不運だけど、快楽と無双を武器に、異世界を生きていく。

久遠 れんり

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第6章 魔人族大陸平定

第103話 終わっていた大地

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 三日ほどで半島の根元まで来た。

「景色が横広になったが……」
「これはひどい」
 風の流れか、山々には枯れた木々が立ち並び、葉は茂っていない。

 平野部の所々にも、木の幹だけが立つ固まりが存在をする。
「あれは、森とか林だったんだろうな」
「そうですね」

 そんな終わった世界で、所々で砂煙が立つ。

 腕が四本ある熊と、人だろうか? 動きからするとまともな人間では無さそうな集団が蹴散らされている。

「あれ、熊のモンスターとゾンビですかね」
 モンスター同士も、壮絶な弱肉強食が繰り広げられているようだ。
 俺達は、少し休憩がてら半島部分にモンスター避けの壁を作る。

「行くか」
 そうして、世紀末の様相を見せる世界へ足を踏みいれた。
 問題は……

「ユキ、地図」
「はい」
 地図といっても衛星写真。

 歩いてきた道から、この半島を推測する。
 四国の佐田岬のような細長い作り……

「なあ、今居るのはここだと思うんだけどさ」
「はい…… あら、何かの引っ掻き傷のような?」
「やっぱりそう思うよなぁ」
 大陸の端っこを、海の中から誰かが爪で引っ掻いたように見える。爪の部分が湾となり、残りの部分が盛り上がって半島となったような……

「気のせいかもしれないが、気持ちが悪いな」
「手だけでこのサイズ、何者ぉ」
「海は巨大ですから、何かいるのかも」
 ユキだけではなく、ヴァレリーとベルトーネも覗き込む。

 実は侵食により出来上がったV字谷が、地盤沈下をするとそんな感じの湾が出来上がる。
 フィヨルドとか、リアス式海岸とかがその類いだ。

 だが半島の付け根に山がなく、いきなり山が半島となっている。
 そう不思議な景色。

「まあ良い。方向は判った。行くぞ」
 そう言って、やっと出発をする。

 魔導車はラダー式フレームを採用。悪路走破性を上げている。
 無論、四輪駆動。
 前後の魔導モーターが回転差を読んでトルク配分をおこなう。

「この大陸、魔素が濃いですね」
「そうなのか?」
 本当は運転をしたかったのだが、俺には周囲探査。
 ソナーという役割がある。

 魔導具にもあるが、圧倒的に俺のレンジが広い。

「右前方、モンスターだ狙え。距離一〇キロ」
「まだ無理です。帝、星が丸いと仰ったのはあなたでしょう?」
 魔導車の上部から顔を出しても一七〇センチ程度の高さ、それだと地平線が四キロ半くらいとなる。

「了解。見えたら撃て」
 そんな事を言っているが、それは大型に属するモンスター。

 小さなスケルトンとか、ゾンビは命令を出していない。
 ぶつかっても、不幸な事故となるだけだ。

 だが予想外のものが居た。

 背後から、ものすごい勢いで集団が走ってきた。
 そいつらは、まるで船を追いかけるイルカのようだが、そんなかわいいものではなく、ゾンビ狼の集団のようだ。

「後続に告げる、狙ってもあたらないようだから、先頭車から浄化手榴弾を散布する。対閃光防御。散布」

 時限式浄化榴弾。
 聖魔法を発する手榴弾のようなもの。

 ボンと爆発するタイプでは無く、ただただ光る。
 継続時間は五分間。

「ヨシュート様今更ですが、聖杯を設置していきません? 帰りもこの道を使うのでしょ」
 ロニーの発案で設置をするが、有効範囲が二〇〇メートルくらいしかない。
 だから、四〇〇メートルくらいに一個設置。
 こいつが地味に、時間がかかる。

 面倒だから、設置型ではなく、聖なる珠型を作って自動的に散布をして行った。壊れてもいい様に、一〇〇メートルごとにボーリングの珠のようなものがコロコロと転がり出していく。

 皆、慣性というものを、知っているかい?

「前方、子どもじゃなく、ゴブリンのゾンビ集団、取り舵」
「ヨーソロ」
「船の操舵により影響が残るようだな」
「アッシもこっちの方がしっくりきます」
 運転手と、馬鹿なことを言っていたが、丁度二台目の車の横で、聖なる珠がゾンビたちにクリーンヒット爆散をさせて、右側面が泥だらけになってしまう。

「帝、転舵の指示はお早めに」
「了解」
 二号車に叱られた。

 日が沈みかけたので、宿泊の準備。
「聖杯を設置してきます」
「いや、ちょっと待て」

 ふむと探知。
 魔法を放ち浄化させて、すかさず壁を作る。

 半径二百メートルくらいの基地を作る。
「門と聖杯を設置」
「承知しました」

 中央に、噴水もどきを作り、魔導具を設置。
 共同の洗濯場と、洗い場。

 前は、各テントへ設置していたが、結構手間だし、皆でわいわいする方が良いという事で共同の場所を作ることになった。
 井戸端会議的な物が必要らしい。


「さあてと、誰か一台。いや、一緒に行ってくれ。食料と水も用意してくれ」
「どうしたの?」
「例のあれだ」
「ああ、生きているの?」
「今は多分、だがどこも時期が同じだからな、今日明日くらいがリミットなんだろう」

 移動中の探査に、弱い生命反応を見つけて止まった。
 調べると、洞窟の入り口を塞ぎ、中で籠もっていた人達が居た。

 そうは言っても、死に絶え、残りの一人も熱があり、水を飲ませると息を引き取った。
 死んだ人は、ヨシュートでも、たまにしか生き返らせることは出来ない。

「その洞窟も、入り口が埋められている……」
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