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第二章 渡る世間は跳梁跋扈
第21話 そのとき、風見祥子は絶叫した
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俺はビルの『異階化』を解いて、外へ。
そして、裏路地から飛翔の魔法で一気に空へとブッ飛んだ。
――状況だけを見れば、風見祥子は詰んでいる。
ひなたは俺が守ってるし、慎良を撃ったところでこっちには蘇生手段がある。
実質、祥子にできることなんぞ何も残されちゃいない。
北村理史が消えて北村のグループも壊滅した今、祥子に待ってるのは破滅だけ。
だが俺は急いだ。全速力で空をカッ飛ばした。
「傭兵としての初仕事で、依頼人の死亡なんてケチつけられてたまるかァ!」
もうね、ソレよ。
夜の空を爆走する俺の頭の中を占めてるのは、その一念のみよ。
だが、ああ、認めよう。
これは完全な俺の失態だ。ミスだ。ケチのつけようしかない大失敗だ。
俺の感覚はあまりに異世界に寄り過ぎていた。
ここが令和の日本だと、頭でも心でも十分に理解できていたはずなのに、だ。
そーだよ、この世界のワルモンは、銃なんて使ったりするんだよ!
ああああああああああああああああ、何で忘れてたァァァァァァァァァァ!!?
トバして、トバして、アパートまであと二分で到着という地点。
これなら間に合うかも、という淡い期待が俺の中に生まれる。
俺は、偵察用のゴーグルをかけて、最大望遠倍率で現在のアパートを確認する。
「……アパートは無事、か?」
そこでにわかに安堵したのも束の間、
「風見家のドアが開いてますねぇ……!」
もうイヤな予感しかしねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!
「中は……」
透視機能を使って、風見家の中を覗いてみる。
「ぅわ」
思わず、声が漏れた。
そこには、右肩に手を当ててうずくまるお袋と、それを庇うように前に立つ慎良。
そして鬼の形相で二人に拳銃を向けている祥子の姿。
「完全にクライマックス突入してんじゃねぇかァァァァァァァァァァァ!?」
夜空に叫びを響かせて、俺は続いて遠隔集音の魔法を行使する。
このゴーグルと合わせて偵察時に用いる魔法の一種だ。
『――ッ、める……、だ、……祥子ッ!』
『――ィの、! 私の……、魔を……、るから!』
ノイズ混じりながらも、現場の音声が徐々に鮮明になってくる。
『祥子、おまえは自分が何をやってるのかわかってるのか!』
『うるさい、うるさいのよ! 私の邪魔しかしないクセに、黙りなさいよ!』
あ~、風見祥子、完全にキレてんな、こりゃあ……。
『元はといえば、あんたがひなたを渡さないからこうなるのよ! ひなたはどこ!』
『言うとでも思ってるのか、俺はあの子の父親だぞ?』
『父親で、遺産も管理してるんでしょ? 冗談じゃないわ、私にも頂戴よ!』
『おまえは、まだそんなことを……!』
おうおう、北村もまぁ、わかりやすいテンプレだったけどこっちも負けてないね。
『元々、藤咲の遺産は私が相続するはずだったのよ、それを何で除外なんて!』
『自分がお義父さんとお義母さんにそれだけのことをしたと、何故思えない!?』
『知ったこっちゃないわよ! 私は風見祥子なのよ!?』
『そんなだから除外されたんだろうが……』
慎良が苦々しい顔を作るが、これはアレだ、言うだけ無駄のたぐい。
その証拠に、この状況で風見祥子、笑い始めたよ。
『私はね、私さえ幸せならいいのよ! 他は知ったこっちゃないわ! あんたとの結婚だって、あんたがスペックが高かったから、周りに自慢できると思ったからよ!』
『……愛情はなかったと、いうのか』
『あったわよ? お気に入りのアクセサリに対して向ける程度にはね!』
『ひなたは! ひなたにも、何も思っていなかったのか!』
『あのガキには愛情なんて最初からないわよ! それどころか、今は憎くて憎くて仕方がないわ、何で私の金があいつのモノになるのよ? ふざけんじゃないわよ!』
『……おまえは、何でそうなんだ。ひなたが可哀相だとは思わないのか? 俺達の身勝手な理由で、あの子はまだ五歳にもならないのに母親を失ったんだぞ!?』
切実に訴える慎良。だが、祥子は銃を構えたまま、それを鼻で笑う。
風見家まで、あと一分強くらい、か。
『可哀相なのはね、私よ。……私ね、借金があるの。このままじゃね、もうお買い物もホストクラブ通いもできなくなるの。そんなのイヤ、私はもっと色々欲しいの。美味しいものも食べたいし、エステも行きたいのよ。まだまだ幸せになりたいの。そのためには、もっともっとお金が必要なの。私にはひなたが必要なのよ!』
『おまえってヤツは……!』
…………ハハッ。
「いいねぇ、風見祥子。いいよ、いい。あんた最高だ」
最高に地獄に落とし甲斐があるよ。仕返しが今から楽しみだねぇ。
『ひなたはどこ? いい加減吐きなさいよ。あんたもその女みたいになりたいの?』
祥子の目が、チラリとお袋の方を見る。
お袋は、撃たれたらしい肩を押さえたまま、呼吸を乱している。
『……くだらない、ですね』
だが、そのお袋が、小さな声でそんなことを漏らした。
『何ですって?』
反応する祥子に、お袋は恰好はそのままに目線だけを上げて睨み返す。
オイオイ、マジか、お袋。え、この状況で何か言えることあるの、あんた?
『ひなたちゃん、可愛いじゃないですか……。旦那さんだって、家族思いで、優しくて、カッコよくて。お金だって不自由してたワケじゃないんでしょ? 何が、不満だったんですか? どうして、そんなに被害者ヅラできるんですか……?』
ふぇぇ、俺が知る限り一番の被害者ヅラの達人が何かのたまってるよぅ……。
『あたしも、加害者でした……』
――え? 自覚あったの!?
『これまで散々、あの子を辛い目に遭わせてきました。自分がそうならないために、あの子を供物に捧げてきたんです。仕方なかった。あたしも、痛いのも苦しいのも嫌だったから、そうするしかなかったんです……。言い訳かも、ですけど』
いや、言い訳だよ、それ。
まごうことなく苦しい言い逃れだよ。
『……それでも、あたしはアキラが可愛かった』
『あんた……ッ』
『エゴです、知ってます。あたしが一番可愛いのは自分です。……でも、だけど、息子を可愛いと思う心は、あたしの中にあるんです。あたしは、あの子の母親だから』
え、嘘。何、え?
俺はこの突然のお袋の独白に、どんな感情を抱けばいいの?
こんな場面で言う以上、嘘、冗談、口から出まかせのたぐいじゃなかろう。
じゃあ本心? 本音? これが? 豚に俺を差し出した、金鐘崎美沙子の心の内?
『いいんじゃないですか。自分の幸せを追い求めても――』
そして、お袋は汗まみれの顔で震える祥子に失笑を向ける。
『どうせあんたは、アキラに狙われてる。終わりですよ。何があってもあの子はあんたを逃がさない。くだらないあんたは、そのくだらなさから破滅するんですよ……』
『うぅぅぅぅ、う、うるさい、うるさいうるさいうるさい、うるさい!』
祥子が、歯を剥き出しにして怒鳴り散らす。
これはそろそろヤバイ。これ以上刺激すれば、いらん暴発を招きかねんぞ。
『あたしは加害者だった。でも、同時に本当に被害者でもあった……。あの子を供物に差し出すことに、いつも後悔と罪悪感があったんですよ。ただ加害者なだけのあんたとは、同じ母親という立場でも絶対に違う。あたしは、あんたよりはマシだ』
って、思ってるそばから、お袋のバカァ――――ッ!?
それは膨らみ切った水風船に針を突き刺すのと同じ所業だァァァ――――ッ!
『うるさいって、言ってんのよォォォォォォォォォォォッッ!』
ほら見ろ、やっぱりブチギレた!
クソッ、風見家まではあと十秒くらいか、その十秒が長すぎるゥゥゥゥ!
『そんなに鉛玉が欲しいなら、あんたから穴だらけにしてやるわよッ!』
祥子が、銃口を慎良からお袋へと向け直す。
うおおおおおおお、ヤバイヤバイヤバイヤバイ! 別にお袋は死んでもいいけど!
いや、やっぱダメだ!
俺の初仕事をお袋なんぞのばっちぃ血で穢してなるものかァ――――ッ!
『死ねェェェェェェェェェェェェェェ!』
耳の奥にまで響く、キレた祥子の怒鳴り声。
そして、銃声。
『……美沙子さん!』
だが、撃ち放たれた弾丸が抉ったのは、お袋ではなかった。
『ぇ、風見さん……!?』
お袋が目を剥く。
自分の前に立って、体を張って弾丸を受け止めた慎良を見て。
『大丈夫ですか、金鐘崎さん』
肩越しに振り返り、笑みを浮かべる慎良の口からは、一筋の血が垂れた。
弾丸は、慎良の胸に突き刺さっていた。
『ぃ、ぃや……。いやぁ!?』
顔面を蒼白にして、今さら悲鳴をあげるお袋。
撃った祥子は、だが表情をそのままに、思い通りにならない展開に身を震わせる。
『何でよ、何であんたが邪魔するのよ! その女を殺させなさいよ!』
『できるワケ、ないだろ。この人は、俺達の一件には無関係、なんだぞ……?』
血が溢れる胸の傷を手で押さえ、慎良が祥子を厳しく睨みつける。
『美沙子さんは、殺させない』
強い決意から発された慎良の一言が、だが、祥子のさらなる暴走を招いてしまう。
そのとき、風見祥子は絶叫した。
『どきなさいよ、慎良ァァァァァァァァァァァァ――――ッッ!』
――――ん? シン、ラ?
え、待って。え、え、待って待って。
そう思う俺など関係なく、祥子が元夫へと銃を連発する。
重なる銃声。着弾の衝撃に彼の体は小刻みに震え、血を噴きながら床に倒れこむ。
『いやぁぁぁぁぁぁぁぁ! し、慎良さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!?』
あ、お袋もシンラって呼んでる。
それじゃあ、マジであの人、慎良って書いてミツヨシじゃなくシンラって読むの?
へ~、そうかぁ。シンラって読むのか、そうか、そうだったのか。
やっぱ漢字って難しいんだなぁ~、へ~……。
ところでさ、シンラってさ……。
俺とミフユの、長男の名前、なんだよね――、
『全快全癒』
そして、裏路地から飛翔の魔法で一気に空へとブッ飛んだ。
――状況だけを見れば、風見祥子は詰んでいる。
ひなたは俺が守ってるし、慎良を撃ったところでこっちには蘇生手段がある。
実質、祥子にできることなんぞ何も残されちゃいない。
北村理史が消えて北村のグループも壊滅した今、祥子に待ってるのは破滅だけ。
だが俺は急いだ。全速力で空をカッ飛ばした。
「傭兵としての初仕事で、依頼人の死亡なんてケチつけられてたまるかァ!」
もうね、ソレよ。
夜の空を爆走する俺の頭の中を占めてるのは、その一念のみよ。
だが、ああ、認めよう。
これは完全な俺の失態だ。ミスだ。ケチのつけようしかない大失敗だ。
俺の感覚はあまりに異世界に寄り過ぎていた。
ここが令和の日本だと、頭でも心でも十分に理解できていたはずなのに、だ。
そーだよ、この世界のワルモンは、銃なんて使ったりするんだよ!
ああああああああああああああああ、何で忘れてたァァァァァァァァァァ!!?
トバして、トバして、アパートまであと二分で到着という地点。
これなら間に合うかも、という淡い期待が俺の中に生まれる。
俺は、偵察用のゴーグルをかけて、最大望遠倍率で現在のアパートを確認する。
「……アパートは無事、か?」
そこでにわかに安堵したのも束の間、
「風見家のドアが開いてますねぇ……!」
もうイヤな予感しかしねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!
「中は……」
透視機能を使って、風見家の中を覗いてみる。
「ぅわ」
思わず、声が漏れた。
そこには、右肩に手を当ててうずくまるお袋と、それを庇うように前に立つ慎良。
そして鬼の形相で二人に拳銃を向けている祥子の姿。
「完全にクライマックス突入してんじゃねぇかァァァァァァァァァァァ!?」
夜空に叫びを響かせて、俺は続いて遠隔集音の魔法を行使する。
このゴーグルと合わせて偵察時に用いる魔法の一種だ。
『――ッ、める……、だ、……祥子ッ!』
『――ィの、! 私の……、魔を……、るから!』
ノイズ混じりながらも、現場の音声が徐々に鮮明になってくる。
『祥子、おまえは自分が何をやってるのかわかってるのか!』
『うるさい、うるさいのよ! 私の邪魔しかしないクセに、黙りなさいよ!』
あ~、風見祥子、完全にキレてんな、こりゃあ……。
『元はといえば、あんたがひなたを渡さないからこうなるのよ! ひなたはどこ!』
『言うとでも思ってるのか、俺はあの子の父親だぞ?』
『父親で、遺産も管理してるんでしょ? 冗談じゃないわ、私にも頂戴よ!』
『おまえは、まだそんなことを……!』
おうおう、北村もまぁ、わかりやすいテンプレだったけどこっちも負けてないね。
『元々、藤咲の遺産は私が相続するはずだったのよ、それを何で除外なんて!』
『自分がお義父さんとお義母さんにそれだけのことをしたと、何故思えない!?』
『知ったこっちゃないわよ! 私は風見祥子なのよ!?』
『そんなだから除外されたんだろうが……』
慎良が苦々しい顔を作るが、これはアレだ、言うだけ無駄のたぐい。
その証拠に、この状況で風見祥子、笑い始めたよ。
『私はね、私さえ幸せならいいのよ! 他は知ったこっちゃないわ! あんたとの結婚だって、あんたがスペックが高かったから、周りに自慢できると思ったからよ!』
『……愛情はなかったと、いうのか』
『あったわよ? お気に入りのアクセサリに対して向ける程度にはね!』
『ひなたは! ひなたにも、何も思っていなかったのか!』
『あのガキには愛情なんて最初からないわよ! それどころか、今は憎くて憎くて仕方がないわ、何で私の金があいつのモノになるのよ? ふざけんじゃないわよ!』
『……おまえは、何でそうなんだ。ひなたが可哀相だとは思わないのか? 俺達の身勝手な理由で、あの子はまだ五歳にもならないのに母親を失ったんだぞ!?』
切実に訴える慎良。だが、祥子は銃を構えたまま、それを鼻で笑う。
風見家まで、あと一分強くらい、か。
『可哀相なのはね、私よ。……私ね、借金があるの。このままじゃね、もうお買い物もホストクラブ通いもできなくなるの。そんなのイヤ、私はもっと色々欲しいの。美味しいものも食べたいし、エステも行きたいのよ。まだまだ幸せになりたいの。そのためには、もっともっとお金が必要なの。私にはひなたが必要なのよ!』
『おまえってヤツは……!』
…………ハハッ。
「いいねぇ、風見祥子。いいよ、いい。あんた最高だ」
最高に地獄に落とし甲斐があるよ。仕返しが今から楽しみだねぇ。
『ひなたはどこ? いい加減吐きなさいよ。あんたもその女みたいになりたいの?』
祥子の目が、チラリとお袋の方を見る。
お袋は、撃たれたらしい肩を押さえたまま、呼吸を乱している。
『……くだらない、ですね』
だが、そのお袋が、小さな声でそんなことを漏らした。
『何ですって?』
反応する祥子に、お袋は恰好はそのままに目線だけを上げて睨み返す。
オイオイ、マジか、お袋。え、この状況で何か言えることあるの、あんた?
『ひなたちゃん、可愛いじゃないですか……。旦那さんだって、家族思いで、優しくて、カッコよくて。お金だって不自由してたワケじゃないんでしょ? 何が、不満だったんですか? どうして、そんなに被害者ヅラできるんですか……?』
ふぇぇ、俺が知る限り一番の被害者ヅラの達人が何かのたまってるよぅ……。
『あたしも、加害者でした……』
――え? 自覚あったの!?
『これまで散々、あの子を辛い目に遭わせてきました。自分がそうならないために、あの子を供物に捧げてきたんです。仕方なかった。あたしも、痛いのも苦しいのも嫌だったから、そうするしかなかったんです……。言い訳かも、ですけど』
いや、言い訳だよ、それ。
まごうことなく苦しい言い逃れだよ。
『……それでも、あたしはアキラが可愛かった』
『あんた……ッ』
『エゴです、知ってます。あたしが一番可愛いのは自分です。……でも、だけど、息子を可愛いと思う心は、あたしの中にあるんです。あたしは、あの子の母親だから』
え、嘘。何、え?
俺はこの突然のお袋の独白に、どんな感情を抱けばいいの?
こんな場面で言う以上、嘘、冗談、口から出まかせのたぐいじゃなかろう。
じゃあ本心? 本音? これが? 豚に俺を差し出した、金鐘崎美沙子の心の内?
『いいんじゃないですか。自分の幸せを追い求めても――』
そして、お袋は汗まみれの顔で震える祥子に失笑を向ける。
『どうせあんたは、アキラに狙われてる。終わりですよ。何があってもあの子はあんたを逃がさない。くだらないあんたは、そのくだらなさから破滅するんですよ……』
『うぅぅぅぅ、う、うるさい、うるさいうるさいうるさい、うるさい!』
祥子が、歯を剥き出しにして怒鳴り散らす。
これはそろそろヤバイ。これ以上刺激すれば、いらん暴発を招きかねんぞ。
『あたしは加害者だった。でも、同時に本当に被害者でもあった……。あの子を供物に差し出すことに、いつも後悔と罪悪感があったんですよ。ただ加害者なだけのあんたとは、同じ母親という立場でも絶対に違う。あたしは、あんたよりはマシだ』
って、思ってるそばから、お袋のバカァ――――ッ!?
それは膨らみ切った水風船に針を突き刺すのと同じ所業だァァァ――――ッ!
『うるさいって、言ってんのよォォォォォォォォォォォッッ!』
ほら見ろ、やっぱりブチギレた!
クソッ、風見家まではあと十秒くらいか、その十秒が長すぎるゥゥゥゥ!
『そんなに鉛玉が欲しいなら、あんたから穴だらけにしてやるわよッ!』
祥子が、銃口を慎良からお袋へと向け直す。
うおおおおおおお、ヤバイヤバイヤバイヤバイ! 別にお袋は死んでもいいけど!
いや、やっぱダメだ!
俺の初仕事をお袋なんぞのばっちぃ血で穢してなるものかァ――――ッ!
『死ねェェェェェェェェェェェェェェ!』
耳の奥にまで響く、キレた祥子の怒鳴り声。
そして、銃声。
『……美沙子さん!』
だが、撃ち放たれた弾丸が抉ったのは、お袋ではなかった。
『ぇ、風見さん……!?』
お袋が目を剥く。
自分の前に立って、体を張って弾丸を受け止めた慎良を見て。
『大丈夫ですか、金鐘崎さん』
肩越しに振り返り、笑みを浮かべる慎良の口からは、一筋の血が垂れた。
弾丸は、慎良の胸に突き刺さっていた。
『ぃ、ぃや……。いやぁ!?』
顔面を蒼白にして、今さら悲鳴をあげるお袋。
撃った祥子は、だが表情をそのままに、思い通りにならない展開に身を震わせる。
『何でよ、何であんたが邪魔するのよ! その女を殺させなさいよ!』
『できるワケ、ないだろ。この人は、俺達の一件には無関係、なんだぞ……?』
血が溢れる胸の傷を手で押さえ、慎良が祥子を厳しく睨みつける。
『美沙子さんは、殺させない』
強い決意から発された慎良の一言が、だが、祥子のさらなる暴走を招いてしまう。
そのとき、風見祥子は絶叫した。
『どきなさいよ、慎良ァァァァァァァァァァァァ――――ッッ!』
――――ん? シン、ラ?
え、待って。え、え、待って待って。
そう思う俺など関係なく、祥子が元夫へと銃を連発する。
重なる銃声。着弾の衝撃に彼の体は小刻みに震え、血を噴きながら床に倒れこむ。
『いやぁぁぁぁぁぁぁぁ! し、慎良さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!?』
あ、お袋もシンラって呼んでる。
それじゃあ、マジであの人、慎良って書いてミツヨシじゃなくシンラって読むの?
へ~、そうかぁ。シンラって読むのか、そうか、そうだったのか。
やっぱ漢字って難しいんだなぁ~、へ~……。
ところでさ、シンラってさ……。
俺とミフユの、長男の名前、なんだよね――、
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