不運だけど、快楽と無双を武器に、異世界を生きていく。

久遠 れんり

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第6章 魔人族大陸平定

第105話 不適格者達

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 さっきから出てきているのは、瘴気に対する適応が不十分で、変異した者達のなれの果て。

 完全適合をすれば、大幅に体は強化されて、かなり理性が残る。

 その中間、ただ死んでしまい、ゾンビとなるもの、ゾンビだが体が変異するもの。
 理性が残り体が変化、理性があり体の変化すらも押さえ込んだ強者たち。

 体が変化した者達は、理性があってもどこか欠損していて、凶暴性、つまり本能だけで動くから、パターンを読めば倒しやすい。

 理性ありの変化無しは、まだヨシュート達は出会っていない。

 目の前に居るのは、五体で隊列を組んでいる。
 変異体となっているが、人の意識が残っているタイプだろう。

「よし展開、てぇ」
 一斉に魔道銃を撃ち出し始める。

 だが皮膚表面が強化されているのか、弾がはじかれてしまう。

「モード変更、貫通型」
 魔道具の場合は、錬成タイプを変更するだけで、弾の素材が変化をする。レボルバーのようになってしまった、モードセレクトダイアルを変更する。
 「タングステン、マシマシ。てぇー」

 流石にこの硬度は弾けなかったようだ。
「うがああああぁ」
 どこかに合図でも送るように一匹が叫んだ。

「なんだ? 近くに奴らの反応など…… あるよ…… なんだこれ? 洞穴か?」
 もう一チーム、お代わりが来たようだ。

 当然、俺達も待ってはおらず、洞窟へ向けて走って行く。
「敵に奇襲を掛ける。付いてこい」
「はい」

 こっちも近衛の一チームがくっ付いて来ている。
 前回の獣王戦と違い、皆仕事があるので張り切っている。

 到着と同時に斉射。
「皆、一応周囲警戒、知識があるから、罠がないか気を付けろぉ……」
 そう声をかける。だが、返事がない。

 がっでむ。なんと言うことだ……
 一応彼らは、俺の直属。
 近衛となっているメンバーだが……
 背後には、誰の姿もなくなっていた。
 俺ががっくりと膝をつく。

 どうやら、俺の移動速度に、付いてこられなかったようだ。
 座り込んで休憩をしようかと思ったが、まあ良い。
「偵察をおこなう」
 魔導通信をおこない、俺は単独で洞窟へ向かう。
 一人でも出来るさ、きっと。

 追いつけなかった部下達が、何かを叫んでいるが知らん。
 命令権はこっちに有る。

「周囲警戒。らじゃ。これより突入。らじゃ」
 一人命令、一人返答をしながら踏み込んでいく。

 中の匂いは予想通り、血の匂いと何かが腐ったような匂い。
 当然どこに何が居るのかは、判っているからどんどん行く。

 だけど、落とし穴には気がつかなかった。
 モンスターが作ったのか、モンスターになる前に作ったのかが問題だ。
 穴の中には、木製の槍が突き立てられていて、靴底をなんとか突き抜ける。
 だが、俺の足は特別製。槍などでは突き通せない。

 後から皆が来て落ちると大変だから、振動を与えて周囲にある落とし穴の蓋を落とす。

「これで良いか」
 奥へ進む。

 まだ変異体が居たようで、十体ほどがこちらを向く。

 身長二メートル五十センチから三メートルほどある奴らが、歩けるくらいは広くなっている洞窟。結構な広間だ。

 奥にも洞窟は続く。
 そっちからは、息絶え絶えの人がいる気配。

 何かを喰っていた十体、それを従える一体。
 その一体は、元々女性だったようだ。
 だが現状は、体が変形をして、某初号機の女性型のようだ。
 エグい角が額に生えている。

 だがその口に、誰かの腕を咥え、ガシガシと囓りながら、顎だけで男型に命令を下す。
「うごあぁ」
 そんな泣き声と同時に、一斉に動き始める。

 当然広いと言っても、ドーム型、入り口に近い方は狭まっている。一体が抜けるのがやっとの所に殺到すると、押し合いになる。
「うごっ」
「うがっ」
 喧嘩が始まる。

「仲良くしないと、撃っちゃうぞ」
 いや仲よくしていても、撃つんだけどな。

「はい。一斉射。貫通優先」
 自分で言って、即行動。
 魔導銃が効けば楽だ。
 所詮はちょっと大きい人型。
 問題はないはずだが、奥の女性型、前に居る男型を盾にしながら、逃げていく。
 あっちは、人の気配があった方。

「行かないでぇ」
 そう言いながら追いかけるが、意図的に俺の進路をじゃまする。

 当然、容赦せずワンパン。
 頭が半回転をすると流石に倒れた。
 進化か強化か不明だが、物理的構造に無理がありそうだ、変形の要望はどこから出てくるのだろう? 
 

「うわああ、追いつけないー。帝。ヨシュート様」

 近衛組、一班。
 彼らは、厳選されたメンバー。
 幼少期から、色々な分野で負けたことがない人間が集まっている。
 厳選をされたその隊の中でも、この五人は別格と言われていた。

 だが実際は、これである。
 守るはずの帝が暴力において頂点であり、護衛が必要なときにはユキ様が護衛に入る。
 いい加減自信がなくなっていた。

 獣人の大陸時は暇だった。
 この大陸になって、仕事が出来た。
 だけど、現場に来ると、帝のすごさがよく分かる。

 魔導具よりも圧倒的に広い感知エリア。
 俊敏さと堅さ。

 この前のクマのモンスター退治の時には、足を止めて殴り合っていた。
 絶対クマが驚いていたよ。


「急ぐぞ」
 彼らは、多分こっちだろうと、ヨシュートを追いかける。


 そんな頃、女型が逃げ出した先、知識があるのか牢が有り、まあなんと言うか、見たくはなかった。
 子ども型のモンスターが、生きた人を端から囓っている所。

「そうか、そんなになっても、子どもを守るという本能はあるのか……」
 だがすまん。俺にとっては人の方が大事だ。

 いつもよりも強烈な光が、洞窟の中を包んだ。
 モンスターとなった者達は、光の粒となって消えていく。

 囓られ掛かっていた人達の怪我も治り、いつものように、服は汚れた何かと判断されて消え失せる。
 なぜかは不明だ。
 これがあるから、最近浄化が使いにくい……
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