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第五章 ホミネス=ビーバレで再編は進む
第74話 婦人の決意
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「風呂という物は、良いものだな」
「ええ。ですが、これだけお湯を用意するのは、大変でございましょう」
「そうだな。それにしてもこの体を拭く布。糸を丸めて縫い込んでおるのか。手間は掛かりそうだが、気持ちが良いな」
「そうですわね」
後ろから覗く、妻のうなじ。
髪から、流れる雫が背中を伝っている。
「どれ。まだ髪が濡れているようだ」
自分の体は拭き終わり、妻の頭を拭き始める。
すぐ脇に、ドライヤーを見つけて、脇に張られた説明で、髪を乾かす物だと理解をする。
背中側から、下にタオルを当て乾かし始める。
娘のカリータやフェリクスは、面白そうにそれを眺めている。
屋敷には使用人がいて世話をする。
父親が、母と仲良くしている姿。
あまり見る光景ではない。
「カリータもまだ髪が濡れている、乾かさないと風邪を引くよ」
「はーい」
もう一台のドライヤーを取り出し、父のまねをしてフェリクスが乾かし始める。
ほのぼのした後、クローゼットに向かい説明を見る。
男はなんとなく、服の脱ぎ着は出来るが、婦人達は使用人がいないと普通ドレスなど着られない。
だが、注意書きを見ると、とても簡単だった。
下着は、各種サイズがあり、ドレスも色々な物がある。
男達は、適当に決まったが、娘と妻は悩み始める。
「決まったら呼んでくれ」
そう言って、応接室の方へ、出て行ってしまう。
「もう。選んでくださっても良いのに。ねえカリータ」
「そうですわね。フェリクスまで一緒に行ってしまいましたわ」
だがそれからも、小一時間ドレスが決まらなかった。
やがて、一番最初に選んだものを着て、何とか小物をそろえて用意が出来た。
やがて、少し時間をおくと、先ほどの執事が呼びに来た。かれは、スイート担当のコンシェルジュである。実はリギュウムディの住人。とても有能であるがため、上司に疎まれ、もとの国を追われ教会を頼った。
「ご用意は、よろしいようでございますね。早速と言いたいところですが、少し説明をさせていただきます」
そう言って、持って来ていた皿やカトラリーを、さっとテーブルに並べる。
「本日は、コースとなっております」
「コース?」
聞き慣れない言葉。
この辺りでは、大体大皿で来た料理を、適当に切り取りパンにのせて食べる文化だ。
「給仕。配膳は係りの者が行います。料理が配られましたら、この外側の一対。ナイフとフォークを用いて召し上がっていただきます。パン以外は、素手で召し上がらないように。スープは、この丸みを帯びたスプーンで、器を傾け手前から奥へすくいます。このように」
ざっとマナーを習う。
「では参りましょう」
案内をされて、ついていく。
丁度ペアなので、エスコートをすることになる。
係の者がドアを開き、中へ入っていく。
すると、すでに王達がテーブルに着いている事態。
「これは」
「ああ。今日は、そちらを招いた形だ。気にしないでくれ」
適当なことを、望は語る。
実際は、セッティング時から、ずっと居たが。
その後から来た、ウーベル=ナーレを黙らせるために勧めたため、彼らはワインをすでに飲み始めている。
ランヴァルド辺境伯が抱える、一緒に来た兵達は、この場にはいない。
同時刻、下にある大広間でパーティを開いている頃だ。
「まあ、メンバーがそろったから、始めるか?」
「ああ。そうしてくれ。すでに酔ってきた」
ウーベル=ナーレ、すでに先付けは空になっている。
それを見て、ランヴァルド辺境伯の妻。エルヴィーラ31歳は少しむっとする。
一六歳で、辺境伯に嫁ぎ、小規模なパーティでは主賓クラス。
私たちが主賓だと言いながら、相手はすでに酔い、食事にも手をつけている。
「この方達は、どなたですの?」
こそっと、夫に聞く。
「手前の酔っておられるのが、ミッドグランド王国の国王ウーベル=ナーレ様で、奥の上座におられるのが、リギュウムディ王国、国王の山川望様。山川が家名だそうだ。決して、粗相はするな」
そう言われても、ミッドグランド王国は分かる。
えっ国王? なぜ。
そして、もう一人も、国王? リギュウムディ王国ってどこ? はっ。リギュウムディ王国? 婦人は思い出したようだ。彼の地についての伝説を。
王達に囲まれての、食事会?
婦人は急に今の状態が、どれだけやばいのかを理解をする。
ただ、頭の中では、何故である。
案内に従い、着座をする。
この二人の前では、辺境伯など小者。
「本日は、お招きいただきまして、ありがとうございます」
辺境伯が、礼を述べる。
「良いですよ。呼んだのは此方ですし。これから、少し、お願い事をあなたにはしますから。飲んで食べて、楽しんでください」
そして、グラスに飲み物が注がれる。
「それでは、この出会いに乾杯をしましょう。カンパーイ」
そう言って、挨拶もそこそこに、食事が始まる。
ふと見ると、幼い感じの女の子が二人。前の席に座っている。
その脇には、魔族。
初めて見るが、額に角がある。
つまりテーブルの反対側には、リギュウムディ王国のメンバーが座っている。
特に、そろった意味はたいした事では無いが、カニが大量だった。それだけである。ついでの、小旅行。
どこまでも自由な、リギュウムディ王国。
妙なテンションで始まった食事会だが、男達は何やら不穏な相談をしながら、飲み合いをしている。
『王』『だから倒せば良いじゃん』『後の騒動』
などという、不穏な言葉が聞こえる。
「すみません。エルヴィーラ様でしたっけ?」
「はい。そうでございます」
「ぶしつけですが、おいくつで結婚なさったのでしょうか?」
「えっあっはい。少し遅くて、一六のときに嫁ぎました」
それを聞いて、美葉が反応する。
「やっぱり、こっちの人って早いね。貴族の暮らしって楽しいですか?」
「それは…… 領地によって、それぞれでございましょう。ただ、領民を守り暮らしを豊かにしていくのは大変だと思います」
「やっぱりその辺りは、どこも一緒だねぇ」
この子達は、何なの?
「美葉様。我が国やミッドグランド王国とは違い、他国は遅れておりますから、昔お二人が話されていた、江戸時代とかと同じ感じでしょうか」
横にいるベスティア=ドミターがそっと教える。
「なっ」
その言い草に、むかっとくるが、思い当たる所も多い。
あの箱は、階段を使わずとも上り下りが出来るもの。
馬の引いていない乗り物。
それに、この食器やグラス。
手で作ったとは思えないほど、形が整っている。
「まあ、てこ入れして。王様を変えたら、発展をさせるんでしょ?」
「そうだと思いますよ。望は海産物を欲しがっておられますから」
その言葉に、婦人が反応をする。
「王様を変える?」
「ええ。今日は、その為の話し合いでしょう」
軽く言われた、その言葉。
婦人の衝撃は大きかった。謀反。一族郎党死罪。
だけど、二国がバックについている。
王になれば、住まいは王都。王都へ戻れば、楽しいお買い物にもいける。
その晩、婦人は一生懸命夫を説得する。まあしなくても、すでに逃げられないが。
だがその後、このホテルで買い物をして、新たなる世の常識を知り、王都の店が、古びた田舎の商店だと理解をする。若かりし頃の、キラキラな思い出は、急速に色あせることになる。
「ええ。ですが、これだけお湯を用意するのは、大変でございましょう」
「そうだな。それにしてもこの体を拭く布。糸を丸めて縫い込んでおるのか。手間は掛かりそうだが、気持ちが良いな」
「そうですわね」
後ろから覗く、妻のうなじ。
髪から、流れる雫が背中を伝っている。
「どれ。まだ髪が濡れているようだ」
自分の体は拭き終わり、妻の頭を拭き始める。
すぐ脇に、ドライヤーを見つけて、脇に張られた説明で、髪を乾かす物だと理解をする。
背中側から、下にタオルを当て乾かし始める。
娘のカリータやフェリクスは、面白そうにそれを眺めている。
屋敷には使用人がいて世話をする。
父親が、母と仲良くしている姿。
あまり見る光景ではない。
「カリータもまだ髪が濡れている、乾かさないと風邪を引くよ」
「はーい」
もう一台のドライヤーを取り出し、父のまねをしてフェリクスが乾かし始める。
ほのぼのした後、クローゼットに向かい説明を見る。
男はなんとなく、服の脱ぎ着は出来るが、婦人達は使用人がいないと普通ドレスなど着られない。
だが、注意書きを見ると、とても簡単だった。
下着は、各種サイズがあり、ドレスも色々な物がある。
男達は、適当に決まったが、娘と妻は悩み始める。
「決まったら呼んでくれ」
そう言って、応接室の方へ、出て行ってしまう。
「もう。選んでくださっても良いのに。ねえカリータ」
「そうですわね。フェリクスまで一緒に行ってしまいましたわ」
だがそれからも、小一時間ドレスが決まらなかった。
やがて、一番最初に選んだものを着て、何とか小物をそろえて用意が出来た。
やがて、少し時間をおくと、先ほどの執事が呼びに来た。かれは、スイート担当のコンシェルジュである。実はリギュウムディの住人。とても有能であるがため、上司に疎まれ、もとの国を追われ教会を頼った。
「ご用意は、よろしいようでございますね。早速と言いたいところですが、少し説明をさせていただきます」
そう言って、持って来ていた皿やカトラリーを、さっとテーブルに並べる。
「本日は、コースとなっております」
「コース?」
聞き慣れない言葉。
この辺りでは、大体大皿で来た料理を、適当に切り取りパンにのせて食べる文化だ。
「給仕。配膳は係りの者が行います。料理が配られましたら、この外側の一対。ナイフとフォークを用いて召し上がっていただきます。パン以外は、素手で召し上がらないように。スープは、この丸みを帯びたスプーンで、器を傾け手前から奥へすくいます。このように」
ざっとマナーを習う。
「では参りましょう」
案内をされて、ついていく。
丁度ペアなので、エスコートをすることになる。
係の者がドアを開き、中へ入っていく。
すると、すでに王達がテーブルに着いている事態。
「これは」
「ああ。今日は、そちらを招いた形だ。気にしないでくれ」
適当なことを、望は語る。
実際は、セッティング時から、ずっと居たが。
その後から来た、ウーベル=ナーレを黙らせるために勧めたため、彼らはワインをすでに飲み始めている。
ランヴァルド辺境伯が抱える、一緒に来た兵達は、この場にはいない。
同時刻、下にある大広間でパーティを開いている頃だ。
「まあ、メンバーがそろったから、始めるか?」
「ああ。そうしてくれ。すでに酔ってきた」
ウーベル=ナーレ、すでに先付けは空になっている。
それを見て、ランヴァルド辺境伯の妻。エルヴィーラ31歳は少しむっとする。
一六歳で、辺境伯に嫁ぎ、小規模なパーティでは主賓クラス。
私たちが主賓だと言いながら、相手はすでに酔い、食事にも手をつけている。
「この方達は、どなたですの?」
こそっと、夫に聞く。
「手前の酔っておられるのが、ミッドグランド王国の国王ウーベル=ナーレ様で、奥の上座におられるのが、リギュウムディ王国、国王の山川望様。山川が家名だそうだ。決して、粗相はするな」
そう言われても、ミッドグランド王国は分かる。
えっ国王? なぜ。
そして、もう一人も、国王? リギュウムディ王国ってどこ? はっ。リギュウムディ王国? 婦人は思い出したようだ。彼の地についての伝説を。
王達に囲まれての、食事会?
婦人は急に今の状態が、どれだけやばいのかを理解をする。
ただ、頭の中では、何故である。
案内に従い、着座をする。
この二人の前では、辺境伯など小者。
「本日は、お招きいただきまして、ありがとうございます」
辺境伯が、礼を述べる。
「良いですよ。呼んだのは此方ですし。これから、少し、お願い事をあなたにはしますから。飲んで食べて、楽しんでください」
そして、グラスに飲み物が注がれる。
「それでは、この出会いに乾杯をしましょう。カンパーイ」
そう言って、挨拶もそこそこに、食事が始まる。
ふと見ると、幼い感じの女の子が二人。前の席に座っている。
その脇には、魔族。
初めて見るが、額に角がある。
つまりテーブルの反対側には、リギュウムディ王国のメンバーが座っている。
特に、そろった意味はたいした事では無いが、カニが大量だった。それだけである。ついでの、小旅行。
どこまでも自由な、リギュウムディ王国。
妙なテンションで始まった食事会だが、男達は何やら不穏な相談をしながら、飲み合いをしている。
『王』『だから倒せば良いじゃん』『後の騒動』
などという、不穏な言葉が聞こえる。
「すみません。エルヴィーラ様でしたっけ?」
「はい。そうでございます」
「ぶしつけですが、おいくつで結婚なさったのでしょうか?」
「えっあっはい。少し遅くて、一六のときに嫁ぎました」
それを聞いて、美葉が反応する。
「やっぱり、こっちの人って早いね。貴族の暮らしって楽しいですか?」
「それは…… 領地によって、それぞれでございましょう。ただ、領民を守り暮らしを豊かにしていくのは大変だと思います」
「やっぱりその辺りは、どこも一緒だねぇ」
この子達は、何なの?
「美葉様。我が国やミッドグランド王国とは違い、他国は遅れておりますから、昔お二人が話されていた、江戸時代とかと同じ感じでしょうか」
横にいるベスティア=ドミターがそっと教える。
「なっ」
その言い草に、むかっとくるが、思い当たる所も多い。
あの箱は、階段を使わずとも上り下りが出来るもの。
馬の引いていない乗り物。
それに、この食器やグラス。
手で作ったとは思えないほど、形が整っている。
「まあ、てこ入れして。王様を変えたら、発展をさせるんでしょ?」
「そうだと思いますよ。望は海産物を欲しがっておられますから」
その言葉に、婦人が反応をする。
「王様を変える?」
「ええ。今日は、その為の話し合いでしょう」
軽く言われた、その言葉。
婦人の衝撃は大きかった。謀反。一族郎党死罪。
だけど、二国がバックについている。
王になれば、住まいは王都。王都へ戻れば、楽しいお買い物にもいける。
その晩、婦人は一生懸命夫を説得する。まあしなくても、すでに逃げられないが。
だがその後、このホテルで買い物をして、新たなる世の常識を知り、王都の店が、古びた田舎の商店だと理解をする。若かりし頃の、キラキラな思い出は、急速に色あせることになる。
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