不運だけど、快楽と無双を武器に、異世界を生きていく。

久遠 れんり

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第3章 貴族兼教祖時代

第30話 ゴーレムのすすめ

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「予算が無くてな……」
 淋しそうな顔になる。
 動けば強力な力となる。

 それは分かる。だが、仮想敵は何を考えているのだろう?
 この世界で、一八メートルのものが必要だろうか?
 材料は石とはいえ大量に必要となる。必要魔力も膨大。

 予算は無い。
 そのおかげで、三頭身のゴーレムが大量にある。

「こいつでも良いし、小さなものを造り金を稼ぐ。そこから大きなものに移行をすれば予算は何とかなるのでは?」
 そう説明をしても、何言ってだこいつ? 素人が訳が分からぬ事を言ってんじゃねえ状態。


「例えば魔導具。これはアクチュエータータイプで私が作ったものです」
「ほう。回転運動が直線運動になるのだな、これなら直接押し出す動きにすれば……」
「負荷がかかったときに、不安定になりますよね」
 そう言うと、なんでそれをという顔になる。

「負荷用には、ヘリカルやウォームギアと言って螺旋とギアを組み合わせます。こうすれば、入力の負荷はギア部で止まる」
 そう螺旋とギアを組み合わせば、ギアを単純に組み合わせたときに発生する、高負荷時の逆回転が起こらない。

「まあそれは良い、問題は、こんな魔導具を作るゴーレムを作製すれば、工業生産物が自動化できる。飯も休憩も必要なく、二四時間動き続ける」
 この世界、ゴーレムは戦闘職としか考えていなかったらしく、鱗どころか目が落ちそうになっていた。

「ああ、目が落ちます」
 思わず指摘してしまった。
「すまない」
 そう言いながら、彼は目を押し込む。
 彼は意外と、簡単な造りのようだ。

 その後汎用品、つまり剣や鍋、鉄を溶かし型に入れて今のを造る行程と、力が出そうなので、プレス機械をゴーレムで造った。

 今までカンカンと叩いて伸ばし、作っていた鍋が、プレス一発で作れる。
 試すと剣もそれで造れた。
 焼き鈍しの温度を決めて、しなやかさの中に一本通った堅さを持った剣が造れるようになった。
 ここまでで、わずか一週間。

 鍛冶師の親方に剣を見せに行き、評価を聞く。

「この鋳物は、弟子の方がましだが、こちらの鍛造とか言ったな、こっちはすごいな。弟子よりはましだ。わしには負けるが……」
 そう言ったが気になるようで、表裏を見ながら時折刃先をなでる。

 そこで気がつく。
「こりゃ二種類の鉄を張ってあるのか?」
「ええ、気がつきましたか。一パーセント程度の炭素が入っています。刃の部分は固く、周りは柔らかくしなるように造っています」

 そう言うと、裏に回る親方。

 いきなり、物干しの支柱を切りやがった。
 だがはじかれることもなく、スカッと切れる。

 動きが止まり、切れた支柱と刃を交互に見比べる。

「刃こぼれもない……」
 呆然としながら、台所へ行き、ひしゃくと鍋を持って来た。
 切れた支柱の頭にかぶせると、まずひしゃくをたたき切る。

 まあ切れたが、木に五センチほど刺さって止まった。
「ぬっ、抜けん」
 俺が近寄り、剣を抜く。

「おうそのまま、これを切れ」
 ひしゃくをどけて、鍋を切る。

 人間離れをした俺。
 スカッと鍋を切る。
 ただまあ、力任せなので刃が潰れた感じがした。
「潰れたか」
 刃を見ようとすると、親方が突進してきて、俺にぶつかりはじけ返る。

 見た目は親方の方が、三割増しくらい重そうなんだが。
「何もんだお前?」
 ぶつぶつ言いながら、剣を取られた。

「潰れと欠け、だが、この鍋は軽鎧より分厚い。これを幾らだって?」
「幾らにする?」
「材料費は、一〇分の一だ。銀貨一枚で良いんじゃ無いか?」
 テムール=レインがそんな事を口にした。

「ふざけんなてめえ、俺らを殺す気か、あの鋳物は金貨一枚、こっちは十枚以上にしろ」
 そう言われて固まる、テムール=レインさん。

「そんな事をすれば、儲けすぎになります」
「良いんだよ、それがゴーレムのすごさだ」
 俺はそう説明をする。

 そして、銀貨一枚で鍋を売っていたら、同じ様な理由で叱られた。
 鍋は、中銀貨一枚で話が付いた。

 そうして、ゴーレムファクトリーの副業は、商品が広がり、全くサイズの同じ工業製品は受けた。

 剣も、寸法違いで男性用三種類、女性用二種類で造り始めたが、子供用にもう三種類造った。
 量産して、安価に販売。
 意外と儀礼用に、鋳物の方も売れる。

 気がつけば、予算が潤沢となり、戦闘用ゴーレムも改良が進む。
「石をやめて金属にすれば?」
 そう言ったら、また目が落ちそうになる。

「しかし、それでは重くて…… ぬっ、あっそうか。金属なら中身をなくせば軽くなる」
「そうそうフレームと、プレートそれと、仮想的はドラゴンですか?」
「そんなものが来たら、町など一瞬で燃え尽きる。普通の兵だ」
「それらサイズも…… 冒険者が戦うのに、大変なモンスターはなんですか?」
「怖いのはやはりオークやオーガ。身長で二メートルちょっとじゃな、伝説のミノタウロスでも三メートルは超えんはずじゃ」
「ならそれで良いでしょう。武器は戦斧せんぷ辺りを持たせてやれば、振り回せば良いですし」

 また目を拾う。

「おぬし一体? 何者じゃ?」
「いや一介の男爵だった気が」
 この所、影の薄かったロニーが割り込む。

「ルーク。公爵でございます」
 そう言ってしげしげと、紹介をする。

「はっ? 公爵殿?」
 今まで普通にしていた、テムール=レインさんいきなり土下座。
「数々のご無礼、平にご容赦を……」
「ああ、だいじょぶですよ。今まで通りで」
「ぬ、そうか、では造ろうか」
 何事もなかったように、彼は作業を始めた。

 部材は、一見すると薄い鉄板だが、ハニカム構造をとっている。
 まあそれは良いけどね。

 じつはここに来だしてから、女の子と言っても十四歳くらい? 第三王女シャルロットさまが、周りをうろうろしている。
 まだ未成年だし、俺のスパイとして王様から命令されたようだ。
 それで初っぱなに、ぶつかりそうになって触っちゃったのだよ。
 まあ懐かれた。うん。
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