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第四章 世界との関わり
第59話 道中でもやらかします
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「えー皆さん。本日はよろしくお願いいたします。私と、今現在運転している運転手。通称疾風のウルフこと、ウォルフガングと、私究極のバランサーこと、ジェイと申します。このバス。いやこの団体用魔道自動車は定刻通り出発し、本日の夕刻。一八時には王城へ到着予定でございます。私とウルフは途中で運転を交代いたしますのでご安心ください。先ほどバスと言ったのは、制作者であらせられる、この国の真の王。山川王がそのように呼んでいたため、一部ではバスと呼ばれております」
「おい。本当に夕刻に着くのか?」
客席から、誰かが問いかける。
「私がまだ説明の途中でございますが、未開の猿相手も随分なれましたので、動揺することなく説明させていただきます。なお、人ならば、それなりの礼儀という物が、また、格というものを作るようでございます。出来ないのであれば、未開の猿より、さらに下部。獣へと降格する可能性があります。人が説明しているときには十分傾聴し、お聞き逃しの無いようにお願いいたします。そして、休憩でございますが、時間厳守となっております。遅刻は、問答無用で放置いたします。此処は非常に大事でございます。お忘れ無きようお願いいたします」
そこで、ジェイは言葉を句切り、予定表を眺める。
「ふむ。予定を確認する限り、一応国賓扱いのようでございますから、道中速度をわずかに上げて、時間的余裕を取るようにいたしましょう。速度は通常一〇〇キロの所、一二〇キロまで上げれば、取れる余裕は十分でございましょう。ウルフ君よしなに」
「分かりました。逝きます」
ぼそっと、ウルフ君から返答が帰ってくる。
「えーこの後。街道へと入ります。街道は、昇り二車線。下り二車線の専用道となっております。基本は左側走行。抜く時以外で右を許可無く走り続ける奴は、一発許可証取り消し。再取得は金貨五枚となっております。軽微な違反は、町中での速度超過や、通行区分違反など様々。かなり分厚い本を覚えさせられます。ですので、覚えているはずの決まりを、三回間違えると許可証が停止となり、また金貨。違反の種類によって罰金まであり、また金貨が消滅をいたします」
そう言ってジェイは、何故か空を仰ぐ。
「気を取り直して、あの壁に区切られているのが専用道でございます。景色など見ることはできません。此方も速度が速いですし、きっちりモンスター避けをしておかないと大事故となります。そしてこの壁、もし入って来た他国の軍が来た場合は、左右と、途中に掛かる生活道から延々一方的に攻撃をされます。逃げることも隠れることも出来ません。前回の戦闘時、ドラゴンが真の王であらせられる山川王の様子を見に来られましたが、ドラゴンが乗ってもびくともしませんでした。無論ブレスでも平気で、その後ドラゴンは精霊様と山川様お二方から殴られていました」
ジェイ達は、スクリーンで見たようだ。
そして、乗車しているメリディアム国の兵達は、完全に沈黙をする。
二階でも流れていたが、乗り込んだ瞬間から飲み始め、新王ウーベル=ナーレに、どう恥をかかせようかと盛り上がり、聞いていなかった。
団体用魔道自動車の造りと、トイレがあることには驚いたが、勝手に開けたワインセラーや、冷蔵庫を漁るのに夢中であった。
そして外を見ても、退屈な壁ばかり。
飲んで酔っ払い、寝るまでセットで時間も掛からなかった。
「いわれてみればそうだ。この真っ直ぐな壁に囲まれた道。入ってしまえば全滅以外のみちがみえないぞ」
こそこそと、私語が始まる。
だがこれは、思惑通りなのでとがめることはない。
後は簡単に装備の説明をして、休憩に入る。
乗車口の階段脇に小さな扉があり、そこをくぐると、かなり広めの乗員休憩室がある。
「さてと、飲むわけにはいかんが、ゆっくりさせて貰おう」
元々は、ハンターをしていたが、特殊な許可証持ち。
一日数時間働いて、ハンター時の一月分給料をもらえる。
無論いつもあるわけでもないし、この手、国賓相手の送迎などさらに少ない。
だが相手を出来る腕っ節と、そこそこの常識は必要だ。
そのため給料は破格となっている。
当然まだ問題は起きず、時間より一五分早く到着をする。
町内で取られた時間が響いたようだ。
分隊一つ分。たかだか一〇人の兵達。
だが半数が護衛に残り、半数は団体用魔道自動車から出て行ってしまった。
まあ、二階に動きは無いし、良いだろう。
もし俺達が、敵だったらどうするつもりなんだろうか?
やがて時間が経ち、一〇時半となる。
二人ほど帰ってきていないが、仕方が無い。
俺達が届ける重要人物は、メリディアム国のアスビョルン=オッデレータ侯爵のみ。
最悪、首だけでも良いし、何なら来なかったという事にしても良いだろう。
あっ今は、データが残るんだったか。まずいかな?
「おい。ウルフあと二人どうする?」
「うん? 客のことは客に聞け」
さらっと返された。
「それもそうか」
俺は振り返ると、マイクを持つ。
「えーお客様に報告と相談がございます。一〇時三〇分現在。出発のお時間となりましたが、二人ほど帰って来られていません。当方としては今後の予定を考えて出発を行いたいのですがいかがいたしましょう?」
ザワザワしていた兵達が、さらにザワつく。
「少しまっていてくれ、侯爵さまに伺ってくる」
そう言って二階へ上がって行く。
ところが、侯爵達は爆睡中。
あろうことか、家宰までその状態。
声をかけず、降りてくる。
「どうでしたか?」
「寝ておられた」
「じゃあどうします?」
彼は後ろを振り返る。
「予定を優先してくれ」
「では、出発をします」
団体用魔道自動車のドアが無情にも閉まる。
そしてゆっくりと動き始め、スピードは上がっていく。
「おい。本当に夕刻に着くのか?」
客席から、誰かが問いかける。
「私がまだ説明の途中でございますが、未開の猿相手も随分なれましたので、動揺することなく説明させていただきます。なお、人ならば、それなりの礼儀という物が、また、格というものを作るようでございます。出来ないのであれば、未開の猿より、さらに下部。獣へと降格する可能性があります。人が説明しているときには十分傾聴し、お聞き逃しの無いようにお願いいたします。そして、休憩でございますが、時間厳守となっております。遅刻は、問答無用で放置いたします。此処は非常に大事でございます。お忘れ無きようお願いいたします」
そこで、ジェイは言葉を句切り、予定表を眺める。
「ふむ。予定を確認する限り、一応国賓扱いのようでございますから、道中速度をわずかに上げて、時間的余裕を取るようにいたしましょう。速度は通常一〇〇キロの所、一二〇キロまで上げれば、取れる余裕は十分でございましょう。ウルフ君よしなに」
「分かりました。逝きます」
ぼそっと、ウルフ君から返答が帰ってくる。
「えーこの後。街道へと入ります。街道は、昇り二車線。下り二車線の専用道となっております。基本は左側走行。抜く時以外で右を許可無く走り続ける奴は、一発許可証取り消し。再取得は金貨五枚となっております。軽微な違反は、町中での速度超過や、通行区分違反など様々。かなり分厚い本を覚えさせられます。ですので、覚えているはずの決まりを、三回間違えると許可証が停止となり、また金貨。違反の種類によって罰金まであり、また金貨が消滅をいたします」
そう言ってジェイは、何故か空を仰ぐ。
「気を取り直して、あの壁に区切られているのが専用道でございます。景色など見ることはできません。此方も速度が速いですし、きっちりモンスター避けをしておかないと大事故となります。そしてこの壁、もし入って来た他国の軍が来た場合は、左右と、途中に掛かる生活道から延々一方的に攻撃をされます。逃げることも隠れることも出来ません。前回の戦闘時、ドラゴンが真の王であらせられる山川王の様子を見に来られましたが、ドラゴンが乗ってもびくともしませんでした。無論ブレスでも平気で、その後ドラゴンは精霊様と山川様お二方から殴られていました」
ジェイ達は、スクリーンで見たようだ。
そして、乗車しているメリディアム国の兵達は、完全に沈黙をする。
二階でも流れていたが、乗り込んだ瞬間から飲み始め、新王ウーベル=ナーレに、どう恥をかかせようかと盛り上がり、聞いていなかった。
団体用魔道自動車の造りと、トイレがあることには驚いたが、勝手に開けたワインセラーや、冷蔵庫を漁るのに夢中であった。
そして外を見ても、退屈な壁ばかり。
飲んで酔っ払い、寝るまでセットで時間も掛からなかった。
「いわれてみればそうだ。この真っ直ぐな壁に囲まれた道。入ってしまえば全滅以外のみちがみえないぞ」
こそこそと、私語が始まる。
だがこれは、思惑通りなのでとがめることはない。
後は簡単に装備の説明をして、休憩に入る。
乗車口の階段脇に小さな扉があり、そこをくぐると、かなり広めの乗員休憩室がある。
「さてと、飲むわけにはいかんが、ゆっくりさせて貰おう」
元々は、ハンターをしていたが、特殊な許可証持ち。
一日数時間働いて、ハンター時の一月分給料をもらえる。
無論いつもあるわけでもないし、この手、国賓相手の送迎などさらに少ない。
だが相手を出来る腕っ節と、そこそこの常識は必要だ。
そのため給料は破格となっている。
当然まだ問題は起きず、時間より一五分早く到着をする。
町内で取られた時間が響いたようだ。
分隊一つ分。たかだか一〇人の兵達。
だが半数が護衛に残り、半数は団体用魔道自動車から出て行ってしまった。
まあ、二階に動きは無いし、良いだろう。
もし俺達が、敵だったらどうするつもりなんだろうか?
やがて時間が経ち、一〇時半となる。
二人ほど帰ってきていないが、仕方が無い。
俺達が届ける重要人物は、メリディアム国のアスビョルン=オッデレータ侯爵のみ。
最悪、首だけでも良いし、何なら来なかったという事にしても良いだろう。
あっ今は、データが残るんだったか。まずいかな?
「おい。ウルフあと二人どうする?」
「うん? 客のことは客に聞け」
さらっと返された。
「それもそうか」
俺は振り返ると、マイクを持つ。
「えーお客様に報告と相談がございます。一〇時三〇分現在。出発のお時間となりましたが、二人ほど帰って来られていません。当方としては今後の予定を考えて出発を行いたいのですがいかがいたしましょう?」
ザワザワしていた兵達が、さらにザワつく。
「少しまっていてくれ、侯爵さまに伺ってくる」
そう言って二階へ上がって行く。
ところが、侯爵達は爆睡中。
あろうことか、家宰までその状態。
声をかけず、降りてくる。
「どうでしたか?」
「寝ておられた」
「じゃあどうします?」
彼は後ろを振り返る。
「予定を優先してくれ」
「では、出発をします」
団体用魔道自動車のドアが無情にも閉まる。
そしてゆっくりと動き始め、スピードは上がっていく。
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