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精霊国。ソルヴェイ・オーセ・ネレム姫
第78話 変わっていく
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おれは、クリストフェル・クラース・オーセ王子、いや王太子だったはず。
『次代の王はお前だ』そう言われて育って来た。
―― 違いの分かる大人、百二十五歳。
そう、種族の掟で力が無ければ、他の族長に主権を取られることになる。
だから、頑張った。…… できる範囲で。
それが、ふらっと現れたカグラ…… あいつは。
妹をたらし込み、幻獣様であるヒュドラを倒し、他のお方から息子を預けられただと?
「どうすればいい?」
「がんばれ!! それとも諦めて…… トイレにでも籠もって泣く? 子どもの頃みたいに?」
王太子妃であるタバサは軽く答える。
「どこでそれを知った? 忘れてくれ。あれは、若さ故の……」
そう思っていた矢先。
カグラはいきなり王となった。
俺に何の断りもなく。
精霊族ではないことを知り、文句を言いに来た部族長達。
頑張ってくれ、次代の王は俺なんだ……
期待をした長老達。だが彼等は、奴に会った瞬間、平伏をした。
「うん。文句を言われると面倒だから、できるなら威厳を出して、そうね威圧でもしておいて」
スタージアは、本当にそう、軽い感じでそう言ってしまった。
ところが、カグラは普通じゃない。
「威圧? どうやるんだ? こうか?」
そう威圧。
それはまるで、いきなり目の前にエンシェントドラゴンが現れたか、最強の魔王でも現れたかという圧が恐怖を伴って降ってきた。
スタージアはもろにくらい、失禁をするという悲劇が起きた。
浄化をしつつ、カグラに抱き上げられる。
彼女は目を覚ましつぶやく。
「これ、癖になりそう」
何かが目覚めたようだ。
そのかいがあったのか、各部族の長は謁見の広間へ入る前。そのドアを開けるのさえ恐怖して、なんとか威厳を保ちながら部屋へ入った。
そう空威張りというかプライドもある。ぽっと出の若造が我らを束ねるだと?
通知が来たときから、彼等はおもしろくなかった。
だが、絶対なる強者の出すプレッシャーと、彼の後ろに立つ者達に驚く。
人化を緩めて、各種族の特徴を出して貰った。
ユージーンはドラゴンの角と尻尾。
ライアンはスフィンクスの特徴である翼と、ライオンの爪を出していた。
ランベルトはグリフォンの特徴であるワシの頭と翼を見せ周囲を威圧。
カリニャーはフェンリルの特徴である耳がちょこんと頭に? 半獣人化? とってもかわいい感じだった。
「新しき王様、我ら一同付き従います」
予想と違い、満場一致でカグラの王様就任が決まった。
「来たときと話が違いますな」
ニヤニヤと嫌らしい顔をしたリオネッロ・パダリーノ。
彼も族長の一人。
「貴殿は逆らうのか?」
ブラッド・オールドフィールドはじろりと彼を睨む。
「滅相もない」
そう彼が言っていたように、案内に従い就任の挨拶。
つまり周辺の族長による許可を求める集まりだった。
彼の力を示すということで、例のハチミツから造られたミードや、食したことのない食べ物が並んでいた。昔からの慣習で、彼の力を示すために豪勢な料理などをふるまい力を見せる宴。
まあ彼等達は基本、肉はあまり食さないのだが、全然食べない訳でもない。
そして、ドラゴンが言った様に、少し記憶が戻ったカグラは、クルミ味噌を使った田楽とか、厚揚げとか色々と変わったものを振る舞った。
その中で、ジャガバターを食べて彼等は沈黙をした。
「このほくほく感。そしてその奥にあるうま味はなんだ?」
そう、塩。
なんだろうね、人種的なものなのだろうが、あまり彼等塩を使わない。
その試作の時、豆腐とわかめの味噌汁を口にして、彼は泣いた……
記憶として何か失っているもの、だが体が覚えている。それがもどかしい。
そうして彼の統治は問題なく始まり、魂の記憶は徐々に降ってきて、それに合わせてコロニーは発展をする。
無論いきなり工業化をする訳ではない。
SDGs的な、自然との共生。
水車が作られて動力が得られる。
それにより、勝手に布が織られたり、脱穀が簡単になったり、畑を魔導具が這い回り、耕されたり草取りがされたり。
そう時間が増えて、彼等の生活は豊かになっていく。
そうして、衛生というか上下水道が整備されて、彼等が悩んでいた流行病が一掃された。
カグラが王となりたかが十年で、停滞していた彼等の生活が変わっていった。
「命が短い種族は、やりようが急じゃな」
「だが、病で命を失うものが減ったのは確か。それに服も手軽に購入できるようになったしな」
「だがこの貨幣というものは、奴に使われておるようで好かんな」
「ああ、王のみが発行権をもち、他のものが作れば大罪という話し」
彼等は各コロニーの部族長。
新しくできた温泉に、視察をかねて来ていた。
発情期以外は欲情はしないが、一応男女別である。
オッサン側では、ひたすらぼやかれていたが、女性側では概ねカグラの政策は評判だった。
「トイレのときが一番危険だったからな」
そう、旅行をするときはどうしたってトイレが必要。
それは今まで存在せず、道路脇でするしかなかった。
「宿場と休養所はいいな」
三十キロ程度で宿場。
十キロおきに小さな売店と、トイレが備え付けられた休憩所が作られた。
もともと、掟が厳しくて盗賊などはいない社会だが、部族長などになると下剋上を狙う奴らがたまにいる。
そんな奴らが狙いやすいのが、旅行中のトイレ時間。
兵達も散らばるためにどうしたって手薄になる。
だが整備されたトイレは、清潔で石造りのため矢も通らないし燃えない。
周囲警戒で気を散らすことなく、落ち着いていたすことができる。
「それにこの温泉。良いではないか」
「カグラ殿の御子ももうすぐ十歳か、だれか、婚約者は出すおつもりか?」
族長の一人。レティシア・セスコが何気なく言った一言で、湯の温度が五度ほど下がった感じがした。
『次代の王はお前だ』そう言われて育って来た。
―― 違いの分かる大人、百二十五歳。
そう、種族の掟で力が無ければ、他の族長に主権を取られることになる。
だから、頑張った。…… できる範囲で。
それが、ふらっと現れたカグラ…… あいつは。
妹をたらし込み、幻獣様であるヒュドラを倒し、他のお方から息子を預けられただと?
「どうすればいい?」
「がんばれ!! それとも諦めて…… トイレにでも籠もって泣く? 子どもの頃みたいに?」
王太子妃であるタバサは軽く答える。
「どこでそれを知った? 忘れてくれ。あれは、若さ故の……」
そう思っていた矢先。
カグラはいきなり王となった。
俺に何の断りもなく。
精霊族ではないことを知り、文句を言いに来た部族長達。
頑張ってくれ、次代の王は俺なんだ……
期待をした長老達。だが彼等は、奴に会った瞬間、平伏をした。
「うん。文句を言われると面倒だから、できるなら威厳を出して、そうね威圧でもしておいて」
スタージアは、本当にそう、軽い感じでそう言ってしまった。
ところが、カグラは普通じゃない。
「威圧? どうやるんだ? こうか?」
そう威圧。
それはまるで、いきなり目の前にエンシェントドラゴンが現れたか、最強の魔王でも現れたかという圧が恐怖を伴って降ってきた。
スタージアはもろにくらい、失禁をするという悲劇が起きた。
浄化をしつつ、カグラに抱き上げられる。
彼女は目を覚ましつぶやく。
「これ、癖になりそう」
何かが目覚めたようだ。
そのかいがあったのか、各部族の長は謁見の広間へ入る前。そのドアを開けるのさえ恐怖して、なんとか威厳を保ちながら部屋へ入った。
そう空威張りというかプライドもある。ぽっと出の若造が我らを束ねるだと?
通知が来たときから、彼等はおもしろくなかった。
だが、絶対なる強者の出すプレッシャーと、彼の後ろに立つ者達に驚く。
人化を緩めて、各種族の特徴を出して貰った。
ユージーンはドラゴンの角と尻尾。
ライアンはスフィンクスの特徴である翼と、ライオンの爪を出していた。
ランベルトはグリフォンの特徴であるワシの頭と翼を見せ周囲を威圧。
カリニャーはフェンリルの特徴である耳がちょこんと頭に? 半獣人化? とってもかわいい感じだった。
「新しき王様、我ら一同付き従います」
予想と違い、満場一致でカグラの王様就任が決まった。
「来たときと話が違いますな」
ニヤニヤと嫌らしい顔をしたリオネッロ・パダリーノ。
彼も族長の一人。
「貴殿は逆らうのか?」
ブラッド・オールドフィールドはじろりと彼を睨む。
「滅相もない」
そう彼が言っていたように、案内に従い就任の挨拶。
つまり周辺の族長による許可を求める集まりだった。
彼の力を示すということで、例のハチミツから造られたミードや、食したことのない食べ物が並んでいた。昔からの慣習で、彼の力を示すために豪勢な料理などをふるまい力を見せる宴。
まあ彼等達は基本、肉はあまり食さないのだが、全然食べない訳でもない。
そして、ドラゴンが言った様に、少し記憶が戻ったカグラは、クルミ味噌を使った田楽とか、厚揚げとか色々と変わったものを振る舞った。
その中で、ジャガバターを食べて彼等は沈黙をした。
「このほくほく感。そしてその奥にあるうま味はなんだ?」
そう、塩。
なんだろうね、人種的なものなのだろうが、あまり彼等塩を使わない。
その試作の時、豆腐とわかめの味噌汁を口にして、彼は泣いた……
記憶として何か失っているもの、だが体が覚えている。それがもどかしい。
そうして彼の統治は問題なく始まり、魂の記憶は徐々に降ってきて、それに合わせてコロニーは発展をする。
無論いきなり工業化をする訳ではない。
SDGs的な、自然との共生。
水車が作られて動力が得られる。
それにより、勝手に布が織られたり、脱穀が簡単になったり、畑を魔導具が這い回り、耕されたり草取りがされたり。
そう時間が増えて、彼等の生活は豊かになっていく。
そうして、衛生というか上下水道が整備されて、彼等が悩んでいた流行病が一掃された。
カグラが王となりたかが十年で、停滞していた彼等の生活が変わっていった。
「命が短い種族は、やりようが急じゃな」
「だが、病で命を失うものが減ったのは確か。それに服も手軽に購入できるようになったしな」
「だがこの貨幣というものは、奴に使われておるようで好かんな」
「ああ、王のみが発行権をもち、他のものが作れば大罪という話し」
彼等は各コロニーの部族長。
新しくできた温泉に、視察をかねて来ていた。
発情期以外は欲情はしないが、一応男女別である。
オッサン側では、ひたすらぼやかれていたが、女性側では概ねカグラの政策は評判だった。
「トイレのときが一番危険だったからな」
そう、旅行をするときはどうしたってトイレが必要。
それは今まで存在せず、道路脇でするしかなかった。
「宿場と休養所はいいな」
三十キロ程度で宿場。
十キロおきに小さな売店と、トイレが備え付けられた休憩所が作られた。
もともと、掟が厳しくて盗賊などはいない社会だが、部族長などになると下剋上を狙う奴らがたまにいる。
そんな奴らが狙いやすいのが、旅行中のトイレ時間。
兵達も散らばるためにどうしたって手薄になる。
だが整備されたトイレは、清潔で石造りのため矢も通らないし燃えない。
周囲警戒で気を散らすことなく、落ち着いていたすことができる。
「それにこの温泉。良いではないか」
「カグラ殿の御子ももうすぐ十歳か、だれか、婚約者は出すおつもりか?」
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