堕ちたαの罪と愛

おはぎのあんこ

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第3章

23.嬉しい再会

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 翌朝、2人で朝ごはんを食べる。

「遥可…ありがとね。クロワッサンに、オムレツやサラダも用意してくれて…ジュースまで作ってくれて…」
 将大は嬉しそうに微笑む。
「朝ごはんは1人より2人の方が楽しいからね」
 遥可も微笑んで将大を見つめる。


 将大は食べる手を止める。
「あのさ…遥可、恋人いるよね…?」
 恐る恐る聞く。
「昨日俺に使ったローション、開封済みだったよね?いつもは恋人か、それともセフレ?に使ってるの?」
 将大は目をキョロキョロさせる。
 遥可は挙動不審な将大の様子を気にせず言う。
「セフレも何人かいるけど、部屋に入れるのは恋人だけだよ」

 将大は聞く。
「遥可の恋人ってどんな人?男?女?」
「女。名前は恵麻 えま。中学の頃から付き合ってる。今はアメリカの大学に通ってるから年に数回しか会えない」
 遥可は履歴書を読み上げるように言う。

「そっか。遠距離恋愛かぁ。でも、いくら遠距離といっても、他の人とセックスして良いの?」
 申し訳なさそうに将大は聞く。
「良いんだよ。俺らはそういうのOKなんだ。ってか、恵麻の方がいろんな人とヤリまくってる。男に抱かれるのも好きだし、男や女のΩを抱くのも好き。ジ・αな強い女だよ」
 遥可は笑う。
「そうなんだ…」


 将大は話題を変える。
「このままずっと遥可の世話になるわけにもいかないな。頼れそうなところに当たらないと…」
「そのことなんだけど…今日将大に会いたい、っていう人がいるんだ」
 コーヒーを飲みながら遥可が言う。
「え?」
 将大は驚く。
「俺、まだ誰にも連絡してないよ?」
「俺が昨日連絡したら、すぐに会いたい、って。遠方に住んでるみたいだから、今日の昼に待ち合わせした」
 あっさり言う遥可に将大は戸惑う。
「なんで遥可が…それに誰…?」
 遥可はニッコリ笑う。
「会ったら分かるよ」


 遥可の車で街まで行く。
 デパートの中の喫茶店で待ち合わせする。
 Zの関係者に見られる恐れがあるので、将大は一応変装をする。

 現れたのは…
 眼鏡をかけた優しそうな、しかし日に焼けて身体つきがガッシリしている男性。
 その横に3歳くらいの男の子もいる。

「久しぶり。将大…こんなに大きくなって…」
 男性は将大を見て涙ぐむ。


 将大は不審そうな目で男性を見る。
「失礼ですが…」
 男性は慌てて謝る。
「あ、ごめん!10年以上会ってなかったから分かんないよね?俺は剛大 たけとだよ」

 将大は目を見開く。
「…お兄ちゃん?」
 言葉に詰まって、将大の目から涙が溢れ出す。
「会いたかった…ずっと…」
 将大は手で目頭を押さえながら泣く。
 崩れそうになるのを、剛大は抱きしめる。
「俺も…」
 剛大も目を閉じて、抑えていた涙を流す。


 しばらく2人で再会を喜んだ後、席に着く。
 それぞれコーヒーや軽食、男の子にはりんごジュースを頼む。

 剛大が話し出す。
「もっと早く会えば良かった…母さんに聞かれたことが何度かあったんだ。『お父さんに内緒で将大に会っても良い?』って。でも、俺は嫌だと言ったんだ」
 将大が濡れた目で剛大を見る。
「俺は将大に嫉妬してたから。俺はβに生まれて、父さんに出来損ないと罵られた。母さんは味方してくれたけど、そのせいで家族をバラバラにしてしまった。俺は劣等感と罪悪感にずっと苦しんできた。そんな苦しみも知らないαの将大に母さんを会わせたくなかった」

 剛大はテーブルの上に両手を出す。
 視線に気づいた将大も両手を出して、互いの手を握り合う。
「3年前、ネットのニュースで事件のことを知って気づいたよ。将大も苦しんでいたんだ、って」
 剛大は笑う。
「考えてみりゃ分かる話だよな?実の息子を見捨てるような父親と2人きりなんて楽じゃない、って。でも、俺は自分のことばかりで気付けなかった…」
 剛大は震える手で将大の手を強く握る。
「今まで1人にして、本当にごめん」
「良いよ…俺が弱かっただけだから…こっちこそ、心配かけてごめん」
 将大も震える声で言う。


「いろいろあったけど、北海道で農家やってるんだ。母さんと俺と俺の奥さんとで頑張って、今は軌道に乗ってる。行くとこなかったら、将大もこっち来なよ。良いところだよ」
 剛大は笑う。
「うん。そうする」
 将大は即答する。


 将大は男の子の方を見て言う。
「その子はお兄ちゃんの子どもなんだね?長旅してきて偉いね」
 将大の言葉に剛大は首を振る。

 剛大は子どもに聞かれないように将大に耳打ちする。
「この子は将大と明日海さんの子だよ」
「…えっ」
 将大は固まってしまう。
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