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第七章 望のスローライフ

第117話 周りに迷惑をかけるな

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 獣人の王である、レックス=レオナム。

 つまり俺の目的の人物。
 騒動のおかげで、早く会えることになった。

 そう、この国を統治しようとは思わない。

 もともと、理性の箍が緩い奴らだしな。
 未だ現在進行形で、山を越えようとか、海を渡ろうとか一所懸命そんな事をしている。

 ひじょうーに鬱陶しい。

 まあ別に、素直にメルーが王になれば、任せてフォローくらいしても良かったのだが、それはその時の話。

 こいつらに魔導具を与えると何をするか判らない。
 特に、目の前に居る奴らは。

「リギュウムディの王。山川 望だ。私を探していたようだが何の用事だ」
「リギュウムディ? リギュウムディだと。宝をよこせぇ。こそこそ隠れやがって」
「ばかだろ。宝をよこせだと? それはもう盗賊の心理。盗賊なら滅んで貰おう」

 そう言って力を解放。

 最近は、力を解放するだけで弱い建物なら崩壊する。

 碧のくれる神水で、完全に体が作り替えられ、エネルギーの通りも抜群。

 すーぱーサイヤな人たちも、びっくりするだろう。

 適当な造りのこの城など、力を解放するだけでこれだ。
 落下し始めた体を、転移する。

 近くの広場から、城が崩れる状況を眺める。

 示し合わせ、この広場では、メンバーがそろっている。

「お茶をどうぞ」
「ありがとう」
「メルーは王になりたかったか?」
「うーん。私たち種族の汚名は払拭できましたし、王様って大変ですよね」
「そうだな。周りが優秀なら楽ができるが、最終は王の責任となる。昔俺がいた世界では、飢饉があった、王を吊るせ。病気が流行った、王を吊るせって、やっていたみたいだから、王は、国を維持するための、民への生け贄としての側面が強かった様だね」
 そう言うと、メルーは目を丸くする。

「そうなんですね。獣人国では、強さの象徴ですけどね」
 のんびり、メルーと精霊四人でお茶をする。

 日本茶と大福。
 ついにうちでも作れるようになった。

「なかなか、綺麗に壊れたな。要が崩壊すると、内側に潰れるんだな」
 石を組み合わせ、アーチ石構造で支え合っている。
 石の重みと、押しつける力で、構造物としてバランスを取る。

 中での崩落があっても、外壁は意外と残るものだが、外壁まで壊れ始めた。
 内側向きに傾斜させて、バランスでも取っていたのだろうか?

 崩落後しばらくしても、誰も出てこない。

 なんだか御間抜けだが、これで終わったのだろうか?
 周りでも、徐々に獣人達が騒ぎ始める。

 みんなが走って行く広場の中心で、優雅にお茶をしている怪しい集団。

 だが、その中に、有名人がいることに気がつき始める。

 わいわいと、周りを囲む民衆。
「ほい、メルー出番だ」
「本当にやるのですか?」
「当然」
 そう言ってサムズアップ。

「聞け民衆よ、獣人国。そして王レックス=レオナムは、神の怒りを買った。何故か? 自分たちの私利私欲に走り、周辺国に対し迷惑をかけた。その行動に、この世界の管理者であるリギュウムディの王。山川 望は悲しみ。罰を与えたのだぁ。すべては現王と、その取り巻きが起こした騒動。その結果が城の崩壊だ。人の国では、それでも反省しなかった国は土へと帰った。そうしたくなければ、立ち上がり、獣人のための正しい国を運営しなければならない。そうすれば、きっと南北の壁となっている山は、封鎖を解かれるであろう」
 なかなかの、堂々とした演説。

 普段は助けを求めてきた人たちに、説明などをしているのが役に立っているのだろうか?

 それは聞いた人たちは、ザワザワとざわめきが広がっていく。
 その中心でお茶をするのもあれなので、そっと消える。

 俺達が消えたあと、どうなったのかは知らない。
 ただ、メルーが虐められ。助けを求めてくる原因となった村には、神の使徒メルーの伝説と銅像が建ったらしい。

 見に行ったあと、ものすごく困惑をしていた。
 だがひょろっと出場をして、獣王戦で圧倒的な強さをみせ、王城崩落時に、その理由を説明。
 まあ、神の使いだったのだと話はすぐに落ち着く。

 あの時、以外にも王達は死んでいなかったが、民衆により神の怒りを買うとは何事だと責められ、秘匿していた財産まで発見されて、獅子族自体が失墜をした。

 吊るされたとか何とか。
 
 そして、南北の山はまだ高いまま。
 何とか、海路を使い交易はある様だが、その他の国は、便利になるように某国の王がてこ入れをするために、いきなり発展をする。

 それに比べて、昔ながらの生活をしているようだ。

 そして、プラネータ=デェ=ドムンにおいて、すべての国家は一応リギュウムディの傘下となった。

 そして時代が進み、飛行船が一般的になった頃、やっと諸国からの手が差し伸べられる。

 望は、それからしばらく子育てに奔走して、ある程度大きくなってきた頃、自分がそうであったように、キャンプの方法や、釣りのタックルと仕掛けの作り方、火のおこし方や料理を教え、楽しい日々が送れるようになってきていた。


「この世界へ来て、一五年か?」
「そうねえ。体が全く変わらないから違和感」
 横で釣り糸を垂れているのは、当然美葉。

 好実は、今日コーガネーで新作の映画が封切りだと言って、クリスティーヌを連れて行った。
 クリスティーヌは、最初にであった女性兵士だ。
 結局、好実の従者のような事をしている。

 王国自体の行政は、私の命に代えてと言って、エリサベトが守っているし、魔王国では、ナジェジュダが学長となり、魔術研究都市を復活をさせて、そこに大学のイメージで学院を開いた。

 今各国から、留学生が来て賑わっている。
 今の人気は、魔導具と術式制御。
 外からの刺激に対して、別の動きを返す。そんなものが流行となっている。

 電気による機器も作っている。
 個人家庭に、魔導式発電機が設置されて、そこから給電を行う。

 今研究中だが、魔導具では、やはり細かな制御が不得意。
 そのための家電品。
 雷系の魔導具は、電子の移動を起こさせるので、基本直流。
 それを簡単なインバーターで交流化をする。
 コンデンサーとトランジスタを使って、スイッチング。プラスとマイナスを切り替える。

 やっと、ある程度理想の世界が作れた。

 川の中へ、雷魔法をぶち込む娘を叱りながら、カレーを作る。
 俺の横では、何故か川で取れた伊勢エビを、網の上で焼く美葉。
 岩の横にはアワビやサザエがいるし。
 それでも川なんだよ。

 やっぱり、キャンプは楽しいなぁ。
 そう言って伸びをする。

 振り返ると、城があるけどね。


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 お読みくださり、ありがとうございました。

 何とか理想の状態に持って行けたようです。
 多分これから数千年の人生を、平和に送っていくのでしょう。
 では、これにて。
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