堕ちたαの罪と愛

おはぎのあんこ

文字の大きさ
21 / 26
第3章

21.1つの願い

しおりを挟む

 将大の言葉に、遥可は怒る。
「ふざけんなよ。何今更自分をモノとか言ってんの?俺が名前呼んだときに将大が流した涙は何だったの?」

 相変わらず、将大のうなじは遥可の目の前にある。
 将大の荒い息遣いが聞こえる。

「ごめんね。俺はZを出さえすれば性玩具じゃなくなる、人間として生きられる、って勘違いしてた…でも、もう戻れないよ…」
「よく分かんないけど…性玩具になることを自分で望んだ、って言ってたのは本当?」


 将大は消え入りそうな声で答える。
「うん…水を張った浴槽の前に連れて行かれて『ここで溺死するか、男に抱かれる性玩具となって使われてから殺されるか、どっちが良い?』って聞かれて…俺は後者を選んだ…」
「それ2択として成り立ってないよ。自分で望んだとは言い難いんじゃ…」
 遥可は呆れて言う。

 将大は振り返るのをやめて前を向く。
 遥可からは将大の表情は見えなくなる。
「でも…父さんがしたことなんだったら…俺がすぐに死ぬ方選んでたら…もしかしたら、許してくれたかもしれない…殺されずに家に帰れたかもしれない…」
「まだ父親のこと言ってんのかよ?そんなの確かめようもないじゃん」

 将大は両手で自分の肩を抱く。
「性玩具になることを選択したら…衣服を全部剥ぎ取られて、さっきの首輪を嵌められて…それからベッドに連れてかれて…そこにいたスタッフ5人にマワされた…」
「ひどいな…」
 遥可は絶句する。

「オナニーはしてたけど、他の人とシたことはなかったから…痛くて、怖くて…でも、声を出したら殴られるという、まあ最悪の経験。自分は性玩具なんだということをカラダに叩き込まれた…でもね」

 ふいに、将大の声が甘くなる。

「指で解された後でっかいちんこ入れられて…痛いし、苦しいんだけど、身体の内側から悦びが溢れてくるんだよね。心も、すごく落ち着いて…ああ、俺はこうされることをず
 っと望んでたんだなあ、って思ったよね」
「そうなんだ」
「5人に犯され、全てが終わった後…全身の痛みと精液に塗れた身体をベッドに横たえながら、俺は不思議な満足感を感じていたよ」

 将大はふふっと笑う。
「性玩具として色々な人に使われたこの約半年間、辛いことは数え切れないくらいあった…でも、快楽を自ら求めてたところもあったのは事実。変態なんだよな、俺」
「媚薬打たれてたからなんじゃないの?」
 遥可の言葉を将大は聞き流す。
「こんな変態だから、父親に愛想つかされたんだよね、きっと。何よりもちんこ入れられたい自分優先で…」

 将大はベッドから降りる。
 ドアの近くに、遥可と向き合って立つ。
 笑みを浮かべながら話す。
「自分をモノって言うのは、卑下して言ってるんじゃないよ?俺は人間として汚過ぎるゴミだから、性玩具としての俺の方がまだマシなくらいなんだ。男に抱かれたい気持ちだけで突っ走って、明日海をヤリ捨てて、龍我を身勝手に傷付けた…本当に呆れるよな?」

 アハハ、と将大は笑う。
「こんな汚いゴミ、ここにいるべきじゃないよな。早く出て行かなくちゃ…悪いけど、しばらく携帯借りるね?俺を使ってくれる男を掲示板で探して、泊めてもらうよ」


 ドアを開けようと取手に手をかけた将大を遥可は呼び止める。
「何勝手に出て行こうとしてんだよ」
 将大は振り返る。

 遥可もベッドから降りる。
 近づいて、将大の肩を両手で掴む。
 2人、向き合う形になる。

「こんなこと言うつもりじゃなかったけど…お前を助けた見返りに一つだけ教えて欲しい。将大は何をしたくて、俺に助けを求めたの?」
「う…」
 将大の視線が泳ぐ。
「何言っても笑わないからさ」
 真剣な目で遥可は言う。


 しばらくして、将大は心を決める。
「俺はね」
 優しい目になって将大は言う。
「もう一度、遥可に会いたかったんだ。それで…もう一度遥可に抱かれたかった」

 将大の目から涙が溢れてくる。
「俺、普通の恋人みたいに遥可に抱かれたかったんだよね。俺が中学の教室で見た、龍我と理斗みたいに…でも、無理だよね。だって、俺汚いもん…」
 泣き笑いのようになって、将大は遥可から離れようとする。


 遥可は将大を引き戻して、抱きしめる。
 俯いている将大の顎を持って顔を上げさせる。
 目を見つめながら言う。
「俺もお前を抱きたい…今すぐ」
 将大は目を見開く。

「良いよね?」
 遥可は将大の唇を奪う。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です

ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」 「では、契約結婚といたしましょう」 そうして今の夫と結婚したシドローネ。 夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。 彼には愛するひとがいる。 それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

【本編完結】あれで付き合ってないの? ~ 幼馴染以上恋人未満 ~

一ノ瀬麻紀
BL
産まれた時から一緒の二人は、距離感バグった幼馴染。 そんな『幼馴染以上恋人未満』の二人が、周りから「え? あれでまだ付き合ってないの?」と言われつつ、見守られているお話。 オメガバースですが、Rなし全年齢BLとなっています。 (ほんのりRの番外編は『麻紀の色々置き場』に載せてあります) 番外編やスピンオフも公開していますので、楽しんでいただけると嬉しいです。 11/15 より、「太陽の話」(スピンオフ2)を公開しました。完結済。 表紙と挿絵は、トリュフさん(@trufflechocolat)

【完結】運命さんこんにちは、さようなら

ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。 とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。 ========== 完結しました。ありがとうございました。

ちゃんちゃら

三旨加泉
BL
軽い気持ちで普段仲の良い大地と関係を持ってしまった海斗。自分はβだと思っていたが、Ωだと発覚して…? 夫夫としてはゼロからのスタートとなった二人。すれ違いまくる中、二人が出した決断はー。 ビター色の強いオメガバースラブロマンス。

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学で逃げ出して後悔したのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

【完結済】キズモノオメガの幸せの見つけ方~番のいる俺がアイツを愛することなんて許されない~

つきよの
BL
●ハッピーエンド● 「勇利先輩……?」  俺、勇利渉は、真冬に照明と暖房も消されたオフィスで、コートを着たままノートパソコンに向かっていた。  だが、突然背後から名前を呼ばれて後ろを振り向くと、声の主である人物の存在に思わず驚き、心臓が跳ね上がった。 (どうして……)  声が出ないほど驚いたのは、今日はまだ、そこにいるはずのない人物が立っていたからだった。 「東谷……」  俺の目に映し出されたのは、俺が初めて新人研修を担当した後輩、東谷晧だった。  背が高く、ネイビーより少し明るい色の細身スーツ。  落ち着いたブラウンカラーの髪色は、目鼻立ちの整った顔を引き立たせる。  誰もが目を惹くルックスは、最後に会った三年前となんら変わっていなかった。  そう、最後に過ごしたあの夜から、空白の三年間なんてなかったかのように。 番になればラット化を抑えられる そんな一方的な理由で番にさせられたオメガ しかし、アルファだと偽って生きていくには 関係を続けることが必要で…… そんな中、心から愛する人と出会うも 自分には噛み痕が…… 愛したいのに愛することは許されない 社会人オメガバース あの日から三年ぶりに会うアイツは… 敬語後輩α × 首元に噛み痕が残るΩ

処理中です...