出戻り転生傭兵の俺のモットーは『やられたらやり返しすぎる』です

はんぺん千代丸

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第五章 夏休み、宙色市歴史探訪

第76話 遭遇、九ツ目神社前にて

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 郷土資料館とは、星降ヶ丘自然公園を挟んで向こう側。
 宙色市の端っこに、小さな神社がある。

 そこが、俺達が向かっている『九ツ目神社』。
 ミフユ達も資料を漁った結果、その神社の存在を知ったのだという。

「ワードの一つが『七つ目石』で、神社が『九ツ目神社』。絶対何かあるわよね」
「ミフユ、おまえだんだん調査自体が面白くなってきてないか?」

 俺は指摘する。
 何故なら、俺も同じだからだ。

「わからないことがわかっていく過程って、それ自体がエンタメよね~♪」
「母様、ウッキウキですね……」

 シイナが言うが、俺も割と同じ気持ちだ。
 やはり『1844』は西暦だった。
 白風と呼ばれていたこの土地に、空から星が降ってきたのが1844年。

 ここの地名が『宙色』になったきっかけ。
 いわば、宙色市の始まりとも呼べる年がこの1844年だったワケだ。

 こうして、疑問が一つ解けた。
 それが少し気持ちいい。
 引っかかっていたものが解消すると、カタルシスが感じられる。

 そして、次のワードはおそらく『七つ目石』。
 これから向かう『九ツ目神社』で、それが何なのか知れるかもしれない。
 では、他のワードはどうか。

「他に何か、わかったことはあるのか?」
「それがね~、全ッ然なのよ……」

 ミフユが軽く肩をすくめる。

「何も? 『宙船坂』も? 『観神之宮』も?」
「ええ、何もわかりませんでした。資料にはそれらの名前はありませんでした」
「ちなみに、今の宙色市にもそういう名前の場所はないわ」

 シイナが説明し、ミフユが補足してくれた。
 マジか。そこら辺は地名っぽかったから、割と簡単に見つかると思ってた。
 だが、そう簡単にはいかなそうか。

「ま、今日全部解かなくちゃいけないワケじゃねぇし、気長にやってこうぜ」
「え~、イヤよ、できれば今日一日で全部解いちゃいたいわ~」

 気楽な調子で言うと、何故かミフユがブーたれる。何でだよ。

「父様、頑張れば今日中に解けるかもしれない問題を明日に先送りにすると、何かモヤモヤしません? もう少しで答えがわかるのに! みたいな」
「モヤモヤする」
「母様は今、その状態です」

 なるほど。よくわかった。
 シイナの教え方が非常にわかりやすかった。案外、教師とか向いてたりして。

「でもシイナも仕事あるから、夕方までに解けなかったらまた明日な?」
「わかってるわよ。わたしだってそこまでワガママ言う気はないわ」

 嘘だな。と、俺は直感する。
 シイナがいなければ絶対徹夜してでも解こうとするぞ、こいつ。

「他のワード、『鬼詛』と『カディルグナ』は探して見つかるはずもなし」

 話題を、七星句に戻す。
 この二つのワードについては、調べるまでもなく何を表すかわかっている。

「『鬼詛』は、死霊術ネクロマンシーにまつわる用語の一つだ。人ではなく、モンスターの怨念。人間以外のアンデッドを作る際に必要になるエネルギーだ」

 異世界には、モンスターが溢れていた。
 あいつらは虚空から突然ポップするため、幾ら殺しても根本的に減らない。

 だが生物なのは変わりはなく、殺せば殺すだけ死後の怨念は蓄積されていく。
 それに目をつけた死霊術師ネクロマンサーがその怨念を用いる術を構築した。
 そのとき、モンスターの怨念に『鬼詛』という名がついた。

「怨念ってのは、こっちじゃただの感情だが、あっちじゃ立派なエネルギーだ」

 闇属性の魔法を使う際には、生物の怨念を溜め込んだ増幅器が使われるくらいだ。
 と、そこら辺を踏まえて考えると――、

「この宙色市のどこかで『鬼詛』が必要な魔法が使われてるのかもしれないな」
「どうかしらねぇ……。そんなのがあったら、スダレが気づきそうなものだけど」

 それはそう。
 宙色市全域に展開されているスダレの情報結界に引っかかりそうなものだ。
 だから、これはあくまでも推測。いや、それ以前か、今の時点じゃ。

「『カディルグナ』って、確か異世界での冥界の一つ、ですよね?」
「ああ。冥王の庭カディルグナ。異世界の西側に伝わる死者の国の名前だな」

 こっちの世界にも、冥府は幾つも存在する。
 キリスト教の地獄や煉獄、仏教の地獄に、各神話、各宗教に語られる死者の国。

 それと同じように異世界でも伝説や神話に幾つかの冥府が登場する。
 その一つが『冥王の庭カディルグナ』。
 俺が知る限り、異世界では最も広く知られている冥府の概念だ。

「……で、それがこっちの世界にどう関わってくるって?」
「わかんないですね~。何なんでしょうね~……」

 本気でわからん。
 この先の調査で解決の糸口が見つかればいいんだけどな~。

「あ、見えたわ。あそこが『九ツ目神社』よ!」

 ミフユが指をさした先に古ぼけたくすんだ赤色の鳥居が見えた。
 よ~し、それじゃあ早速神社の人にお話しを聞きに――、


 ヴォンヴォンヴォン! ヴオォォン、ヴォンヴォンヴォンヴォオン!

 何ッ、うるせぇ!?

「な、何ですかァ~~~~!?」
「ちょっと、あのバイク。あいつらじゃないの?」

 神社と俺達の間を遮るように走ってきた、何台ものバイク。
 その中に、資料館で俺が一度ブチ殺した連中のバイクも含まれていた。そして、

「やっと見つけたぜェ、クソガキィ!」

 炎天下の中、バイクを降りて凄んできたのは、あのピアス男だった。


  ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 セミの声が騒がしい。
 昼を過ぎ、太陽の陽射しはいよいよ強くなっている。気温は何度になってるのか。

 俺達は、自分の周りに弱い風属性の魔法を使って暑さをしのいでいる。
 言ってみれば、ぴったりくっついて離れない扇風機みたいなモンだ。

 そもそも空気がぬるいので、涼しいとまではいかないが。
 それでも、酷暑の中を何もせずに過ごすよりはだいぶマシだった。

 で、目の前のバイクに乗ったお兄さん方。
 何か、数がスゲェ増えてるんだが。
 一匹見たら三十匹はいると思えっていうアレなのか、君らは。

「オイ、クソガキィ! 資料室での借りを返しに来てやったぜェ!」

 バイクを降りて、前に出てくるピアス君。
 他の連中は、まぁ、大体が同じような量産型のワルガキだなー、って感じ。

 一人、金髪のヤツだけは他より気合入ってそうに見えるけど。
 と、思っていたら、その金髪がニタニタしながらピアス君に喰ってかかった。

「柳原さん、こりゃどういうことっすか? こんなガキにやられたのか、あんた!」
「う、うるせぇ、三ツ谷! いいから、このガキをブチ殺すんだよ!」

 手に鉄パイプを持ったピアス君――、柳原がどもりながら何とか言い返す。
 しかし、金髪――、三ツ谷はいやらしい笑みをそのままに、さらに挑発し返す。

「ウッソだろ、オイ! 天下の『堕悪天翼騎士団』のメンバーともあろうモンが、こんなチビ二人とオバサンに泣かされたってのか、信じられねぇ!」
「オ、オバ……!?」

 シイナがヒクリと頬を引きつらせる。やれやれ。

「てめぇ、三ツ谷ァ……」
「お、何すか、やるのかよ、柳原さん」

 二人が睨み合っている間に、俺は近くの木に金属符を貼りつける。
 タマキとの再会時と同じように、半径二十メートル圏内を『異階化』、完了。

「あ、何だ?」

 金髪の三ツ谷が『異階化』に反応を見せるが、もう遅いわ。

「――せぇ~の、っとぉ!」

 収納空間から取り出した手投げ斧を、思いっきり振りかぶって投げつける。
 それはヒュンヒュンと音を立てて、柳原の後頭部にカツンと当たった。

「うぺ」

 変な声を出して、斧の刃に脳みそを破壊された柳原が倒れ伏す。

「え?」
「あ、あれ、柳原?」

 突然倒れた柳原に、他二十名近くが揃ってアホ面を晒す。
 そんな中、真っすぐ俺に向かって駆けてくる金髪野郎が一人。その手には木刀。

「こン、クソガキャァアアアアアアア――――ッ!」

 三ツ谷が俺に向かって木刀を振り下ろそうとしてくるが、うん、これも手遅れだ。

兇貌マガツラ

 虚空から出現した真っ黒い左手が、三ツ谷の木刀を受け止める。

「な、ッ!?」

 さすがに驚きに動きを止める三ツ谷。
 そこで、一歩でも後ろに下がってれば、まだもう少しだけ生きてられたのにな。
 さらに虚空から出現した真っ黒い右手は、三ツ谷の顔を鷲掴みにする。

「ングッ、むぐ、ぐぐぐぬぅぅぅぅぅぅ~~~~!?」

 顔を掴まれてもがく三ツ谷に、俺はニコリと笑ってみせた。

「三ツ谷君はなかなか度胸があるなぁ。でもな、おまえ、ウチの娘にイヤな思いをさせたよな。オバサンっつったよな? ハハハハ、おまえは俺の恨みを買ったよ」

 直後、マガツラの右手に力が加わっていく。

「ぅぎっ、ひぃ、ぎ、ぁ、ああ……」

 一気に潰すのではなく、わざわざ時間をかけてじっくり圧をかけていく。

「自分の顔が砕かれるまでの一分間、精々恐怖を味わっていけ」
「ひぃっ、ぃひぃいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ~~~~!」

 三ツ谷の泣き声をいてから、俺は右手に鉈、左手に斧を取り出して構える。
 睨んだ先には、固まったままの量産型ワルガキ共、大体二十人前後。

「おまえらも、俺達の邪魔をしやがるなら、全員死ねェ――――ッ!」
「「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァ――――ッ!?」」

 本当に学ばんなぁ、この手の輩は……。
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