堕ちたαの罪と愛

おはぎのあんこ

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第2章

13.ライバル?

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 空き教室の窓からは、花壇とその奥のグラウンドが見える。


 賑やかな外を横目に見ながら龍我は言う。

「最初に謝っとくけど…君らの教室で俺らが淫らな行為をしたのは、本当に悪かったと思ってる。見たくないものを見せられて、不快だったと思う。ごめん」

 将大は笑う。

「何言ってんの?見たくなかったわけないじゃん?あの日体調悪くて校外学習休んで、忘れ物とりに学校に来た俺、本当ナイスだったわ。おかげで鈴川理斗ちゃんに出会えたんだから…」
「で、理斗の制服を盗んだ…」

 将大は 気まずそうな顔をする。

「あれは本当に申し訳なかった。理斗ちゃんに少しでも近づきたくて…」
「理斗ちゃんはやめて」

 将大は「分かったー」と言って笑う。


 栗色の短い髪。
 大きくて少しつり上がった目。
 悪戯っぽく笑う口。

 一歳しか違わないはずなのに、顔つきも身体つきも子どもっぽさがある。


「制服は鈴川さんにすぐ返したよ。ごめんね」
「そんなに好きなのか?」

 龍我の言葉に将大は頰を赤くする。

「んー、好きっていうか…憧れ?でも、本気だよ」
「番になりたいって言ったんだろ?お前もαなのか?」
「うん、俺もα。でも、まだαとして目覚めてないんだ。あの日も鈴川さんのフェロモンを感じなかったよ…」

 将大の発育が遅くて本当に助かった、と龍我は心から思った。

「だから、実際に番になりたいというよりは、ライバル宣言みたいな感じだね」
「ライバル宣言?」

 将大は今までで一番楽しそうな笑顔を見せる。

「早く番にならないと、俺が貰っちゃいますよ?っていう宣言かな」

 その言葉に龍我は怒る。

「馬鹿、そんな簡単なもんじゃねーよ。番になるってのは一生そのΩと共に生き、守っていくってことだぞ。お前みたいなガキには分からないかもしれないけど…」
「ふーん。いつかあんたも俺もそう思えるようになるのかねぇ?」

 将大は突然真面目な顔して聞く。

「エリート同士でα、またはβと繋がるαも沢山いるけど…αとΩの繋がりは本能的なものだから。本妻とは別に愛人としてΩを囲ってるαも普通に多いしな。それがαなんだよな」
 龍我は自分の父親のことを思いながら言う。


 龍我の父親はα、母親はβだが、10歳になったときに愛人の存在を知らされた。
 母親も公認の、男のΩだった。
「αはΩを、Ωはαを本能的に求めるものだからね」と母親は笑顔で言った。
 そういうものなのか、と龍我は思った。


「やだねー、αって」
 将大は苦笑する。

「まあ、とにかく、俺がいるってことは覚えといて!いつか2人のところにまた行くかも」
「いつ来ても無理だよ」

 温度差のあるまま、2人は別れた。


 自分の教室に戻って龍我は理斗に言う。

「全然心配する必要なかった。あいつはただのガキだ。俺たちは今まで通りで良いんだよ」

 理斗は安堵の表情を浮かべる。
「そっか。あの子、ただ恋に憧れてたんだね」



 …3年後、2人は知ることになる。
 その考えが大間違いであったことを…
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