83 / 166
第五章 夏休み、宙色市歴史探訪
第75話 調査・考察:1844について
しおりを挟む
何やら色々回り道をしたような気もするが、まずは『1844』の調査だ。
幾つかそれっぽい資料を持ってきて、机の上にドサっと置く。
「そんなに、数はないわね」
机の上の資料を前に、ミフユがそんなことを呟く。
俺も、そう思った。
古い本が数冊ある程度で、それ以外は特にこれといったものは見つからなかった。
「ちなみにネットでざっと調べてみたんですけど~……」
シイナが、スマホを指で操作している。
「西暦1844年は、日本だと江戸時代後期で、年号が天保から弘化に変わった年みたいですね。って言っても、ピンときませんよね~……」
「うん、そーな。何が何やらだよ、ぶっちゃけ」
江戸時代の後ろの方っていうと、幕末とかくらいしか知らないし。
「この年の少し前には、有名な『大塩平八郎の乱』があったみたいですね。へ~、こんな後の方だったんだ、知らなかった……」
「俺からすると、大塩? 誰? ってなるんだけどな」
「小学二年生からすると日本史なんてそんな感じですよね~」
なお、1844年は年代的には幕末の直前くらいだそうな。
約十年後、俺でも名前くらいは知ってるペリーさんが黒船に乗って来るんだとよ。
「あ、沖田総司が1844年生まれですって」
「え! マジで!? スゲーッ!」
「父様、これまでと食いつきが全然違うんですけど……」
そりゃおまえ、名前も知らんヤツと天下の新選組じゃ扱いも変わるってモンよ。
「あんた達~、ダベってないでちゃんと調べなさいよ~」
早速資料の閲覧を始めているミフユに叱られてしまった。
っつっても、本も少ないし、そこまで時間がかかるようにも思えないけどなぁ。
「それじゃあ調べますかねー」
俺は、一番近くにあった本を手に取る。
だいぶ古そうな、随分と分厚い表紙の本だ。どれどれ――、と。
「私も調べますね~」
シイナもそう言って、本を一冊持ち上げた。
そこからはしばらく調査の時間……、調査の……。え~と……。
「シイナ、シイナ」
「はい、何ですか父様」
「これ、何て読むんだ?」
「この漢字ですか? これは『鎮撫』と読むんですよ」
「ほぇ~」
「あ~、そうかぁ、そうだったわね……」
俺が感嘆の声をあげると、何故かミフユが片手で頭を抱え出した。
「アキラ、あんたは外で待ってていいわよ」
「うぇぇ! 開始早々に戦力外通告っすかァ!?」
資料室の外を指さして言うミフユに、俺はあごを外さんばかりに驚く。
「あの、母様?」
「こいつね、漢字全然読めないのよ。……昔の本にルビなんてほとんどないでしょ」
「あ~……」
ミフユの説明を受けて、シイナがこっちをチラリと見てくる。
その視線に含まれている憐れみを、俺は確かに感じ取った。
「小学二年生なんだから漢字読めなくて当たり前だろ~!」
「それは当たり前かもしれないけど、今この場じゃあんたは足手まといなのよ……」
「ぐふぅ……ッ!」
ミフユの言葉が、俺の腹に強烈な一撃を叩き込んでくる。
ヘ、ヘヘ、そうか、俺ァ、この戦場にゃあ、いない方がいいんだな……。
「あとは任せたぜ、ミフユ、シイナ。もう、俺の時代は終わったんだな……」
「母様、父様が世代遅れのゲーム機の擬人化のセリフっぽいことを言い出してます」
「それはわかんないけど、こっちが調べ終わるまでは外で遊んでていいわよ」
というワケで、俺は資料室を出ていっちゃったんだなー、これが。
フハハハハ、漢字が読めないってツレェェェェ~~!
「母様、こちらの資料なんですが……」
「あ、これはちょっと気になるわね――」
あーあーあーあー、いいなー! 二人で調査とか、何かズルいなー!
「……のど渇いたし、ジュースでも買うか」
俺は資料館の入り口近くにある自販機へと向かう。
途中、受付のおばさんが俺に気づいて話しかけてこようとする。
「あら、坊や。どうしたの?」
「ちょっとジュース買いに来ただけだよ。僕は役に立てないみたいだしー」
「あらあら、そうなのね。でもそんな、拗ねた顔しないの」
「別に、拗ねてないし~……」
尖らせた唇をプルルルと鳴らし、俺は自販機にコインを投入してジュースを……。
「…………届かない」
ボタンの場所が! 高すぎて! 届かないッ!?
チキショオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォ――――ッ!
「はいよ、ちょっと待ってね」
おばさんが受付用のカウンターからわざわざ出てきて、ボタンを押してくれた。
くぅ、このちょっとした優しさが、今の俺にはひどく染みるぜ……。
「はい、ジュース」
「ありがとー!」
ここは子供のふりをして、素直にお礼を言っておくことにした。
受付近くには椅子も置いてあって、俺はそれに座ってジュースのふたを開ける。
「それにしても、珍しい子達だねぇ」
「何が~?」
「今日び、こんなところまで歴史を調べに来るなんて」
「あ~、ここ、あんまり人来なさそうだしね……」
プッハ、ジュースうまッ!
汗をかいた体に冷たいジュースはもはや反則だぜ!
「さっきの連中みたいなのが来るようになっちゃってねぇ。ここ、目立たないから」
「あのお兄さんたちなら、もう来ないと思うよー」
「そうだといいんだけどねぇ……」
おばさんは不安げだが、もう二度と来ることはないだろう。
次に見つけたら、今度こそ行方不明にしてやるし。
「坊や達が調べてるのは、宙色市の歴史についてなんだっけ?」
「そーだよー」
「じゃあ、宙色市が何で『宙色市』っていう名前になったかは、知ってるかい?」
……ん?
何だそれ、ちょっと興味深い話だな。
「知らな~い」
「江戸時代まではね、この辺りには『白風』って呼ばれてたんだよ」
白風?
今とは全く違う地名だなぁ。でも、昔の話ならそういうこともあるんだろう。
じゃあ、それがどうして『宙色』になったのか、ってコトだ。
「江戸時代の終わり頃にね、大きな星が降ってきたんだって」
「星が……?」
「そうさ。そのとき、降ってきた星が一番よく見えたのが、この星降ヶ丘なのさ。それでみんなが空を見上げて、星空の色が綺麗だってことでここは『宙色』って呼ばれるようになったんだって。私が小さい頃におばあちゃんから聞いた話だよ」
「へぇ~……」
俺は素直に感心した。
口伝、のような形で宙色の名前の由来が今に伝わってたワケだ。
こういった話は、聞いていて本当に面白い。
本に書かれていることかもしれないが、人から聞くのはまた違った楽しさがある。
それに、今このおばさん、江戸時代の終わり頃と言っていた。
もしかして、西暦1844年ドンピシャなんじゃねぇのか、星が降った時期。
仮にそうだったら、これは思いがけない収穫だ。
宙色市の名前の由来が『出戻り』が現れる原因に関わってる可能性がある。
その辺、もう少し突っ込んで聞きたいな。
「ねぇ、おばさん。降ってきた星はどうなったの?」
「降ってきた星は掘り返されて、星降ヶ丘の向こう側にある神社に奉納されたよ」
「神社……」
「そうだよ。『九ツ目神社』って場所でね」
――九ツ目神社。
確か、ワードの中に『七つ目石』とかあったな。
それと何か関わりがある、のか?
「アキラ~、こっちは終わったわよ~」
と、そこにミフユの声が聞こえてくる。
見ると、シイナを伴って、ミフユがこっちに歩いてくるところだった。
俺の情報収集も、どうやらここまでのようだ。
「おばさん、ジュースのボタン、ありがと。僕、そろそろ行くね!」
「はいよ、自由研究、頑張ってね」
「うん!」
そして俺達は、郷土資料館をあとにする。
情報のすり合わせは、歩きながらすることにしよう。
今まで知らずにいた歴史を調べるのも、なかなか面白いもんだ。
俺は、そんなことを思うようになっていた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
――同時刻、とある寂れた駐車場。
「集めたぜ。十五人も来てくれたのは意外だったな」
アキラに一度殺されたうちの一人、木屋がそんなことを言って笑う。
その場には、彼の号令によって集められた『堕悪天翼騎士団』のメンバーがいた。
殺された六人を加えれば、その数は二十一人にもなる。
アラサー女一人と子供二人を襲うにしては、あまりにも仰々しい数といえる。
だが、ピアス男こと柳原は、まだまだ不安を抱えていた。
それほどに、アキラによって刻まれたトラウマは根深かった。
「よー、柳原さん、これだけ集めるってことは喧嘩かい、こんな真っ昼間から!」
集められたうちの一人、真っ赤な単車を乗り回している金髪の男がそう叫ぶ。
彼は三ツ谷。
今年、騎士団に入ったばかりの新人で、マガコーの一年坊だ。
しかしかなりの武闘派で、周りからは『暴れん坊ミッチー』として知られている。
かの『喧嘩屋ガルシア』にも幾度となく挑んでいく根性の持ち主だ。
「おめぇら、言っておくがかなりヤベェ相手だ。この数でも、油断するなよ」
声を低くして言う柳原に木屋もうなずき、三ツ谷は嬉しそうに笑った。
「いいねぇいいねぇ! 歯応えのある相手は大歓迎だぜ! で、そいつ今どこよ?」
「あ、それは……」
そういえば、確認していなかった。
今さら、柳原はそれに気づいた。郷土資料館にまだいるだろうか。
「九ツ目神社です。今、そこに向かってますよ」
「あ? 誰だよ、あんた」
急に口を挟んできた怪しい三十路のオッサンに、三ツ谷が眉を顰める。
オッサンは胡散臭い笑みを浮かべて、軽く肩をすくめた。
「ボクはツリーマン。お兄さん達が狙ってるお相手に、ボクもちょっと用事がありまして。一緒に行かせてもらいたいな~、って。いいですよね?」
ツリーマンを名乗る男は、三ツ谷ではなく柳原の方を見る。
「俺達の邪魔をしねぇなら、別にいいけどよ。何で居場所がわかるんだよ?」
「残念ながら貴官はその情報を閲覧できる条件を満たしておりません。ご容赦を」
やはり軽い調子で答えるツリーマン。
彼は、左の耳たぶにリング型のピアスを通していた。
わかる者が見れば、一発でわかるだろう。
そのリングは、スダレやシイナが使うものと、全く同じものだった。
幾つかそれっぽい資料を持ってきて、机の上にドサっと置く。
「そんなに、数はないわね」
机の上の資料を前に、ミフユがそんなことを呟く。
俺も、そう思った。
古い本が数冊ある程度で、それ以外は特にこれといったものは見つからなかった。
「ちなみにネットでざっと調べてみたんですけど~……」
シイナが、スマホを指で操作している。
「西暦1844年は、日本だと江戸時代後期で、年号が天保から弘化に変わった年みたいですね。って言っても、ピンときませんよね~……」
「うん、そーな。何が何やらだよ、ぶっちゃけ」
江戸時代の後ろの方っていうと、幕末とかくらいしか知らないし。
「この年の少し前には、有名な『大塩平八郎の乱』があったみたいですね。へ~、こんな後の方だったんだ、知らなかった……」
「俺からすると、大塩? 誰? ってなるんだけどな」
「小学二年生からすると日本史なんてそんな感じですよね~」
なお、1844年は年代的には幕末の直前くらいだそうな。
約十年後、俺でも名前くらいは知ってるペリーさんが黒船に乗って来るんだとよ。
「あ、沖田総司が1844年生まれですって」
「え! マジで!? スゲーッ!」
「父様、これまでと食いつきが全然違うんですけど……」
そりゃおまえ、名前も知らんヤツと天下の新選組じゃ扱いも変わるってモンよ。
「あんた達~、ダベってないでちゃんと調べなさいよ~」
早速資料の閲覧を始めているミフユに叱られてしまった。
っつっても、本も少ないし、そこまで時間がかかるようにも思えないけどなぁ。
「それじゃあ調べますかねー」
俺は、一番近くにあった本を手に取る。
だいぶ古そうな、随分と分厚い表紙の本だ。どれどれ――、と。
「私も調べますね~」
シイナもそう言って、本を一冊持ち上げた。
そこからはしばらく調査の時間……、調査の……。え~と……。
「シイナ、シイナ」
「はい、何ですか父様」
「これ、何て読むんだ?」
「この漢字ですか? これは『鎮撫』と読むんですよ」
「ほぇ~」
「あ~、そうかぁ、そうだったわね……」
俺が感嘆の声をあげると、何故かミフユが片手で頭を抱え出した。
「アキラ、あんたは外で待ってていいわよ」
「うぇぇ! 開始早々に戦力外通告っすかァ!?」
資料室の外を指さして言うミフユに、俺はあごを外さんばかりに驚く。
「あの、母様?」
「こいつね、漢字全然読めないのよ。……昔の本にルビなんてほとんどないでしょ」
「あ~……」
ミフユの説明を受けて、シイナがこっちをチラリと見てくる。
その視線に含まれている憐れみを、俺は確かに感じ取った。
「小学二年生なんだから漢字読めなくて当たり前だろ~!」
「それは当たり前かもしれないけど、今この場じゃあんたは足手まといなのよ……」
「ぐふぅ……ッ!」
ミフユの言葉が、俺の腹に強烈な一撃を叩き込んでくる。
ヘ、ヘヘ、そうか、俺ァ、この戦場にゃあ、いない方がいいんだな……。
「あとは任せたぜ、ミフユ、シイナ。もう、俺の時代は終わったんだな……」
「母様、父様が世代遅れのゲーム機の擬人化のセリフっぽいことを言い出してます」
「それはわかんないけど、こっちが調べ終わるまでは外で遊んでていいわよ」
というワケで、俺は資料室を出ていっちゃったんだなー、これが。
フハハハハ、漢字が読めないってツレェェェェ~~!
「母様、こちらの資料なんですが……」
「あ、これはちょっと気になるわね――」
あーあーあーあー、いいなー! 二人で調査とか、何かズルいなー!
「……のど渇いたし、ジュースでも買うか」
俺は資料館の入り口近くにある自販機へと向かう。
途中、受付のおばさんが俺に気づいて話しかけてこようとする。
「あら、坊や。どうしたの?」
「ちょっとジュース買いに来ただけだよ。僕は役に立てないみたいだしー」
「あらあら、そうなのね。でもそんな、拗ねた顔しないの」
「別に、拗ねてないし~……」
尖らせた唇をプルルルと鳴らし、俺は自販機にコインを投入してジュースを……。
「…………届かない」
ボタンの場所が! 高すぎて! 届かないッ!?
チキショオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォ――――ッ!
「はいよ、ちょっと待ってね」
おばさんが受付用のカウンターからわざわざ出てきて、ボタンを押してくれた。
くぅ、このちょっとした優しさが、今の俺にはひどく染みるぜ……。
「はい、ジュース」
「ありがとー!」
ここは子供のふりをして、素直にお礼を言っておくことにした。
受付近くには椅子も置いてあって、俺はそれに座ってジュースのふたを開ける。
「それにしても、珍しい子達だねぇ」
「何が~?」
「今日び、こんなところまで歴史を調べに来るなんて」
「あ~、ここ、あんまり人来なさそうだしね……」
プッハ、ジュースうまッ!
汗をかいた体に冷たいジュースはもはや反則だぜ!
「さっきの連中みたいなのが来るようになっちゃってねぇ。ここ、目立たないから」
「あのお兄さんたちなら、もう来ないと思うよー」
「そうだといいんだけどねぇ……」
おばさんは不安げだが、もう二度と来ることはないだろう。
次に見つけたら、今度こそ行方不明にしてやるし。
「坊や達が調べてるのは、宙色市の歴史についてなんだっけ?」
「そーだよー」
「じゃあ、宙色市が何で『宙色市』っていう名前になったかは、知ってるかい?」
……ん?
何だそれ、ちょっと興味深い話だな。
「知らな~い」
「江戸時代まではね、この辺りには『白風』って呼ばれてたんだよ」
白風?
今とは全く違う地名だなぁ。でも、昔の話ならそういうこともあるんだろう。
じゃあ、それがどうして『宙色』になったのか、ってコトだ。
「江戸時代の終わり頃にね、大きな星が降ってきたんだって」
「星が……?」
「そうさ。そのとき、降ってきた星が一番よく見えたのが、この星降ヶ丘なのさ。それでみんなが空を見上げて、星空の色が綺麗だってことでここは『宙色』って呼ばれるようになったんだって。私が小さい頃におばあちゃんから聞いた話だよ」
「へぇ~……」
俺は素直に感心した。
口伝、のような形で宙色の名前の由来が今に伝わってたワケだ。
こういった話は、聞いていて本当に面白い。
本に書かれていることかもしれないが、人から聞くのはまた違った楽しさがある。
それに、今このおばさん、江戸時代の終わり頃と言っていた。
もしかして、西暦1844年ドンピシャなんじゃねぇのか、星が降った時期。
仮にそうだったら、これは思いがけない収穫だ。
宙色市の名前の由来が『出戻り』が現れる原因に関わってる可能性がある。
その辺、もう少し突っ込んで聞きたいな。
「ねぇ、おばさん。降ってきた星はどうなったの?」
「降ってきた星は掘り返されて、星降ヶ丘の向こう側にある神社に奉納されたよ」
「神社……」
「そうだよ。『九ツ目神社』って場所でね」
――九ツ目神社。
確か、ワードの中に『七つ目石』とかあったな。
それと何か関わりがある、のか?
「アキラ~、こっちは終わったわよ~」
と、そこにミフユの声が聞こえてくる。
見ると、シイナを伴って、ミフユがこっちに歩いてくるところだった。
俺の情報収集も、どうやらここまでのようだ。
「おばさん、ジュースのボタン、ありがと。僕、そろそろ行くね!」
「はいよ、自由研究、頑張ってね」
「うん!」
そして俺達は、郷土資料館をあとにする。
情報のすり合わせは、歩きながらすることにしよう。
今まで知らずにいた歴史を調べるのも、なかなか面白いもんだ。
俺は、そんなことを思うようになっていた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
――同時刻、とある寂れた駐車場。
「集めたぜ。十五人も来てくれたのは意外だったな」
アキラに一度殺されたうちの一人、木屋がそんなことを言って笑う。
その場には、彼の号令によって集められた『堕悪天翼騎士団』のメンバーがいた。
殺された六人を加えれば、その数は二十一人にもなる。
アラサー女一人と子供二人を襲うにしては、あまりにも仰々しい数といえる。
だが、ピアス男こと柳原は、まだまだ不安を抱えていた。
それほどに、アキラによって刻まれたトラウマは根深かった。
「よー、柳原さん、これだけ集めるってことは喧嘩かい、こんな真っ昼間から!」
集められたうちの一人、真っ赤な単車を乗り回している金髪の男がそう叫ぶ。
彼は三ツ谷。
今年、騎士団に入ったばかりの新人で、マガコーの一年坊だ。
しかしかなりの武闘派で、周りからは『暴れん坊ミッチー』として知られている。
かの『喧嘩屋ガルシア』にも幾度となく挑んでいく根性の持ち主だ。
「おめぇら、言っておくがかなりヤベェ相手だ。この数でも、油断するなよ」
声を低くして言う柳原に木屋もうなずき、三ツ谷は嬉しそうに笑った。
「いいねぇいいねぇ! 歯応えのある相手は大歓迎だぜ! で、そいつ今どこよ?」
「あ、それは……」
そういえば、確認していなかった。
今さら、柳原はそれに気づいた。郷土資料館にまだいるだろうか。
「九ツ目神社です。今、そこに向かってますよ」
「あ? 誰だよ、あんた」
急に口を挟んできた怪しい三十路のオッサンに、三ツ谷が眉を顰める。
オッサンは胡散臭い笑みを浮かべて、軽く肩をすくめた。
「ボクはツリーマン。お兄さん達が狙ってるお相手に、ボクもちょっと用事がありまして。一緒に行かせてもらいたいな~、って。いいですよね?」
ツリーマンを名乗る男は、三ツ谷ではなく柳原の方を見る。
「俺達の邪魔をしねぇなら、別にいいけどよ。何で居場所がわかるんだよ?」
「残念ながら貴官はその情報を閲覧できる条件を満たしておりません。ご容赦を」
やはり軽い調子で答えるツリーマン。
彼は、左の耳たぶにリング型のピアスを通していた。
わかる者が見れば、一発でわかるだろう。
そのリングは、スダレやシイナが使うものと、全く同じものだった。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』
見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装…
俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。
突然の事で戸惑うクラスメート達…
だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。
「またか…」
王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。
そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。
そして俺はというと…?
『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』
「それよりも不知火君は何を得たんだ?」
イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。
俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。
その場にいた者達は、俺の加護を見ると…
「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。
『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』
王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。
まぁ、その方が気楽で良い。
そして正義は、リーダーとして皆に言った。
「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」
正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。
「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」
「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」
「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
6月22日
HOTランキングで6位になりました!
6月23日
HOTランキングで4位になりました!
昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°.
6月24日
HOTランキングで2位になりました!
皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
戦国転生・内政英雄譚 ― 豊臣秀長の息子として天下を創る
丸三(まるぞう)
ファンタジー
戦国時代に転生した先は、豊臣秀吉の弟にして名宰相――豊臣秀長の息子だった。
現代では中世近世史を研究する大学講師。
史実では、秀長は早逝し、豊臣政権は崩壊、徳川の時代と鎖国が訪れる。
ならば変える。
剣でも戦でもない。
政治と制度、国家設計によって。
秀長を生かし、秀吉を支え、徳川の台頭を防ぎ、
戦国の終わりを「戦勝」ではなく「国家の完成」にする。
これは、武将ではなく制度設計者として天下を取る男の物語。
戦国転生×内政改革×豊臣政権完成譚。
(2月15日記)
連載をより良い形で続けるため、更新頻度を週5回とさせていただきます。
一話ごとの完成度を高めてお届けしますので、今後ともよろしくお願いいたします。
(当面、月、水、金、土、日の更新)
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる