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第五章 ホミネス=ビーバレで再編は進む
第78話 そして、不要な物は廃棄される
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微笑むフレイヤに、問いかける。
「何をしたんだ?」
そう聞くと、何がおかしいのか、フレイヤは微笑む。
「いつか望が言っていた、リサイクル? とは違いますね。廃物利用とでも申しましょうか? あなたたちは、今のところ廃棄予定です。ですが、役に立てば、少し考えましょうと言ってみただけです」
「どいつもこいつも、領民からの評価は低く。使えないぞ」
「ええ。分かっています。私は考えると言っただけです」
やっと意味が分かった。前向きに検討いたしますだな。
「ああ。考えるだけか」
こいつ、女神だが、堕天をしているのじゃ無いか?
ああいや、均等に興味が無いだけか。
神はすべての人に均等に愛をと、どこかで聞いたか読んだかしたが、こいつは俺とその周囲、そしてそれ以外。それ以外は、均等に興味が無い。
本当に。
「あっ。ダーシャ」
勇者月波くんが、叫んだと思ったら走っていく。
貴族連中の攻撃を、第一王子ダリミルと第二王子ヤロミールが防いで、背後のイヴォナ第一王女と第二王女であるダーシャを何とか守っている。
その向こうには、王と宰相。そして婦人だろう、見事に背中を切られて倒れていた。
その日、王都内の異常さに気がつき、謁見と報告が行われていた。
普段は、王妃や王子達は列席などはしないが、あまりの異常さに、近衛とともに謁見の間に居た。
そこに、血相を変えてやって来た落第貴族達。
むろん、フレイヤが導いた。
「王様。神の御命令です。おとなしく死んでください」
「なっ。なんだと。近衛、こいつらを取り押さえろ」
「簡単に説明をすると、そんな感じです」
フレイヤが教えてくれた。
「貴族というのも、以外と強いな? いや近衛が弱いのか?」
「今残っているのは、双方共に枠外でございますから」
エリサベトが教えてくれる。
こいつ一応宰相なのだが、望の居る場所が私の居場所と言って、ついて回る。
仕事はしているから良いけれど。
見ていると、以外と勇者くん、躊躇無く貴族達を切っていく。
一年以上の生活で、結構此方になじんでいたのか。
盗賊退治でもしたのかな?
そう、来た当時、モンスターは何とかなっても、人を切ることに躊躇し、幾度か命乞いをした奴ら。つまり盗賊を許した。
その様子に兵達は、あきれ顔をしていた。
だが、あきれ顔の理由はすぐに分かった。
襲撃の現場ではなく、凶悪な奴らのアジトで、そいつらのおこなった非道を見て、衝撃を受ける。
街道で襲った戦利品は、人では無く物。
使いにくいものは処分をして、そんな考えの下、アジトの端に適当に土をかぶせた処分場。
幼い者達を多数含む、奴らにとって使えない、人だったもの。
もてあそぶように、切り刻まれた痕まである。
その中に、知り合いの商人を見つける。
「この商がうまく行けば楽になります。娘も結婚するし、良いことばかり。じゃあちょっと仕入れに行くので、店を休みますが心配をしないでくだせい」
そんな言葉を交わした、二週間後。
ゴミのように捨てられた彼を、見つけることになるとは。
そして集落側でも、娘達が裸で首に縄をつけて木の杭に結ばれている。
手足を切られて、転がされている者もいる。
その光景はひどいもので、平和な世界にどっぷりだった勇者くんの意識をぶっ壊すには十分な衝撃を与えた。
そして、兵と斬り合っている盗賊達の中に見覚えのある顔を、幾つも見つける。
「つまり、僕があの時許して…… 放免をしたから。この人達がこんな目に?」
人が入って来ても、娘達の目には何も映ってはいない。
「どうだい。勇者様」
横にいる兵が聞いてくる。
「奴らを捕縛という事でしたが、少々の罰じゃ改心なんかしない。奴らは人の格好をしているが、魔族のような奴らだ」
「ああ。理解をしたよ」
その日勇者くんは、人に向かって本気で剣を振るった。
その姿は、どちらが盗賊やら悪魔だか分からないほど。
そして、今までは、倒したモンスターの最後などが、夢に現れて飛び起きたりしたが、その日から夢を見なくなった。
一人切るから、罪悪感を得るんだ。大量に殺せば気にならなくなるよ。
誰かが言っていた言葉。
一応そんな経験をして、対人戦もぼんくら貴族どもとは格が違う。
「勇者様。帰ってきてくれた……」
教育のたまもので、性悪だったダーシャの目に涙が浮かぶ。
若さのせいか、身近で一年以上近くにいた人間が、あっさり自分を捨てたことに衝撃を受けて、落ち込んでいた。
「ほら。やっぱり、帰ってくるのよ」
おもわず、飛び出して勇者くんを迎えに行ってしまう。
「王女様、覚悟」
すかさず、端役の貴族が見つけて斬りかかる。
ドラマなら、勇者くんが間に合い。王女を助けるが、むろん間に合わず切られる。
「あっ」
勇者くんの足が止まる。
魔力を刃に乗せて一閃。
小躍りして、ダーシャの首に剣を振り降ろそうとしていた貴族。そして、巻き込まれたその一帯にいた人間達の上半身が転がる。
当然、近衛も貴族も関係ない、無慈悲な刃。
「あらまあ」
エリサベトから、気の抜ける感想が漏れる中。
好実と美葉は、ついてきたことを後悔していた。
望の背中で顔を伏せ、周りは見られない。
だが、怒声や剣戟の音。そして濃密な血の匂い。
何が起こっているのか想像はつく。
「フレイヤ、さっき切られた女の子を治してくれ」
「えっ。まあ良いでしょう」
そう言って軽く手を振ると、ダーシャは金色の光に包まれ、床に広がる血だまりが消える。その光景は、まるで逆回しのビデオのようだが、その周りは変化しない。
見ると、切られた服まで修復をされていく。
勇者くんは理解をしたようだ。此方をちらっと見る。
「ダーシャ。大丈夫か?」
「あっ。えっ。私切られて」
「ああ。そうだ。切られたが、フレイヤ様が治してくれた」
「フレイヤ様?」
「この世界の女神様だ」
そう聞いても、ダーシャは怪訝そうに見つめる。
「あの、変な女が女神? ぴゃっ」
ダーシャは、額にクリティカルな攻撃を受けた。
だが、次の瞬間。傷は修復をされる。
「えっ。いま」
「女神様と言っただろう。失礼なことを言うな」
勇者くんに叱られる。
勇者くんは見た。
目の前で、ダーシャの頭が一度吹き飛んだ。
それが元に戻り、何もなかったように意識を取り戻した。
フレイヤ様こえぇ。
「何をしたんだ?」
そう聞くと、何がおかしいのか、フレイヤは微笑む。
「いつか望が言っていた、リサイクル? とは違いますね。廃物利用とでも申しましょうか? あなたたちは、今のところ廃棄予定です。ですが、役に立てば、少し考えましょうと言ってみただけです」
「どいつもこいつも、領民からの評価は低く。使えないぞ」
「ええ。分かっています。私は考えると言っただけです」
やっと意味が分かった。前向きに検討いたしますだな。
「ああ。考えるだけか」
こいつ、女神だが、堕天をしているのじゃ無いか?
ああいや、均等に興味が無いだけか。
神はすべての人に均等に愛をと、どこかで聞いたか読んだかしたが、こいつは俺とその周囲、そしてそれ以外。それ以外は、均等に興味が無い。
本当に。
「あっ。ダーシャ」
勇者月波くんが、叫んだと思ったら走っていく。
貴族連中の攻撃を、第一王子ダリミルと第二王子ヤロミールが防いで、背後のイヴォナ第一王女と第二王女であるダーシャを何とか守っている。
その向こうには、王と宰相。そして婦人だろう、見事に背中を切られて倒れていた。
その日、王都内の異常さに気がつき、謁見と報告が行われていた。
普段は、王妃や王子達は列席などはしないが、あまりの異常さに、近衛とともに謁見の間に居た。
そこに、血相を変えてやって来た落第貴族達。
むろん、フレイヤが導いた。
「王様。神の御命令です。おとなしく死んでください」
「なっ。なんだと。近衛、こいつらを取り押さえろ」
「簡単に説明をすると、そんな感じです」
フレイヤが教えてくれた。
「貴族というのも、以外と強いな? いや近衛が弱いのか?」
「今残っているのは、双方共に枠外でございますから」
エリサベトが教えてくれる。
こいつ一応宰相なのだが、望の居る場所が私の居場所と言って、ついて回る。
仕事はしているから良いけれど。
見ていると、以外と勇者くん、躊躇無く貴族達を切っていく。
一年以上の生活で、結構此方になじんでいたのか。
盗賊退治でもしたのかな?
そう、来た当時、モンスターは何とかなっても、人を切ることに躊躇し、幾度か命乞いをした奴ら。つまり盗賊を許した。
その様子に兵達は、あきれ顔をしていた。
だが、あきれ顔の理由はすぐに分かった。
襲撃の現場ではなく、凶悪な奴らのアジトで、そいつらのおこなった非道を見て、衝撃を受ける。
街道で襲った戦利品は、人では無く物。
使いにくいものは処分をして、そんな考えの下、アジトの端に適当に土をかぶせた処分場。
幼い者達を多数含む、奴らにとって使えない、人だったもの。
もてあそぶように、切り刻まれた痕まである。
その中に、知り合いの商人を見つける。
「この商がうまく行けば楽になります。娘も結婚するし、良いことばかり。じゃあちょっと仕入れに行くので、店を休みますが心配をしないでくだせい」
そんな言葉を交わした、二週間後。
ゴミのように捨てられた彼を、見つけることになるとは。
そして集落側でも、娘達が裸で首に縄をつけて木の杭に結ばれている。
手足を切られて、転がされている者もいる。
その光景はひどいもので、平和な世界にどっぷりだった勇者くんの意識をぶっ壊すには十分な衝撃を与えた。
そして、兵と斬り合っている盗賊達の中に見覚えのある顔を、幾つも見つける。
「つまり、僕があの時許して…… 放免をしたから。この人達がこんな目に?」
人が入って来ても、娘達の目には何も映ってはいない。
「どうだい。勇者様」
横にいる兵が聞いてくる。
「奴らを捕縛という事でしたが、少々の罰じゃ改心なんかしない。奴らは人の格好をしているが、魔族のような奴らだ」
「ああ。理解をしたよ」
その日勇者くんは、人に向かって本気で剣を振るった。
その姿は、どちらが盗賊やら悪魔だか分からないほど。
そして、今までは、倒したモンスターの最後などが、夢に現れて飛び起きたりしたが、その日から夢を見なくなった。
一人切るから、罪悪感を得るんだ。大量に殺せば気にならなくなるよ。
誰かが言っていた言葉。
一応そんな経験をして、対人戦もぼんくら貴族どもとは格が違う。
「勇者様。帰ってきてくれた……」
教育のたまもので、性悪だったダーシャの目に涙が浮かぶ。
若さのせいか、身近で一年以上近くにいた人間が、あっさり自分を捨てたことに衝撃を受けて、落ち込んでいた。
「ほら。やっぱり、帰ってくるのよ」
おもわず、飛び出して勇者くんを迎えに行ってしまう。
「王女様、覚悟」
すかさず、端役の貴族が見つけて斬りかかる。
ドラマなら、勇者くんが間に合い。王女を助けるが、むろん間に合わず切られる。
「あっ」
勇者くんの足が止まる。
魔力を刃に乗せて一閃。
小躍りして、ダーシャの首に剣を振り降ろそうとしていた貴族。そして、巻き込まれたその一帯にいた人間達の上半身が転がる。
当然、近衛も貴族も関係ない、無慈悲な刃。
「あらまあ」
エリサベトから、気の抜ける感想が漏れる中。
好実と美葉は、ついてきたことを後悔していた。
望の背中で顔を伏せ、周りは見られない。
だが、怒声や剣戟の音。そして濃密な血の匂い。
何が起こっているのか想像はつく。
「フレイヤ、さっき切られた女の子を治してくれ」
「えっ。まあ良いでしょう」
そう言って軽く手を振ると、ダーシャは金色の光に包まれ、床に広がる血だまりが消える。その光景は、まるで逆回しのビデオのようだが、その周りは変化しない。
見ると、切られた服まで修復をされていく。
勇者くんは理解をしたようだ。此方をちらっと見る。
「ダーシャ。大丈夫か?」
「あっ。えっ。私切られて」
「ああ。そうだ。切られたが、フレイヤ様が治してくれた」
「フレイヤ様?」
「この世界の女神様だ」
そう聞いても、ダーシャは怪訝そうに見つめる。
「あの、変な女が女神? ぴゃっ」
ダーシャは、額にクリティカルな攻撃を受けた。
だが、次の瞬間。傷は修復をされる。
「えっ。いま」
「女神様と言っただろう。失礼なことを言うな」
勇者くんに叱られる。
勇者くんは見た。
目の前で、ダーシャの頭が一度吹き飛んだ。
それが元に戻り、何もなかったように意識を取り戻した。
フレイヤ様こえぇ。
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