ダンジョンのできた世界で、俺は世界を救えと望まれる。えっ、やだよ。ーその男、神の遊戯に巻き込まれて最強となるー

久遠 れんり

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始まった新世界

第47話 悪夢

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「今日は早めに寝るわ」
 そう言って、臨海のぞみ 香菜恵かなえは部屋へ上がる。

「疲れたわ……」
 薄暗いダンジョン内で、長い時間の緊張もあった。
 それに告白して、友達となって、初めて高原君のカッコいい勇姿をダンジョン内で見た。

 クラスを半分に分けて、三十分ごとに一チームが入る。
 殆どの時間は待ち時間となったけれど、彼等と沢山お喋りが出来た。

 それに、記憶。
「ダンジョンの中で、彼から…… 確かに好きだって言われた気はしたけれど、それが本当なのか覚えていないなんて…… 私って最悪。」
 そうして寝始めて、夜中に飛び起きる。

「うわ。気持ちワル」
 ダンジョンに行ったからなのか、ダンジョンで起こりそうな残虐シーンを見てしまった。
 オークに吹き飛ばされて、感覚が無くなった下半身。

 駆け寄ってきてくれた高原君。
「大丈夫だ。きっと俺が何とかする。臨海を守るから」
 そう言って彼は、私を守るために戦ってくれた。

 でも、一匹の時にはなんとか優勢だった彼も、二匹三匹とモンスターが出てくる度に不利になっていく。
「ぐわっ」
 彼がやられた。

 近くに吹っ飛んできた。
 私は手を伸ばす。
 彼も気がついたのか、手を伸ばしてくれる。
 なんとか手を繋ぎ、その温かさを感じる。

「すまん。負けちまった。俺…… お前のことが好きで、守りたかったのに……」
「ううん。十分頑張っていたよ」
 何とか、彼に近付こうとするのだけど、私も彼も足が動かない。
 多分二人とも、棍棒の直撃で背骨が折れたのね。
 夢だと思い、客観的に見ている感覚。

「あっ。ごめんね」
 私は彼の驚いた顔と視線に気がつきそちらを見た。
 モンスターが棍棒を振り上げている。

 あれが降ろされれば、きっと私を直撃をする。
 だからつい謝った。
 彼は力を振り絞ったのか、私の上に覆い被さってきた。
「えっ」
 彼の重みと温かさ。
「臨海。いや香菜恵。好きだよ」
「私も……」
 そこで、夢が途絶えた…… 

 いえ記憶?

 だけど、そんな事は起こらなかったじゃない。
 少人数でダンジョンを歩き、モンスターが出てくれば倒して、二階へは降りずに入り口へと帰ってくる。

 往復六キロメートルの行程。
 彼も、神保君達も連携をして強かった。
 ゴブリンを幾匹か倒して、いつもより多いと言っていた。
 そう無事に研修会を終了をして、彼等の勇姿を見ることができた……
 だけど体中に残る、このだるさ。
 奇妙な頭痛……

 何だろうか?



「―― うわっ」
 紫雲は驚き、目を覚ました。
 一階にいないはずのオーク達が、大量にやって来た。

 本当は五人で戦うモンスター。
 それを、一人で戦う羽目になってしまった。
 高原ほどの才能があればいけるだろうが、俺には無理だ。
 背後に夢野を守りながら戦う。

 神保は最初の直撃で吹っ飛んでいった。
 あれから話しをする度に、俺達は彼女に洗脳されていき、二人共が彼女と付き合うことにした。
 まあ神保は、彼女を恋愛の練習台にすれば良いなどと言ってヘラヘラと笑っていた。それを聞いて、俺はちょっとムカッとしていた。だが、おれはそれを言い触らすような男じゃ無い。
 
 そして来た。
 あるはずのないダンジョン内での地震。
「何があった?」
 ダンジョンは別空間のため、核攻撃時でも安全と言われている。
 多くの自治体ではいま、地震の避難所にもなっている。

 彼等は二年なので、一気に雪崩れ込んでいく生徒達。
 その集団の中頃に居た。
 振動の原因は分からない。でも、行列のかなり先で異変は開始し始めていた。

 だが先頭の方には三年生がいる。
 そこには彼女達がいて、率先して皆を守っていた。

 だが、それは何時までも続かない。
 殺戮と惨劇は、彼等に向かって確実にやって来ていた。
 人が、悲鳴と共に暗闇で飛び交う。

 生徒達は大量にいるから、彼等の強力な一振りで数人が跳ね飛ばされる。
 それもまともな戦闘経験の無い連中。
 恐怖を感じて、彼等の多くは動くことが出来ずに立ち尽くす……
 それは、ただの肉壁となる。

 おかげで前進も後退も適切には出来ない。
 ただもみ合い、生徒達は自ら、逃げ道の無い地獄へと向かう状況を作り上げていく。
 ただ殺されるのを待つだけ……

 そんな中で、数人は誰かを守るために戦う。
 だが、力は不足。
 本来チームでやっと倒せるオークに、一人で立ち向かう。
 ただ誰かを守るために。

 人の付き合いは時間の長さじゃ無い。
 切っ掛けと思い。
 大事な人になるのに、時間は大事では無いんだ。
 紫雲は、勇者信者。
 勇者とはこうあるべきと言う思いを、オークにぶつける。
 たとえ誰にも見られていなくとも。

 エクスカリバーと名づけた、振り出し警棒を装備。
 彼は皆を守るために走り始める。

 そして、簡単に……
 本当に簡単に、棍棒の直撃を受けて飛んでいった……


「―― 龍端くん。これは一体何が起こっているの?」
「分からんが、俺達のチーム。三人は一組だ。みんな、前に行くぞ」
 そう言って、わいわいと騒いでいるクラスメイト達の脇を抜けて前に向かう。

 すると、前の方からものすごい血の匂い。そして悲鳴が聞こえる。

「危ない」
 龍端くんが持っていた金属バットで、オークの振るった棍棒を受け止める。受け流せなかった。
「ぐわっ。畜生手首をやっちまった。おい皆、入り口に向けて逃げろ」
「君は?」
「俺はこいつを何とかする」
 かれは、オークと睨み合いながら、手で追い払うような合図をして、皆に行動を促す。

 当然、僕以外の連中は一気に逃げ出した。

 僕は、怖かったのだけど、頭の中で何かが囁く。
「逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ……」
 そんな言葉が、頭の中で響く。

 すると、いきなり世界が変わる。
 それは凶悪な何か…… 
 僕くらいでも感じることの出来る、周囲に撒き散らかされる恐れ。それは大きなプレッシャーがやって来た。

 そいつは、人波を…… 壁を走ることで回避をして、やって来た。人とは思えない。

 周りで人をいたぶっていたオーク達の動きが止まり、ガクガクと震えると、いきなり破裂した。
 ある奴は、いきなりバラバラになったり、訳が分からない。

 ダンジョン経験者が数人がかりで押さえられず、苦労をしたあげく棍棒の一振りで殺されていた。

 そんなオークが、その人? が近寄る先でいきなり破裂する。
 間合いは、五メートル以上開いている。

 その人? は、殺された生徒達を悲しそうな目で見ていた。
 飛び抜けて美形という感じでもない、ただ普通だけど、身に纏う雰囲気が普通じゃ無く、怖くて美しい。
 暗いのに、なぜかその時僕には見えた。

 矛盾をしているのだが、彼はきっと、人では無い別の生物なのだと、自分の中の何かが納得をする。
「神様?」
 ふとそんな事を思う。

 そんな彼は、慈悲などなく。押し寄せてくる来るオーク達を簡単に殺し、前へと進んでいく。
 僕は追いかけた。

 だけど追いつけずに、見失った。

 そして少し先、三年生の亡骸が転がるあたりで、彼は誰かを拾い集めて泣いていた。
「もっと鍛えればよかった」
 そんな事を言いながら……
 そんな場面で、いきなり声が聞こえて、光に包まれた……

「あー、仕方が無いのう…… ほれ」
 雰囲気に合わない、そんな気の抜けた言葉。
 光りに包まれると、そこで意識が途切れて……
 気がつけば、まだ僕たちはダンジョンに入る前だった。

 棍棒で殴られて、死んでしまった龍端くんもまだ生きている。
「あれは夢?」

 奇妙な体のだるさと、頭痛がする。
「あれは一体、何だろう?」
 ただ困惑をしながら、僕たちは順番待ちをする。
 茹だるような暑さの中で……
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