不運だけど、快楽と無双を武器に、異世界を生きていく。

久遠 れんり

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第7章 宇宙(そら)へ

第135話 平和な世の中は永遠に……

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 ヘリオポリスの民は、なんと言うか無関心だった。
 統治者が変わったというのに。

 混乱が収束をして、日常が戻る。
 ただ、今まで与えられていた特権が廃止されて困惑をする。

「働け?」
「働くって何? 何をすれば良い」
 今まで生きているだけで与えられていた金。
 それを得るのに働くと言っても、何をして良いのか判らない。

「我らは、選ばれた民だぞ」
 少し暴動が起きる。
 それは少しだけ、自分たちのために何かを起こしたと言う事。
 ヨシュートは、良い事だと評価をする。

 腐った目をして日々ただ生きていた人達。
 自分の思いを外に出して、行動を起こした。

「うんうん。粛正しろ」
 評価と対応は別。

 本国から軍がフル装備でやって来る。

 ヘリオポリスの民は驚くことになる。
 神と讃えた王、その理由は創造神と呼ばれる切っ掛けとなる魔法。

 やって来た兵達は、わざとらしく魔法を披露する。
 粛正のために、水球をバンバンと市民に撃ち込み、デモンストレーションとして、天空に向かい火の柱が立ちのぼる。

 そう、わざと彼らに格の違いを見せた。
 お前達は、特権をもらえる人種では無い。
 ただの無能な人間。
 それを理解させる。

 これは洗脳とも言える技。
 まず、絶望させて、その後救う。

 ヨシュートが降りて、精神操作でもいいが、それは何かが違うとロニーを説得。

 彼らに、立ち位置を教えた。
 崇めた王のような人間は、大量にいる。
 それすら出来ないお前立ちは凡人だと、社会のために働けそう言って彼らをさとす。

 モンスター化した奴らとは違い、残った彼らは理性的に考え始める。

 魔法を使える人達、使えない自分たち……
 種族として劣等種?

 彼らは別の宇宙から来た。
 もしかすると奇蹟を起こした王も……

 彼らのプライドは壊される。
 だが落ち着き、話しを聞くと、我らは只人だ、ヨシュート様達とは違うという。

 今度は、本当の神だと。

 暴動が収まった後、彼らを市中に潜ませ会話をさせる。
 内容は指定していないが、彼が現れた後世界は変わり、明らかに良くなったと口々に言う兵達。

 決して、暴君では無い。
 貴族制度を廃止、皆が平等。
 職務上での肩書きにより優劣は存在するが、能力のあるものに従うのは仕方が無いこと。

 そんな事を教え込んでいく。

 業務を手伝わせて、強制的では無く社会に組み込んでいった。
 自分が何かをして喜ばれる。 
 それは、彼らの心になにか新鮮な感動を与える。

 人のために何かをする。
 それにより喜ぶ顔を見られるし、自分が必要だと思ってくれる。
 それは、自己肯定感を刺激する。
 自己の存在意義と、社会においての立ち位置。

 人々は、思った以上に短い時間で変わっていった。


「まあ、上手くいったか」
「その様ですね」

「アデル、これで終わりか」
「たぶん。まだ生き物がいる星はあるけれど、原生生物で話は通じないわ」
 そう言ってなぜか抱きついてくる。

 そうして、各星系を統治し、十年ほど……

「そんなに落ち込んでどうした」
 目の前には、ヴァレリーとベルトーネ達。

 成長をして、三十歳も越えてきた。

 ずっと元気がなく落ち込んでいたが、やっと口を開く。
「子供も出来ず、年を取っていく。それなのにあなたたちは若いまま……」
「なるほど」
「なるほどじゃないわよ」
 二人ともお怒り。

「アデル、手伝ってくれ」
 そう言うと少し嫌そうな顔。

「むうっ、仕方ないわね」
 ベースは精霊種。

 空中に小さな球が浮かび、その中に細胞が動き始める。

「そっちがヴァレリー、そっちがベルトーネだな」
 二人の因子を混ぜて、体を創っていく。

 中の細胞はやがて赤ん坊となり、成長をして行く。

 その光景を、二人は呆然と眺める。
 アデルとユキの眉間に、少し皺が入っているのが気になる。

 そして、妙な干渉が入ってくる。
 第二次成長期を過ぎたあたり。
「こら、ユキと…… アデルも、妙な干渉をするな」
「むうっ」
「ええぇー良いじゃ無い。胸なんか小さくても」
 アデルがそう言ったので、呆然とみていたヴァレリー達も気がつく。

 体の構築中に干渉をして、わざわざ胸を小さくしようと画策をした。
 ユキとアデルは、二人に比べて少し小さく、今まで馬鹿にされたことが幾度かあった。

「あんた達ねぇ」
「何よ文句があるの? 創ってあげているだけ良いでしょ」
「それでも神なの? 心が小さい」
「やかましいわね」
 いつもの喧嘩が始まってしまった。

「真面目にしろ、このくらいで良いか?」
 大体十八歳くらい?

「なんだか、無茶苦茶恥ずかしいわね」
 透明な袋の中に、二人が成長をした姿で入っている。

 そっと、下へおろす。
「さてと、それじゃあ、ヨシュートがする?」
「さすがにちょっと」
 体を移すには、一度今の体から魂と言えるもの、意識体を抜かないといけない。

 二人は興味津津で、新しい自分の体を突っついている。
 一応精霊種だが、耳など目だつ部位は人間に合わせている。
 髪色や肌の色も同じにあわせた。
 遺伝的な疾患部位も修正をして、完全体と言える。
 特にヴァレリーは、血管系が弱かったからな。

 そして魔導回路は、精霊種のそれ。
 当社比、三百パーセントくらい?

 躊躇無く、首を落とそうとしたアデルの攻撃に干渉をして、二人を呼ぶ。

「失敗したら戻さないといけないから、体を壊すな」
 叱ったのはアデルに対して。

 仕方が無いから、一人ずつ抱きしめながら脳への血流を制御。
 そう殺した。

 出てきた意識体を新しい体に移し、電気的刺激を与えて起動させた。

 袋の中で目が開く、だけど息ができず暴れ出す。
 袋を開き、呼吸が出来るようにする。

「あー死ぬかと思った」
 ヴァレリーがそう言ったが、彼女達は一度死んだ。
 判らないということは、苦しくなかった様だ。

「あっ体が軽い」
 二人とも体が変わったことに気がつき、確認を始める。

 そして、寝ている自分の体に気がつく。
 一瞬悲しそうな顔。
 歴史と共に刻まれた傷などがある。
「こっちはどうするの?」
「分解するか保存するか。どちらが良い?」
「埋葬したい。できれば自分で」
 ヴァレリーがそう言ったので、ベルトーネも賛同する。

 アリスター領アントンの町近くに埋葬を行った。
 ここは、二人に会った街。
 今も交易の中心となっている。
 というか、意図的にハブとした。


 久しぶりの街。
「全てはここからだったわね」
 ギルド長の屋敷。

 尋ねると大分老けていたが迎え入れられた。
 なぜか、ベルトーネを見ると数歩下がる。

「まあ上がっていけ」
 そう言って、上げて貰い泊まることになる。


 そして当然……
「新しい体、ここから始めるのもおつね」
 そうして、改めて二人を愛する。


 そうして、そこから千年以上ヨシュートの統治は続くことになるが、精霊種となる子ども達が途中から政務は引き継いだ。

 文字通り、神の子達。

 そうして、アデルの元、ヴァレリー達は神となるための修業を行っている。
 ずっと一緒に居たい。そんな願いを果たすため……

 そうそう、ロニーはあくまでも人として生きて、俺達が見送った。満足そうな顔で輪廻に戻った。
 二十人ほどの子ども達に見送られて……
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