金色竜は空に恋う

兎杜唯人

文字の大きさ
43 / 74

★君に捧げる笑顔の花束 5

しおりを挟む
シシリィはマットレスと媚薬を持って浴場に戻った。
ディディエの腕の中でグズグズにとろけてしまっているノエルはかつての自分だろうか。
幾度となく達したためノエルのそれからはもう吐き出されるものはないだろうし力もない。だが、ノエルはその体に快感を刻み続けていた。


「ディディ、マットも持ってきた俺を褒めて」
「よくできたな」

シシリィの声に獣が振り向く。
ぞくっと体が震えた。
幾度も自分の体に刻み込んだ雄、愛おしい半身。
ふらふらと近づけばペタンと座り込む。
ディディエはシシリィからマットレスを受け取れば自分たちの脇に広げる。力をなくしたノエルの体を横たえればシシリィを向いた。

シシリィが戻る前からずっとノエルの孔を拡げていた手を取れば恐る恐る舌を這わす。
自分の体に拒絶反応は出ていない。それをいいことにノエルの蜜ごとディディエの指を味わった。



「…俺も、突っ込めるもの持ってくればよかった」
「見ていてやるから一人で指入れるか」


一人でなんて恥ずかしい。そう思うのにうなずいていた。
うなずいたシシリィの口から指を抜き出せば、ディディエの指をぬらりと光るものがつなぐ。
シシリィから受け取った媚薬を一滴ノエルの口に垂らせば、ノエルはそれをすぐに飲み込んだ。
媚薬の効果はすぐに出るだろう。シシリィはディディエとノエルを見つめ足を開く。
ディディエの瞳孔が細くなりシシリィを射抜いた。ただそれだけでシシリィは体の奥が熱くなる。



「ディディエ…」
「効いてきたか…見ろ、シシリィが一人でいじってる」


ノエルの瞳がシシリィを向く。
己の指を根本まで差し込みながら動かす。
片手は己の熱をしごいていた。その痴態にノエルはつばを飲み込む。
目線を上げたシシリィはノエルを見るとわずかに笑った。

「ノエル」

ディディエが呼ぶ。
堪えきれない欲情が滲み出していた。
ディディエの指によってほぐされた孔はその時を今か今かと待ちわびる。
腕を伸ばしてディディエの首に回せばディディエの手が肌を撫でる。
奥の方まで暴いてほしい。
ノエルの体は媚薬により快感を求めていた。

「ディディエ…ほしい…俺の中を、ディディエで埋めてくれ」



ぐるる、と喉の奥で低く唸る。
とろとろと甘い香りのする蜜をこぼしているそこはディディエを待ちわびているようだった。
ディディエは己の昂ったそれにも香油と媚薬を垂らす。手で塗り広げれば爪でノエルの肌を傷つけないように注意しつつ腰を掴む。
己の熱をノエルの孔に添え先端から静かに埋めていく。程よく蕩けさせたそこはディディエの熱をゆっくりと着実に咥えこんでいく。


「いた…い…」
「痛いか…」
「でも…そのまま…」

ディディエの腕に爪を立てノエルはかすかな声で告げた。
動きを止めたディディエはわずかに助けを求めるかのようにシシリィを見た。
ノエルの顔を見つめ自慰をしていたシシリィだがディディエを見ると動きを止めた。

「……助けいる?」
「あぁ」
「仕方ないなぁ。俺もノエルが痛がるのはいやだもん……後でいっぱいお菓子ちょうだいね。俺が薬飲むのをやめたことに感謝して」


シシリィは己の唇をなめる。涙を浮かべたノエルはシシリィを見上げた。


「ノエル、大丈夫。俺だけを感じて。いい子…ほら、いいにおいがしてくるでしょ」

シシリィの手がノエルに伸びる。その言葉と同時にシシリィからむわっと花の香りが広がった。
それを嗅ぐとノエルの脳内でスパークが起きる。体が熱を帯びて、よりいっそう胎内に収まったディディエを感じてしまう。
喘ぐノエルを見つめシシリィはその裸体に顔を寄せる。甘い香りを漂わせながらノエルの首元をなめ、胸元をなめる。

「シシリィのフェロモンを感じるか。シシリィの番であるノエルにはより一層効くだろう」
「ふ、……ふぇろ、もん?」
「αの性感を高めるものだよ。Ωがαをセックスに誘うときに出すことが多いかなぁ。俺はディディと会ってからほかのΩに見向きしなくなったから、フェロモンを不用意に出さないように薬で抑えてたの。でも、ノエルっていう番ができた時から飲まなくなったんだ…わかる?俺の香り」


艶然とした笑みを浮かべるシシリィはノエルに口づけた。
舌を絡めてノエルの唾液をすする。ディディエからシシリィの項に刻まれたノエルの噛み跡が見える。


「ディディ、どこ見てるの、えっちぃ」
「お前が見せてるんだろ」

ディディエの視線を感じれば顔を上げたシシリィが笑いながら告げる。
ディディエも耐えきれなくなってきた。
番でなくとも思いあう仲だったシシリィのフェロモンはディディエにも少なからず作用する。
ぐぐっと質量を増したディディエのそれにノエルはのけぞる。

「ディディに気持ちよくしてもらおうね、ノエル。そのあとは頑張って俺も気持ちよくして」
「無理だろ、今日は飛ばす」
「えー…」
「えーじゃない。お前は十分そこに突っ込まれただろう」
「ぶー……ノエル、壊れちゃわないで。ディディに全部預けていっぱいかわいい声聞かせてね」

ちゅっと優しいキスを一度、それが合図になった。
すべてを納め切った訳ではないがディディエが腰を引くとノエルの内部が擦れる。
腹がぱんぱんに膨れるほど納められていたものがなくなっていくその喪失感たるや、いやだ、と口に出そうになった。
だが、それを口にする前にノエルの中に再び押し入ってくる。
細い悲鳴を上げてノエルは胸をそらした。シシリィは指でノエルの突起をいじる。つまんで引っ張り、爪でひっかく。
胸からの刺激も相まってノエルは痛みを感じなくなっていた。

「あー…やべぇ…すぐ出そうだ」
「ちょっと、早くない?俺のときよりずっと」
「シシリィの中とは違う気持ちよさだな」

初めての快感に頭がついていかない。だから二人の会話もノエルはわかっていなかった。
シシリィはむっとするとディディエの熱の入ったノエルの腹部を手で押した。
ノエルの弱い部分をダイレクトに刺激され声も出せずにノエルは極まる。だが己から精液を出すことはなく、震えていた。

「わー、ノエルは中イキしちゃったみたい。で、ディディ…」

達した瞬間の締め付けにディディエは呻きを一つ上げると己をノエルの奥へとこすりつけていた。
胎内に吐き出された熱い液にノエルは更なる絶頂を体に刻む。
だが一度でディディエが終わるわけがなかった。ノエルも媚薬の効果で再び燃え上がる。
慣れない行為にただノエルは喘ぎ、達し、翻弄されていった。
いつ終わったのかノエルはわからない。ぐったりとした自分を抱え上げる力強い腕と優しく体を清める手だけを感じていた。



「ディディ、やっぱり激しいんじゃない…?薬塗ったほうがいいかな」
「…抑えきれなかった」
「だろうね。途中で俺も何度イったか…」
「それも一人でな?」
「うっ…だって、ノエルのことをディディがしっかり抱きしめてるんだもん…ノエルの手すら貸してくれなかったじゃん」
「今は俺が抱いていたんだから当たり前だろう。そもそもシシリィが先に独り占めしたのが悪い」

幾度も達し、意識を落としたノエルを抱えて部屋に戻る。
ベッドに横たえて穏やかな寝息を立てる姿を二人で見つめた。

「ねぇ、ディディ。話があるの」
「お前が囮になるからってのは聞かないぞ」
「わかってるよ…そうじゃない。俺たちのずっと先のこと…聞いてくれる?」

ベッドの向こうとこちら側でノエルを挟んで見つめあう。ディディエはシシリィをまっすぐに見つめた。
こうして恋愛感情抜にして見つめあうのはいつ以来だろうか。出会って、惚れて、愛してきて。
今はノエルを番として三人でいる。

「…話せ」
「うん」

シシリィは一度だけノエルの頭を撫でると静かに口を開いた。
その話の中身にディディエは口をつぐむもののうなずくほかなかった。自分も考えなかったわけではない。
今が無理なら、その先で。
シシリィの話はつまりそういうことだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)

九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。 半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。 そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。 これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。 注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。 *ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

過保護な義兄ふたりのお嫁さん

ユーリ
BL
念願だった三人での暮らしをスタートさせた板垣三兄弟。双子の義兄×義弟の歳の差ラブの日常は甘いのです。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

処理中です...