不運だけど、快楽と無双を武器に、異世界を生きていく。

久遠 れんり

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第3章 貴族兼教祖時代

第21話 町での布教

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「ご苦労」
 村々を、信者に変えながら行軍。

 二つの町のうち一つ目。テルミヌスセクドの町
 中間だから、少し小さく千数百人。
 そう、基本城郭都市はそんな物らしい。

 もう一つは、テルミヌスの町少し大きいが、宿泊拠点の意味合いが大きく、人口は流動的で固定人口はやはり二千数百のようだ。

 だからまあ、兵達と住民の人数がほぼ同数。
 門が開けば制圧は楽勝だった。

 降参をすぐにしたから、町長はそのまま。
「コンラート=ヤンケ殿、久しぶりだな。息災か?」
 上座と下座が入れ替わる。

「おかげさまで、閣下にはお変わりなく」
 閣下と呼ばれる役職でも無いが、この大阪河内の人? みたいな名前の人は俺達が来たとき、胃潰瘍で死にかかっていた。

 敵として突っ込んできてみると、血を吐いて苦しんでいるから、服毒かと思ったら、ストレス性の胃潰瘍。
 だが、胃液が体内に漏れると、命に関わるから危険なんだよ。

「あなた様に救われた命、大事にしております」
 そう結構、細面のひ弱そうな人。
 牙が生えたら、ドラキュラ辺りの役がぴったりきそう。

「今回正式に、私が、此処の領主? 代官?となったらしい、此処の統治は貴殿にたのむ。ただし国は…… ああそうだ、なんと言ったか…… ベルンハルト王国らしい、此処の領主は、実質的には辺境伯アドリアヌ=レンセンブルク侯爵なのか?」
 うろ覚えの情報を伝える。

「あの時の感じだと、男爵様に治めろと言われた感じですが」
「一度確認をしよう」
 なんだか、らしいといえばそうだが、ぐだぐだ。
 わかんねえよ貴族なんて、日本人で詳しい奴なんて、周りにいなかったぞ。

「町の現状を確認をしよう、台帳を出せ」
「はっこちらに」

 俺が、台帳を見ている間に、こそこそとロニー達が話をする。
「男爵様は国に対してもお詳しくない様子、平民からの抜擢でしょうか?」
 この世界での常識を照らし合わせ、なんとか無理のない解を町長は導き出す。

「それがな、侯爵から口止めされておるのだがな…… 絶対他言をするではないぞ。師と仲の良かったギルドマスターが、神の御使いだと言っておったらしい。無論聞いても信じられなかったのだが、我は奇蹟を幾度も見た。師は御使いでは無く、神だ!!」
 力強く囁くという、器用なロニー。そして他言するなと言いながら、吹聴しまくる。

 それを聞いて、町長は納得をする。
「真ですか。そうか…… それなら、実はデスね、町の門には魔導具が用いられて、魔法無効のはずなんです、それが全く効かず、魔法一発ですもの。それに私の病気も此処の司祭は治せず、薬師にリックーンシという薬を貰っていたのです」
 ふむ、怪我では無く、病気ならば薬師の領分。
 だが、師は関係なく治療を行うな。

 農村でも、人に巣くう虫とやらを取りだして燃やし、滅していた。
 村娘から、這い出したものは二メートルほどもあった。

 見ただけで見極め、あわてて年頃の娘を脱がし出したときは驚いたが、親も尻から虫が這い出す姿を見て驚いておった。
 その後は、きちんと師に対し感謝を述べ礼を言っておったが、最初は父が睨んでおったからな。

 最後に村人が整列をして、見送る光景を思い出す。
 
「そうだ。すべての事柄が、神であることを証明していく。間違いない、きっとギルドマスターには謙遜をして御使いと述べたのか、この世界で肉体を持った体の時が御使いなのか、どちらかだろう?」
 そう囁かれて、コンラートは気が付く。

「それでは、神から御使いとして使命を受けたという、真の神しんのかみ教団はおかしいという事になりますな」
「そうだ。偽物だから、病気が治せず中途半端なのだ」
 ふむふむと、わずかな間に仲良くなったようだ。

「おい、地番の地図、これだけでは判断をしにくい」
「はい、ただいまお持ちいたします」

 ニコニコしている、副官ロニーに聞いてみる。
「何をそんなに嬉しそうなんだ?」
「いえ、分かるのもには、きちんと分かるものだと理解できて嬉しい限りです。それで、この町にも、真の神教団という、偽物集団の出先がある様ですが如何しましょうか?」
「真の神教団? なんだそれは?」
「詐欺集団でございます。多少治療が使えるようですが、高額なお布施を取っておる様子」
 やれやれと、大げさに困った様子を見せるロニー。

「そりゃいかん。民に被害が出る前に対処しろ」
「御意に」
 そうそう、物事を知らない人間は、良い様に騙される。
 何かをするときは、自分で調べないと駄目だよね。

 僕はこうして、言葉一つで宗教戦争を始めました。
 ええ、詐欺師なんていうんだもの、そうなんだよ…… 情弱な人間は何処に行っても不幸になるらしい。


 真の神教団は、いくつかの国が国教として崇め、小国だが教団の国、教国がある。
 そう兵達が、此処に教国を造ろうと言ったのは前例があるから。

 この日俺は、知らない間に教国に対して宣戦を布告した。

 ええ、『俺ってひょっとすると不幸じゃ無いのか?』
 これから先、幾度これを言う事になるのか、この時の俺は、向こうで得られなかった承認欲求を刺激され、舞い上がっていた。

 耳から入ってくるヨシュート様、や、ありがとうございますという御礼。
 それらが聞こえてくる度に、酔っていた。

 住民を確認をしながら、病気を治し、怪我を治し、家を直し、むこうでの知識を生かして、上下水道を整備して治して、下水は地下に水漏れをしないプールを作製、壁全体から浄化魔法を放つ魔導具を埋め込む。
 そうスライムが浄化に使えるなど知らずに力業で浄化システムを創った。
 魔導具は、周囲空間の魔素を使う造り。

 小さな魔導具は、魔素を集めるための魔導具で、その魔導具が集めた魔素が浄化に使用される。

 その装置が、騒動を大きくすることになる。

 当然そんな事など俺は知らない。
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