102 / 166
幕間 『出戻り』達のサマーデイズ
第94話 水曜日/どッも、片桐商事でございまッす!:後
しおりを挟む
提案されたのは、業務提携だった。
「実はッよ、業務拡大してぇなッて考えてッだ、俺」
「ほぉ、業務拡大……」
それは、業績が好調なら考えてもいいことだと思う。
が、マンパワー足りてるんか、という部分で心配になっちまうな。
「多分、父ちゃんが考えてッこととは別方向だと思ッわ」
「……別方向?」
俺が首をかしげると、タクマは軽く説明してくれた。
「裏社会によ、手ェ伸ばしてみッかなッてよ」
「オイオイ……」
裏社会。その言葉が意味するところは、タクマも理解しているだろうが――、
「おまえ、荒事とかはからっきしじゃねぇか……」
そう、タクマはそっちの才能がとことんない。
見た目、いかにも屈強に見えるが、人を殴るのが嫌いというか苦手な性格だ。
だから喧嘩も弱いし、異面体だって戦闘能力を有していない。
「ん~、ッだよな、俺ッちもわかッちゃいるッしょ」
タクマは苦笑するが、しかし、その瞳に宿る光は強く鋭い。
「俺ッちさ、こんな性分ッしょ? だッから知り合いは無駄に多いんッすわ」
「そりゃわかるよ。片桐商事なんて、俺だって噂で名前知ってるくらいだしな」
表向きはただの小学生でしかない俺までもが知ってる名前。
それは、市内でそれだけ片桐商事の名前が売れている。知名度が高いってことだ。
「だッからよ、時々来ッちまうんだわ……、荒事ッ関連の依頼がッよ」
「あ~……」
タクマの見た目もあって、そういう分野にも精通してそうと思われちゃうワケか。
「これまではッさ、断ッてたワケよ、俺ッてばそゆのやんねッし」
「だけど、昨日、俺と繋がりを得たから、と……?」
「そゆこッと。最近あッた北村ンットコの壊滅と芦井の大量検挙。やッたのッて」
「まぁ、おまえ相手に隠して意味ないから言うけど、俺だな」
認めると、タクマは「ッしゃア、ビンゴッ!」とガッツポーズ。
そしてニヤリと笑みを深めてこっちを見る。
「傭兵、こッちでもやッてッしょ?」
「やってる」
「だッから、父ちゃんに業務提携のお誘いッつ~ワケよ」
ソファに深く身を沈め、まるでそこが我が家かのように振る舞うタクマ。
なるほどなるほど、言いたいことはわかった。
つまりタクマは客と俺とを結ぶ仲介役になることを提案してきてるワケだな。
と、なると――、
「何かあるんだな。こっちに任せたい案件が」
「御名ッ答、んじゃッ、当社より今ッ回のプレゼンはじめまッす~!」
妖精さんがあくせく働いているさなか、タクマは俺に資料を見せてくるのだった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
夜の、天月市。
郊外の片隅に、煌々と明かりがついている家がある。
ガレージと門前に、派手な色の車が二台。どちらもこの家の車ではない。
そして、今、あの家で騒いでいるのも、この家の住人ではない。
あの家は里内という人の家で、タクマの高校からの友人の家だという。
昨夜、その友人からタクマにメールが来た。
数日前から、半グレのグループ数人が家を占拠している。助けてくれ、とのこと。
そして、そのメールには『ガンナーヘッズ』という名前が記されていた。
タクマには、その名前に覚えがあった。
それは高校時代にタクマを『出戻り』させた連中だった。
「OK、契約成立。そいつら、今夜ブチ殺してくるわ! 結果報告お楽しみに!」
「お、おぉッ、頼むッぜ……!」
俺、ニッコニコでタクマを握手して、今に至る。っつーワケですよ。
そっかー、タクマを『出戻り』させた連中かぁ~。
しかも、何、タクマの親友の家を占拠してドンチャン騒ぎ。うわ~、極悪非道!
「……グチャグチャにしてやるよ」
俺は『出戻り』をする前のタクマの性格を知らない。
でも、俺が知っているタクマは、喧嘩できないクセに正義感が強いヤツだった。
だからきっと、タクマはその正義感が災いして喧嘩に巻き込まれたのだろう。
そして、抗えないまま無念の死を遂げたのだろう。
きっとそうだ。そうに違いない。
と、俺は自分勝手にストーリーを組み立てて、自分勝手に怒りを燃やす。
だが別にそれでいい。
一度タクマを殺したというだけで、連中は俺の恨みを買っている。
これから訪れる連中の死に、道理も正当性も必要ない。俺に恨まれた以上、死ね。
「じゃ、早速行ってみようか~♪」
ドアに金属符を張りつけて、家と庭とを『異階化』。
そこからインターホン連打連打! ドア、ドンドンガンガン、ドンドンガンガン!
ピンポ~ン! ピンポ~ン!
ピンポ~ン! ピンポ~ン!
ドンドンガンガン! ドンドンガンガン!
ピンポ~ン! ピンポ~ン!
ピンポ~ン! ピンポ~ン!
ドンドンガンガン! ドンドンガンガン!
ピンポ~ン! ピンポ~ン!
ピンポ~ン! ピンポ~ン!
ドンドンガンガン! ドンドンガンガン!
「ッだ! うるっせぇな!」
ドア越しに、荒っぽい声が聞こえる。
そしてバタバタと大股の足音がしたのち、ドアが無造作に開かれた。
「誰だッ、夜にうるせぇんだよ!」
「や、こんばんは」
姿を見せたガタイのいいニイちゃんに、俺は朗らかに挨拶をする。
「あ、ガキ……?」
「こちら、里内さんのお宅ですね。そしておまえらは『ガンナーヘッズ』ですよね」
「はぁ? だったら何だよ?」
「今日まで強者だったおまえらは、今この瞬間から弱者になったぞ」
「……あぁ?」
理解できていない様子のニイちゃんに、俺は取り出したダガーを振り上げる。
「え、刃物……?」
アホ面見せるニイちゃんの太ももに、ダガーを根元までザックリと突き立てる。
一瞬、ニイちゃんはダガーが刺さった自分の太ももを見下ろし、ポカンとして、
「ぃギッ!」
「おぉ~っと、ここでの悲鳴はご近所迷惑だぜェ!」
俺の頭上に出現したマガツラの腕が、ニイちゃんを家の中へと突き飛ばす。
そして倒れたニイちゃんにそのまま馬乗りになり、両手に新たにダガーを掴む。
「君、名前は?」
「あ、ぁ、お、ぉぉ、はら……」
馬乗りになった俺に怯えたのか、ニイちゃんは素直に自分の名前を吐いた。
「OK、大原。おまえはこれから『大原』という楽器だ! 精々高らかに鳴いて、この家にいる他の連中を呼び寄せてくれやァァァァ! ァァッハハハハハハァッ!」
大原の胸に、両手に掴んだダガーを、突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す、突き刺していく――――ッ!
「ギャバッ、ガァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアァ――――ッ!?」
玄関口に響き渡る、世界に一つだけの楽器『大原』の音色。
ん~、汚ェ。聞くに堪えない音色とはまさにコレ。ドブ川を音にしたかのようだ。
「何だァ、今の悲鳴は!」
「襲撃かよ、どこのモンだ!」
バタバタと大原と似たような足音を立て、二人のチンピラが二階から降りてくる。
片や、スキンヘッドにサングラス。片や、金髪ロン毛に口ピアス。
どっちも、その手に金属バットと木刀を手にしている。おお、武装済みかぁ。
「やぁ」
大原の両胸にダガーを突き立てて、俺は降りてきた二人に挨拶をする。
さて、彼らには息絶えた大原の上に乗ってその血に染まった俺はどう見えるかな。
「……ひっ!」
「な、何だこのガキッ!?」
ああ、そういう反応ね。うん、そっか。
「俺? 俺は強者だよ。こんばんは、クソ弱者風情の『ガンナーヘッズ』の皆さん」
「なっ、てめッ、ナメやがって……!」
俺の挑発に乗って、スキンヘッドの方が金属バットを振り上げようとする。
しかし、直後にガキンッ、と激しい金属音がその場に鳴り響いた。
「……あ?」
間の抜けた声を出し、スキンヘッドが自分のバットを見る。
金属バットは、根元部分からなくなっていた。
そして次に、それを見て硬直するスキンヘッドの、バットを握る手がなくなった。
バツンッ、と音がして、バットの根元部分ごとこそげて消えたのだ。
そこに至り、ようやくスキンヘッドも隣の金髪ロン毛も、硬直から脱する。
「ヒギャアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァ――――ッ!?」
「な、な、何だよ、これェェェェェェ~~~~!?」
ンフフ、驚いてる驚いてる。
「ビックリした? ビックリしたよねェ~! それ俺が契約してる魔獣の一つで、次元の狭間に隠れて対象を空間ごと食い散らかす、ハザマダイルっていうんだぜ!」
わかりやすく言えば、一定範囲を防御無視攻撃で消滅させる見えないワニである。
頭もいいから、俺の命令にも素直に従ってくれる可愛いヤツさ!
ハザマアギトの大きなアギトが、スキンヘッドの手首から肘までを喰らう。
断面から血が噴いて、隣の金髪ロン毛をビシャアと赤く汚した。
「うわぁぁぁぁ、あああああああああああああああああああああ!?」
「ヒィ、ヒギィィ、痛ェェェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!」
恐怖に騒ぎ出す金髪ロン毛と、激痛に泣き叫ぶスキンヘッド。
「うわ、可哀相だなぁ。痛そうだなぁ。でも全部、おまえらが弱いのが悪いんだぜ」
ニコニコ笑いながら、俺はハザマダイルに命令を下す。
それに従って見えないアギトがスキンヘッドをドンドンと喰らっていく。
腕、肩、胸。そして、そこから続いて頭、と。
「あぁ、あぁ、あああ、あああああああああああ――」
ゾリッ、と削れる音がして、スキンヘッドのスキンヘッドがこの世から消えた。
首周りごと頭を失った惨殺死体が、グラリと傾いで隣の金髪ロン毛に寄っかかる。
「あぁ、うあああああああぁぁぁぁぁああああぁぁぁ! ああああぁぁぁぁぁ――」
「喰らえ」
俺が命じ、騒ぐ金髪ロン毛の頭も次の瞬間には不可視のアギトに喰われて消えた。
そして俺は、玄関口に三つの死体を残して、二階へと上がっていく。
やはり、この家の人間は二階に監禁されていた。
散々殴られたらしく、血まみれで、顔もすっかり変形して、縛り上げられている。
家人は三人。父と母と、タクマの友人らしき二十歳程の青年。それと――、
「な、何だこのガキ……ッ!」
玄関に出た大原と同じような反応を示す、四人のチンピラ共。
全員がすでに臨戦態勢で、手にそれぞれ武器を持って、二階の通路に出ている。
俺は偵察用のゴーグルにより、二階全体を見通していた。
「……本当におまえらは」
俺はゴーグルを外してため息をつく。
「おまえらみたいな連中は、自分より弱いモノにしか強く出れないんだなぁ。腕っぷしだけを頼りにしたところで行き着く先なんて決まってるって、そんなこともわからない連中だモンなぁ。まぁ、だから、死ね。惨殺されて死ね。喰われて死ね」
ハザマアギトを、さらに何体も召喚。食い散らかせとだけ命じる。
「ひぃ、ぎゃあ!?」
「な、お、俺の腕、腕がァァァァァァァッ、あぎッ!」
「ギャアアアアアア! た、たす、助け……、あああああああああああああ!」
十重二十重に悲鳴が響く中、俺は二階の奥の部屋へ。
そして、そこに転がっている三人に、まずは治癒魔法で負傷を治してやる。
「あんた、里内芳樹?」
「……ぅ」
青年は小さく呻いたのち、ゆっくりとうなずいた。
「片桐逞から頼まれて、あんたを助けに来た。ここにいる連中はすぐいなくなる」
「た、たくま……ッ」
タクマの名前を聞くと、里内の目に涙が浮かぶ。
「このあと警察が来るかもしれないが、俺のことは黙っておいてくれよ?」
「ぅ、はい、はい……!」
里内が応じるのを見届けて、俺はこの家の人間三人を睡霧の魔法で眠らせた。
そして、気がつけば悲鳴は聞こえなくなっていた。
通路に出ると、そこにかすかに残された『さっきまで人間だった肉片』が幾つか。
ハザマダイルの欠点がこれだな。一口がデカイ分、食い残しが出てしまう。
「やれやれ、殺傷力と速攻能力は満点なんだがな……」
俺はそうボヤいて、ゴウモンバエを召喚する。
全部食い尽くすという点では、やっぱこっちなんだよな~。
「さて……」
ゴウモンバエが死体を食い尽くすのを待って、俺は玄関で金属符を回収する。
それによって『異階化』は解けて、血に汚れた玄関も元に戻る。
さっさと退散しようと外に出て――、うわぁ、そういえば車が残ってやがったー。
これも片付けないとな。
アフターケアまでしっかりやってこそのお仕事ですよ。
ってことで、俺は車二台を巻き込んで、飛翔の魔法で空へと上がる。
ここが人の少ない郊外でよかったぜ。おかげで人に見られずに済むわ~。
そして俺は、遥か遠くの山中でハザマダイルを召喚し、二台の車を喰らわせた。
あばよ『ガンナーヘッズ』。
おまえらの痕跡は、これで何もかもこの世から消え去った。
「ふぅ、弱い者いじめするヤツいじめをしたあとは最高に気持ちがいいぜ~!」
俺は、爽快な気分で宙色市へと戻っていった。
「実はッよ、業務拡大してぇなッて考えてッだ、俺」
「ほぉ、業務拡大……」
それは、業績が好調なら考えてもいいことだと思う。
が、マンパワー足りてるんか、という部分で心配になっちまうな。
「多分、父ちゃんが考えてッこととは別方向だと思ッわ」
「……別方向?」
俺が首をかしげると、タクマは軽く説明してくれた。
「裏社会によ、手ェ伸ばしてみッかなッてよ」
「オイオイ……」
裏社会。その言葉が意味するところは、タクマも理解しているだろうが――、
「おまえ、荒事とかはからっきしじゃねぇか……」
そう、タクマはそっちの才能がとことんない。
見た目、いかにも屈強に見えるが、人を殴るのが嫌いというか苦手な性格だ。
だから喧嘩も弱いし、異面体だって戦闘能力を有していない。
「ん~、ッだよな、俺ッちもわかッちゃいるッしょ」
タクマは苦笑するが、しかし、その瞳に宿る光は強く鋭い。
「俺ッちさ、こんな性分ッしょ? だッから知り合いは無駄に多いんッすわ」
「そりゃわかるよ。片桐商事なんて、俺だって噂で名前知ってるくらいだしな」
表向きはただの小学生でしかない俺までもが知ってる名前。
それは、市内でそれだけ片桐商事の名前が売れている。知名度が高いってことだ。
「だッからよ、時々来ッちまうんだわ……、荒事ッ関連の依頼がッよ」
「あ~……」
タクマの見た目もあって、そういう分野にも精通してそうと思われちゃうワケか。
「これまではッさ、断ッてたワケよ、俺ッてばそゆのやんねッし」
「だけど、昨日、俺と繋がりを得たから、と……?」
「そゆこッと。最近あッた北村ンットコの壊滅と芦井の大量検挙。やッたのッて」
「まぁ、おまえ相手に隠して意味ないから言うけど、俺だな」
認めると、タクマは「ッしゃア、ビンゴッ!」とガッツポーズ。
そしてニヤリと笑みを深めてこっちを見る。
「傭兵、こッちでもやッてッしょ?」
「やってる」
「だッから、父ちゃんに業務提携のお誘いッつ~ワケよ」
ソファに深く身を沈め、まるでそこが我が家かのように振る舞うタクマ。
なるほどなるほど、言いたいことはわかった。
つまりタクマは客と俺とを結ぶ仲介役になることを提案してきてるワケだな。
と、なると――、
「何かあるんだな。こっちに任せたい案件が」
「御名ッ答、んじゃッ、当社より今ッ回のプレゼンはじめまッす~!」
妖精さんがあくせく働いているさなか、タクマは俺に資料を見せてくるのだった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
夜の、天月市。
郊外の片隅に、煌々と明かりがついている家がある。
ガレージと門前に、派手な色の車が二台。どちらもこの家の車ではない。
そして、今、あの家で騒いでいるのも、この家の住人ではない。
あの家は里内という人の家で、タクマの高校からの友人の家だという。
昨夜、その友人からタクマにメールが来た。
数日前から、半グレのグループ数人が家を占拠している。助けてくれ、とのこと。
そして、そのメールには『ガンナーヘッズ』という名前が記されていた。
タクマには、その名前に覚えがあった。
それは高校時代にタクマを『出戻り』させた連中だった。
「OK、契約成立。そいつら、今夜ブチ殺してくるわ! 結果報告お楽しみに!」
「お、おぉッ、頼むッぜ……!」
俺、ニッコニコでタクマを握手して、今に至る。っつーワケですよ。
そっかー、タクマを『出戻り』させた連中かぁ~。
しかも、何、タクマの親友の家を占拠してドンチャン騒ぎ。うわ~、極悪非道!
「……グチャグチャにしてやるよ」
俺は『出戻り』をする前のタクマの性格を知らない。
でも、俺が知っているタクマは、喧嘩できないクセに正義感が強いヤツだった。
だからきっと、タクマはその正義感が災いして喧嘩に巻き込まれたのだろう。
そして、抗えないまま無念の死を遂げたのだろう。
きっとそうだ。そうに違いない。
と、俺は自分勝手にストーリーを組み立てて、自分勝手に怒りを燃やす。
だが別にそれでいい。
一度タクマを殺したというだけで、連中は俺の恨みを買っている。
これから訪れる連中の死に、道理も正当性も必要ない。俺に恨まれた以上、死ね。
「じゃ、早速行ってみようか~♪」
ドアに金属符を張りつけて、家と庭とを『異階化』。
そこからインターホン連打連打! ドア、ドンドンガンガン、ドンドンガンガン!
ピンポ~ン! ピンポ~ン!
ピンポ~ン! ピンポ~ン!
ドンドンガンガン! ドンドンガンガン!
ピンポ~ン! ピンポ~ン!
ピンポ~ン! ピンポ~ン!
ドンドンガンガン! ドンドンガンガン!
ピンポ~ン! ピンポ~ン!
ピンポ~ン! ピンポ~ン!
ドンドンガンガン! ドンドンガンガン!
「ッだ! うるっせぇな!」
ドア越しに、荒っぽい声が聞こえる。
そしてバタバタと大股の足音がしたのち、ドアが無造作に開かれた。
「誰だッ、夜にうるせぇんだよ!」
「や、こんばんは」
姿を見せたガタイのいいニイちゃんに、俺は朗らかに挨拶をする。
「あ、ガキ……?」
「こちら、里内さんのお宅ですね。そしておまえらは『ガンナーヘッズ』ですよね」
「はぁ? だったら何だよ?」
「今日まで強者だったおまえらは、今この瞬間から弱者になったぞ」
「……あぁ?」
理解できていない様子のニイちゃんに、俺は取り出したダガーを振り上げる。
「え、刃物……?」
アホ面見せるニイちゃんの太ももに、ダガーを根元までザックリと突き立てる。
一瞬、ニイちゃんはダガーが刺さった自分の太ももを見下ろし、ポカンとして、
「ぃギッ!」
「おぉ~っと、ここでの悲鳴はご近所迷惑だぜェ!」
俺の頭上に出現したマガツラの腕が、ニイちゃんを家の中へと突き飛ばす。
そして倒れたニイちゃんにそのまま馬乗りになり、両手に新たにダガーを掴む。
「君、名前は?」
「あ、ぁ、お、ぉぉ、はら……」
馬乗りになった俺に怯えたのか、ニイちゃんは素直に自分の名前を吐いた。
「OK、大原。おまえはこれから『大原』という楽器だ! 精々高らかに鳴いて、この家にいる他の連中を呼び寄せてくれやァァァァ! ァァッハハハハハハァッ!」
大原の胸に、両手に掴んだダガーを、突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す、突き刺していく――――ッ!
「ギャバッ、ガァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアァ――――ッ!?」
玄関口に響き渡る、世界に一つだけの楽器『大原』の音色。
ん~、汚ェ。聞くに堪えない音色とはまさにコレ。ドブ川を音にしたかのようだ。
「何だァ、今の悲鳴は!」
「襲撃かよ、どこのモンだ!」
バタバタと大原と似たような足音を立て、二人のチンピラが二階から降りてくる。
片や、スキンヘッドにサングラス。片や、金髪ロン毛に口ピアス。
どっちも、その手に金属バットと木刀を手にしている。おお、武装済みかぁ。
「やぁ」
大原の両胸にダガーを突き立てて、俺は降りてきた二人に挨拶をする。
さて、彼らには息絶えた大原の上に乗ってその血に染まった俺はどう見えるかな。
「……ひっ!」
「な、何だこのガキッ!?」
ああ、そういう反応ね。うん、そっか。
「俺? 俺は強者だよ。こんばんは、クソ弱者風情の『ガンナーヘッズ』の皆さん」
「なっ、てめッ、ナメやがって……!」
俺の挑発に乗って、スキンヘッドの方が金属バットを振り上げようとする。
しかし、直後にガキンッ、と激しい金属音がその場に鳴り響いた。
「……あ?」
間の抜けた声を出し、スキンヘッドが自分のバットを見る。
金属バットは、根元部分からなくなっていた。
そして次に、それを見て硬直するスキンヘッドの、バットを握る手がなくなった。
バツンッ、と音がして、バットの根元部分ごとこそげて消えたのだ。
そこに至り、ようやくスキンヘッドも隣の金髪ロン毛も、硬直から脱する。
「ヒギャアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァ――――ッ!?」
「な、な、何だよ、これェェェェェェ~~~~!?」
ンフフ、驚いてる驚いてる。
「ビックリした? ビックリしたよねェ~! それ俺が契約してる魔獣の一つで、次元の狭間に隠れて対象を空間ごと食い散らかす、ハザマダイルっていうんだぜ!」
わかりやすく言えば、一定範囲を防御無視攻撃で消滅させる見えないワニである。
頭もいいから、俺の命令にも素直に従ってくれる可愛いヤツさ!
ハザマアギトの大きなアギトが、スキンヘッドの手首から肘までを喰らう。
断面から血が噴いて、隣の金髪ロン毛をビシャアと赤く汚した。
「うわぁぁぁぁ、あああああああああああああああああああああ!?」
「ヒィ、ヒギィィ、痛ェェェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!」
恐怖に騒ぎ出す金髪ロン毛と、激痛に泣き叫ぶスキンヘッド。
「うわ、可哀相だなぁ。痛そうだなぁ。でも全部、おまえらが弱いのが悪いんだぜ」
ニコニコ笑いながら、俺はハザマダイルに命令を下す。
それに従って見えないアギトがスキンヘッドをドンドンと喰らっていく。
腕、肩、胸。そして、そこから続いて頭、と。
「あぁ、あぁ、あああ、あああああああああああ――」
ゾリッ、と削れる音がして、スキンヘッドのスキンヘッドがこの世から消えた。
首周りごと頭を失った惨殺死体が、グラリと傾いで隣の金髪ロン毛に寄っかかる。
「あぁ、うあああああああぁぁぁぁぁああああぁぁぁ! ああああぁぁぁぁぁ――」
「喰らえ」
俺が命じ、騒ぐ金髪ロン毛の頭も次の瞬間には不可視のアギトに喰われて消えた。
そして俺は、玄関口に三つの死体を残して、二階へと上がっていく。
やはり、この家の人間は二階に監禁されていた。
散々殴られたらしく、血まみれで、顔もすっかり変形して、縛り上げられている。
家人は三人。父と母と、タクマの友人らしき二十歳程の青年。それと――、
「な、何だこのガキ……ッ!」
玄関に出た大原と同じような反応を示す、四人のチンピラ共。
全員がすでに臨戦態勢で、手にそれぞれ武器を持って、二階の通路に出ている。
俺は偵察用のゴーグルにより、二階全体を見通していた。
「……本当におまえらは」
俺はゴーグルを外してため息をつく。
「おまえらみたいな連中は、自分より弱いモノにしか強く出れないんだなぁ。腕っぷしだけを頼りにしたところで行き着く先なんて決まってるって、そんなこともわからない連中だモンなぁ。まぁ、だから、死ね。惨殺されて死ね。喰われて死ね」
ハザマアギトを、さらに何体も召喚。食い散らかせとだけ命じる。
「ひぃ、ぎゃあ!?」
「な、お、俺の腕、腕がァァァァァァァッ、あぎッ!」
「ギャアアアアアア! た、たす、助け……、あああああああああああああ!」
十重二十重に悲鳴が響く中、俺は二階の奥の部屋へ。
そして、そこに転がっている三人に、まずは治癒魔法で負傷を治してやる。
「あんた、里内芳樹?」
「……ぅ」
青年は小さく呻いたのち、ゆっくりとうなずいた。
「片桐逞から頼まれて、あんたを助けに来た。ここにいる連中はすぐいなくなる」
「た、たくま……ッ」
タクマの名前を聞くと、里内の目に涙が浮かぶ。
「このあと警察が来るかもしれないが、俺のことは黙っておいてくれよ?」
「ぅ、はい、はい……!」
里内が応じるのを見届けて、俺はこの家の人間三人を睡霧の魔法で眠らせた。
そして、気がつけば悲鳴は聞こえなくなっていた。
通路に出ると、そこにかすかに残された『さっきまで人間だった肉片』が幾つか。
ハザマダイルの欠点がこれだな。一口がデカイ分、食い残しが出てしまう。
「やれやれ、殺傷力と速攻能力は満点なんだがな……」
俺はそうボヤいて、ゴウモンバエを召喚する。
全部食い尽くすという点では、やっぱこっちなんだよな~。
「さて……」
ゴウモンバエが死体を食い尽くすのを待って、俺は玄関で金属符を回収する。
それによって『異階化』は解けて、血に汚れた玄関も元に戻る。
さっさと退散しようと外に出て――、うわぁ、そういえば車が残ってやがったー。
これも片付けないとな。
アフターケアまでしっかりやってこそのお仕事ですよ。
ってことで、俺は車二台を巻き込んで、飛翔の魔法で空へと上がる。
ここが人の少ない郊外でよかったぜ。おかげで人に見られずに済むわ~。
そして俺は、遥か遠くの山中でハザマダイルを召喚し、二台の車を喰らわせた。
あばよ『ガンナーヘッズ』。
おまえらの痕跡は、これで何もかもこの世から消え去った。
「ふぅ、弱い者いじめするヤツいじめをしたあとは最高に気持ちがいいぜ~!」
俺は、爽快な気分で宙色市へと戻っていった。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』
見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装…
俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。
突然の事で戸惑うクラスメート達…
だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。
「またか…」
王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。
そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。
そして俺はというと…?
『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』
「それよりも不知火君は何を得たんだ?」
イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。
俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。
その場にいた者達は、俺の加護を見ると…
「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。
『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』
王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。
まぁ、その方が気楽で良い。
そして正義は、リーダーとして皆に言った。
「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」
正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。
「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」
「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」
「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
6月22日
HOTランキングで6位になりました!
6月23日
HOTランキングで4位になりました!
昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°.
6月24日
HOTランキングで2位になりました!
皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
戦国転生・内政英雄譚 ― 豊臣秀長の息子として天下を創る
丸三(まるぞう)
ファンタジー
戦国時代に転生した先は、豊臣秀吉の弟にして名宰相――豊臣秀長の息子だった。
現代では中世近世史を研究する大学講師。
史実では、秀長は早逝し、豊臣政権は崩壊、徳川の時代と鎖国が訪れる。
ならば変える。
剣でも戦でもない。
政治と制度、国家設計によって。
秀長を生かし、秀吉を支え、徳川の台頭を防ぎ、
戦国の終わりを「戦勝」ではなく「国家の完成」にする。
これは、武将ではなく制度設計者として天下を取る男の物語。
戦国転生×内政改革×豊臣政権完成譚。
(2月15日記)
連載をより良い形で続けるため、更新頻度を週5回とさせていただきます。
一話ごとの完成度を高めてお届けしますので、今後ともよろしくお願いいたします。
(当面、月、水、金、土、日の更新)
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる