なアルファ分類とされた。
 つまり、通常のホモサピエンスとは違う系統に分けられた人間。
 彼は新人類。それも凶悪な力を持っている。
 劣等人種である日本人…… カラードのくせにだ。

 記録によると彼は、陸上記録を簡単に半分以下にして、さらにデモンストレーションとして、無線操作の戦車五台を、素手でスクラップにして見せた。
 日本製のおもちゃのような戦車だが、そこそこの性能はある。
 通常、人の手で分解できる物では無い。

 送られてきた動画だが、その光景は圧倒的だった。

 場所は富士の麓。
 彼を直撃するはずだった砲弾を、簡単に受け止めて投げ返した。

 そして、彼が使った魔法。
 そう魔法だ。人が持つには凶悪で、思った以上に常識外れな力だった。

 どこかの古い映画のように、人を転ばせる程度なら無視しても良かった。だが、本物は違った。

 デモンストレーションということを踏まえて、各属性を使ったと注釈があるのだが、恐ろしいのは風だ。

 確かに、まとわりつく奇妙な炎で戦車の装甲や砲身が溶けた。
 風が吹きすさび、四十四トンもある戦車が宙を舞う。
 巨大な水球が、いきなり現れて戦車を吹き飛ばす。
 地が揺れ、地面が変化をする。

 だが、それでもだ……
 あの強力な金属板が、スカッと切られた。
 彼は狙いを定めるように、力なく腕を振るったのみ。

 最近の戦車は複合材料で厚さと強度が比例しない。だが昔の金属板で造ればその厚みは一メートル五十センチ相当になるという。それをまるで薄紙のように、切り飛ばしたのである。

 この事は周囲を十分に驚かせた。
 現代兵器が、一人の男に無力化されるのだ。
 
 だが実は、この報告書。少し間違えている。

 切る前に、戦車を持ち上げたのが風であり、切ったのは空間断。
 つまり空間魔法を使って、分子レベルでを切った。
 これは、実際に使われた場合、空間制御ができない限り、防御することはできない。
 理論的には、星でも切れる魔法なのだ。

 同席をした軍長官連中も、動画の真偽を随分気にしていたのだが、映像解析のテクニシャン達から、CGではなく本物だと説明をされた。


 大統領は、一匹目を殺した時に体が変化する分を考えて、あらかじめ兵達に説明をする旨を通達した。

 そうこの国は、訴訟大国。
 知らなかった時には、普通に対応させたのだが、今はその理由を知っている。
 兵達と、魔法使いになる事を承知させる文章と、国家の監視下に置かれることを承知する文書を作成して、説明後にサインをさせる。

 サインを行った者達だけを、今回の作戦へと向かわせる事に決めた。

 ダンジョン突入前に、USAコールが起こる。
 そう。この国はアメリカ合衆国。
 プライドをまもるために、こだわりを捨てた。

 旧人類への転落。
 ダンジョンへ入らずに、劣等人種のままでいることは、彼等のプライドが、その事を認められなかったのだ。

「祖国を守るためだ。本作戦を経て、君達は未来における地球の守護者。子ども達のヒーローとなるのだぁ!! 諸君はこれからデーモンを倒して力を得る。リアル版アメリカンヒーローにぃ…… 成ぁ、るぅ、のぉ、だあぁぁっ!! 諸君んん。突入…… せよぉ!!」
「「「「「おおおおおっ」」」」」
 部隊長から檄が飛び、彼等は突入していく。

 今回の作戦では、部隊内無線はあるのだが、C4Iシステムは、上手く運用ができずに使用していない。
 衛星電波がダンジョン内では通用しないのだ。
 それも、入り口すぐでいきなり途切れる。

 まるでそこに見えない壁があるように、世界が区切られていることが分かっている。
 それだけで、人外な現象である。

 そのために、ダンジョンの周りでは、できた当初から宇宙人説、悪魔説。
 日本人のサブカルチャー宣伝の新技術とまあ。それが本当なら、二回目の真珠湾攻撃だというとんでもない噂まで出ていた。

 だが今回、アメリカ国内では正式に布告された。
「神に使わされた天使による試練。人はこれにより神へと一歩近づけるであろう」

 どうしても彼等は、神とは認めず、悩んだ末にシンは天使にされた……
 彼等のプライドをまもるために、絶対に神ではないとされたのだ。
 百歩譲って、神の使いだろうと……

 シンからすると、どうでも良い話し。
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