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第1章
2.思わぬ再会
しおりを挟むZという店は、大通りから路地に入ってしばらく行ったところにあった。
見た目は店というよりは事務所に近い。
看板も何もなく、そっけないドアとインターフォンがあるだけだ。
遥可がインターフォンを押す。
「こんにちは」
「こんにちは。良い商品が入ったとお聞きして来ました」
その言葉が合言葉のようになって、案内係がやって来る。
太った中年男性だが、髪やメイク、スーツの着こなしがどこかチグハグである。
複雑に入り組んだ廊下を歩き、階段を上ったり下りたりして、受付に着く。
「新山グループの御曹司である新山遥可様ですね。お越し頂きまして光栄です」
受付に立つ男が頭を下げる。
「よくご存知ですね」
遥可は笑って言う。
「わざわざ新山様が来られたのは、何か理由がおありなのでしょうか?」
男の言葉に、遥可は少し考えて言う。
「そちらに最近αの男が入ったとお聞きしました」
男は微笑む。
「新山様のお耳にも入られたんですね!確かに彼はここの一番の人気です」
「今すぐに会うのは難しいでしょうか?」
男は目の前のモニタを見て頷いた。
「つい先程、前のお客様が帰られましたので大丈夫です。ご案内いたします」
遥可は案内係の太った男性とともに、さらに廊下を進んで、突き当たりの部屋にたどり着く。
扉を開けて、男性は言う。
「どうぞ、ごゆっくり。ご自由にお使いください」
扉が閉められ、遥可は噂のαと2人きりにされる。
「ご自由にお使いください」という言葉が人間に使われたことが、遥可を不安にさせる。
呻き声が聞こえるのも怖い…
覚悟を決めて前を見ると…
ベッドにうずくまってこちらに尻を向けている男がいた。ムチのようなもので打たれたらしく、破れた皮膚から血が流れている。
手当てさえしてもらえないなんて…と遥可は絶句する。鞄からポケットティッシュを出して血を拭こうとする。
「大丈夫…じゃないよな…痛いだろ…」
「何しに来たの?俺を憐れみに来たの?」
吐き捨てるような男の声に遥可の手が止まる。
「早く俺を抱いてよ」
男が振り返る。
目が合って、2人とも驚く。
「あ…あんた…あの時の…」
「お前は…龍我を刺した…」
3年前の記憶が蘇る。
遥可の友人の理斗に嫉妬して、その恋人の龍我を刺した、最低な男…
確か、高須将大という名前だった…
「なんでお前、こんなところにいるの?出所して一体何があったの?」
将大は黙っている。
Ωがするような首輪を着けている。手首から二の腕をストレッチ素材のアームカバーのようなもので覆っている。
それ以外には何も身につけず、裸で座って遥可をじっと見ている。
「おい、答えろよ」
遥可は将大の肩を掴んで揺さぶる。
将大はその手から逃れて、自ら脚を開く。
「早く…俺に入れて…」
遥可は激怒する。
「はあ?お前ふざけてんの?誰がお前なんかとやるかよ…汚い」
軽蔑の眼差しを向ける。
突然、将大は泣き出してしまう。
「もう限界…なのに…前の客はそんな俺を面白がってムチで打つだけ打って、入れてくれなくて…ううっ」
そんな言葉を遥可は無視しようとするが…
痙攣している脚。
何もしていないのに液が零れ落ちる尻穴。
沸騰しそうなくらいに紅潮した顔。
普通ではない将大の様子が心配になる。
「大丈夫か?」
荒い呼吸をしながら、涙目で将大は遥可を見る。
「…指でならやっても良いけど」
遥可は自分の言った言葉に驚く。
「お願い…」
将大の顔が恥辱でさらに紅く染まった。
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