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第3章
21.1つの願い
しおりを挟む将大の言葉に、遥可は怒る。
「ふざけんなよ。何今更自分をモノとか言ってんの?俺が名前呼んだときに将大が流した涙は何だったの?」
相変わらず、将大のうなじは遥可の目の前にある。
将大の荒い息遣いが聞こえる。
「ごめんね。俺はZを出さえすれば性玩具じゃなくなる、人間として生きられる、って勘違いしてた…でも、もう戻れないよ…」
「よく分かんないけど…性玩具になることを自分で望んだ、って言ってたのは本当?」
将大は消え入りそうな声で答える。
「うん…水を張った浴槽の前に連れて行かれて『ここで溺死するか、男に抱かれる性玩具となって使われてから殺されるか、どっちが良い?』って聞かれて…俺は後者を選んだ…」
「それ2択として成り立ってないよ。自分で望んだとは言い難いんじゃ…」
遥可は呆れて言う。
将大は振り返るのをやめて前を向く。
遥可からは将大の表情は見えなくなる。
「でも…父さんがしたことなんだったら…俺がすぐに死ぬ方選んでたら…もしかしたら、許してくれたかもしれない…殺されずに家に帰れたかもしれない…」
「まだ父親のこと言ってんのかよ?そんなの確かめようもないじゃん」
将大は両手で自分の肩を抱く。
「性玩具になることを選択したら…衣服を全部剥ぎ取られて、さっきの首輪を嵌められて…それからベッドに連れてかれて…そこにいたスタッフ5人にマワされた…」
「ひどいな…」
遥可は絶句する。
「オナニーはしてたけど、他の人とシたことはなかったから…痛くて、怖くて…でも、声を出したら殴られるという、まあ最悪の経験。自分は性玩具なんだということをカラダに叩き込まれた…でもね」
ふいに、将大の声が甘くなる。
「指で解された後でっかいちんこ入れられて…痛いし、苦しいんだけど、身体の内側から悦びが溢れてくるんだよね。心も、すごく落ち着いて…ああ、俺はこうされることをず
っと望んでたんだなあ、って思ったよね」
「そうなんだ」
「5人に犯され、全てが終わった後…全身の痛みと精液に塗れた身体をベッドに横たえながら、俺は不思議な満足感を感じていたよ」
将大はふふっと笑う。
「性玩具として色々な人に使われたこの約半年間、辛いことは数え切れないくらいあった…でも、快楽を自ら求めてたところもあったのは事実。変態なんだよな、俺」
「媚薬打たれてたからなんじゃないの?」
遥可の言葉を将大は聞き流す。
「こんな変態だから、父親に愛想つかされたんだよね、きっと。何よりもちんこ入れられたい自分優先で…」
将大はベッドから降りる。
ドアの近くに、遥可と向き合って立つ。
笑みを浮かべながら話す。
「自分をモノって言うのは、卑下して言ってるんじゃないよ?俺は人間として汚過ぎるゴミだから、性玩具としての俺の方がまだマシなくらいなんだ。男に抱かれたい気持ちだけで突っ走って、明日海をヤリ捨てて、龍我を身勝手に傷付けた…本当に呆れるよな?」
アハハ、と将大は笑う。
「こんな汚いゴミ、ここにいるべきじゃないよな。早く出て行かなくちゃ…悪いけど、しばらく携帯借りるね?俺を使ってくれる男を掲示板で探して、泊めてもらうよ」
ドアを開けようと取手に手をかけた将大を遥可は呼び止める。
「何勝手に出て行こうとしてんだよ」
将大は振り返る。
遥可もベッドから降りる。
近づいて、将大の肩を両手で掴む。
2人、向き合う形になる。
「こんなこと言うつもりじゃなかったけど…お前を助けた見返りに一つだけ教えて欲しい。将大は何をしたくて、俺に助けを求めたの?」
「う…」
将大の視線が泳ぐ。
「何言っても笑わないからさ」
真剣な目で遥可は言う。
しばらくして、将大は心を決める。
「俺はね」
優しい目になって将大は言う。
「もう一度、遥可に会いたかったんだ。それで…もう一度遥可に抱かれたかった」
将大の目から涙が溢れてくる。
「俺、普通の恋人みたいに遥可に抱かれたかったんだよね。俺が中学の教室で見た、龍我と理斗みたいに…でも、無理だよね。だって、俺汚いもん…」
泣き笑いのようになって、将大は遥可から離れようとする。
遥可は将大を引き戻して、抱きしめる。
俯いている将大の顎を持って顔を上げさせる。
目を見つめながら言う。
「俺もお前を抱きたい…今すぐ」
将大は目を見開く。
「良いよね?」
遥可は将大の唇を奪う。
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