金色竜は空に恋う

兎杜唯人

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番の結び方 4

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「…あー…すごい。番ってこんななんだ」


ノエルの胸元に頭をあずけたシシリィはつぶやく。シシリィの体は項を噛まれた瞬間に激痛を感じたものの、しばらくしてから体中が作り変えられるような感覚に陥った。今現在絶頂を迎えたかのようなけだるさがある。
手のひらの傷は虎族に仕える者が手当していた。耳がピコピコと動く。柔らかそうな耳だなぁと考えながらディディエへ視線を向けた。



「ディディ、俺変わった?」
「香りが違う。花の香がする」

そっかぁ、とノエルは笑う。
手当された手のひらを見つつノエルにすり寄る。
ノエルはどうしたらいいか悩んでしまいまごつく。
ディディエは二人の様子を見てから近づいた。


「シシリィ、手」
「うん?大丈夫だよ。傷跡はもしかしたら残るかもしれないけど痛みはないし普通に動くから」
「そうか」
「傷跡…」


さっとノエルの顔色が変わる。
大丈夫、とシシリィは笑った。
ノエルが噛んだ項の血は止まっている。ディディエは手を伸ばしてそのうなじに触れようとした。
だがシシリィは無意識のうちにディディエの手を叩き落としていた。
二人そろって呆然とする。

「当たり前だろう。番のαがいるのに、ほかのαは触れられるわけがない」
「……よかった、俺、ちゃんとノエルの番になったんだね」
「シシリィ…やっぱり、俺今からでも」
「死ぬなんていったら許さないよ」

ディディエの父の言葉に安心したのもつかの間再び爪を自分の喉に突き刺しかねないノエルの言葉を遮ってシシリィは告げる。
口を閉じたノエルを見て苦笑し、それからディディエを見て悲し気に笑う。


「ごめんね、ディディ…」
「…わかってたことだ。俺がノエルを抱くとき、お前も今俺が抱いている気持ちと同じものを抱くのだろう」
「きっとね。ノエルに二人で嫉妬するなんてちょっとおかしい」



シシリィはノエルと体ごと向き合った。
それからノエルを寝台に押し倒して見つめる。
シシリィのどこか泣きそうな笑顔にノエルは動くことができなくなっていた。


「ノエル……ちゃんと俺を好きになって。同じくらい、ディディのことも好きになって。俺たち二人、ちゃんとノエルを知って好きになっていくから」


優しくノエルの唇が奪われる。
ディディエは部屋を静かに出ていく父の背を見てから寝台に上がった。
シシリィが流した血でシーツが汚れている。だが、ふわふわと香る異なる花の匂いとΩが流すαを誘う香りがまとわりついてくればそんなものは気にならなくなった。
キスを交わすノエルとシシリィを後目にディディエはノエルの手を取り肉厚の舌で舐めた。
反射的にでかけた爪をノエルは必死に抑え込んだ。



「ノエル、俺たちとセックスしよう?心も大事だけど、体でも気持ちよくなって」
「初めてか?」
「…誰も、抱いたことも抱かれたこともない」
「わぁ。じゃぁ俺とディディが初めてのセックスの相手になるんだね」
「なら時間をかけて慣らす必要があるな。前も後ろも」
「うん。ノエル、そういう知識はある?」


ノエルの首筋をシシリィの指が撫でていく。背筋を伝う痺れに体を震わせてノエルは首を振った。
優しくするよ、とシシリィは言う。
ディディエはノエルの鱗の光る腕を舐めて目を細めた。肉食獣の瞳を見つめ、自分はすべて食べられてしまうのではないだろうかと錯覚する。
シシリィの手が服の裾からノエルの肌へと触れてくる。
腹部にも鱗はもちろんあり、それに触れられるとしびれが走る。

「安心して、ノエル。俺は何度もディディの挿れてもらってるから丁寧に解してあげる。俺の孔の解し方も教えるから次はノエルがやってね」
「孔って…」
「俺は男Ωだから、女みたいな膣はないの。だから後ろの孔にいれてセックスするんだよ。発情期には子宮も肥大化するからちゃんと子供も孕める」

赤裸々な言葉の数々にノエルは赤面する。
知識としてあることはあるが、実際言葉にされ自分が当事者になってしまうと恥ずかしさが勝る。
ちらりとディディエに目を向ければその体の大きさに震える。巨躯に見合ったものを持っているのだろう。

「壊さないように慣らしてやる。だから好きなだけイけ」
「いっぱい声聞かせてね、ノエル」


楽しそうな声だと思った。
シシリィの手つきとディディエの手つきがあまりにも異なる。
ノエルはまだ快楽に突き落とされる覚悟はできていなかった。
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