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第五章 夏休み、宙色市歴史探訪
第77話 調査・考察:七つ目石について
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ブチ殺したのに、ブチ殺したのにッ!
「ダ~メ」
「何でだよぉ!」
嫁が、ブチ殺す以上の仕返しを許してくれないッ!
「ここでゴウモンバエだのイバラヘビだのやったら、アシがつくでしょ~」
「じゃあ、ミソギヒルとかハクシアリはぁ!?」
「やめときなさいって。やるなら記憶焼き付け系の暗示くらいにしときなさいよ」
むぅ~……。
まぁ、仕方がない。こいつらも本格的に俺の恨みを買ってるワケじゃないしな。
それくらいで勘弁してやるか。二十人分はめんどくさいんだが。
「あの~……」
俺が一人一人に魔法をかけて回っていると、シイナが話しかけてくる。
「お~、どうした、シイナ?」
「こういう場合って、泣いたり止めたりするのが『普通』でしょうか?」
「ん? どゆこと?」
「え~、だって父様、今、仕返ししたじゃないですか?」
「したねー」
「そういうとき、普通は泣いたり驚いたり怯えたりするモンじゃないかなって……」
「今、それをしてないってコトは、おまえは『普通』じゃないってコトでは?」
「ヤダァ――――ッ! 私は『普通』ですゥ。『普通』がいいんですゥ!」
そうは言うてもねぇ、周りに二十個も死体がある状況で、それ聞いちゃうってさ。
令和の日本人の感覚からすれば、まぁ、普通ではないよねー。ってさ。
「この子は本当に、こじらせちゃって……」
ほら、見なさいよ。
ママも頭抱えちゃってるぞ。
「はい、とりあえず暗示終了、っと」
「何の暗示をかけたの、アキラ」
「俺かミフユかシイナを見たら、自分が殺される瞬間がフラッシュバックする」
これで俺達に近づいてくることもなくなるだろう。さすがに。
「って、えぇ~!? 私もですかぁ!」
「そーだけど?」
「そんなッ、道でバッタリ出くわしたらどうなるんですか、それ!」
「そりゃあ、相手がトラウマ発動して怯えて逃げるんじゃね?」
「イヤァァァ――――ッ! 天下の往来でそんな反応されたら、も、もう……!」
「道端でバッタリ出くわしてキレられて襲われるのとどっちがいい?」
「父様、娘を案じてくれて感謝です。最高に嬉しいです。これで私は安全だァ!」
この手のひら返しの速さだけは、タマキすら超えているかもしれない。
「あんた、それで『普通』を名乗るのは無理しかないでしょ……」
ボソリと呟かれたミフユの一言が俺の気持ちをそのまま代弁していた。
俺達は『異階化』を解いて、鳥居をくぐり神社に続く石段を上がっていった。
道端には、投げ出されたバイクと、蘇生だけして気絶したままの二十人。
こいつらが暑さに焼かれてどうなるかまでは、俺の関知するところではない。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
小さい神社と聞いた割に、石段からして雰囲気バッチリな九ツ目神社。
なだらかな石段が山の上まで続いていて、しかもその石段も古くて苔むしてる。
周りを見れば青々と茂った高い木がいっぱい。
ほぼ全体が日陰で、真夏なのにひんやりとした空気が実に気持ちいい。
「う~~~~~~~~ん、山!」
この清々しいまでのシイナの簡潔極まる感想よ。
まぁ、俺もミフユも総じて同じような感じではあるが。
「田舎の山の恩恵よね~、こういう気持ちよさは」
「誉めてるようで立派に山をディスッてるミフユお嬢さん、パネェっすわ」
「何よ、どこがディスりよ。十分に褒めてたでしょ!」
「本気で褒めてたつもりだったのか、今の……」
アキラ君、ちょっとビックリだわ。
「あれぇ~?」
と、少し先を歩くシイナが不思議そうな声をあげる。何だ何だ?
「どうした~、シイナ」
「父様、母様、これ見てください。これ」
シイナが指さしたのは、石段と同じくらい苔むしてる古い石碑だった。
いや、石碑っていうか看板かも。神社の名前が書いてある。
「……『五ツ目神社』?」
あれ、五ツ目? 九ツ目神社じゃなくて?
「あそこにも、同じような石の看板が置いてあるわね」
「おう、マジだ」
ミフユが少し上を指す。そこにも同じような名前が書かれた石が置いてあった。
そこに書かれているのは『六ツ目神社』。やはり九ツ目じゃない。
さらに階段を上がると『七ツ目神社』、『八ツ目神社』の看板。
七ツ目までが石に名前が彫られている形で、八ツ目はかなり古い木の看板だった。
「……そして『九ツ目神社』、これは木の看板だ」
九ツ目と書かれた看板も古いが、見た目、八ツ目よりは新しく見える。
あとは、ない。階段だけが続いていて、神社の入り口が見えている。
俺達三人は互いの顔を見合わせる。
一体、何だってんだ。全く、意味がわからない。
「おやおや、今日は千客万来ですな。いらっしゃい」
階段の先から、声がする。
見上げると、そこに白いひげを蓄えた気のよさそうなじいさんが立っていた。
ジャージを着て、手には箒。雰囲気から神職だと察せられる。
「こんにちは~。おじいさん、ここの神主さん?」
「はい、こんにちは。そうですねぇ。長らくこちらを預かっておりますよ」
俺達は残りの階段を上がって、神主さんの前まで行く。
すると、視界が一気に拓けた。
そこに見えたのは、広い庭に大きなお堂。
オイオイ、どこが小さい神社だよ。十分デケェよ、立派だよ。
「すご~い……」
「そうですねぇ、とても立派です」
ミフユとシイナも神社を見回して驚いている。
「ホッホ、そこまでではありませんよ。それで、本日はどういったご用向きで?」
「あ、そうだった。僕達、夏休みの自由研究で――」
と、俺は神主さんに目的を話しつつ、『七つ目石』についても尋ねてみる。
「ほぉほぉ、なるほど。七つ目石ですか。はい、こちらにございますよ」
「あるんですか、やったァ~!」
これで七星句のワード、二つ目を確認できるぞ。
で、ついでに今のうちに気になってる疑問についても確認してしまおう。
「ねぇ、神主さん。ここの階段に神社の名前が書いてある石とかがあったんだけど」
「ふむふむ? ああ、あの看板はですな、この神社の元々の名前なのですよ」
元々の名前?
「この神社は、星神様をお祭りする神社でしてね、星神様というのは、今でいうところの隕石なんです。昔の人は、落ちてきた隕石をこの神社に運び込んでいたのですよ。そしてその数が増えるたび、神社の名前も変わっていった、と」
「じゃあ、九ツ目、っていうのは……」
首をかしげる俺に、神主さんが物腰柔らかに笑ってうなずく。
「ええ、そうです。この神社には、九つの隕石がご神体として収められております」
「隕石が九個も! すごいですねぇ~……」
シイナが感嘆する。
九ツ目という名前の由来を知れて、俺も「へぇ~」とうなずいてしまう。
「九つ目以降の隕石は国からのお達しで研究用として専門機関に運ばれるようになったので、ウチの神様が増えることもなくなりましたがね。時代の流れですなぁ」
そう語る神主さんは、特に悲しそうでもなかったし、寂しそうでもなかった。
「時代の流れかもしれませんけど、寂しくなかったんですか?」
ミフユが、そこに切り込む。
「ホッホ、これは優しいお嬢ちゃんですな。されど、懐かしんでも悲しんでも、時間は流れてゆくものです。ウチで神様として祭られることと、国が調べて何らかの新たな知見を得るきっかけになること、さて、どちらが『より楽しい』のか――」
「楽しい……」
「それにウチはすでに九柱の神様がいらっしゃいますからねぇ。数も十分でしょう」
神主さんは笑っている。裏表のない、とてもいい笑顔だ。
きっと、この人はいい年の取り方をしたんだなと、俺は思った。
「さて『七つ目石』でしたな。あれは運ばれてきた隕石の中でも最も大きなもので、普段は外に置いてあるのですよ。お堂の裏手に回ってみなされ。そこにありますぞ」
「見ていいの?」
「もちろん。ただし、いたずらはしてはなりませんぞ。バチが当たりますからな」
優しい神主さんに見送られ、俺達はお堂の裏へと回った。
すると、そこに切り立った岩肌が見えてくる。
この神社は、山の中腹辺りを切り崩して建てられているようだ。そして――、
「う~ぉ、でっけぇ……」
「注連縄がかけてあるわね。多分、あれが『七つ目石』だわ」
岩壁の前に、デデンと置かれた楕円形のデカイ岩。
俺よりも遥かにデカく、シイナの身長くらいはある。そして横に広い。
すぐ横には看板があって『この星神様は1844年に云々』とか書かれている。
「……シイナ」
目の前の『七つ目石』を前に、俺は娘の名前を呼ぶ。
「感じてるか?」
「はい。何となくですけど。……これ、魔力ですよね」
そうなのだった。
岩壁の前に鎮座する苔むした巨岩。それは、明らかに強力な魔力を有していた。
「しかも、これ……」
シイナが何かに気づいたらしく『七つ目石』にそっと手を触れさせる。
何だ、何に気づいたんだ。
俺やミフユには見えなかったものが、シイナには見えているらしい。
「そういえば、魔法の適性は兄弟でも結構高い方だったわよね、シイナ」
「ああ、そうだったな……」
十五人の子供達は当然だがそれぞれ得意分野と不得意な分野がある。
例えば、体を動かす系の分野はタマキがぶっちぎりで、逆に魔法関連は一番苦手。
一方でシイナは、占い師という生業もあって魔法に関する適性が高い。
なお、魔法の適性は『大賢者にして大司祭』と呼ばれた次男坊が最強だった。
あいつは、あらゆる意味でタマキの対極だったな~。
と、ちょっとした感慨にふけってみたり。
「そうか、わかりました」
というシイナの声が、俺を現実に引き戻す。
「……この石、多分、儀式魔法の祭器の役割を果たしています」
「何?」
祭器。ってのはシイナの言葉通り、儀式を用いる大規模な魔法に使う道具だ。
この『七つ目石』が、それの役割を果たしている。もしかして今現在も、なのか?
「はい、リアルタイムで稼働しています。何の魔法かまでは、わかりませんけど」
「驚いたな……」
「ええ、そうね。どこの誰が、この石を祭器にしたのかしらね」
石を調べることで何かわかるかと思ったら、謎が増えてしまった。
だが、もう一つ、シイナが感じ取ったことがあるという。
「……これも、多分なんですけど」
「いいよ、この際、どんな情報でも欲しい。何だ?」
「祭器はこの石だけじゃないと思います。どこかに、同じような祭器があります」
謎は、ますます深まってしまうのだった。
結局『七つ目石』については、それ以上のことはわからずに終わった。
……さ~て、ここからどうしたモンかね。
「ダ~メ」
「何でだよぉ!」
嫁が、ブチ殺す以上の仕返しを許してくれないッ!
「ここでゴウモンバエだのイバラヘビだのやったら、アシがつくでしょ~」
「じゃあ、ミソギヒルとかハクシアリはぁ!?」
「やめときなさいって。やるなら記憶焼き付け系の暗示くらいにしときなさいよ」
むぅ~……。
まぁ、仕方がない。こいつらも本格的に俺の恨みを買ってるワケじゃないしな。
それくらいで勘弁してやるか。二十人分はめんどくさいんだが。
「あの~……」
俺が一人一人に魔法をかけて回っていると、シイナが話しかけてくる。
「お~、どうした、シイナ?」
「こういう場合って、泣いたり止めたりするのが『普通』でしょうか?」
「ん? どゆこと?」
「え~、だって父様、今、仕返ししたじゃないですか?」
「したねー」
「そういうとき、普通は泣いたり驚いたり怯えたりするモンじゃないかなって……」
「今、それをしてないってコトは、おまえは『普通』じゃないってコトでは?」
「ヤダァ――――ッ! 私は『普通』ですゥ。『普通』がいいんですゥ!」
そうは言うてもねぇ、周りに二十個も死体がある状況で、それ聞いちゃうってさ。
令和の日本人の感覚からすれば、まぁ、普通ではないよねー。ってさ。
「この子は本当に、こじらせちゃって……」
ほら、見なさいよ。
ママも頭抱えちゃってるぞ。
「はい、とりあえず暗示終了、っと」
「何の暗示をかけたの、アキラ」
「俺かミフユかシイナを見たら、自分が殺される瞬間がフラッシュバックする」
これで俺達に近づいてくることもなくなるだろう。さすがに。
「って、えぇ~!? 私もですかぁ!」
「そーだけど?」
「そんなッ、道でバッタリ出くわしたらどうなるんですか、それ!」
「そりゃあ、相手がトラウマ発動して怯えて逃げるんじゃね?」
「イヤァァァ――――ッ! 天下の往来でそんな反応されたら、も、もう……!」
「道端でバッタリ出くわしてキレられて襲われるのとどっちがいい?」
「父様、娘を案じてくれて感謝です。最高に嬉しいです。これで私は安全だァ!」
この手のひら返しの速さだけは、タマキすら超えているかもしれない。
「あんた、それで『普通』を名乗るのは無理しかないでしょ……」
ボソリと呟かれたミフユの一言が俺の気持ちをそのまま代弁していた。
俺達は『異階化』を解いて、鳥居をくぐり神社に続く石段を上がっていった。
道端には、投げ出されたバイクと、蘇生だけして気絶したままの二十人。
こいつらが暑さに焼かれてどうなるかまでは、俺の関知するところではない。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
小さい神社と聞いた割に、石段からして雰囲気バッチリな九ツ目神社。
なだらかな石段が山の上まで続いていて、しかもその石段も古くて苔むしてる。
周りを見れば青々と茂った高い木がいっぱい。
ほぼ全体が日陰で、真夏なのにひんやりとした空気が実に気持ちいい。
「う~~~~~~~~ん、山!」
この清々しいまでのシイナの簡潔極まる感想よ。
まぁ、俺もミフユも総じて同じような感じではあるが。
「田舎の山の恩恵よね~、こういう気持ちよさは」
「誉めてるようで立派に山をディスッてるミフユお嬢さん、パネェっすわ」
「何よ、どこがディスりよ。十分に褒めてたでしょ!」
「本気で褒めてたつもりだったのか、今の……」
アキラ君、ちょっとビックリだわ。
「あれぇ~?」
と、少し先を歩くシイナが不思議そうな声をあげる。何だ何だ?
「どうした~、シイナ」
「父様、母様、これ見てください。これ」
シイナが指さしたのは、石段と同じくらい苔むしてる古い石碑だった。
いや、石碑っていうか看板かも。神社の名前が書いてある。
「……『五ツ目神社』?」
あれ、五ツ目? 九ツ目神社じゃなくて?
「あそこにも、同じような石の看板が置いてあるわね」
「おう、マジだ」
ミフユが少し上を指す。そこにも同じような名前が書かれた石が置いてあった。
そこに書かれているのは『六ツ目神社』。やはり九ツ目じゃない。
さらに階段を上がると『七ツ目神社』、『八ツ目神社』の看板。
七ツ目までが石に名前が彫られている形で、八ツ目はかなり古い木の看板だった。
「……そして『九ツ目神社』、これは木の看板だ」
九ツ目と書かれた看板も古いが、見た目、八ツ目よりは新しく見える。
あとは、ない。階段だけが続いていて、神社の入り口が見えている。
俺達三人は互いの顔を見合わせる。
一体、何だってんだ。全く、意味がわからない。
「おやおや、今日は千客万来ですな。いらっしゃい」
階段の先から、声がする。
見上げると、そこに白いひげを蓄えた気のよさそうなじいさんが立っていた。
ジャージを着て、手には箒。雰囲気から神職だと察せられる。
「こんにちは~。おじいさん、ここの神主さん?」
「はい、こんにちは。そうですねぇ。長らくこちらを預かっておりますよ」
俺達は残りの階段を上がって、神主さんの前まで行く。
すると、視界が一気に拓けた。
そこに見えたのは、広い庭に大きなお堂。
オイオイ、どこが小さい神社だよ。十分デケェよ、立派だよ。
「すご~い……」
「そうですねぇ、とても立派です」
ミフユとシイナも神社を見回して驚いている。
「ホッホ、そこまでではありませんよ。それで、本日はどういったご用向きで?」
「あ、そうだった。僕達、夏休みの自由研究で――」
と、俺は神主さんに目的を話しつつ、『七つ目石』についても尋ねてみる。
「ほぉほぉ、なるほど。七つ目石ですか。はい、こちらにございますよ」
「あるんですか、やったァ~!」
これで七星句のワード、二つ目を確認できるぞ。
で、ついでに今のうちに気になってる疑問についても確認してしまおう。
「ねぇ、神主さん。ここの階段に神社の名前が書いてある石とかがあったんだけど」
「ふむふむ? ああ、あの看板はですな、この神社の元々の名前なのですよ」
元々の名前?
「この神社は、星神様をお祭りする神社でしてね、星神様というのは、今でいうところの隕石なんです。昔の人は、落ちてきた隕石をこの神社に運び込んでいたのですよ。そしてその数が増えるたび、神社の名前も変わっていった、と」
「じゃあ、九ツ目、っていうのは……」
首をかしげる俺に、神主さんが物腰柔らかに笑ってうなずく。
「ええ、そうです。この神社には、九つの隕石がご神体として収められております」
「隕石が九個も! すごいですねぇ~……」
シイナが感嘆する。
九ツ目という名前の由来を知れて、俺も「へぇ~」とうなずいてしまう。
「九つ目以降の隕石は国からのお達しで研究用として専門機関に運ばれるようになったので、ウチの神様が増えることもなくなりましたがね。時代の流れですなぁ」
そう語る神主さんは、特に悲しそうでもなかったし、寂しそうでもなかった。
「時代の流れかもしれませんけど、寂しくなかったんですか?」
ミフユが、そこに切り込む。
「ホッホ、これは優しいお嬢ちゃんですな。されど、懐かしんでも悲しんでも、時間は流れてゆくものです。ウチで神様として祭られることと、国が調べて何らかの新たな知見を得るきっかけになること、さて、どちらが『より楽しい』のか――」
「楽しい……」
「それにウチはすでに九柱の神様がいらっしゃいますからねぇ。数も十分でしょう」
神主さんは笑っている。裏表のない、とてもいい笑顔だ。
きっと、この人はいい年の取り方をしたんだなと、俺は思った。
「さて『七つ目石』でしたな。あれは運ばれてきた隕石の中でも最も大きなもので、普段は外に置いてあるのですよ。お堂の裏手に回ってみなされ。そこにありますぞ」
「見ていいの?」
「もちろん。ただし、いたずらはしてはなりませんぞ。バチが当たりますからな」
優しい神主さんに見送られ、俺達はお堂の裏へと回った。
すると、そこに切り立った岩肌が見えてくる。
この神社は、山の中腹辺りを切り崩して建てられているようだ。そして――、
「う~ぉ、でっけぇ……」
「注連縄がかけてあるわね。多分、あれが『七つ目石』だわ」
岩壁の前に、デデンと置かれた楕円形のデカイ岩。
俺よりも遥かにデカく、シイナの身長くらいはある。そして横に広い。
すぐ横には看板があって『この星神様は1844年に云々』とか書かれている。
「……シイナ」
目の前の『七つ目石』を前に、俺は娘の名前を呼ぶ。
「感じてるか?」
「はい。何となくですけど。……これ、魔力ですよね」
そうなのだった。
岩壁の前に鎮座する苔むした巨岩。それは、明らかに強力な魔力を有していた。
「しかも、これ……」
シイナが何かに気づいたらしく『七つ目石』にそっと手を触れさせる。
何だ、何に気づいたんだ。
俺やミフユには見えなかったものが、シイナには見えているらしい。
「そういえば、魔法の適性は兄弟でも結構高い方だったわよね、シイナ」
「ああ、そうだったな……」
十五人の子供達は当然だがそれぞれ得意分野と不得意な分野がある。
例えば、体を動かす系の分野はタマキがぶっちぎりで、逆に魔法関連は一番苦手。
一方でシイナは、占い師という生業もあって魔法に関する適性が高い。
なお、魔法の適性は『大賢者にして大司祭』と呼ばれた次男坊が最強だった。
あいつは、あらゆる意味でタマキの対極だったな~。
と、ちょっとした感慨にふけってみたり。
「そうか、わかりました」
というシイナの声が、俺を現実に引き戻す。
「……この石、多分、儀式魔法の祭器の役割を果たしています」
「何?」
祭器。ってのはシイナの言葉通り、儀式を用いる大規模な魔法に使う道具だ。
この『七つ目石』が、それの役割を果たしている。もしかして今現在も、なのか?
「はい、リアルタイムで稼働しています。何の魔法かまでは、わかりませんけど」
「驚いたな……」
「ええ、そうね。どこの誰が、この石を祭器にしたのかしらね」
石を調べることで何かわかるかと思ったら、謎が増えてしまった。
だが、もう一つ、シイナが感じ取ったことがあるという。
「……これも、多分なんですけど」
「いいよ、この際、どんな情報でも欲しい。何だ?」
「祭器はこの石だけじゃないと思います。どこかに、同じような祭器があります」
謎は、ますます深まってしまうのだった。
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王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
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